ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング/M:I8
29年という歳月をかけシリーズ化されてきた「ミッション:インポッシブル」。
当初は「スパイ大作戦」を映画化する名目でブライアン・デ・パルマ監督のもと製作され話題を呼びましたが、シリーズを重ねるにつれトム・クルーズのアクションは限界を超えていきました。
ロッククライミングやロープ1本で移動するブルジュ・ハリファ、飛行機にしがみつくシーンや、スカイダイビングに6分間の水中スタント、そして高い崖からバイクごと落下する圧巻のアクションスタント。
もはやM:Iは、トムのアクションなしでは成立しない領域に達しました。
しかし僕としては「ローグネイション」でクリストファー・マッカリー監督が抜擢されて以降、「フォールアウト」含めアクションメインのトムの要求にあった脚本づくりによって物語に面白みがなくなってしまってきているのが非常に残念。
今回最終章となる「ファイナル・レコニング」の上映時間は2時間45分という、前作169分もあった「デッド・レコニング」よりも長いという辛さ。
前作でもアクションをするための寄り道ばかりに加え、いったい何の鍵かもわからずに追いかけっこをする四つ巴の争いに、僕はただただ疲れました…。
今回もどっと疲れることでしょうが、イーサン・ハント最後の勇姿を目に焼き付ける所存です。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
1996年の1作目から続く人気スパイアクションシリーズ「ミッション:インポッシブル」の8作目。
前作「デッド・レコニング」のパート2として製作されたが、興行不振を理由にタイトルを「ファイナル・レコニング」へと変更。
製作費4億ドルという巨額を投資して製作されたシリーズ最終章は、IMFに所属する腕利きのエージェント、イーサン・ハントがこれまで決断した選択によって導かれる運命を示唆した物語となっている。
今回も主演のトム・クルーズは、沈没したロシアの潜水艦セヴァストポリ号内にあるとされるAI「エンティティ」に近づくため、極限の潜水スタントという危険なミッションに挑む。
他にも複葉機での危険な空中スタントシーンが映るが、なんとトム自身が撮影クルーをこなしながらスタントをしていたとのこと。
そんな俳優の枠を超えた超人技を見せるトム以外にも、ベンジー役のサイモン・ペッグ(ワールズ・エンド/酔っ払いが地球を救う!)、ルーサー役のヴィング・レイムスらチームの常連に加え、前作でチームに抜擢された泥棒グレース役のヘイリー・アトウェル(パディントン/消えた黄金今日の秘密)、「フォールアウト」から出演するアラナ役のヴァネッサ・カービー(ファンタスティック・フォー、CIA長官エリカ・スローン役のアンジェラ・バセット(ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー)、エンティティと共謀する男ガブリエル役のイーサイ・モラレス、彼の部下だったが裏切られイーサン側につく暗殺者パリス役のポム・クレメンティエフ(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーシリーズ)、イーサンの上司キトリッジ役のヘンリー・ツェニーなどが出演する。
様々な苦難を乗り越え、無事暴走したAIエンティティのソースコードとなる二つのカギを手に入れたイーサンたち。
彼らはガブリエルしか知らない潜水艦のありかを無事に探し出し、不可能なミッションをクリアすることができるのか!?
前作のあらすじ
自我を持つ高度なAI通称「エンティティ」が暴走し始めた。
制御するには、ソースコードとなる2つのカギが必要となる。
イルサと合流したイーサン・ハントは、すべてのネットワークに潜入できる脅威を持つエンティティをどの国にも渡さないために、二つのカギを奪取しエンティティを破壊することを誓う。
しかし、ホワイトウィドウに雇われた泥棒グレースに邪魔さをされたり、上司の命令に背いたことでCIAに追われたりと、なかなかミッションを遂行できないイーサンたち。
しかもイーサンがエージェントになる前に出会った男ガブリエルが、エンティティの僕となってカギを奪いに襲い掛かる。
ガブリエルにイルサを殺されたイーサンは、彼女の代わりとしてグレースをチームに招き入れ、ホワイトウィドウが取引をするオリエント急行に潜入し、一度奪われた二つのカギを奪い返すために奔走する。
幾度となく邪魔をするガブリエルと格闘の末、二つのカギを奪ったイーサンは、エンティティのありかを探し出すため、そして世界の均衡を保つために、再び不可能なミッションに挑む。
感想
#ミッションインポッシブル #ファイナルレコニング 鑑賞!
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) May 17, 2025
超楽しかった!!これだよこれ!話が転がりまくって飽きない!!
