モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「見える子ちゃん」感想ネタバレあり解説 かわいくて可笑しくて、不気味に怖い幽霊たち。

見える子ちゃん

僕はいわゆる「霊感」がないので、幽霊の存在を全く信じておりません。

一度金縛りのような現象にあったことはあるものの、それが霊的なことだとも思ってませんでした。

 

しかし霊感のある人は大変なようで、部屋に入るや否や「いる」とか言うし、眠るときも「死んだおばあちゃんが…」と遭遇するようで。

慣れてるならいいものの、見えたり感じ始めた当初はストレスフルで大変だったろうなと。

 

今回鑑賞する映画は、まさに「霊感」に目覚めてしまった主人公が「見ないふり」をして暮らすけど、友人が大変な目に遭っちゃったからさぁ大変というお話。

 

SNSとかに張り付いてるとどうしても「スルー出来ない」内容にイライラしたり、怒りをぶつけたり、お気持ち表明してしまう人を見かけますが、そんな時こそ彼女のようにスルーできたらいいな、そんなテーマがある…わけないと思いますが、ホラーコメディだそうなんで大いに笑えたらなと思います。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

SNSで発表された第1話が話題を呼び、現在も「Web comic アバンダ」で連載中の泉朝樹原作の同名コミックを、「残穢 ざんえ ー住んではいけない部屋ー」や「忍びの国」を手掛けた中村義洋監督の手によって実写映画化。

 

霊が見えるようになった女子高生が、ひたすら霊を無視してやり過ごそうとするも、徐々に「見過ごす」わけにはいかない事態に陥っていく姿を、絶妙なバランスでホラーとコメディを見せていく、全力無反応系エンタテインメント。

 

監督の中村義洋は、「霊は動かさないほうが怖い」というこだわりから、本作では“静のホラー表現”を追求した。霊が動くことで意味を与えてしまうことになるため、この後何をしでかすかわからない状態=静の状態を見せた方が、より恐ろしいという理論とのこと。

また、監督は近年こそホラー映画のイメージだが、ユーモア描写にも定評がある人。

特に伊坂幸太郎原作映画での表現や間は、つい笑ってしまうようなシュールな演出が多く、本作が掲げる「ホラーコメディ」というジャンルにうってつけの存在であることは間違いない。

 

そんな「霊が見えてしまうけどスルーしてしまう」主人公・四谷みこ役を、「すずめの戸締り」、「推しの子」の原菜乃華が演じる。

他にも、親友・百合川ハナ役を「おとななじみ」の久間田琳加、霊が見える女子高生・二階堂ユリア役をインフルエンサーのなえなの、生徒会長・権藤昭生役を、「【推しの子】-The Final Act-」の山下幸輝、荒井先生役を「妖怪人間ベラ」の堀田茜、みこの母・透子役を「マスカレードナイト」の高岡早紀、代理の先生として赴任する遠野善役を「言えない秘密」の京本大我、そしてみこの父・真守役を「ゴールデンスランバー」、「決算!忠臣蔵」の滝藤賢一が務める。

 

恐ろしさと笑いが同時に攻めてくるという難易度高めのホラーコメディ。

選ぶのは、「無視」か「友情」か。

彼女はどちらを選ぶのか!?

 

 

 

 

あらすじ

 

ある日突然「霊」が見えるようになった女子高生・みこ(原菜乃華)。

ヤバすぎる霊たちに囲まれたみこが選んだ生き残り術は「見えてないフリ」。

 

親友のハナ(久間田琳加)に霊が憑いても、同級生のユリア(なえなの)に見えるのがバレそうになっても、ただひたすらに全力スルー。

 

しかし、産休に入る荒井先生(堀田茜)代理として遠野先生(京本大我)が赴任してくる。

何やら異様な霊が憑いている影響か、ハナの様子に異変が生じついには倒れてしまう。

 

ハナを助けるため、みこはユリアや昭生(山下幸輝)と共に遠野の謎を追ううちに、驚くべき事実を知ることに。

 

