マーティ・シュプリーム 世界をつかめ

よく映画の感想で「あのキャラ最低過ぎて腹立った、だからつまらない」なんて書く人いませんか?
女に手を出す男とか、モラルのない奴、非常識などなど、実際に自分の周りにいたら不快なキャラが登場しただけで映画全体の評価を下げてしまうパターンです。
気持ちはわかります。
観終わった後は清々しい気持ちで劇場を出たい、非日常を味わうのが映画だ、きっとそんな思いで見たいのに、楽しい気持ちを損ねるキャラのせいで、せっかくの楽しい非日常的空間が台無しになった。
極論「見たいものを見せてもらえなかった」=「つまらない」になってしまうのかと。
でも、クズって人間として最低だけど、フィクションである映画においては魅力的だったりしませんか?
僕の好きな映画「仁義なき戦い」で金子信雄が演じる山守って親分がいるんですけどね、もうめちゃくちゃクズですからw
でも彼がクズなおかげで、菅原文太演じる広能がカッコよく見えるってもんなんですよ。
ただそれは脇役だからそう思える。
今回鑑賞する映画は、主人公がクズ!
卓球王に、俺はなる!という一点突破のせいで愚行を繰り返すという男の話。
冒頭のような感じで映画を見る人にとっては、最低評価を出してしまいそうな予感ですが、そこまでしてナンバー1になりたい背景を見ると、ただのクズキャラ映画ではないものが見えてくる…のだろうかw
アカデミー賞有力候補の呼び声も高い本作、早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「卓球界で最も名高いペテン師」と称され、卓球人気の低かった1950年代のアメリカで活躍した実在の選手マーティ・リーズマンの著書をヒントに、世界チャンピオンを目指す野心家の物語を、サフディ兄弟の兄ジョシュ・サフディの手によって映画化。
卓球の腕は優れているが素行の悪い男マーティが、是が非でも手に入れたい称号のため、大騒動を巻き起こしながらも夢より大事なものをつかんでいくスポーツコメディサクセスストーリー。
本作は「神様なんかくそくらえ」やNetflix映画「アンカット・ダイヤモンド」で知られるサフディ兄弟監督の兄・ジョシュが初めて単独で製作した映画。
第98回アカデミー賞では、作品賞。主演男優賞はじめ9部門にノミネートする快挙を成し遂げており、中でも主演を務めたティモシー・シャラメは、本作での熱演から主演男優賞を受賞するのではないかと注目されている。
そんな本作のクライマックスでは、東京、上野にある恩賜公園で撮影。
経済産業省の補助事業「JLOX+」による「海外制作会社による国内ロケ誘致等に係る支援」を受け実現した背景に、監督のジョシュ・サフディによるある思いがあったという。
日本語の勉強を5年ほどしていたほど熱心な監督は、当時敗戦を受け入れ勉学にいそしんだ日本人たちに敬意を表したい思いがあったそう。
しかし日本のシーンをアメリカで行うことや、日本人のエキストラを集められないことは、当時を生きた彼らに対する侮辱でしかないと感じ、日本での撮影を望んだという。
時を同じくしてジョシュの弟ベニーも、ドウェイン・ジョンソン主演の「スマッシング・マシーン」を製作するために、JLOX+の支援を受け、日本で撮影するという偶然もあった。
そんなサフディ監督が、「君の名前で僕をを呼んで」が公開される前に、自分を高めるため、夢をかなえるためなら努力を惜しまない精神を感じオファーしたのが、本作の主人公を演じるティモシー・シャラメ。
スター街道まっしぐらの中30歳を迎えたシャラメは、主人公マーティを演じるため、前作「名もなき者」のボブ・ディランになりきるための練習と同時進行して卓球を覚えていたという。
他にも、「アイアンマン」シリーズのグウィネス・パルトロウ、「アンティル・ドーン」のオデッサ・アザイオン、グラミー賞受賞アーティストのタイラー・ザ・クリエイター、「キング・オブ・ニューヨーク」のアベル・フェラーラなどが出演、、そしてデフリンピック卓球メダリストの川口功人が主人公のライバル役として出演する。
戦後の日米の勝利への価値観の違いにも注目の本作。
ひたすら利己的に栄光を追い求める男が最後に掴むものとは。
あらすじ
女たらしで嘘つきで自己中。
だけど卓球の腕前だけはピカ一のマーティ(ティモシー・シャラメ)。
NYの靴屋で働きながら、世界チャンピオンになって人生一発逆転を目指す。
そんな中、不倫相手のレイチェルが妊娠、卓球協会からは選手資格はく奪を言い渡される。
万年金欠のマーティはありとあらゆる手を使って選手権への渡航費を稼ごうとするが 。(公式より抜粋)
感想
#マーティシュプリーム 鑑賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) March 13, 2026
マーティ最高!!w
俺たちは!競争に勝ってこの世に生を受けたんだよ!