たったひとつの行動が全てを変えるわけじゃない、小さな選択の連続が人生を決める。
ありがとうトムクルーズ。あなたがし続けた選択は全て正しかった。 pic.twitter.com/rCb6n66Dy9
むっちゃ楽しい!!
前作のようなしょうもない追いかけっこの連続から解放されたことで、話が真っすぐに進みながら、どんどん話が転がってくワクワク感。
異常なまでの曲芸アクションもシリーズ中1のド迫力。
是非映画館でトムちんを堪能しよう!
以下、ネタバレします。
ざっくりあらすじ。
イーサンの元にVHSテープで大統領から指令が下される。
前作から勢力を世界規模に広げたエンティティによって、世界は分断の危機に直面していた。
AIの暴走を制御するために再び協力を依頼されたイーサンだったが、未だ軍事目的のための支配を企むつもりではないかと不安を抱えるイーサン。
まずはベンジーと合流し、一人療養しながらエンティティの毒薬となるメモリを開発中のルーサーの元へ向かう。
イーサンの目論見は、まず潜伏しているガブリエルを見つける事。
そのために服役中の元部下パリスを救出して、彼の手がかりを見つける事だった。
パリスを護送していたCIAエージェントのブリッグスとドガを相手に、イーサンとベンジーは格闘。
ドガに理解を得られたことで、パリスとドガを仲間に引き入れる。
ロンドンのアメリカ大使館に現れると踏んだイーサンは潜入するが、運悪くCIAのエージェントに見つかってしまう。
するとそこへグレースが現れイーサンは救われるが、今度はガブリエルの手下に拘束されてしまう。
捕らえられたイーサンは、ガブリエルからロシアの潜水艦セヴァストポリ号へ向かい、眠っているソースコード「ポドコヴァ」を回収し人質となるグレースと交換するよう命じられる。
そもそもセヴァストポリ号にアメリカが仕掛けたものは、かつてイーサンが妻を解放するために盗んだ「ラビットフット」だった。
自分が選択したことが最悪の結果に繋がったことを責めるガブリエル。
ガブリエルはオリエント急行で鍵を奪うミッションに失敗したことでエンティティに見捨てられたことから、エンティティを支配しようと企んでいたのだった。
だからこそイーサンを巧く利用してポドコヴァ回収を命じたのだった。
落胆していたイーサンだったが、歯に仕込んでおいた毒を飲んで自殺を試みたふりをして、手錠を外された拍子で形勢逆転。
グレースと共に逃走したガブリエルを追う。
するとある場所で「エンティティ」と対話する道具を見つける。
意を決してエンティティとの対話を試みたイーサンは、エンティティが人類を撲滅しようと企んでいること、そして南アフリカに在る「ノアの箱舟」と呼ばれる隔離されたサーバールームへ連れていくよう命じられる。
そしてガブリエルがルーサーのいる場所に核爆弾を仕掛けたことを告げられたイーサンは、ベンジーにセヴァストポリ号の座標をソナーシステムを利用して見つけることを指示し、イーサンは急いでルーサーの元へ向かう。
療養中ルーサーは、ソースコードが入っているポドコヴァに差し込むことでエンティティを妨害するための装置の開発に成功していた。
それをガブリエルに盗まれてしまったルーサーは、ガブリエルが用意した核爆弾の解除に奔走していた。
イーサンは共に逃げるよう促したが、ルーサーはやるべきことをやると告げ、一人解除に勤しむ。
解除して天板を抜いたとしても、周囲数十メートルの爆破を免れることができないため、ルーサーは爆弾の解除と共に命を落としてしまう。
イーサンはわざと政府に逮捕されたが、移送中にCIAエージェントのブリッグスが「1」でジョン・ボイトが演じていたフェルプスの息子であることが明かされる。
復讐のために自分を追っていたのではないかと問われたブリッグスは、それが本当かどうかはこの事件の決着がついてからだと言い返す。
やがて大統領らの前で尋問を受けることに。
これまで正しいことをしたとはいえ、国家への反逆とも取れる行動に上層部は顔をしかめるが、鍵と空母を貸してくれれば絶対エンティティの暴走を阻止できると断言したイーサン。
かつてのCIA長官であり今では大統領となったエリカは、手紙をしたためた後、表向きにはイーサンを拘束すると皆に告げたものの、こっそり裏口からエンティティの阻止のために動くよう命じたのだった。
世界各国にある核爆弾の制御コードが次々とエンティティに乗っ取られていく中、残り72時間という短いタイムリミットの中、イーサンはセヴァストポリ号の捜索に急ぐ。