果たして、親友を救い、文化祭を無事に迎えることができるのか——。

”見えてないフリ”を貫いてきたみこが、ついに「無視できない」恐怖に立ち向かう!(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

感想

別に見なくていいか=「無視」をしないで良かった。

普通に楽しめる青春ホラーコメディ。

怖さや女優たちの可愛さよりも、伏線回収に泣いてしまった。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

そりゃ「無視」したくなるよね。

突如「霊感」が働き、幽霊が見えてしまう主人公みこが、親友に憑りついた霊を祓うため、仲間の協力を得ながら、「幽霊が見えてしまう」故の役割を果たしながら成長を遂げ、友情を深めていく青春ホラーコメディ。

 

みこは、子供のころから「幽霊」が見えるわけではなく、突如目覚めてしまうという特殊な役柄の設定。

 

文化祭の出し物をクラス内で決める話し合いで、何度数えてもみこだけ一人多く数えてしまうシーンや、YouTube動画で会得した対処法通りに幽霊を追い払おうとすると、家までついてきてしまうという可笑しさ、さらには昨夜のお通夜に行ったせいで憑りつかれてしまった親友の霊を追い払うために、わからないふりをして神社まで連れていくシーンなど、これまで体験したことないからこそ不慣れな振る舞いや、戸惑いや驚き、そんなたくさん用意されたリアクションを、主人公みこ演じる原菜乃華がコミカル且つフレッシュに演じていたのが好感触でした。

 

 

実際怖い人に遭遇したら無視しますし、無関係の人が怖い人に絡まれていても無視するし、世の中怖いことや気味の悪いことは「無視」するのが一番いいに決まってる。

 

しかし、親友がもし怖い存在のせいで危険な目に遭っていたら、あなたなら「無視」しますか?って話です。

親友とはいえ他人と割り切れれば、そのくらい自分で対処すべきって案件で考えられるならまだいいけど、その親友のおかげで日々の暮らしが楽しいのだったら、新湯が苦しい目に遭ってるということは、自分の日々の暮らしにも多大な影響を与えるわけです。

 

そんな自分を変えるため、親友を助けるために奮闘するみこの成長ぶりを可愛らしく可笑しく、ちょっぴり怖く見せる本作は、まさに原菜乃華、りんくまちゃん、そしてなえなのちゃんの「アイドル映画」として刻まれることでしょう。

 

彼女たちのリアクションはどれも眩しいショットばかり。

特に主人公を演じた原さんの何とも言えない絶妙なリアクションは、つい笑ってしまうものばかり。

初めて幽霊に遭遇した瞬間のとまどい、見えてるくせに「見えてないふり」をしないといけない素振り、実体なのか幽霊なのか判断に困る瞬間、そして実は実体だったと分かった時の焦りっぷり、自分だけ見えてるので怖いリアクションができずに、なぜか泣いてしまうショットなど、とにかくあらゆるばり―ションを駆使して、「もうどうしたらいいのかわからない」表情を見せてくれるのが最高です。

 

他にも親友を演じたりんくまちゃんも、天真爛漫な笑顔が魅力的。

クラス委員長として皆をまとめなくてはいけない役柄ですが、愛くるしい笑顔で諍いを起こさないようなふるまいはもちろん、文化祭の出し物が被ってしまったことによる抽選会で、憧れの存在である生徒会長を目の当たりにして激しく興奮する様、黄金の右手で当選を掴もうと自信満々で臨むも、あえなく撃沈した時の落ち込み様、そして!とにかく腹が減ってパンをむさぼる食いしん坊な姿。

振り返った時に顔中一杯クリームがついている姿は、そりゃもう100点満点です。

 

