モンキーマン
これもう俺のための映画って話ですよ。
なんてたって「モンキーマン」ですからね。
モンキーが「モンキーマン」見てないってことになったら、そりゃモンキーの名が廃るってことで見ないわけにはいかんと。
じゃあ見ます!ってことなんですけど、モンキーマンてなんなん?って。
目にしたのは僕が大好きな「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテルが監督脚本主演てことくらいで、あとは全然情報を入れてなかったんですよね。
アクション映画らしいんですが、そもそも彼ってアクショ映画出身の俳優だと思ってなかったので、ものすごく意外。
彼の出自も反映させた作品なんでしょうか。
アクションのいろんな要素が凝縮されたそうなので、その辺も気にしつつ堪能したいと思います。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
第31回サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で観客賞を受賞し、「スラムドッグ$ミリオネア」や「LION/25年目のただいま」、「グリーン・ナイト」などで主演を務めてきたデヴ・パテルが、監督・脚本・主演を果たした意欲作。
架空のインドの年を舞台に、幼い頃に母を殺されモンキーマンとして殴られ屋として生計を立てていた主人公が、人生をかけた復讐劇に挑む姿を、香港や韓国、ハリウッドのアクションをブレンドして生み出した、新感覚の復讐アクション超大作。
キアヌ・リーヴス主演のアクション大作「ジョン・ウィック」の製作チームと、一人でも多くの人に見てもらいたいという思いからプロデューサーを買って出たジョーダン・ピール(「ゲット・アウト」、「NOPE」)の協力の下出来上がった本作。
「燃えよドラゴン」に影響を受けマーシャルアーツを学んだ経験をもつデヴ・パテルは、「もし映画を作ることができるならアクション映画だ」と決めていたそう。
10年もの構想を経て完成された作品は、文化やインド神話のハヌマーン、宗教、祖先といった彼のアイデンティティが詰まった作品であると共に、アンダードッグな男の心の旅として、感動的な物語となっている。
キャストには彼のほかに、「第9地区」や「エリジウム」のシャールト・コブリー、「ミリオンダラー・アーム」のピトバッシュなどが出演する。
貧富の差が著しく広がるインド。カースト制度が蔓延る地で、アンダードッグは頂点に位置する男に復讐を果たすことができるのか。
彼の思いがいよいよ国境を超える。
あらすじ
幼い頃に母を殺され、人生の全てを奪われたキッド(デヴ・パテル)は、「モンキーマン」を名乗る“殴られ屋”として生計を立てていた。
どん底で苦しみながら生きてきたが、自分から全てを奪ったヤツらのアジトに潜入する方法を偶然にも見つける。
キッドの目的はただ一つ「ヤツらを殺す」。
「復讐の化神〈モンキーマン〉」となった彼の、人生をかけた壮絶なる復讐劇が幕を開ける。(Fassion Pressより抜粋)
感想
#モンキーマン 観賞。デヴパテルはジョンウイックとか韓国ノワールとか好きなんだなぁと感心。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) August 23, 2024
前半は標的に近づくまで、そして堕ちていくまでのテンポがすごく良くて楽しかったけど、後半再生するまでの尺が長すぎ。回想も挟みすぎ。
とはいえクライマックスは圧巻。いいリベンジアクション。 pic.twitter.com/T5prfu31b7
単純明快な復讐劇にインドの社会背景を混ぜた、深みのあるアクション映画。
初監督でよくやったけど、いかんせんテンポが悪い。
とはいえ、クライマックスは最高ですよ。
以下、ネタバレします。
単純明快でわかりやすい
殴られ屋として生計を立てつつも、殺された母への復讐を忘れない主人公キッドが、如何にして標的に近づくのかを描いた前半。
個人的には本作のピークがそこにあったので、如何に面白かったかを書き記したいと思います。
そもそも殴られ屋となってるけど、地下格闘技場で八百長目的として「殴られる」ために戦っていたってことですよね。
2ラウンドまで優勢で戦い3ラウンド目でやられるというパターンで、シャールトコブリ―演じるタイガーは荒稼ぎしていたんでしょう。
この風景を見るに、皆強い者に熱狂するばかりで、殴られている弱者(マイノリティ)には目もくれないという設定が、本作の舞台となる架空都市の背景と重なってくると思います。
さらに新興宗教の教祖に群がる信者もまた、地下格闘技場のギャラリーとも重なるので、設定という意味ではよくできたものだと思います。
キッドはそんな殴られ屋で稼いだお金を使い、一体何をするのか。
