モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ミッキー17」感想ネタバレあり解説 ポンジュノらしいブラックユーモア満載のSF映画。

ミッキー17

今、従業員退職型の倒産が相次いでいるそうです。

どういうことかというと、従業員が退職したことで人手が足りず、会社が倒産してしまったケースが増加していると。

 

職業別だとサービス業がトップで、賃上げや待遇改善に消極的な企業が従業員から見放されて倒産したのではないかと。

ネットでも人を安く使っているからこうなるとか、代わりはいくらでもいるんだと言われた20年前から、今度は代わりの会社はいくらでもある時代になったってわけですね。

 

 

今回鑑賞する映画は、まるでブラック企業のような場所で何度も「死んで蘇る」仕事をする男の物語。

代わりの会社がいくらでもある時代になったのに、未だ地獄の社畜扱いする会社もあるんですねw

 

パラサイト半地下の家族」の世界的高評価によって再びハリウッドに挑戦したポン・ジュノ監督ですが、これまで「スノーピアサー」に「オクジャ」と、僕的には彼のハリウッド資本映画は、あまり相性がよくありませんw

果たして面白いのでしょうか。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

半地下からどん底へ。

「パラサイト 半地下の家族」でカンヌ国際映画祭パルムドールとアカデミー賞作品賞の2冠を達成したポン・ジュノ監督が、エドワード・アシュトンの小説「ミッキー7」を原作に、2013年に発表した初の英語作品『スノーピアサー』同様、権威主義的な支配者に抑圧される近未来を、風刺的かつブラックなユーモアで描き出したディストピアスリラー。

 

「何度も生まれ変わる仕事」によって過酷な日々を送る羽目になった主人公が、もう一人の自分が出現したことを機に、人生を取り戻すための逆襲に挑む姿を、深さと奥行きのあるストーリー展開で描く。

 

製作と配給を手掛けるワーナー・ブラザーズとプランBから原作を渡されたポン・ジュノ監督は、身体が死ぬたびにもう一人の自分が印刷される「ヒューマンプリンター」というユニークさと、人間を紙きれとして扱う悲観性、そして搾取する側とされる側による格差構造を得意とする監督の作家性がマッチしたことで依頼を快諾。

笑えて痛快で胸がスカッとする作品に仕上がった。

 

主演のどん底から逆襲をたくらむ主人公ミッキー役を、「ザ・バットマン」、「TENET テネット」と大作に抜擢され続けているロバート・パティンソン

他にも、ミッキーを信頼できる仲間ナーシャ役に「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」のナオミ・アッキー、ミッキーの友人ティモ役に「ミナリ」、「NOPE」のスティーヴン・ユァン、強欲な支配者マーシャル役に「アベンジャーズ」シリーズ、「哀れなるものたち」のマーク・ラファロ、そしてマーシャルの妻役として「ヘレディタリー/継承」、「陪審員2番」のトニ・コレットなどが出演する。

 

資本主義における階級社会から未だ改善されない現代。

独裁者によって搾取されまくった主人公に、未来はあるのか。

 

 

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あらすじ

 

失敗だらけの人生を送ってきた男ミッキー(ロバート・パティンソン」は、何度でも生まれ変われる“夢の仕事”で一発逆転を狙おうと、契約書をよく読まずにサインしてしまう。

 

しかしその内容は、身勝手な権力者たちの命令に従って危険な任務を遂行し、ひたすら死んでは生き返ることを繰り返す過酷なものだった。

 

文字通りの使い捨てワーカーとして搾取され続ける日々を送るミッキーだったが、ある日手違いによりミッキーの前に彼自身のコピーが同時に現れたことから、彼は反撃に出る。(映画.comより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

何度も死んでクソ仕事させられてもメンタルやられないミッキー凄いw

俺なら果たしてどうしただろうか。

しかしポンジュノは、ハリウッド資本だとどうもキレがない。

もっと攻めた題材でやるべきだったのでは。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ

氷で覆われた惑星ニブルヘイム。

崖から落ち防護スーツの機能も故障した状態で仰向け状態のミッキーは、まだ死んでないことに気付く。

たまたま飛行中の操縦士で悪友のティモが助けに来たかと思いきや、「死ぬってどんな気分だ?」とニヤケ顔で聞いてくる。

 

そう、ミッキーはプリンティング機能によって死んだらすぐさま生き返ることができるのだ。

体が動かない状態のため、このままではクリーパーと呼ばれるアルマジロとクマムシを合わせたような巨体の生物に食われる羽目に。

このままペロッと飲み込んでくれ、痛いのだけは勘弁だ。

 