さらに、今回初めてお目にかかったななのちゃん。

インフルエンサーとして活躍されてるそうで、女優という肩書にはまだ程遠い方なのかなと思いましたが、しっかりお芝居をされていて好感を持てました。

「かまってちゃん」のあだ名で周囲からはみ出されてしまった存在故、どこかしら影を背負ってる感じで、お昼時間もトイレの個室でお弁当を食べる孤独っぷりがまた似合ってしまうほどのかわいい陰キャ的役柄でしたが、見えるはずなのに「見えない」と嘘をつくみこに低い声で「あ??」と発する瞬間や、「またみくびられた」とふてくされてほっぺたを膨らませる表情、除霊をする際に唱える「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九字護身法も様になっていまたし、終盤では巫女の格好をしてえ除霊に挑む姿も見せ、ビジュアル面でも眼福のかわいらしさでした。

 

ラストではお化け屋敷ではしゃぐ3人のショットをスローモーションでみせるあたりから、やはり本作はこの3人の「かわいい」を押したい作品だった、しかもそれは大正解だったなと思った作品でした。

 

監督の演出と伏線回収はお見事。

そんな3人の可愛らしさとおかしなリアクションを撮った中村監督。

 

今回幽霊の「静の描写」にこだわって作ったと話しただけあって、いわゆるJホラーの類を彷彿とさせながらも、それとは一線を画した演出だったように思えます。

 

普通のホラー映画なら、実際する人間に特殊メイクを施して演じさせるのが一般的だと思いますが、本作はそこに「手ぶれ加工」したかのような合成技術で「実体があるのかわからない」ような見せ方をしているのが特殊でした。

 

この方法によって、みこやみくりに見える幽霊は、はっきりと輪郭のない姿で現れ、しかも基本的には「じっと」突っ立っているだけなんですね。

じっとしていることで、その後どんな行動をするか予測ができないため、普段とは違う「怖さ」が画面いっぱいに増幅されていたのが特徴的でした。

 

しかもこれだけじゃない。

体育館で行われた文化祭の出し物のの抽選会のシーンでは、おじいちゃんのような姿の幽霊が、臨月を迎えた女性教師に少しずつ近づいてくる姿を、みこの表情のリアクションをしながらカットバックしてみせていました。

これにより、さっきまで遠くにいた幽霊が、次のカットでは距離を縮めてきており、あと少しで先生に接触してしまうところまでみせていくことで、この幽霊が近づいたら一体何をしてしまうんだろうという怖さがありました。

 

またこれとは違う幽霊の見せ方として、遠野先生に憑いている幽霊も独特でした。

遠野先生には母親の霊が憑いていたわけですが、それまでの「ぼやけた」輪郭の幽霊とは違い、しっかりと黒髪がはっきり見える姿で背後に見え隠れしていたんですね。

こうした差別化によって、他の幽霊とはわけが違う、かなり強力な存在であることが明確に映し出されているのかが理解できたと思います。

 

こうした演出によって、Jホラー味がありつつも一線を画した見せ方が楽しい作品でしたん。

 

伏線回収がさすが。

また本作が面白かった理由の一つに、適度な違和感をキレイに回収してくれる気持ちよさがありました。

 

まず冒頭、クラスで文化祭の出し物を話し合うホームルームのシーンからはじまるわけですが、教室には男子生徒の姿は一人も見当たりません。

ですが抽選会のシーンでは、生徒会長や写真部、後ろでバスケをしている生徒たちは男子ばかりのため、この学校は「共学校」なんだろうと思わされます。

 

そしてみくりと共に姿を見せ、霊が見えるみこに近づく生徒会長が、やたら「人には役割がある」と連呼し、除霊や対処法を色々語る割に自分で何もしないことに違和感を持った人もいたでしょう。

 

他にも、みこが帰宅すると父親が気さくに家族に話しかけたり、母親と口論したみこに「今のうちに謝っちゃいなさい」と諭す場面でも、みこはだんまりを決め込むんですよね。

実際食卓にからあげが並んでいたものの、父親は一緒に食事をせず晩酌をしているなど、これも「在り得る」ことではあるけれど、どこか違和感があるシーンでした。

 

