モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「室井慎次 生き続ける者(後編)感想ネタバレあり解説 青島よ、この思い届いてるか?

室井慎次 生き続ける者(後編)

前作「室井慎次 敗れざる者」に関してはこちらをどうぞ。

 

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警察官を辞め、秋田で被害者や加害者の子供たちの里親としてセカンドライフを始めた室井の前に、新たな事件が起こるというあらすじでしたが、前作は日向真奈美の娘という危険因子が混ざったことにより、これまで築き上げた関係に亀裂が生じて始めていく中、親の代わりとして室井が奔走していくという物語でした。

 

2部作とはいえ全く違う物語だということだったので、しっかり話が完結するものだとばかり思っていましたが、普通前後編の作品になっており、疑似家族のホームドラマとしての一定の形は丸く収めたものの、事件に関しては全く進展がなく、次回にお預けという非常に「映画」という枠組みで考えると非常に残念な終わり方のように感じました。

 

しかし後編では、ようやく事件に本腰を入れていくことになる室井の姿がお目見えとなるわけで、レインボーブリッジを封鎖できなかったあの事件の犯人が、誰によってなぜ殺されたのか、そこに日向真奈美がどう関与するのか、そして「踊る」のメンバーは誰かサプライズで登場するのかなど、期待は高まるばかりです。

 

さすがに青島は出てこないと思いますが、真下くらいは出てきてもいいよなぁ…なんてな。

早速鑑賞してまいりました!!

 

 

作品情報

1997年の連続ドラマ開始以来、熱狂的なファンを生み出し、社会現象を巻き起こした「踊る大捜査線」。

平均視聴率は20%という大ヒットを皮切りに映画製作まで手を出した本シリーズは、第2作「レインボーブリッジを封鎖せよ!」で、20年以上経った今もなお、2位に50億円以上の差をつけたまま邦画実写記録の圧倒的頂点に君臨。
今回「踊る」の生みの親である、プロデュース:亀山千広、脚本:君塚良一、監督:本広克行の製作陣3人が再集結し、遂にファン待望の物語の続きが動き出したーー 。

 

警察官を辞め、秋田に移住し、被害者や加害者の子供の里親として新たな人生を送り始めた室井の前に、レインボーブリッジを封鎖した事件の犯人の死体が現れたことで、再び捜査をすることになった室井が、再び青島との約束に向き合い苦悩しながら、希望を信じて動き出す。

 

室井慎次役には、30年ものキャラを演じ続けてきた柳葉敏郎が続投。

予告編では田舎でひっそりと暮らしながらも、起きてしまった事件に苦悩する表情は、誰もが「踊る」が帰ってきたと思わせる喜びが溢れている。

そして本作のキーパーソンとなる日向真奈美の娘・杏役に、「思い、思われ、ふり、ふられ」、「ディア・ファミリー」の福本莉子が抜擢。

小泉今日子演じたシリアルキラーの娘役として、純真無垢とその裏に潜む狂気という二面性を見事に表現していく。

 

他にも、「カラオケ行こ!」の斎藤潤、「燃えよ剣」の松下洸平、「ゴールデンカムイ」の矢本悠馬、「メッセンジャー」の飯島直子、「日本統一」シリーズの小沢仁志、「バスカヴィル家の犬」の稲森いずみ、「火宅の人」、「泣くもんか」のいしだあゆみ、そして現在秋田県警本部長のポストにいる新城役の筧敏夫、警視庁官房審議官のポストに就く沖田役の真矢ミキ、今回新たに「クロサギ」「あしたのジョー」の加藤浩次などが出演する。

 

正義を信じ、理想を追い続けた男が、今度は「家族」を守っていく。

果たして青島との約束は、警察をやめた室井をどう苦しめ、どう希望を与えていくのか。

 

 

 

あらすじ

 

青島との約束はまだ終わってない。正義を信じ、理想を追い続けた男が見た最後の希望とは―。

 

警察を辞め、故郷・秋田に帰った室井慎次(柳葉敏郎)。

「事件の被害者家族・加害者家族の私怨をしたい」という思いで少年たちと一緒んい穏やかに暮らすも、ある日、家のそばで他殺と思われる死体が発見される。

 

そんな中、かつて湾岸署を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だという少女・杏(福本莉子)が現れ、穏やかな暮らしを求めたはずの室井の日常が徐々に変化していく。

 

発見された死体は、かつて室井が指揮を執ったレインボーブリッジ事件の犯人グループの一人だったのだ。

かつての同僚であり、今は秋田県警本部長になっていた新城(筧敏夫)に頼まれ、警視庁捜査一課の若手刑事・桜(松下洪平)と共に、捜査に協力することにあった室井。

 

そこに、服役を経て出所したリクの父(加藤浩次)が訪ねてくる。

「家族でいる時間には限りがある」

 