物語はミッキーとティモが地球にいた頃の話へと回想する。

ティモの口車に乗せられマカロン屋を開くも見事に事業に失敗。金貸しのダリウスという男から脅されていた二人は、いっそこのまま地球から逃げちまおうと画策する。

 

惑星ニブルヘイムの植民化計画を知ったミッキーは特に躊躇することなく応募。

しかし彼が応募したのは「エクスペンダブル」だった。

エクスペンダブルとは、人体複製≪プリンティング≫という機械を使って、何度もクローンとして蘇り、仕事を務める役職。

地球では倫理的にも宗教的にも時期尚早との判断が下されたが、宇宙ならOKということでこの役職が募集された。

 

内容は、人間が放射能を浴びながら宇宙船外でどれだけ活動できるかや、ニブルヘイムに真っ先に降りてウィルスがないかのチェック、他にも惑星に着くまでの間に様々な実験材料として何度も何度も死んでいた。

 

元政治家で今回の計画のリーダーであるマーシャルと妻イルファ、そして彼らを支持すしている志願者らは、約4年間宇宙船内で生活を送ることに。

全員分の腹を4年間満たせるほどの食糧がないため、彼らは無駄なカロリー消費を制限させられることはもちろん、食事も決まった量しかない。

しかも大して統率力もなく口が上手いだけのマーシャルを支持する連中にロクな奴はおらず、何度も死んではクソ仕事をさせられるミッキーは、心身ともに疲れ果てていた。

 

そんな彼の癒しは、この生活中に出会った女性ナーシャだった。

これまでクソみたいな人生を歩んできた彼にとって、これほどの生きがいはないというほど愛を与えており、カロリー消費などお構いなしであらゆる体位を試しながら体を重ねていった。

 

ある日の探検のこと。

ミッキーは、ティモやエージェントのジェニファー、カイとニブルヘイムの地表を探索することに。

するとそこには冒頭でミッキーを食べようとしたクリーパーの子供が穴の奥で潜んでいた。

危険分子と見做した一行は、すぐさま銃で殺処分しようと試みるが、頭上の氷が落ちてしまいジェニファーは命を落としてしまう。

 

恋仲だったジェニファーの死に悲しむカイを慰める余裕もなく、ミッキーは自分の役目を果たせずにいたことでマーシャルから叱責をされます。

 

そんな未知との遭遇エピソードから物語は冒頭に戻り、まもなく命が失われる瞬間を目の当たりにするミッキー。

しかしクリーパーは、彼を崖から引っ張り出し、助けるのでした。

 

何とか宇宙船に戻ることができたミッキー。

クタクタの状態でベッドに横たわると、そこにはもう一人の自分がいました。

そう、ミッキー18です。

 

自分が二人存在することは、犯罪であることを説明される。

かつて地球でクローン技術が議論された時、メンバーだった一人が勝手にクローンを生み出し、もう一人の自分をアリバイに使ってホームレスを殺害していたのです。

そのため複製された状態で生存していることは「犯罪」と見做されます。

 

どことなく優しい面影のミッキー17に対し、凶暴的な面が露わな18はもっていたダンベルで殺そうとします。

焼却炉まで連れていき処分されそうになった17は、間一髪で逃げられましたが、そこには悪友のティモが仕事をしており、前からムカついていたと語る18は、彼を殺そうとします。

ミッキーが二人いることを知りながら助けを求めるティモは、他の人間がやってきたことで事なきを得ます。

 

やがてマーシャルの広報担当が現れ、17をマーシャルとの食事に招待することに。

まともな食事もできなかったため、目の前のステーキを頬張る17。

そこにジェニファーを失ったカイも加わり楽しい食事になるかと思いましたが、17が食べていたのはまだ開発段階の人口肉。

思い切り嘔吐した17は、鎮痛剤を打たれ何とか命を保てましたが、歩ける状態ではないため、カイに介抱されることに。

 

18を17だと思い込んで部屋を訪れたナーシャに、17は事の真相を話したい一心だったが、カイに引き留められ彼女の部屋で休むことに。

カイは淋しさを埋めるためにベッドに誘いますが、17はそれを拒否して部屋に戻ります。

するとナーシャは17を見るや否や飛びつき興奮。

何と18と共に麻薬を打ってハイになっており、好きな人が二人いるんだから3人でしようと試みます。

 

素直に受け止めきれない17と素直に受け入れる18。

そんな3人の前にカイが部屋を訪れたことで事態は急変。

カイはすぐさま委員会にこのことを報告するため部屋を飛び出しますが、ナーシャが阻止します。

 