これ営業マンは必見の映画なんじゃないの?
人間チャンスはそう何度も巡ってこない、だからあの選択をしたんじゃないか、俺はそう思ってる。
久々に頼もしいクズを堪能できたよw pic.twitter.com/qRg68XHnK4
フォーエバーヤング!!
目的達成のためならばどんな手だって使ってやる。
だって、この星の一等賞になるんだ卓球で俺は!を体現したマーティ最高潮~っ!!な金策映画でした!!
以下、ネタバレします。
サフディの映画は一貫してそう。
僕はサフディ兄弟の映画を全然見てなかったんですよ。
だから本作の参考になればと「グッドタイム」を鑑賞して臨みました。
本来なら「アンカット・ダイヤモンド」を見てからの方が良かったのかもしれないけど、本作を見て思ったのは結局どっちでもよかったということ。
というのも、グッドタイムの主人公は、障がいを持つ弟と銀行強盗をするんだけど失敗してしまうところから物語は始まり、逃げ遅れて逮捕された弟を保釈するために、会う人会う人を利用していく。
咄嗟の口車が巧すぎてみんなコロッと主人公にのっかるんだけど、全員不幸になっていく。
そして主人公はある事でようやく目が覚めるというお話。
本作も似たような構造だったんですよ。
というのも。グッドタイム同様主人公がどうしようもない奴で、色んな人を巻き込んでは周囲を不幸にさせていくんです。
だから本作を見ておいて良かったというのが、まず率直な感想。
冒頭でも「不快なキャラだったからつまらなかった」なんて感想はよそうね、なんて言ってましたが撤回します。
これ見る人によっては胸クソ悪いだろうなとw
いいですか、彼が行った愚行を箇条書きで解説しましょう。
- 結婚した幼馴染と不倫、そして子を身籠ってしまうも、無視。
- 友人の父に金を出させてオレンジ色のピンポン玉を作らせる。
- 世界大会の宿泊先が掃き溜めだと会長に文句を言って高級ホテルのロイヤルスイートに泊まる。
- そこに滞在していた女優に強引に電話で口説いて関係を持つ。
- 大会の決勝での敗戦理由を相手のラケットのせいにする。
- 女優の夫でペン会社の社長ロックウェルから持ち掛けられた八百長イベントのオファーを、負けるなんて嫌だとごねて、戦死した息子を揶揄して怒らせる。
- 宿泊したホテルの風呂場の床が抜けて下の階の宿泊人に怪我をさせてしまったが、飼っていた犬を獣医に見せるからと50ドルぶんどる。
- まるでスティングの詐欺みたいな賭け卓球で、40ドルをぶんどる。
- 相手にバレて追いかけられた隙に犬が逃走するが、獣医に見せることなくほったらかし。
- 女優と再び関係を持った際、金無し宿無しを小バカにされた反論で、「俺は最高だから将来も安定」と根拠のない自信を見せる
- 友人の家に泊まらせてもらう、友人の父の車を勝手に借りて壊して戻す
- 女優のネックレスを盗んで売ろうとする
と、このように最初から最後まで主人公マーティは、あらゆる愚行を繰り返すわけであります。
生意気で不遜で自信過剰で自己中心的。
自己肯定感が高すぎで虚栄心だけで人と接する、とにかく薄情な奴。
正直そんな奴と付き合いたくないって思うよね。
それが普通です。
だけど、こいつがなぜそんなことをするのかを、まず忘れてはいけない。
それは卓球の世界選手権に出て優勝すること。
全てはこれだけのために、あの手この手使って金策に走ってるのであります。
そもそも金がないのは、身から出た錆ではあるんです。
叔父の靴屋で未払いの給与を、脅して持っていったこと。
卓球協会の会長に文句言って泊まったホテル料金が高すぎて罰金1500ドル払わなくてはいけないこと。
借金のせいで世界選手権が行われる日本に行くための渡航費がどうしても必要だったのであります。
しかしまぁ色々よくそんな言い訳がでるものだなと、呆れを越えて感心した人も多いんじゃないでしょうか。
幾多のピンチも彼は暴力で解決することをまずしない。
まず言い訳をさせてくれと自分の話を聞いてもらうように訴える所から始まる。