不器用ながらも組織を守り、組織と戦い、組織のために生きてきた男が、不器用ながらも素直に、必死に家族を守ってきた。

敗れざる者…室井慎次の物語が、今、完結する。(公式より抜粋)

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感想

2作続けて製作した割には、中身の薄さに頭を抱えるし、何よりキャラの描き方が浅い。

それでも踊るファンとして、この映画で泣かずにはいられない。

あまりにも衝撃で、それ以上の衝撃がラストに待ち構える。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

生き続ける室井の思い。

青島との約束を果たせずにいた室井が、どうやって「約束」を果たそうとするのか。

それは、「加害者や被害者の家族の支援」。

ドラマの第1話で被害者の家族だった柏木雪乃に対し、寄り添うことなど一切せず執拗に取り調べを続けた室井の態度は、青島も、そして視聴者も、「酷い」と思ったことだろう。

 

あの時の室井からは、心を感じられなかった。

とにかく上に上がって自分のやりたいようなシステムを作りあげる=理想に燃えることにばかり意識を向けていた。

 

しかし青島との出会いは彼の価値観や将来像を大きく変えた。

正しいことをしたければ、偉くなれ。

和久さんの言葉に従うかのように、青島は現場主義を貫き、室井はそんな信念のままに突っ走る青島のような刑事にやりやすい環境を与えるために、組織を変えるために粉骨砕身する。

 

結果、警視総監らを退任に追い込むことで、変化を起こそうと動くも、組織の根っこは室井の想像以上に深く、5年の歳月をかけたプロジェクトは水に流れてしまうことに。

 

そして現在。

ずっと心につっかえてた想いは、「罪滅ぼし」にも似た想いで、ドラマの第1話で出来なかったことを、今しようとしている。

 

 

タカ、リク、杏、それぞれが「一人」であることを尊重し、室井に頼るような人生を送るのではなく、まずは自分で「何が正しいか」を考えさせるという室井の教育は、それまで人に迷惑をかけてばかりだった杏の考えをも変えていく。

 

人を傷つけてこそ生きる意味と母親である日向真奈美から洗脳されていた杏は、それまで肌身離さず持っていた「メス」を、室井に渡す。

猟銃やメスは、決して人を傷つけるための道具ではなく、人を守るためのものだ、と。

 

その思いは、暴走したリクの父親によってしっかし示されていく。

室井を守るため、そしてリクやタカを守るために、彼女は傷つけるためではなく、守るために使うのだった。

 

 

またタカは、密かに思いを寄せていたクラスメートとの失恋に涙を浮かべる。

スマホを持っていないがために深い時間を過ごせないでいたタカは、家に招くことを決意するが、彼女の両親からは「事件の被害者」という枠を超えた考えを持っておらず、家に行くのは許さないというお達しを受けており、タカの願いはかなわず。

 

しかも、彼女は別のクラスメートの男子生徒と図書館で仲良く過ごしており、彼の助言によって東京で働くことを決意していたのだった。

 

そんな失恋の中、室井が持っていたレコードから流れるのは前作でも流れたマライア・キャリーのカバーでもおなじみ「Without You」。

あなたなしでは生きられないという切ない思いをハイトーンで感情的に歌い上げるサビが印象的なこの曲をバックに、タカはもちろん、杏もまた違った思い出母親なしでは生きられない苦しさをスクリーンに映し出していく。

 

余談だが、あの曲は一体誰が歌っているのか。

オリジナルのバッドフィンガーでもなければ、ニルソンでもない。

ましてマライア・キャリーでもないので、いかんせんここ最近の誰かが歌ってる曲をレコードでかけるという演出はナンセンスだと思った。

 

 

そしてリクは、刑期を終え出所した父親の登場により、子供たちの中で一番の試練が押し寄せる。

杏に唆されて万引きを働いたり、久々に投降した学校でスマホを持ってないことがきっかけでいじめられてしまうなど、色々情緒不安定な部分が露わになっていく後編だったが、室井の「決して怒らない」、「自分の考えだけが正しいわけではない」といった思考を巡らせることで、室井は優しさと厳しさを教えていく。

 

しかしその思いもむなしく、父親は再びリクに暴力を振るい、それに耐えられなくなったリクはすぐさま室井の元へ帰ってくる。

 

 

こうして室井の秋田での生活は、身寄りのない子どもたちとの暮らしを通じて、青島との約束を果たしながら、町民たちの誤解を少しずつ解いていき、彼の影の努力によって皆が思いを受け取り、あるモノはその思いを継いでいく、まさに「室井が生き続ける」ための物語だった。

 

物語の構成が酷い

個人的には後編は「事件」メインで物語が進行すると思っていたが、前編で宙ぶらりんだった子どもたちとのその後をメインに仕立てており、そこに関しては予想していたもの、見たかったものとは違った物語になっていて、残念ではあった。

 