イーサンは空母ジョージブッシュ号に向かい、深海の中を捜索するためのレクチャーを受ける。
司令官には、別行動でセヴァストポリの座標を探しているベンジーたちから送られるはずのモールス信号を定められた時間に浮上して受信するよう依頼する。
一方ベンジーは、ルーサーが今回のためにもう一つ作った装置でエンティティを閉じ込めるミッションを皆に告げる。
セヴァストポリ号からポドコヴァを回収したイーサンが浮上するはずの場所にスタンバイし、心肺停止状態のイーサンを回収して減圧装置で回復を目指す。
その後エンティティが希望しているノアの箱舟に向かい、ガブリエルにポドコヴァとルーサーが作った毒薬を渡し、彼が差し込むタイミングを見計らってもう一つの装置に閉じ込めるという算段だ。
閉じ込めるには10分の1秒という瞬き程度の早さが必要であり、スリの達人であるグレースに託された。
イーサンがセヴァストポリ号内でポドコヴァ回収を目指していた頃、ベンジーたちは北極海に浮かぶ場所に在るはずのソナーシステムの在り処を探していた。
辿りついた場所に行くと、そこにはかつてイーサンがCIAに侵入しエージェントリストを盗んだ際に責任を取らされ飛ばされていたウィリアム・・ダンローに出会う。
セヴァストポリ号が沈没した12年前に受信を傍受した記録が欲しいとお願いしたが、先にセヴァストポリ号の在り処を探していたロシア軍に先回りされピンチに。
さらに12年前の事故の直後、CIAが記録が入ったフロッピーディスクを読み取る装置を没収しており、記録を探すための道具がないことをダンローから告げられる。
ロシア軍から1時間以内に読み取り装置を開発するよう脅されたベンジーだったが、ダンローはあらかじめ一つだけおかしな記録が入ったディスクに記載されていた座標を記憶しており、それを託されたダンローの妻は、犬にエサを与える名目でグレースと共に外へ向かう。
やがて銃撃戦が勃発。なんとか制圧に成功したベンジー一行は、イーサンがいる潜水艦USSオハイオへ座標を連絡、イーサンが浮上するはずの座標へと足を運ぶ。
セヴァストポリ号内で様々な困難に遭いながらも無事ポドコヴァを回収したイーサンは、心肺停止状態の中グレースに助けられ息を吹き返す。
チームに合流したイーサンは、ガブリエルが待ち構えているであろうノアの箱舟の在り処へ向かい、作戦を実行する。
ガブリエルはまたしても核爆弾を仕掛けており、イーサンにポドコヴァをよこすよう命じる。
しかしそこにキトリッジとブリッグスが待ち構えており、全員を拘束したのち、ポドコヴァが一体何なのかを問い詰めていく。
ガブリエルがあらかじめ用意していた伏兵によって劣勢となったイーサンたちは、ベンジーたちにサーバールームでエンティティを閉じ込めるための準備と核爆弾解除を促す。
単独でガブリエルを追うイーサンは、逃走用の小型プロペラ機にしがみつき、ガブリエルが持つ毒薬を奪おうと格闘する。
刻一刻と核爆弾のスイッチが押される時間が迫る中、無事イーサンたちはエンティティの暴走を阻止し、メモリの中に閉じ込めることができるのか。
・・・というのがざっくりしたあらすじです。
人生は選択の連続
デジタル化された神によって世界が二分にも三分にもなってしまった世界。
今やSNSでのフェイクニュースや先導に唆され、妄信してしまう人たちも多い中、一体何を信じればいいのかわからなくなってしまった社会。
そんな現代社会のいきつく先を投影したかのような状況を救うには、確かなモノを信じるイーサンの様な「影に生き、見知らぬ人たちを助ける」存在が必要なのかもしれない。
何かカッコつけて言ってますが、もうめちゃくちゃ楽しかったに尽きます。
確かにあらすじを書きながら、細かい部分が抜けていることもあり、ちゃんと把握していたかどうかはわかりません。
しかし、前作のように「一体何を追いかけてるのかわからないだけの追いかけっこ」を2時間30分以上も見させられた反省を踏まえたのか、とにかく話がどんどん転がって場面が変化していく展開、小さなサプライズから、絶体絶命の危機、そして限界突破の決死のスタントアクションなど、前作以上に長い2時間45分の尺を余すことなく見どころたっぷりに詰め込んだ本作を、僕は手放しで褒めたいと思ってます。
正直ハリウッド映画は死につつあります。
メジャースタジオが続編ばかりに巨額を投じ、半分も予算を拐取できるようなコンテンツを作れてない、さらにはオリジナル作品を生み出そうという勇気もない状態が続いたわけですから、そりゃドンドン影響は薄れていくし、客だって離れていくと。