真実だったりその言い分に若干の正当性がある言い訳もあったものの、結局は自分が蒔いた種によって降りかかった不幸から逃れるための一時的な策でしかないんですよ。
ただ、言い訳がホンと巧いw
そうしたピンチが過ぎ去れば、次の金策と、女優に媚びを売ったり社長にもう一度掛けあってみたり、犬を見つけた謝礼をたかったりと、妊婦のレイチェルを引き連れて奔走するんですね。
練習そっちのけで金集めに走るマーティが面白いのは、こうした中で舞い落ちるチャンスをマーティはことごとく掴めないこと。
神さまはちゃんと見てると言いたいのか、因果応報とでも言いたいのか、つくづくチャンスを逃してるのがまた面白いんですよ。
もしホテルで預かった犬を、ちゃんと獣医に見せていたら謝礼をたんまりもらえたのだろうか。
詐欺まがいの賭け卓球などせず、正々堂々とやれば400ドル稼げたのだろうか。
戦死した息子を小バカにしなければ社長からのオファーをもらえたのだろうか。
素直な気持ちを述べれば女優のネックレスも金にできたのだろうか。
協会の会長に生意気な態度をしなければいいホテルに泊まれたのだろうか。
全てはたらればでしかありませんが、幾度となく金を手に入れるチャンスがあったにもかかわらず、手の中からこぼれていくのです。
こうした方が物語的に面白くはなるけれど、人生において「チャンス」ってそんなにたくさんないんだよと言ってる映画でもあったのではと思うんです。
結局シャラメの話になる。
ティモシー・シャラメが抜擢された理由が、「あいつ貪欲そうだな」と。
監督はめっちゃ見る目あったと思うんですよ。
ティモシ―の前作「名もなき者」で彼が語ってたんですけど、そもそも彼はオーディションで身長が足りないとかルックスがどうとかが理由で不合格ばかりもらって凹んでたそうです。
そんな中舞い込んできた「君の名前で僕を呼んで」は、言い方があれですが時代的に受けの良い内容で、本人はそれを「利用する価値がある」と見込んで出演したんだそう。
そう、彼は数少ないチャンスを見逃すことなく掴み、アカデミー賞主演男優賞にノミネートを果たすことで、俳優としての道を切り開いたのであります。
また、「名もなき者」で俳優組合賞を受賞した時のスピーチで、僕はこれまで賞を獲り続けて名を残したたくさんの有名な俳優と同じ位置に立ちたいと、俳優組合賞だけでは満足してないという貪欲さをアピールしたのであります。
彼がマーティを演じられたのも、マーティ自身が貪欲で決して自分を卑下しない、幾度も拒絶されても喰らいつくタフな精神でなければ、道は切り開かれないと分かっているからだと思うんです。
要するにマーティ=ティモシーだったということ。
監督はティモシーのそうした貪欲さを見抜いて抜擢し、結果プロ級の卓球の腕をマスターして臨む根性と、饒舌なセリフ回しでマーティ像を作り出すことに成功したと。
自分の話ですけど、こうして毎週ブログを書けるのも、1番になりたいからって欲があるからだと思ってます。
何を持って1番なのかはわかりませんが、とにかく1番になりたい。
それを嘲笑う人もいます。
でも、俺が好きなドラマ「プライド」でキムタク演じる里中ハルが「ナンバーワンも目指したことのない奴がオンリーワンとか語ってんじゃねえよ」というんですよ。
「世界で一つだけの花」の大ヒット後ってのもあって入れたセリフだと思うんですけど、ナンバーワンにならなくていい元々特別なオンリーワンてのは、ナンバーワンを取ったSMAPだから言える言葉であって、頂点を極めようともしない奴が俺流で満足してんじゃねえと。
別に1番を取れって話じゃなくて、やるからには1番を目指すことがデフォルトなんじゃないの?と。
俺の話ばかりですいません、今度ポッドキャストを始めまして、本作の感想も喋る予定なんですけど、これもやっぱり「やるからには1番取るっしょ」って気合いでやってますんで夜露死苦!!w
・・・話がそれましたが、彼が演じたからこそ、この「何が何でも卓球で勝つために渡航費を手に入れる」ってマインドのキャラがマッチした作品だったのではと思うんです。
