魔女がいっぱい
魔女をテーマにした映画って、調べてみるとたくさんありますよね。
「奥様は魔女」「メリー・ポピンズ」といった古典的でかわいらしく夢のある作品や、「ダーク・シャドウ」、「ヘンゼル&グレーテル」、「ラスト・ウィッチ・ハンター」「サスペリア」、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」といったコミカルからシリアス、他ジャンルを混ぜて制作された作品。
日本でいえば「魔女の宅急便」や「おジャ魔女ドレミ」といった日本国民から広く親しまれているアニメーションから、「メアリと魔女の花」、「魔法少女まどか☆マギカ」など、近年でも題材として用いられるほど定着した存在なのではないでしょうか。
今回鑑賞する作品は、そんな魔女を題材とした映画に新たに加わるであろうダーク・ファンタジー作品。
一見美しい装いだけど中身はとんでもなく恐ろしい大魔女を筆頭に、人間のふりをして街に溶け込んでいる魔女たちが、一体何を企んでいるのか。
これを見たら、あなたの近しい女性も魔女に思えてしまったりしてw
早速鑑賞してまいりました!
作品情報
「チャーリーとチョコレート工場」や、「ファンタスティックMr.FOX」、「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」など、数々のファンタジー映画の基となった児童文学を手掛けてきたロアルド・ダール。
彼の作品を、CGやVFXで非日常的な空間を生み出す監督と、絶世の美女である女優がタッグを組んで映画化。
60年代の豪華ホテルを舞台に、美しい外見とは裏腹に、とんでもない陰謀を企む魔女と、彼女の秘密を偶然知ってしまった少年の運命を描いた、驚きと希望のファンタジー映画です。
また、これまでプリンセス的な扱いと装いで映画ファンを魅了してきたアン・ハサウェイが、当時のマリリン・モンローを彷彿とさせるポップでエレガンスなファッションを着こなすも、特殊メイクも手伝って見た目とは全く違う恐ろしさで我々に違った印象を見せつけます。
これから訪れるクリスマスにぴったりな、大人も子供も楽しめる娯楽ファンタジー映画です。
あらすじ
60年代—
とある豪華ホテルに現れたオシャレな美女の集団。
中心にいる、最も美しく恐ろしい大魔女グランド・ウィッチ(アン・ハサウェイ)は、そこであるとてつもない秘密の計画があることを明かす。
偶然ある少年は魔女集会に紛れ、その企みを知ってしまう。
大魔女が少年をネズミに変えたことで、物語は世界中の魔女を巻き込んで思いもよらぬ方向へ——(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、名匠ロバート・ゼメキス。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」から「フォレスト・ガンプ」に至るまで、あらゆるジャンルを問わずに名作を作り続けてきた監督。
今回も得意のCGを使って、ネズミと魔女の攻防戦を、時に恐ろしく時に楽しく描いてくれることでしょう。
本作は魔女を題材にしたホラーファンタジーですが、過去に、いつまでも年を取らず美しくありたい願望を持つ女性を皮肉ったホラーコメディ「永遠に美しく」なんて映画も制作されていたように、女性の美醜にまつわる部分も面白おかしく描いてくれそうですね。
また子供心をくすぐらせるような愉快な描写は「ロジャー・ラビット」や「ポーラー・エクスプレス」などの作品からも感じられるように、本作もきっと面白い仕掛けを見せてくれるはず。
また本作には、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で印象的なテーマ曲を手掛けたアラン・シルベストリが音楽に携わっていたり、アルフォンソ・キュアロンやギレルモ・デル・トロといった巨匠たちが製作に名を連ねているのも頼もしいところ。
一体どんな作品に仕上がっているのか楽しみです。
彼に関してはこちらをどうぞ。
キャラクター紹介
- 大魔女グランド・ウィッチ(アン・ハサウェイ)…絶対的な力で魔女たちを従える、美しく危険な大魔女。感情の起伏が激しく、従わない者には容赦なく制裁を加える。魔女たちを集め、世界中の子供たちをネズミに変えてしまう恐ろしい計画を進めている。ノルウェーのツンドラ地帯出身で、独特な訛りがある。