一方ミッキーの2人は、この状況を自分たちの思うままにするためにマーシャルを殺そうと言い出します。

TVに映っていたマーシャルは岩を真っ二つに切って、そこに自分と妻の名を刻むというパフォーマンスをクルーの前で行っていました。

銃を持ってマーシャルの元へ向かう18を、17やナーシャは必死に止めようとします。

 

マーシャルが岩を切ると小さな穴が。

そこからまだ小さいクリーパーが飛び出してきたことで事態は急変。

パニック状態の中、18はマーシャルめがけて発砲しますが、急所を外してしまいます。

 

この騒動によってミッキーが二人存在していることに怒りをあらわにしたマーシャルは、かかわったナーシャと共に監禁。

 

ナーシャはなぜクリーパーに食べられずに助かったのかを17に聞きだすと、助かったのは複製体としてまずかったからではなく、単純に救われたのでは?と推測。

クリーパーは決して人間に害を与えるクリーチャーではなく、平和的な生物であることに気付きます。

 

そこにティモが現れ、この星まで金貸しのダリウスの手下がやってきてることを告げられ、17の死体をビデオに収めないと殺されると告げます。

嫌々ながらも受け入れようとする17を救うため、18とナーシャは阿吽の呼吸でティモを制圧。

しかしエージェントに再び捕まった一行は、小さいクリーパーの泣き声を聞いて船の周りを囲っているクリーパーをガスで殺そうと画策するマーシャルに、必死の抵抗を試みます。

 

聞く耳を持たないマーシャルは、焼却炉にもう一体のクリーパーをつるした状態でナーシャの口を封じ、さらに記憶データを消去されたことで命の替えが効かないミッキー2人に爆弾を括りつけ、クリーパーの尻尾を100本集めるよう命令。

負けた方が死ぬという罰がついたミッションに挑むことになった二人は、この事態をどうやって収めるのか。

 

・・・というのがあらすじです。

 

ポンジュノにしては緩い。

人間が生息できるかを確かめるために何度も実験体にされるミッキー。

何度も蘇るので、科学者たちもどこか雑な扱いをしてる描写が映ったりするし、ミッキーによる力のこもってないナレーションも相まって、ほんとにしんどそうだしとにかく可哀想。

 

そんな悲哀が充満してるのに、全裸丸出しで演じるロバート・パティンソンを見て笑えてしまうのが本作の面白い所。

 

正直ちゃんと資料を読まずに志願しちゃうからそんな目に遭うんだよ、自業自得じゃんと言ってしまえばそれまでですが、それでもプリンティングという画期的な機械があるからこそ成立する話で、実際は人権なんて無視した設定なわけですよ。

人の死も慣れてしまえばこんなもんなのかと、つい笑ってしまった自分を呪いたいですw

 

物語の内容としては非常にわかりやすい構図で、何も知らされずブラック企業に務めることになったミッキーが、ごみのように扱われてながらも周りの人が暮らしやすくするために必要なピースになっている。

しかしボスであるマーシャルはそんなことお構いなしに、自分の手柄を掴むために集会で何度も歌って演説して周りを騙して独裁ぶりを発揮する。

 

運がいいのか悪いのか自分が二人いる状態になったことを皮切りに反旗を翻そうとする様は、「パラサイト」や「スノーピアサー」など、階級社会や格差社会に一石を投じようと試みる社会的な面を見せているのかなと思ったら、監督曰くどうやらこの物語は「労働者階級の人間が意図せずしてヒーローになっていく」ものにしたかったそうな。

 

そうすることで、何度も命を軽んじられてしまう若者を通じて「命の価値」を見つめることにもなるし、それがやがて社会意識へつながっていく役割を果たした作品になっていたのではないかと。

 

命の価値で言うと、劇中に登場するクリーパーにも通じる話でしたよね。

彼らは人間よりも先にニブルヘイムに生息していた、いわば先住民に位置するキャラ。

そんな彼らを勝手に敵視してガスで一掃しようと企むマーシャルの愚かなことよ。

現代社会でも色んなとことで排除しようとする動きが頻繁に報じられてますけど、経済がどうだ、それは不法だとか言う前に、まず命の価値を考えませんかねってことですよ。

 

その辺はやはりポンジュノっぽさを感じたお話でしたね。

 

 

しかしですよ、どうも全体的にキレがない。

韓国映画を作っていた時の鋭い問題提起のようなモノもなければ、2時間17分もかけてやる話とは思えない出来。

 

冒頭にターニングポイントを見せてから回想で事の発端を描く始まりをする映画をよく見かけますけど、あれのいいところはターニングポイントまでのスピードが軽快に進むから面白いわけですよ。

 

でも本作にはそれがない。

しかも置かれたターニングポイントがそこまで重要な場所ではなく、要はそこから話が始まるだけのもの。

 

地球でこういうことが起きました、それでこんな目に遭いました、宇宙生活は大変だけど愛する人がいますと、これらを一個ずつ丁寧にナレーション付きで説明するんですよね。

長いわw

ダイジェストで十分だろ!

