サニー/32
ぼくらっ!!!!
ゆーしてっせんを越え!!!
何も知らないままでっ!!
夢見るように笑ってた~♪
いきなり「サニー」違いの出だしですが、こんにちはモンキーです。
2018年の日本映画で恐らく一番注目されるであろう監督作品が公開です。
国民的アイドルの一員として活躍し、春に卒業を控えるアイドルがこの映画で女優として開花をするのか。
そんな彼女の背後で佇み、不敵に笑うあの「凶悪」コンビが、我々にどんな不快な思いをさせてくれるのか。
ゾックゾクするぜぇ!!!
てなワケで早速観賞してまいりました!!
作品情報
獄中の死刑囚が告発したことで真相が動き出し、記者の記事によって首謀者逮捕に至るまでを描いた社会派エンタテインメント「凶悪」を作り出した、白石和彌と脚本の高橋泉が再びタッグを組み作り出した映画。
中学教師の拉致から始まり、彼女を「犯罪史上最もかわいい殺人犯」とネットで神格化された少女“サニー”と呼び、狂信的に彼女を崇める2人の男たち。
彼女を監禁することで何を企んでいるのか。
先読み不可能、サスペンスフルな感情のジェットコースタームービーが幕を開ける。
あらすじ
冬の新潟の或る町。
仕事も私生活も振るわない中学校教師・藤井赤理(北原里英)は24歳の誕生日を迎えたその日、何者かに拉致された。
やったのは二人組で、柏原(ピエール瀧)と小田(リリー・フランキー)という男。
雪深い山麓の廃屋へと連れ去り、彼女を監禁!小田は嬉々としてビデオカメラを回し、柏原は「ずっと会いたかったよ、サニー……」と、そう赤理のことを呼んだ。
“サニー”とは―世間を騒がせた「小学生による同級生殺害事件」の犯人の通称だった。
事件のあらましは、当時11歳だった小学生女児が同級生を、殺害したというもの。突然、工作用のカッターナイフで首を切りつけたのだ。
事件発覚後、マスコミが使用した被害者のクラス写真から、加害者の女児の顔も割りだされ、いたいけで目を引くルックスゆえに「犯罪史上、最も可愛い殺人犯」とたちまちネットなどで神格化、狂信的な信者を生み出すことに。
出回った写真では、独特の決めポーズ(右手が3本指、左手は2本指でピースサインをつくる)も話題を集め、それは信者たちの間で「32(サニー)ポーズ」と名付けられ、加害女児自体も“サニー”と呼ばれるようになった。
奇しくも、この“サニー”の起こした事件から14年目の夜に二人の男によって拉致監禁された赤理。
柏原も小田もカルトな信者で、二人は好みのドレスに着替えさせ、赤理の写真や動画をネット上の「サニーたんを愛する専門板www」にアップ。
赤理は正気を失っていきながらも、必死に陸の孤島と化した豪雪地帯の監禁部屋から脱出を試みる。
が!それは驚愕の物語の始まりにすぎなかった―。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけたのは白石和彌。
今一番ノリに乗ってる監督であり、作品の中に、エロスとバイオレンスと不気味さと滑稽さを常に描き続けるお方だと思います。
そんな彼が去年「彼女がその名を知らない鳥たち」で、新しい要素として究極の愛をぶっこんで来たので、 もうこの人は今年目が離せないよなと。
ひと昔前の血気盛んな昭和の日本映画を復活させてくれるのはきっと彼だけでしょう。そんな期待をこめたヤクザ映画「孤狼の血」が今年の5月に公開予定なのでそっちも楽しみじゃけえの!
東映じゃけぇ、何をしてもええんじゃ。
監督に関してはこちらをどうぞ。
キャスト
拉致されてしまう中学校教師・藤井赤理演じるのは、“きたりえ”こと北原里英。
一応モンキー的にはですね、AKBとかその手のアイドルには全く興味のない人間なので、この方を全く存じあげないんですが、何かのTVドラマで演技下手くそだなぁ・・・というのは覚えてますw
ですが今回映画に出演して、女優になりたいという願いをかなえるため、秋元康の力を借りて白石作品に出させてもらえるんだから、きっとそれなりの覚悟があるはずだし、どこかでリミッターを解除して今回演じているんだろうと。
要は、頑張ってください。はい。楽しみにしてます。
そんな彼女の出演作を紹介・・・しようと思いましたが、端役ばかりなので彼女が女優として売れるまで待とうと思います。
藤井赤理を拉致する男、柏原勲を演じるのは、ピエール瀧。
監督作「凶悪」をきっかけに俳優業が盛んになりましたけど、彼はこれでもミュージシャンですよ?皆さん忘れていませんか?