またね、本作は2時間半もある長尺映画なんですけど、これがまったくダレない。
ず~っとテンションが高い物語でもある。
冒頭から秀逸で、レイチェルと靴屋のバックヤードでエッチ始めた途端、無数の精子が胎内を泳いで卵子に到着するまでのシークエンスをタイトルバックに使うという、笑うしかないオープニング。
これって、俺たち競争で1番になったからこの世に生を受けたんじゃない?ってメッセージで、だからもっと欲深く1番をつかもうよ、勝利を掴もうよって話だと思うんですよ。
で、1番を掴もうとする奴は大体テンション高いって感じで、物語が進むわけですよ。
エッチの後はあっという間にロンドンで行われた世界大会で、1シーン1シーンがテンポよく描かれて、あっという間に卓球仲間との卓球パフォーマンス行脚、帰宅後に叔父とのトラブル、レイチェル妊娠発覚、ホテルの風呂場崩壊、賭け卓球と、どんどん場所が変わって進んでいく、ものすごくテンポのいい内容だったんです。
それこそ今はTiktokを始めとしたショート動画が流行ってることもあり、1シーンをできるだけ短くして繋いで持続性を出す映画もあるんだけど、本作はそれを意識しておきながら「ただ絵をつないでる」だけじゃない話法になってた気がします。
音楽に関しては、50年代の話なのになぜテクノポップ?と疑問を持った方も多いんじゃないでしょうか。
これは俺も知らなかったんだけど、そもそもこの映画には裏設定があり、80年代のマーティが孫を連れてティアーズ・フォー・フィアーズのライブを聞きながら、若者たちの結果に対する理解不足を回想しながら考えている、らしいです。
監督も言ってましたけど、ハングリー精神の無いサイレント世代に対して、第二次世界大戦後を生きた若者たちが勝利への飢えをどうやって見出していたかを知ってほしい、みたいなことを本作で描いたそうな。
最後に
色んな文脈で語れる気がする「マーティ・シュプリーム」ですが、敗戦国の日本が渡航の許可が下りて初めての国際大会で掴んだ勝利って、相当なモノだったと思うんですよ。
それをちゃんと映画の中でパッケージしたサフディの腕は見事だったと思うんですよね。
あの熱の中、マーティはそれでも勝利を掴みたいとチャンピオンに本気の試合を挑むって、俺は絶対できない。
てか誰しもが空気を読む。
結果的に日本人の観客が求めた展開になったけど、クライアントに目を付けられたらもう卓球どころじゃないだろうと。
それでも「勝利」を掴みたくて挑んだマーティが流した汗は眩しかったですよ、ええ。
な~~んであんな奴を応援したくなっちゃうのか。それはきっと、自分には決してできない芸当を成し遂げようとしたからだと思うんです。
恥もプライドもへったくれもない、口八丁手八丁をやってきた彼が、何よりも臨んだことを本音で言った。
そして勝利を掴んからこそ、次の世代の誕生に喜びひとしおだったんだろう、ようやく成長したんだろうと。
フォーエバーヤングだと思ってた彼も、父親という称号を手に入れたわけですよ。
あそこで勝利できなかったら、父親にもなれず同じことを繰り返したんでしょうね。
サタデーナイトライブのコント内での出来事、バレエとオペラを敵に回すような失言、カイリー・ジェンナーとのラブラブな姿など、何かと世間を騒がせることが多くなり、叩かれることばかりの彼ですが、きっと彼はそのことに屁でもないと思います。
故に弁明も言い訳もしてませんし謝罪もしてません。
きっと言わせておけばいいくらいの気持ちですよ。
そんなことより彼はアカデミー賞の主演男優賞が欲しい、アカデミー賞作品賞が欲しい、何度も何度も俳優部門にノミネートして「偉大な俳優」になりたい。
そう思ってるに違いない。
俺はいつかティモシー・シャラメが、ティミーが、その目標を達成する日が来ると願ってます。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10
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