- おばあちゃん(オクタヴィア・スペンサー)…両親を亡くした❝ぼく❞を引き取る。明るく、物怖じしない性格。民間療法や魔女に詳しく、ぼくにいろいろなことを教える。
- ストリンガー三世(スタンリー・トゥッチ)・・・お金持ちが利用する一流ホテルの支配人。事なかれ主義で、宿泊客の要望なら多少無茶なことでもできる限り応えようとする。
- ぼく(ジャジール・ブルーノ)…両親を事故で失い、おばあちゃんに引き取られた主人公の少年。ショックから立ち直った矢先、大魔女グランド・ウィッチに遭遇。避難先のホテルで、魔女にネズミにされてしまう。
- デイジー(クリスティン・チェノウェス)…白いネズミ。寂しそうにしていた❝ぼく❞におばあちゃんがプレゼントした。誰も気づいていないが、実は大きな秘密がある。
- ブルーノ・ジェンキンス(コーディ=レイ・イースティック)…両親とホテルに滞在していた少年。食いしん坊で、常に何か食べていないと落ち着かない。大魔女グランド・ウィッチの罠にかかり、ネズミにされてしまう。(以上HPより)
妊娠中に撮影されたというアン・ハサウェイの化けっぷりと、それでも隠せない美貌、彼女の周りでウロチョロするであろうネズミたちのかわいらしい姿が、どんな接戦を生むのか。
とにかくワクワクするようなお話になりそうですね。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
こりゃ子供が見たら魔女にトラウマになるわ…
「外見はどうであれ、愛されていれば関係ない」というメッセージを入れたのはいいけど、ハプニング弱すぎるわ。
以下、ネタバレします。
アン・ハサウェイの怪演
両親を事故で亡くし祖母の下で育った少年が、魔女にネズミにされてしまったことで起こる奮闘の姿を描いた本作は、魔女たちの異様で不気味な姿をCGやVFX,特殊メイクで作り上げたことで恐怖を植え付け、縦横無尽に駆け抜けるネズミの視点を中心に描くことでスピーディーでスリリングなアクションに仕上げ、子供でも大人でもワクワク感とドキドキ感を堪能できる娯楽ファンタジー作品として成功した作品でございました。
まずは褒めるべき点からあれこれ語っていこうと思いますが、本作の一番の見どころは、何といってもアン・ハサウェイ。
これまで現代過去の時代問わずプリンセス級の役柄を多く演じてきた彼女が、いわゆるモンスターに変身したことは、彼女の出演作を見返しても異質な作品となったのではないでしょうか。
もう見た目からインパクト大。
一見すると、白黒のギンガムチェックのジャケット&スカートや、サーモンピンクを基調としたローブ、金色の蛇を留め具代わりに紫の肩出しドレス、ワインレッドのバスローブ姿など、60年代特有のカラフルでゴージャスな貴婦人ファッションを上手く着こなしていますが、目を凝らすと口裂け女のような大きな口に鍵爪、木こりに斬られたかのような指のない足。
教壇を投げ飛ばすほどの怪力だったり、どこまでも伸びる腕、異常な嗅覚なために花の穴が20センチも大きくなる徹底ぶり、そして誰に対しても傲慢な態度。
おまけに飼い猫の不気味さも加わって、これまでのアンハサウェイのパブリックイメージを大きく覆した容姿となって我々の前に現れます。
また喋り方も独特。
ツンドラ地帯で生まれたということでロシア語訛りのある喋り方をするんですが、アクセント強めでまくし立てるように話すことで、どこか高圧的で威圧感のある語り口になっています。
大魔女ということで他の魔女たちからも一目置かれている立場。
彼女に逆らえば魔力でいとも簡単に粉々にされるし、瞬きしないまま凝視してくるので見てるこちら側も硬直状態。
少年にクスリを飲ませる際も羽交い絞めにして飲ませる強引さに、子供でなく大人が見ても震えることでしょう。
怖さを助長させる演出
全体的には「グレムリン」や「E.T.」、「グーニーズ」といった作品でお馴染みの「アンブリン・エンターテインメント」が製作した様な、子供が見たら怖くなるけど希望をと愛らしさを見せてくれる演出。
怖さを受け付ける対象が主人公の少年ということで、彼が怖くなるような施しが満載でした。
例えば少年が祖母と一緒に食料品店で釘を購入する際に現れた魔女との対面では、濁声で話しかける魔女に震えて硬直してしまうも、祖母の掛け声でとっさに横を振り向いたら既にいないカメラワーク。