電気グルーヴですよ?体操30歳だぞ?伝説の第1回フジロックに出たお方だぞ?
そんな彼が俳優である以前に、おもしろいおじさんである前に、ミュージシャンだということを是非忘れないでください・・・。
みんなみんなみんな寄っておいで 俺の名前はぽ~ぱぁい~♪
ここは映画の感想と紹介なので、彼の代表作をご紹介。
少しづつ映画に顔を出すようになった2001年、MVで名を馳せた中野裕之が、人気忍者マンガを現代風のアクション時代劇に仕上げた「RED SHADOW/赤影」に出演。ミュージシャンが多数出演する中で、安定の演技を披露しています。
特殊な性能を備えた潜水艦の命運と、乗り合わせた男たちの運命を描き、特撮映画になくてはならない樋口真嗣が長編映画初監督をした「ローレライ」にも出演。これを機に樋口監督が手がけた作品には全て出演しています。
その後様々な作品に出演を重ね、ある死刑囚の告発を元に、事件を追う雑誌記者の執念と驚愕の事件の真実を描いたクライムサスペンス「凶悪」で日本アカデミー賞優秀助演男優賞始め、各映画賞でノミネートされ話題となります。
その強面のルックスと心優しい昭和顔の二面性を武器に、「寄生獣」や白石監督作「日本でいちばん悪い奴ら」、「進撃の巨人」、「シン・ゴジラ」、「海賊と呼ばれた男」「アウトレイジ最終章」など大作映画、話題作に欠かさず出演し、今や日本映画界において欠かせない存在へと成長しました。
次回作も白石監督最新作「孤狼の血」に、ヤクザの組長役として出演するとのこと。
他のキャストはこんな感じ。
柏原と共に赤理を拉致するサニー信者・小田武役に、「凶悪」、「そして父になる」、「blank13」のリリー・フランキー。
ネット上に現れた二人目のサニー役に、「愛の渦」、「二重生活」、「花筐/HANAGATAMI」の門脇麦。
田辺康博役に、「夢二~愛のとばしり~」、「湯を沸かすほどの熱い愛」の駿河太郎。
春樹先輩役に、「日本でいちばん悪い奴ら」、「関ヶ原」、「祈りの幕が下りる時」の音尾琢真などが出演します。
見終わった後、「凶悪」のときのような胸クソ悪い終わり方になるのでしょうか。それとも、きたりえや門脇麦の暴走が見るものを爽快とさせるのか。非常に楽しみです!!
ここから観賞後の感想です!!!
感想
何コレ!?キタコレ!?
誰からも期待されていなかった一教師が、誰かに期待されることで本領発揮していく、狂った男女たちへの救いの映画でした!!