実は彼らもまた「幽霊」だったことが終盤明かされます。

上でも語った「幽霊」の可視化に様々な工夫を施して見せていたのに、実体がちゃんとあるにもかかわらず、実は幽霊でしたと明かすのも、意外性があってよかったです。

 

また、父親とのエピソードがほろりと泣けてくるではありませんか。

みこが取っておいた冷蔵庫のプリンを、父親がみこのものだと知らずに食べてしまい、大喧嘩をしてしまった、その翌日会社で心筋梗塞で倒れ、仲直りすることなくお別れをしてしまった。

そんな心残りを抱きながらも、父親の姿が見えてしまうみこは、ただ「無視」をしていたのではなく、どう顔を合わせればいいかわからなかったことが窺えるわけです。

 

夕食の支度を娘にさせて、自分はひたすら仕事に打ち込む母親が、夕食を作っていなかった娘に「作らないなら作らないと言って」と、母親らしからぬ発言をしており、それを見た自分は「さすがに母親としてどうなのよ」と思いましたが、父親が亡くなって17年ぶりに仕事に復帰し忙しい毎日を送っていたことが判った時には、なるほどと。

 

しかも口論をしたあと、泣きながらPCに向かう母親を姿を見て、そんな事情があったなんて…と当初の考えを改めて見た人もいたはず。

 

 

そんな仕掛けがあったなんてと思ったのもつかの間、ラストには実はこの学校が「女子高」であり、男子生徒は生徒会長含め全て「幽霊」だったことが明かされます。

生徒会長は校内から出られないわけで、色々口は出すが助けはしない理由が判明するんですね~。

 

劇中では「かつて学校で崩落事故があり、そこで亡くなった者たちがなぜ死んだのかわからないまま地縛霊として学校からでられずにうろついている」ことが語られており、悪意のない連中もいれば、危うい霊もいるなど様々。

さらにその事故が文化祭で起きたことから、文化祭間近は幽霊たちがうじゃうじゃ集まってくるため、みこの周りで様々なことが起こるというものでした。

 

これは一本取られました。

まさか生徒会長も幽霊だとは。

しかも彼の名前が「昭生」なんですが、これ、「昭和生まれ」だから「昭生」とのこと。

劇中で「アフター5」とか言ってたのも、ボキャブラリーがそこで止まっている証拠だってことです。

 

 

最後に

幽霊に話しかけたりするとついてきてしまう、だからこそ「無視」するのが一番の対処法。

それを鵜呑みにしたみこは徹底して目を逸らしたり無視することを決め込みますが、親友を助けるために幽霊にした対処法が「無視」。

遠野先生に憑りついた母親の霊の言葉から耳を背ける「無視」ではなく、母親との縁を断ち切るための「無視」をすることで、関係に終止符を打つことが、正しい対処法だったことがクライマックスで描かれます。

 

だからあの時、母親の言葉に耳を傾けてしまった先生を助けるために「先生、鳩がいます」と声をかけたんですね。

先生もそれを理解し、みこの言葉にのみ耳を傾け、母親を「無視」することで母親は諦めるしかなくなり、そこに追い打ちをかけるように神社の神様が祓ってくれる、そんなクライマックスでした。

 

しかもその神社はみこがかつて家族で七五三の際に使った神社。

神さまはみこに味方してくれた、という解釈なんだと思います。

 

 

正直、誰かがお芝居をしている最中、別の演者が棒立ちのままが多かった本作。

お芝居をするうえで「それはないだろ」と普段なら思ってしまうんですが、若手俳優や作品全体の「幼さ」があるからこそ、本作が持つ可愛さや可笑しさが微笑ましく感じたのかなと、肯定的に受け止めました。

 

色々解説しましたが、大体は観賞時に頂いたカードから入れる「公式の考察ページ」から抜粋したものですw

何かわかってる風に書きましたが、そういうことですw

ご容赦くださいw

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10