祖母の背中越しに映る窓からは魔女が立ち去る姿もチラッと映っており、幻ではなく確かにいたことを表現する手法でした。
他にも、祖母が幼いころに見た魔女の初登場のシーンでは、機関車の煙を上手く使って全体像をぼかすことで、いると噂された人物が存在したことを映し出し、その後彼女のお菓子によってニワトリにされてしまった親友アリスの人間からニワトリになる過程は、幾らファンタジーとはいえトラウマになるのではないかというほどスムーズでリアルな変化。
また、ホテルで魔女がどういう姿なのかを祖母がベッド越しで語る際には、天井越しに映る影が窓にあたる雨粒によって、魔女の口に見えたりかぎ爪に見えたり、鼻に見えたりする演出に。
さらにはネズミになってしまった少年たちを、木槌やハイヒールで踏みつぶそうとする魔女たちの姿。
ネズミの視点で描くことで、空から天災が起きたかのような、雷が降ってきたかのようなスケールでガンガン踏みつぶそうとするので、幾らすばしっこいネズミでも踏みつぶされてしまうのではないかと思わせる怖さでした。
ネズミアクションがかわいい。
アンハサウェイの怖さ、子供が怖がる演出と、一瞬ホラーなのか?と思いがちですが、そこはロバートゼメキス。
しっかり子供たちが楽しめるような演出を見せてくれます。
これが本作のもう一つの見どころで、かわいいネズミたちによるアクションです。
ネズミにされてしまった少年とブルーノ、そして少年が手塩にかけて育てたネズミのデイジーの3匹が、大魔女の手から逃れるために通気口の中でダッシュ。
重さによって拓かれた逃げ口は厨房へと繋がっており、シェフの目を盗んで戸棚の上を走りぬきます。
そこからロビーに向かい、人目を盗んでエレベーターに乗り、祖母のいる4階まで問題なくスムーズに向かうんですね。
ネズミの特徴を生かした彼らのアクションはまだまだ続きます。
祖母のいる部屋にたどり着いたとしても、中に入るには扉が開かないことには始まらない。
ということで、掃除用具を登り壁の縁を伝ってインターホンを鳴らす作戦に。
一瞬落ちそうになるもネズミ梯子で何とかちゃいまうを鳴らすことに成功した一行は、ほっとしたのもつかの間、掃除のおばちゃんに見つかってしまい、これまた魔女たちに踏みつぶされそうになるのと同じ展開で、ホウキでビシバシ引っ叩かれそうに。
序盤はこんな感じで、ネズミの可愛らしいお尻や人間のような巧みな表情でほっこりさせると共に、ドキドキの展開となっていました。
ここから形勢逆転するためにあらゆるミッションを敢行。
下の階に宿泊している大魔女の部屋に侵入し、ネズミニナールなる薬を奪って元に戻るための薬を調合することに。
祖母の編みかけの手袋の中に入り、下の階にたどり着いた少年ネズミは、大魔女の飼っているネコに気付かれぬように、また、ベッドの下に張り巡らされたネズミ捕りの罠に引っかからないように、抜き足差し足忍び足でネズミニナールを奪取。
編みかけの手袋の中にクスリを入れて脱出成功かと思いきや、大魔女に掴まれ怪しまれてしまいます。
ホテルの支配人がやってきたことで危機を脱しましたが、大魔女は祖母の姿を見て何か思い出そうとしていました。
次なる作戦は、このネズミニナールを魔女たちに飲ませてネズミにさせることで一掃する作戦。
最初に逃げた通気口から厨房に向かい、彼女たちが召し上がる豆スープの中にネズミニナールを混ぜて飲ませることに。
おたまにぶつかって薬を落としそうになったり、シェフに見つかりそうになりますが、見事に混ぜることに成功。
人間が見たネズミの視点よりもネズミたちの視点で描くことで、ホテルという空間が巨大化し、映画として映える見せ方になっていたと共に、些細なアイテムがネズミにとって助けになったり障害になるという様々なトラブルやハプニングが見ていく毎に楽しくなっていきます。
終盤での大魔女との接戦も、これまでを総括した様な見せ方になっているので是非ご自身で確かめてほしいですね。
とはいえ不満も。
ここまで見どころや魅了された部分を解説してきましたが、自身の感想はといいますと、やはり原作が児童文学ということや、子供目線で描いたお話ということもあって物足りない内容でした。