以下、核心に触れずネタバレします。
確かに先は読めない。
ストーカーに悩みながらも、日々中学教師として生徒の事を思い、一生懸命ひたむきに頑張る主人公・藤井赤理。
25歳の誕生日に男二人組に拉致され、見たことも聞いたこともない「サニー」なる愛称で崇められていく。
身に覚えのないことで暴力を振るわれ監禁され、食べる事すらできなくなっていく赤理。
彼女を一目見ようとネット上の狂信者たちが集う中、彼らの居場所をドローンで中継され困惑する信者たち。
次々と血と暴力の応酬が続く中、ついにサニーが覚醒する。
あらすじを読んだ後での鑑賞のため、きっとこういう展開になるんじゃなかろうか、なんて色々妄想してはいたものの、まさか可愛い殺人鬼が、迷える子羊たちに救いの手を差し伸べていく救済映画になっていくなんて誰が予想したでしょうか。
僕の妄想では、拉致されていたぶられていくうちに、彼女の殺人鬼、いやサイコパスとしての潜在意識が覚醒して、血みどろのバイオレンス描写が繰り広げられていく様を愉快痛快真っ黒クロスケなお話だと思って期待していたわけですが、その斜め上をいく何コレ!?キタコレ!?映画でございました。
なんというかですね、監督またまた悪趣味な映画作ったなと。
現代人が抱える病気を背景に、彼らによって崇められたアイドルであり神的存在によってそれを昇華させていくって内容なんですけど、キャスティングの妙でこれをうまく表現しているあたりがなんとも痛快であり、また人を殺す理由なんて衝動的なもんで深い理由なんてないんだよね、っていうくらい些細なきっかけで簡単に人を殺してそれをまったく反省しない登場人物も一癖も二癖もあってなんと面白い作りなのかと。
正直言いますと、僕は「凶悪」をそこまで評価していません。評価というか好みではない。ただキャストの皆さんの演技には脱帽しましたし、そこに関してはものすごく評価してるんですけども。
多分ですね、脚本の高橋泉が俺の好みと合わないんだろうなぁと。
凶悪はまだしも、大友監督の作った作品はどれもこれもクドイ説明が多くて会話になってないというか、非日常的過ぎてなんか嫌だったんですよね。
ただ今作はそういう嫌な部分はそこまで感じられなかったし、ちゃんと彼の作家性みたいな部分もちゃんとありつつも、ちょこちょこ小ネタで笑わせるようなセリフの配置にしていたので、何だよやりゃできんじゃんwと。
演出も2chやらニコ動を思わせる現代のネットツールによって、キャッチーに描かれており、それがまた嫌悪感やこのインチキ臭い寸劇(褒めてますw)を助長させていく感じが非常に面白いです。
また音楽も完全打ち込みのアイドルソングのような音楽で構成されているあたりも、基本シリアスな社会派サスペンスを描いてきた白石監督にしてはちょっと意外で、この辺りは「日本でいちばん悪い奴ら」のあのノリを感じさせるユーモアな演出でした。
登場人物から透けて見えるもの。
映画の中で登場人物たちは、皆それぞれサニーという存在に依存したり、興味本位で近づいたり、または彼女に復讐をするために、それぞれが本性や素性を隠して集うわけですが、要は彼らは現代が生んだ「何かに縋っていないと生きていけない意志の弱い連中」であり、自己の存在をネットの閲覧者数でしか示すことのできないオタク、レズビアンという性的嗜好を隠して生きてきた者、女性に恐怖を感じることで愛を暴力でしか表現できなかった者、いい年して工場でバイトをして生きてきたことで、その他大勢のうちの一人でしかいられなかった者、不良の先輩の彼女に頼まれ美人局をしていた者、どう見ても肥満なのに隠れ肥満と偽る者、などなど生きていく上でこじらせてしまった悩みを、サニーによって解消されていき、やがて小さな小さなカルト宗教へと変貌していく様は、北原里英の嘘くさい演技によって、それはそれは見事なウソくさい集団として確立されていく。
そしてなぜ主人公の藤井赤理という女性が教師なのか、というのも、中盤でサニーとして覚醒していくことで謎が解けていく辺りもなるほどと。
教師というのはいろんなタイプの人がいると思うけど、特に若い教師は生徒の前で情熱をもって向き合う人が多く、生徒に親身になって彼らを正しい道へと向かわせたい気持ちが前面に現れがち。
そしてそれがうまくいかないことで、悩みながらも日々懸命に授業に勤しむという背景を序盤に組み込むことで、赤理がなぜサニー信者に対して懺悔させ救いの手を差し伸べるのかがここで活きてくるんですね。
もっと深く言えばこのキャスティングが最高で、北原里英という国民的アイドルの卒業後の進路相談を受けた秋元康によって今作ができたわけですが、ぶっちゃけ演技のキャリアは大したことないもの。
この素材をどうやって活かし最高の料理を作るかを監督はちゃんと吟味しているのが最高で、それを彷彿とさせるのが、実力派女優の門脇麦とプロジェクター越しで向き合わせるシーン。
