モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「モンタナの目撃者」感想ネタバレあり解説 正しさを武器に山火事と暗殺者に立ち向かうアンジー。

モンタナの目撃者

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 日本ではあまり大規模な山火事をニュースで見かけることは少ないですが、全く無いわけじゃない。

2021年には、栃木県足利市で山火事が起き、消火活動に数日かかるほど住民に大きな被害を与えました。

 

基本的には「火の不始末」が原因だそうです。

アメリカ・カリフォルニアではこの不始末が、気温上昇による草木の乾燥や強力な風など、「火が回りやすい環境」が原因で、大規模な山火事になるんだそう。

 

アリゾナの山火事に立ち向かった20人の勇姿を描いた「オンリー・ザ・ブレイブ」を見るだけでも、どれだけヤバいか伝わると思います。

 

今回鑑賞する映画は、後ろからは暗殺者、目の前には山火事という大ピンチの中で、狙われた子供を必死で守る一人の女性の物語。

 

大自然を背景にスリリングな物語を描く監督が、今回どんなサスペンスを描くのか。

早速鑑賞してまいりました!!

 

作品情報

アリゾナ州を舞台にした「ボーダーライン」、テキサス州を舞台にした「最後の追跡」、ワイオミング州を舞台にした「ウインド・リバー」など、アメリカ西部の保守層が多く居住する地域での物語を手掛けるテイラー・シェリダン

 

彼が次に選んだのは、「モンタナ州」だった。

 

過去にトラウマを持つ森林消防職員が、暗殺者に狙われる少年を守ろうと決意するが、後ろからは命を狙われ、前には未曽有の山火事が襲う絶体絶命の状況を描くサバイバルサスペンス。

 

これまでたくさんのアクション映画に出演してきたアンジェリーナ・ジョリーが11年ぶりに激しい動きに挑戦。

円熟味を増した彼女からは、動きだけでなく心に傷を抱えた設定からどう変化を遂げるという微細な表情にも注目したいところ。

 

他にも監督作品に出演経験のある俳優を筆頭に、個性的な面々が集結。

極限状態のサスペンスをさらに盛り上げる。

 

逃げ場のない状況下をどう切り抜けるか。

画面いっぱいに赤く染まる熱気と執拗に迫る暗殺者たちによって、尋常でない緊迫感を味わうことになるだろう。

 

あらすじ

 

過去に壮絶な事件を目撃したことから大きなトラウマを抱える森林消防職員のハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、ある日の勤務中、暗殺者による父の死を間近で目撃し暗殺者に追われる少年モリ―(フィン・リトル)に出会う。

 

彼は父親が命をかけて守り抜いた秘密を握るたった一人の生存者だった。

ハンナは自分と同じく、目撃者となり傷ついたコナーを暗殺者から守るために戦うと心に決める。

 

秘密を求めコナーの命を執拗に狙う暗殺者たちが刻一刻とと迫る中、目前に広がるモンタナの大自然で未曽有の山火事が立ちはだかる。

 

2つの脅威に行く手を阻まれる極限状態で、ハンナはコナーを守り戦い抜くことはできるのか。 (映画『モンタナの目撃者』|  (warnerbros.co.jpより抜粋)

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監督

本作を手がけるのは、テイラー・シェリダン。

 

「ボーダーライン」での刺激的で重々しい内容の脚本で、賞レースを席巻した監督。

脚本だけでは自身の世界観を表現するのが難しかったのか、「ウィンド・リバー」で監督業も兼任することに。

 

しかしこの「ウィンド・リバー」がとんでもない良作でしてね。

白銀の世界を舞台に、多様性多様性言いますけどお偉いさん、肝心な人たちを忘れてやしませんか?ってのメッセージに、スリリングなサスペンスに仕上げた、まぁ~大好きな作品。

最後はジェレミー・レナー無双が痺れる良作なので、是非見ていただきたいです。

 

そんな作品を手掛けた監督の2作目にあたる本作。

「フロンティア3部作」では「追う者」と「追われる者」に焦点を当てた西部劇でしたが、本作でもこの構図は継続。

といっても、追われる者が主人公の作品は、もしかしたら初めてなんじゃないでしょうか。

 

監督の新章に期待ですね。

 