それは母親を殺された時に焼き付いた記憶の一つである「王冠のロゴ」が入った店を探すこと。
少年に情報を仕入れさせ人物を特定したキッドは、これまた民衆を味方にして女主人の財布を盗みだすことに成功するんですね。
体の不自由な男性が車いすに乗って、木彫りの人形をカフェにいる客に売りつけるんだけど、もちろん誰も相手にしない。
2日も食べてないと物乞いしながらも、女主人は電話に夢中で見向きもしない。
そこでコーヒーを倒した隙にバッグから財布を盗んで猛ダッシュ。
車いすの男性は、実は五体満足で急いで別の人物に財布を渡し、架空都市で貧しいながらも働く人々の手によって、キッドの元へと運ばれていく。
そうそう、この架空都市、とにかく貧富の差が著しく激しい町として描かれてるのも特徴的。
新興宗教の教祖は政治団体と絡み、警察をも巻き込んで毎晩女に薬にとやりたい放題。
一方民衆は、安い賃金で働く者もいれば、道端で寝るしかできない者たちもいて、正に天と地のような世界を映し出していることに成功しているんですよね。
そんな街で、金持ちや私腹を肥やす連中に質の良い料理を提供する傍ら、女性とドラッグをあっせんしているのが、女主人だったというわけ。
キッドの標的である新興宗教の教祖に近づくために、まずは彼の手下である警察署長の居場所を突き止めたキッドは、これまた裏社会に顔を出し、38口径のリボルバーを入手することに成功するのです。
噛みタバコを買う際に、とある言葉を発したことが合図となり、たばこの中に札をくるんで、少年に道案内をしてもらう。
たどり着いた先は拳銃を売りさばく闇業者。
その品ぞろえに思わず業者も「ジョン・ウィックみたいだろ?」なんて言うからたまらない。
財布を届けたことを機に女主人の店で働くことになったキッドは、手に入れた拳銃の練習をしながら、皿洗いや掃除を懸命にこなしつつ、ドラッグの調達やアルフォンソに近づき、VIPルームでのウェイターに昇進。
徐々に警察署長のいる部屋へと近づいていく。
ようやく標的を見つけたものの、彼の中で忌々しい記憶がよみがえり動悸が激しくなり、復讐実行を躊躇してしまう。
女主人によって強制的に男の相手をさせられていた情婦も、彼の顔色の変化に気付き、無理ならやめなと忠告を受けてしまうほど。
しかしキッドの復讐心は収まらず、ついに実行を開始するんですが、やはり本人を目の前にして引き金を引くことを躊躇してしまい、とどめを刺すことはおろか、警察までも巻き込んだ逃走劇へと発展してしまうことに。
後半のテンポはどうにかならなかったか。
被弾して川に落ちたキッドは、トランスジェンダーらが集う小さなコミュニティに救われ、過去に捉われずに復讐できるよう、毒を吸って忌々しい記憶から脱却することに成功する。
リハビリを兼ねてさらに肉体に磨きをかけたキッドは、決着をつけるために再び警察署長らの前に姿を現す、というのが後半の流れ。
全体的の流れとしては、復讐にかられた殴られ屋から、過去の記憶によって失墜、救済を経て再生、壮絶な復讐という流れになっており、非常に単純明快な物語構成に放っていました。
しかし、前半の軽やかなテンポと面白みのある裏社会でのし上がって標的に近づく姿は、初監督としては目を見張るものがありましたが、後半での失墜からのテンポが非常によろしくない。
特に気になったのは回想の小出し。
冒頭ではキッドの幼少期を描き、母との他愛のない触れないの中で、ハヌマーン神話を語る映像が映し出されていく。
ここに関しては、本作がハヌマーンを題材にしていることから説明的意味合いで使われるので全然問題ない。
しかし劇中で気絶する度、躊躇する度、失墜からの再生、そしてクライマックスと、幾度となく回想が挟まれていく。
内容としては、新興宗教の教祖が工場設立の場所を確保するために、キッドが住む村を焼き払い惨殺したことがキッドの復讐のきっかけだったことが明かされるのですが、これを要所要所で断片的に見せていくので、せっかくのアクションのテンポがここで一気に失速してしまうんですね。
確かに躊躇する際のフラッシュバックとして使い方はまだ許せるとして、そこからまた小出しで出していくのにはさすがにだれてしまうなと思ったのであります。
昨今の映画でもこういう小出しで隠された過去を見せていく構成作品は多々あり、よく言えば「今風」だなと思う節もあるわけですが、個人的には比較的嫌いなパターンであり、そこを巧く収めていけば正味120分以内で片付く話じゃないかと思ってしまうわけです。
一体村で何があったのか、母親はどうやって署長に殺されたのか、教祖はその時何をしていたのか、そんなのはキッドが毒を吸って過去の呪いから解放されるときのフラッシュバックですべて見せてしまえばいいんです。
そうすれば、凄みのあるアクションシーンの間に挟まずともスムーズに物語が運ばれていくというもの。