結果的に2人も藤井赤理であり、北原里英はニセモノだった。
本当の藤井赤理は、14年経った今でもその罪を背負っており、これだけ反省しても誰も許してくれないと嘆き、自分で自分を痛めつけた生粋のイタイ女性でした。
だから二人が対面した時どっちが本物でどっちがニセモノかっていうのを、内容はもちろんのこと、演技でも差を見せて、表現する辺りはさすがだなと。
そのニセモノはみんなが私をサニーと呼ぶなら私はサニーだと刷りこませ、ついにこの場を利用し立場を逆転させ、自分を拉致したものを自分にひれ伏せていくんだけど、意外とまっとうなことをいうもんだから茶番に聞こえてきて。
結局アイドルなんて周りからちやほやされなきゃ成立しない商売であって、なんかそういう部分も透けて見えちゃう感じが皮肉で滑稽で。
で、本物登場でやっぱりそれが浮き彫りになっていくんですよね。
本当に人を殺した人は、人様にそんなまっとうな説法なんかできるわけなくて、罪を償えないままただ生きていくしかないってのを、門脇麦が体現しているのが非常にスカッとして。
というわけで全く持ってうまく伝えられていませんが、彼らがどんな痛みや悩みを抱えているかを読んでいくことで、今回の映画が如何に現代的で皮肉的で、それがエンタテインメントに変換されていくかが彼らを通じて感じられるかと思います。
ネバダ事件
今作は実際に起きた事件をモチーフに描かれたそうです。
それがどんな事件だったかというと、2004年に起きた「佐世保小6女児同級生殺害事件」、通称ネバダ事件というもの。
6年生の女子児童が同級生の女児にカッターナイフで切り付け死亡させた事件で、当時社会的にも話題になった事件です。
実際2人はウェブサイトを通じて仲の良い友達の間柄だったそうで、日常の中での些細な出来事がきっかけでウェブ上で徐々にことが大きなっていき、加害者の中で殺意が芽生え行動に至ったそう。
加害女児は5年生辺りから情緒不安定になっていたことや、「バトル・ロワイヤル」などの暴力的な内容の小説を好んだり、それに似せた同人小説を書いていたりしていたことなどが後からわかり、結果彼女は発達障害と診断されたそうです。
この事件に対してネット上では、実際に加害女児の写真が流れ、その美少女ぶりにお祭り状態に。
それをイラスト化した画像が出回り、彼女が着ていたパーカに「NEVADA」と書かれていたとことから彼女を「ネバダたん」と呼ぶことで、一時期ネットアイドル化されたんだとか。
ここまで読んでみると、今作がどれだけこの事件をモチーフにしているかが理解できるかと思います。
「掲示板に、ぶりっ子と書かれたから」それだけの理由で殺害に及んだ彼女の真意は所詮調べた記事でだけではわかりませんが、今作は加害者側の視点もきちんと描かれており、そういう意味では2番目のサニー=本物のサニーを通じて彼女を救済しているようにも感じる作品だったのではないでしょうか。
2度と私のような子を出さないでほしい、彼女を救ってあげて!と、今まさに殺害しようとする赤理の生徒を止めるべく、ニセモノのサニーに声を荒げて伝えようとする姿は、二度とこういう事件を起こさせないように、というメッセージを孕んだものに感じます。
最後に
他の役者陣に関してですが、相変わらずピエール&リリーのどうしようもない二人組による掛け合いは見事で、何かあるごとにち〇ち〇を触るリリーフランキーのヤバさに笑えるし、暴力ファーストなコワモテ顔デカおっさんのピエールの迫力は見事だし、その他の曲者たちもいい存在感を出していました。
昨今アイドル映画といえば、少女コミックの実写化によってキラキラ映画と呼ばれる甘酸っぱい青春ラブストーリーが占める状態でありますが、今作はそんな甘ったれたようなものではない、とにかくアイドルを過酷な目に遭わせることで、その人のポテンシャルを限界まで引き出し、その後のキャリアへの道を開かせる映画こそアイドル映画だ!というものを知らしめた作品だったのではないでしょうか。
ちょっとばかし中弛み感もありましたが、僕は今作は非常に楽しめた内容の作品でした。
この映画は演技キャリアの少ないアイドルで無ければ成立しなかった作品だったと思います。決して批判しているわけではありません。人にはそれぞれ役割があり、彼女はその役割をきちんと全うした結果だと思います。逆に演技のうまい人ではこの映画の主役は成り立たなかったでしょう。
今後の彼女に期待したいですね。
いつもながらあれこれとっ散らかった内容の、わかってるようでわかっていないと言われてもおかしくない感想ではありますが、現代の閉鎖的なコミュニケーションといった社会問題をうまく刷り込ませた画期的なアイドル映画だったのではないでしょうか。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10