キャスト

主人公ハンナを演じるのは、アンジェリーナ・ジョリー。

 

女とレジャーハンターの活躍を描く「トゥームレイダー」に始まり、結婚した相手が殺し屋だったことから始まる壮絶な夫婦喧嘩「Mr.&Mrs.スミス」、殺し屋の父を持つ息子を組織で育てる「ウォンテッド」など、あらゆる作品で華麗なアクションを披露してくれたアンジー。

 

本作では心に傷を抱えながらも、進むべき道を見つけ克服しようともがく女性を演じており、そこから「誰でも立ち直ることができる」ことを伝えたいを語っています。

 

彼女に関しては、MCU映画「エターナルズ」が控えているので、そちらにも注目ですね。

 

 

 

他のキャストはこんな感じ。

少年コリー役を、今後の活躍に期待の新星フィン・リトル。

暗殺者パトリック役に、「マッド・マックス/怒りのデス・ロード」、「X-MEN」シリーズのニコラス・ホルト

暗殺者ジャック役に、「シング・ストリート」、「ボヘミアン・ラプソディ」のエイダン・ギレン

保安官イーサン役に、「ウインド・リバー」、「フォードVSフェラーリ」のジョン・バーンサル

アーサー役に、「バーニング・クロス」、「ゴーン・ガール」のタイラー・ペリーなどが出演します。

 

 

 

暗殺者×山火事、これまでありそうでなかった2つの脅威。

監督のことだから、今回も銃声音でかいんだろうなぁw

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

やっぱりテイラー・シェリダンは面白えっ!

社会性を抑えてがっつり西部劇風スリラーに仕上げてます!

一番残念だったのは主人公の描写が弱い事か・・・。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

めちゃんこスリリング。

モンタナ州の森林地帯を舞台に、過去にトラウマを持った森林消防隊の女性と父親を目の前で殺された少年が、山火事と暗殺者という2つの脅威に立ち向かう物語を、不穏な空気と周囲との和やかな風景という緩急をつけた序盤から、一気にスリリングな描写へと流れていく展開を、少数の登場人物と単純明快なプロットで綴り、互助し合いながら悲しみから脱却しようと試みる姿に涙を誘う素晴らしい作品でございました。

 

さすがテイラー・シェリダン。

ジワジワと不穏な空気で恐怖の足音を覗かせながら、少しづつ暗殺者と山火事の恐ろしさを炙り出し、四面楚歌な状態からどう危機を脱するかを丹念に描いた力作。

 

一体暗殺者を送り込んだ黒幕は何をもみ消そうとしたのかなんて説明は一切ないため、どうしても疑問は残ってしまうが、正直この物語にその部分を描く必要は全くない。

なぜなら悲劇を目撃したことで未だ歩き出すことができないでいる主人公と、目前で殺されてしまった父から遺言ともいえる「正しい事」を遂行しようと懸命に生きようとするバディが、「悪」と「自然の恐ろしさ」に立ち向かうことで、一歩踏み出す物語なのだから。

 

まず特筆すべきなのは、じわじわ押し寄せる緊張感。

ガス会社員に変装して訪問するや否や、一家を惨殺し一軒家そのものを爆発させる冒頭は、凄まじい音ももちろんのこと、こんな奴らがこれから父子を殺しに行くのかと思うとどんな悲劇を見せられるのかと不安になっていく。

 

さらには、家がガス爆発した報道を見るや否や一気に顔色を変え、息子を学校を送ることなど一切忘れ、周囲の人間を全て疑うほどの落ち着きの無さをみせるパパの表情が、緊張感を助長させていく。

 

これから危険なことが起きるという警告じみた冒頭によって、我々の心を掴んでいくんです。

 

実はこの間に、新たに森林消防隊員として加わった面々を、酒を煽りながら茶化す集団の中にアンジー演じるハンナの姿も映っており、保安官イーサンの忠告を無視して羽目を外してしまう姿や、しょうもない下ネタで笑い合うもどこか心ここに在らずな表情を見せたり、保安官イーサンの妻が妊娠していることや彼の溢れる正義感と愛妻家である面を覗かせることで、緊張と緩和の中にもしっかり登場人物の心理描写を怠らない。

 

物語は、暗殺者の2人が標的を始末するためにモンタナ州の森林へと急行していくことで舞台の焦点が整っていく。

 