それでも、それでも、トム・クルーズという男は、みんなに映画館で映画を楽しんでもらいたいという熱い思いから「トップガン:マーヴェリック」を作り、映画史上最高の予算を投じてこの「ファイナルレコニング」を作り上げたわけです。
並大抵の覚悟じゃないです。
前作だって超赤字だったのに、今回4億ドルもつぎ込んでる。
その覚悟と、これまでずっと支えてくれたファンに向けて最高の娯楽映画を提供したい思いが、本作には詰まっていたと思います。
まず驚いたのが過去作を巧く活用した物語の流れです。
そもそもイーサンはこれまで数々の仲間を失ってきました。イーサンにとっては悲痛な思いだったかもしれませんが、一方から見れば仲間の死はイーサンが招いたモノだと。
こうしたことから本作は「数々の選択が招いた結果」をテーマに描かれていくことが受け取れます。
個人的に一番驚いたのは、CIAエージェントのブリッグスがフェルプスの息子だったということ。
彼もまたイーサンのように選択を迫られ選んだ結果、イーサンを追う立場となった存在。
他にも「3」で元妻ジュリアを救うために盗んだ「ラビットフット」の存在まで飛び出す始末。
確かにアレ、一体何なのか劇中で明かされてませんでしたが、あれはステルスを解除するための装置だったんですね~。あれの初期版がラビットフットであり、結果アレを回収したイーサンのせいで、エンティティが生まれてしまったという「選択の結果」をイーサンは突きつけられるわけです。
こうして数々の選択が招いた結果によって、世界が未曽有の危機にさらされた責任はイーサンにあるのではないかとなるわけですが、時として選択が招いた結果は悪いことばかりじゃない。
劇中登場したダンローは、確かにイーサンのせいで責任を取らされはるばる北極海に浮かぶ場所に飛ばされてしまったわけですが、彼はそこでイヌイットの女性と恋に落ち、穏やかに愛を育みながら暮らしてきたという「結果」が訪れた。
イーサンは出会うや否や「申し訳なかった」と謝りますが、ダンローにとっては、不幸中の幸いどころかあんな息苦しい場所で一生を終えるよりも、最高に幸せな時間を手に入れたことでむしろ感謝していると告げます。
そしてルーサー。
彼は結果的には命を落としてしまうわけですが、イーサンのおかげでここまでたどり着けた、数々のミッションを遂行するイーサンを「正しい男」だと認め、彼についていく「選択」をしたことで今の自分がある、エージェントとしてそれは十分に誇らしいことだとイーサンを励ますわけです。
生きな計らいで毒薬に仕込んでおいたメッセージが流れた瞬間は、いなくなってしまったルーサーからの最後の言葉であることや、「たった一つの行動ですべてが決まるわけじゃない」、「小さな選択の連続が人生を決める」など優しい語り口でイーサンを労うことで涙を誘う、感動のフィナーレでした。
イーサンの姿を見ながら、自分の人生を振り返る時間にもなったことでしょう。
29年という歳月を追いかけてきた僕も、まさか「見続ける」という「選択」の「結果」を、このような形で目の当たりにするとは思ってもみませんでした。
そういった意味で、本作は最高の娯楽映画だったと強く言いたいです。
最後に
アクションもたくさんあってホントに見ごたえありました。
小さな肉弾戦はもちろん、セヴァストポリ号を探すための潜水シーンは音楽を抑えた演出で危機の連続に遭遇するイーサンを、息を飲みながら見守ることになったし、クライマックスでのプロペラ機にしがみつくイーサンは、「フォールアウト」でのヘリ機でのアクションシーン以上に手に汗握る時間でした。
できることならみんなでルーサーを悼むシーンがあってもよかったんだけど、ベンジーやグレース、パリスにドガと既存のメンバー以上に新キャラが増えた今回のチーム、非常に強いチームだったんじゃないでしょうか。
しかしひとつだけ納得いかないことが。
ダンローの家で占拠していたロシアの連中との対峙のシーンで、実はロシアは「合鍵」を持っていることが明かされたじゃないですか。
あれ持ってたのかよ!!!ってなりませんでした?
それ持ってんなら前作は一体何だったんだよってw
ガブリエルもそれを想定してなかったことになりますよね?
そこは伏せてくれないとさぁ、なんだかなぁってなっちゃいましたよw
とにかくシリーズ集大成に相応しい最高の娯楽映画でした。
今回物語を把握したい意味で吹替えを見たんですが、おかわりして字幕版を見ようと思います。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10