また、前半はあれだけテンポが良かったわけだから、その速度を落としてまでキッドのバックボーンに尺を使う緩急の付け方は、僕としては途中で飽きてしまうんですよね。
確かにじっくり描かなくてはいけないパートだと思いますよ、宗教とか信仰を絡めて描いてるわけですから。
でもテンポを落としてまでやることだったのかは疑問です。
爽快なアクション
とまぁ、ここまで愚痴をこぼしておきながらも、デヴ・パテルってこんなにアクションできんの!?と興奮しっぱなしの2時間強だったんですよね。
殴られ屋でのシーンは、ひたすら殴られる姿をFPS的に映すことで、どんどん彼の意識が遠のいていく中、ブレブレのカメラワークで、彼がボコボコになってく姿を表現していました。
これ僕としては非常に大事だと思っていて、要はキッドは殴られることに耐性があるけれど、決して格闘センスが凄いとか無敵の殺し屋とかではない、ごく普通の独学で学んだ格闘センスってだけなんですよね。
だからこそその後のアクションシーンでは、無双状態で戦ってるわけではなく、時にやられそうになるし、時にボコボコにされる。
最初の署長とのバトルでは、突き付けた拳銃を払われ、もう一人敵が襲ってくる中、何度もやられながらも必死にしがみついて倒そうともがく姿が映し出されております。
手錠をつけた状態で逃走した先は、違法営業敷いている風俗店で、そこの店長もしくは用心棒と思しき人物と戦う羽目になる。
向こうは斧を持っているので、ひたすら避けるだけの一方的な防戦状態だったわけですが、敵の鼻を2度も噛みついて攻撃を回避し、寸でのところで倒すという格闘技なら反則的な戦い方で勝つんですよね。
クライマックスでも大人数相手に無双状態にはなるんでんすが、相当数の打撃を喰らっていて、決して無敵ではない。
殴られていることに耐性があるからこそ、ダメージはあれど倒れることなく立ち向かえる体力を供えてるってわけです。
もちろん彼をそこまで奮い立たせるのは、フラッシュバックしてしまうほど脳裏に鮮明に焼き付いている忌々しい記憶なわけで、そうした反骨心や復讐心が彼の原動力となり、再生後の戦いでは相手に躊躇なくフルボッコにできるわけです。
映像的にもジョンウィックの製作陣が関わっているせいか、ネオン煌くVIPルームではスタイリッシュ且つ現代ノワール的な美しさの張る背景に、真っ赤勝ちが飛び散るバイオレンスな映像になってましたし、それを長回しアクションで魅せるんですから最高。
目新しいアクションとは思いませんでしたが、バーカウンターの上で軽い身のこなしで戦ったり、ナイフを使っての素早い攻撃、それが体を突きさす度に刻まれる音がリズムを生み、軽快なアクションへと導いていく一連のシーンは圧巻でしたね。
厨房でのアクションも、調理器具を駆使した瞬殺的アクションを、これまた長回しで見せてくれており、ガスコンロに顔を押し付けたり、鍋やケトルで頭勝ち割ったり、終いにはレンジのドアに頭ぶつけてとどめを刺すなど、狭い空間を近距離で収めつつ、ワンカットで魅せていくシーンは素晴らしいかったですね。
ただひとつ言わせてもらえるとすれば、引きの画で魅せるアクションがあまりないことや、どれもカットをあまり入れずにスピーディーに見せている傾向にあり、見づらい部分もしばしば。
悪く言えば見せ方がワンパターンだったな、と思える部分も多々ありましたかね。
また、とにかく血が多い。
ナイフで刺される度、拳で殴られる度に飛び散る血の多さは、正に韓国ノワール映画さながらの描写。
デヴ・パテルが何を参考にしたかが随所に見て取れる映画とも思えた作品でしたね。
最後に
ハヌマーンについては僕はど素人なので詳しい解説は避けての感想にしましたが、教祖の部屋の壁一面に描かれた赤い猿が無数に描かれた絵や、キッドが胸を開くと別の世界が広がるシーン、それこそキッドが八百長を無視して勝利をおさめ観衆を虜にする地下格闘技のシーンから、ハヌマーンを意識した映像が多々あったように思えます。
また主役のデヴ・パテルのスーツ姿はかっこよかったですね~。
あれですよ、髪型も相まって髭を生やした賀来賢人みたいなルックスでしたよw
とにかくガンアクションではなく近距離での格闘アクションに絞って見せたのはよかったですね。
敵も銃をを追走する際は所持していたものの、途中から一切銃器を出さずに、キッドと対等に戦う設定になってたのも良かったです。
僕はインド映画に詳しくないけど、これ決してインド映画ではなく、インド系イギリス人が作ったハリウッド映画という認識で見るのが良いのかとも思います。
そういう意味で言えば僕は非常に入りやすい映画でした。
長きにわたって構想した作品が、こうして世に放たれたわけですから、今後も時間をかけて優れた作品を製作してほしいですね。
もちろん本業の俳優業も頑張ってほしいです。
そういう意味を込めて今回は甘めの満足度で。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10