 

ここまで語ってようやくタイトルバックですよ。これは怠いです。

前から思ってましたけど、韓国映画って韓国映画特有の物語のスピードってのがあると思うんですよ。

いくらハリウッドを意識した大作でも、物語のテンポはハリウッドナイズされてないんですね。

それはそれで特色だからいいとして、一応ハリウッド資本で作ってるんだからそこの辺りもハリウッドナイズしてほしいんですよ。

何をチンタラチンタラ話を語ってるのさって。

 

韓国映画を好ましく思えないのはこうした丁寧な話運びとテンポの悪さだったりするんですけど、そこは俺の嗜好ってことで百歩譲って良しとしますわ。

でもですよ、中盤のエピソードがことごとくつまらないんですよ。

 

本筋に入るのが、17と18が対面するところから。

ここからティモを殺そうとする18、ナーシャと3Pすることになるシーン、そしてマーシャルとの食事シーン。

これ全然後に活かされてない。

 

一応ティモを殺そうとするシーンでは18の狡猾な面を見せようとしてるんでしょう。

ナーシャと3Pはナーシャがどれだけ彼のことが好きなのかを見せようとしたんでしょう。

マーシャルとの食事シーンは、如何にマーシャル夫妻がクソなのかをみせようとしたんでしょう。

もうどれも的がずれてる…。

 

18の狡猾な面を見せたいのなら第3者を利用するのではなく、17に対して狡猾な面を見せた方が良いと思うんですよ。

ナーシャがどれだけ好きなのかは、後の回想で十分伝わるんですよ。

マーシャル夫妻のクソな部分はクライマックスで十分伝わるんですよ。

 

一番大事なのは17と18の対立なんですよ。

良い性格の17がどうやってバレないように複製体と共存するか、それを無視して勝手なことばかりする18をどう制御するか、そこにナーシャが加わることでややこしい事態、そういうドタバタ的展開を繰り広げていきながら、17と18の絆を深める描写の方が絶対大事だと思うんですよ。

 

でないと、18が最後命を絶つのにカタルシスが生まれないんですよ。

クリーパーの尻尾を百本集めるミッションを課せられて、外に放り出された2人でしたけど、機能していたのはほとんど翻訳機を持っていた17だけですよ。

で、勝手にマーシャルと自爆する18を見たって何の感情も生まれないですよ。

 

そこにカタルシスを持っていくのなら、やっぱり17と18の掛け合いをもっと増やすべきなんですよ。

どうでもいい寸劇はいらんのですよ。

 

もっといえばティモやカイといったサブキャラが活かされてないので、使うならクライマックスで機能するような設定にするか、あとはもうモブキャラでいいです。

寧ろティモはマーシャルの従順な手下になってた方が、サイドストーリー入れる必要もなくなるのでスッキリしますね。

 

中盤ばかりはさすがに退屈だなぁと頭を抱えました。

 

 

最後に

2億ドル費やして作ったこともあり、VFXに関してはオクジャ以上にクオリティの高い作品だったように思えます。

しかし先に公開された北米の初週は2000万ドルに満たない数字になったようで、大爆死確定です。

韓国映画として作ったら「面白い!」ってまだ褒めたかもしれませんが、やはりハリウッド資本でこの程度の脚本ではそりゃ客も入んないよなぁと。

 

これでまたポンジュノはしばらくハリウッドで映画を作れないのかなと思うと、残念で仕方ありません。

設定や要素自体は個人的には好きでしたし、楽しみにしてた映画でもありました。

 

しかしハリウッドで作る大作映画には、それなりの方程式ってあると思うんですよ。

韓国映画でやってきたスピード感やテンポは通用しないんですよ。

 

辛口ばかりが続きましたけど、嫌いじゃないんです。

ポンジュノっぽい緩さの中にピリッと聞いたブラックユーモアが、主人公ミッキーの過酷さを和らげる助けにもなっていたので、可哀想だけどどこか笑えてしまう温かさがあった映画でしたよ。

 

しかしクリーパー可愛かったなぁw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10