この後どんな展開が待っているのかはご想像通り。

決して見たくはない現実を見せられてしまうわけです。

起きてはいけない事態が起き、命を懸けて父の頼みを遂行しようと決心するも、目の前で乱射されてしまう父の姿に、目を伏せながらただ震えることしかできない息子コナーの表情を見て、きっと彼に感情移入してしまうことだろう。

監督は敢えて父が被弾する姿と、見動起き出来ずにただ顔を伏せているだけのコナーを交互に見せることで、我々の感情に訴えてくるのです。

 

なんて酷いことをするんだ、子供はなんでこんなつらい経験をしなくてはいけないのか。

1年前に自分の母を看取ったという悲しい経験をしているのに、ここまで追い打ちをかけるなんて…。

 

めそめそしている場合ではない、やり遂げなくてはと一目散で街へと向かう小川を走り抜けるコナーに再び涙が。

 

この後暗殺者たちは、始末したかと思った標的の息子を逃したことで、再び森林へと足を運び、徐々に大事にしていくのであります。

 

 

そもそもこの山火事は誰かの火の不始末で起きた偶発的なものではなく、暗殺者が自分たちの任務を市民や警察の眼から逃れるためにやったこと。

発煙筒3本であんなにも火が燃え盛っていくって、相当乾燥してたってことですよね。

 

どんどん大きくなっていく火に加え、空には雷雲まで登場。

コナーと共に町へと向かうハンナに、雷と炎が押し寄せてくるんです。

 

雷に関して意外だったのは、ああいう森林地帯では伏せて走ってを繰り返して落雷を回避していくんですね。

正直山火事と暗殺者以外に障害は出てこないと思ってたので、こういう展開になるとは意外。

直接打たれたわけではないけれど、一発で大やけどを負うハンナの姿を見る限り、雷の怖さを改めて思い知らされました。

 

他にも任務を遂行しなくてはいけないことから非道な手口も厭わない暗殺者たちでしたが、妊婦であるイーサンの奥さんにはある程度寛容だったり、奥さんのSOSを聞いて自宅へ急行したイーサンが、自ら人質になってしまうけど正しくないことはしないと身を挺して抵抗する姿、それでも任務をやり遂げなくてはプロの名が廃るのか、どんどん程度が大きくなっていく暗殺者たちの心情の度合いが、徐々に迫っていく山火事の頻度と比例していきます。

 

登場人物が凄くいい。

主人公ハンナについては、最後の最後にカタルシスがあるんですが、僕としては他の登場人物の方が色が濃く出ていたこともあって印象が弱いと感じてしまいました(いきなり不満かいw)。

 

1年前の山火事で風を読み違えたことから仲間を失い、3人の男の子を救うことができなかったというトラウマを抱えています。

悪夢にうなされたり、トラックの荷台に乗ってパラシュートを開いて危ない行為をしてしまうのは、正に精神を病んでいるから。

ひとり高台にある管制塔で見張りをするときも、どうしても頭から離れないでいる。

 

そんな時出会うのがコナー。

彼の話を聞いたことで、彼を守ろうと決意し、暗殺者から逃れるために町へと急ぐのであります。

 

僕が疑問に思ったのは、あれだけメンタルがやられているにもかかわらず、すぐ親身になってコナーの面倒を見ようとするはどういう心境かという点。

あくまで僕が脚本家なら、あそこで再びトラウマが襲ってくる気がするんですよ。

「もしかしたら、また救えないかもしれない」と。

 

だって暗殺者ですよ?そう簡単に逃げられる気がしないんですよ。

大人だから子供を守るという本能が働いたのはわかるんですけど、あそこまで引きづっているのなら、躊躇するきがするんですよね。

もしかしたら彼女が恐れているのは暗殺者ではなく、山火事の方だという見方もできるんですが、その辺の心理描写があれば、最後に彼女が「美しかった」といえた気持ちにカタルシスが生まれたのになぁと。

 

と、グダグダ文句を言ってますが、ホント些細な不満です。

 

それ以外はホント秀逸。

映像面での恐怖はもちろん、登場人物たちがとにかくいい。

 