大人が見ても怖くなるような魔女の容姿だったり、ネズミならではのアクションだったりと見せ場はたくさんあるのですが、どれも平凡に終わってしまうようなハプニングと解決方法で、単純にネズミたちに訪れる危機感が弱いなと思ってしまいました。
序盤でのホテルに行くまでの流れも、もう少しコンパクトにして説明すればいいのに、本題に入るまでが長いと感じてしまいましたし、少年がネズミになってしまうまでの流れは見ごたえがあったものの、ネズミになってしまったことがそこまで不利になっていない点なども、その後訪れるトラブルが平凡なものに見えてしまった原因というか。
祖母にネズミになってしまったことを伝える件では、祖母がわかりみが過ぎるんですね。
ネズミが人間の言葉をつかえるという利点と、親友が魔女によってニワトリに変えられてしまったという祖母の経験から、孫がネズミになってしまったことにいち早く気付くんですけど、ここにもう一つ問題を付け加えるとよかったのかなぁと。
人間を味方にすることに対しての難しさを見せることで、ネズミになってしまったことがどれだけ不利な状況なのかを演出してほしかったですね。
とはいえここはそこまで時間をかける必要はないかもしれないんですが、もっと問題なのは魔女たちにどうやって薬を飲ませるかという作戦と、作戦実行の際に起きるトラブルの少なさですね。
実はスープにクスリを混入させる件よりも、ネズミニナールを奪う時の方がヒヤヒヤするんですね。
順番的にヒヤヒヤするのって逆の方がいいんじゃないかなと。
ネズミニナールを奪う際は、猫がいるわけだからトムとジェリーばりに追いかけっこするって見せ方も面白いのになぁとも思いましたけども。
何より薬を盗む際に大魔女を登場させてドキドキさせるよりも、彼女が厨房に出向きスープにあれこれ注文を付ける際に見つかってしまって厨房で大乱闘を起こす。
その際に知らぬ間にネズミニナールがスープに入っていて、少年ネズミはとりあえず逃亡。
ディナーの際に魔女たちがどんどんネズミになっていくというサプライズの方が、展開としては面白いのかなぁと。
この魔女たちがスープを飲む件も、飲んだ後にネズミ化してしまうシーンは、「キングスマン」の威風堂々の音楽に乗せて敵兵たちが吹っ飛ぶアレを思わせる演出で楽しいんですが、祖母とネズミたちはそうなるのをテーブルで待ってじっと見ているだけという絵面になっていて、どこか面白みに欠けるんでんすよね。
最終決戦となる大魔女の部屋のシーンでも、食いしん坊のブルーノがネズミ捕りの罠のチーズを逃げながら頬張るんですけど、そこも設定もこういう土壇場の場面で我慢できないブルーノがチーズ頬張ってる隙に捕まってしまうとかあってもよかったのになぁと。
なんというか全ていとも簡単にハプニングが終わってしまうんですよね。
最終決戦のシーンも、もっと大魔女が有利になる運びを作って、形勢逆転にした方がラストバトルに相応しいというか。
とにかく、せっかくのネズミVS魔女という構図なのに、もったいないなぁと思う箇所がたくさんあった作品でした。
最後に
予想外の結末と謳ってますが、確かに予想外です。
そういう終わらせ方か!とはなります。
一応メッセージ性としては、姿形がどんな存在であれ愛を注ぐことはできるし、見た目の問題じゃないって感じのものだったと思うんですけど、だったら魔女という存在をも包んでくれる愛を示せばよかったんじゃね?と。
エンディングでは世界中の魔女を一掃するために奔走する祖母たちと、子供たちにそれをけしかける姿が描かれてるんでんすけど、単純に魔女を絶対悪に仕立てる終わり方なんですね。
メッセージ性だけを強く捉えるならば、確かに子供たちが嫌いだから全部ネズミにしちゃえって思ってる魔女たちを改心させて、魔女とも共存できる世界って締め方の方が現代的だよなぁと。
まぁあくまで僕が考える着地点てことでご容赦くださいw
とはいえ、ラストの屋内ジェットコースターの見せ方はさすがロバートゼメキスだなぁというアトラクションぶりで、これは楽しそう!って思えるラストでしたね。
あれ、超遊びたいんですけどw
とにかく僕としてはこんな感想になりましたが、親子そろって観るときっと楽しめる作品にはなってると思います。
僕の感想など忘れてご堪能いただければと思います!
・・・ってさすがにムチャかw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10