要は全員プロフェッショナルな仕事をする人たちの話なんですよ。

ハンナもイーサンも、社会に奉仕する仕事に就いていることから、プロとして与えられた役割を遂行しようと「正しい事」をしていく。

今回敵として描かれる暗殺者たちも、文句を垂らしながらも限られた人数で仕事を全うしようと全力で標的を追いかけていく。

プロなんだからウダウダ言ってねえで、クライアントに損益が出ないように確実に仕留めなくてはいけない事情をしっかり描いてる事から、悪とはいえ「プロ」であると。

 

さらには、犠牲になった人や被害に遭った人たちまでもが、正しいことをするために行動をしていくのが素晴らしいんです。

 

コナーに関しては上でも書いた通り、悲しみを抱きながらも父から与えられた手紙をニュース局の人に渡すために、信用できる人に助けを求め前へと進んでいく。

ハンナに逃げろと言われても、自分が今するべきことは何かを瞬時に判断し、ハンナを守ることを選択する意志は、自分がの年齢だったら絶対にできないよなぁと感心するほど。

 

さらには、イーサンの奥さんアリソンが本作で一番素晴らしい人物。

妊娠6ヶ月という身でありながら、イーサンと共に「サバイバルスクール」を経営していた実績を、ここでしっかり実用していくんです。

FBI捜査官に変装した暗殺者たちを一瞬で危険人物と判断し、こっそりスプレー缶を忍ばせ反撃のチャンスを伺う姿や、イーサンに危険を知らせるための暗号めいた会話を電話でしたり、さらには連行された夫を助けるために、GPSで探知し鹿撃ち銃を担いで馬にまたがって追走するカッコよさよ!!

 

痛い目にあわされた暗殺者たちにどう立ち向かうかは、本作一番の爽快感を味われるのではないでしょうか。

昔の西部劇だったらあり得ない立ち位置ですよホント。

 

また個人的には「ウィンド・リバー」に続いて監督作品に出演したジョン・バーンサルを語らずにはいられません。

前作であんなひどい仕打ちを受けた彼が、本作でも可哀想な役柄を演じるなんて!!!

 

監督!!次こそは彼が救われる、報われる役柄にしてください!!

確かに暴力性を秘めた役柄も巧いし、実はアクションなんかしなくてもいい芝居ができる役者だってことは十分承知です!

前作でも彼の演技が光ったから、あの事件の悲惨さに開いた口がふさがらなかったわけです、辛いと思わせてくれたんです!

だからって今回もあんな悲惨な目に合わせなくてもいいじゃないか!

 

でもさ、今回もジョン・バーンサルもむっちゃかっこいいのよ…。

元カノであるハンナの精神状態を心配しながら、奥さんを目いっぱい愛するわけで。

怖がってるコナーにも、叔父として保安官として安心させる一言を添える。

暗殺者に人質に取られても、保安官としての正義を振りかざす。

お前らの言うことなんて聞いてたまるか!と。

 

だから監督には感謝です(なんだそれw)。

 

最後に

もう一つもったいないのは、暗殺者が少々間抜けな部分でしょうか。

本来なら人手を増やしてやりたかったと嘆いてましたが、最小限で出来ることを精一杯やったことは理解できます。

しかし一般市民にあそこまでやられてしまうのは、プロフェッショナルでありながらもうちょっと危険を察知できる能力とかを見せてほしかったですね。

 

というか、もっと手ごわい奴にすれば、山火事と挟み撃ちになってしまうハンナとコナーの絶体絶命感が色濃く出たのになぁと。

 

そもそもコナーのお父さんももっと簡単に仕留める能力はあったろうし、あんな簡単に部外者に見られるのとかどうかと思うし、色々ことがうまく進まないからって山火事起こして周囲の目を反らすって、もっと他に選択肢あったろうに。

山火事起こして山に入ってい行くってことは、自分たちも危険だってことはわからなかったんでしょうかねw

 

この辺をもっと詰めたらゾクゾクするスリラーになったのになぁと。

 

とはいえ、現代の西部劇のように「追う者」と「追われる者」の構図をスリリングに見せた手腕はお見事でした。

山火事の恐ろしさもリアルでしたし、何より水の中から炎を見たハンナの表情を見せることで、トラウマから脱した、克服できたというクライマックスにしたのも巧いなと。

 

次回作は是非、ジョン・バーンサルが救われる役柄でお願いしますw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10