それ以上に残念だったのは、物語の構成にある。

前作でも感じていたが、全て「室井を絡めないと話が進まない」というテンポの悪さ。

タカもリクも、そして杏や、町民との掛け合いを、なぜか個別に見せていく。

 

室井以外で話を進められそうな形にすれば、もう少しスムーズに話が進み、問題もいっぺんに片づけるというやり方ができたはず。

しかし本作は、いい意味では丁寧と言えるが、とにかく室井と絡めないと進まないようになっていることにやきもきする。

 

例えば町民の誰かと話しているとき、他の誰かは何をしているか読めない、というか、話が止まってしまっているのだ。

話を動かすには、そこに室井を向かわせないと進まないようになっているから、とにかく話が遅い。

 

例えば、リクのエピソードを動かしながら杏のエピソードを進展させることは可能だったのではないか。

そんな疑問など聞く耳を持たないかのように、タカはタカ、リクはリク、杏は杏十いう具合に、1個づつ片づけていくから面白くない。

 

そうした人間模様ばかり見せているせいで、肝心の事件がどうなっているかが全く分からない。

室井に事件をやらせたいのか、それとも疑似家族としての人間味あふれる室井を見せたいのか、非常に中途半端にことが進むので、全体的に締まりがない。

 

そんな人間模様をいったん休止させ、事件パートに戻っていっても、大したオチもなければ、別に室井がいなくても解決できたんじゃないか?というくらいあっさりした内容に唖然とした。

 

事件の真相は大したことなかった。

室井の家のすぐ近くに埋められた死体は、レインボーブリッジ事件の犯人グループの一人だった。

残りの4人は既に出所しており、特殊詐欺や強盗などの犯罪をしていることが判明。

仲間割れによって殺害されたのではという線で捜査は進められていた。

 

しかし一向に居場所を突き止めることができない。

町に出没しているかも特定できないでいたが、突然犯人の一人から一本の電話が入ってくる。

声の主は、すみれさんに発砲した国見だった。

 

かつての記憶を呼び起こし、国見と断定した室井のおかげで事件はすぐに解決。

 

しかも彼らの背景には、またしても日向真奈美が絡んでいた。

彼らは彼女の信者であることが判り、それによって室井の家の近くに死体を埋めたこともあって、杏への疑いが再び浮かぶようになっていると思われたが、そこは単なる「妄想」の範囲でしかなかった。

 

桜の妄想によれば、全て室井へ仕向けられた罠かもしれないという見立て。

出所して犯罪をやらせ、仲間割れされたのも、その死体を室井の家の近くに埋めたのも、そこ丁度良く杏を向かわせたのも、全て日向真奈美の仕業なのではと。

 

本作はその疑惑を晴らすことなく終えるため、今後の伏線になるのではないかと思われたが、物語は再び室井と家族の人間ドラマへと戻っていく。

 

物語中盤で事件を片付けるくらいなら、そんなものやらなくてよかったのでは?と思ってしまうほど浅い事件だった。

しかし全くないと、今度は「踊る大捜査線」であることを忘れ、目の前にいる室井は室井ではないことすらも思わなくてなってしまうのではないか。

 

だからと言ってこの程度の事件を物語の一部だけで挿入して終わらせるのには無理がある。

そもそも日向真奈美は室井と直接絡んではいない。

あくまで捜査の指揮を執ったのが室井で、実際に逮捕したり対峙したのは青島である。

だから彼女が何かしら計画すべきのは、青島に向けての復讐である方が筋が通る。

よって、元を辿れば室井の物語に彼女を入れてくること自体に無理があるのだ。

 

 

これらを踏まえて、正直映画としての構成や展開、キャラクター描写に至るまで、どれも中途半端で、踊る大捜査線ならではの面白さも全くないことから、個人的には全く楽しめずにいた。

 

とはいうものの、室井の思いを真摯に受け止めた新城は、この秋田県警で室井がやろうとしていた「所轄と一課の差別を撤廃し、迅速に捜査を解決すためのネットワークの構築」を実践することを約束する。

東京にいる沖田も賛同し、室井が果たせなかった青島との約束は、彼らによって引き継がれていく。

 

これまで実直に、そして真摯に向き合ってきた室井だからこそ、周囲の人間が思いを受け継ごうと変わっていく。

 

室井の下で暮らす子供たちも、影でサポートしたことでよそ者扱いを辞めた町民も、そして室井と共に働いてきた同志たちも、こうして室井の思いを受け継ぐことで、彼の意志は「生き続けていく」という着地は素晴らしかったように思う。

 

衝撃のラスト。

そして、本作のラストは涙を流せずにはいられなかった。

リクの父親がリクを奪い返しにやってくる終盤、鉈を持って襲い掛かる父親を家族全員で阻止したものの、父親が話した秋田犬の捜索へ単独で向かう室井。

 

風呂を沸かしといてくれ

そう言い残して吹雪の舞う中一人歩いていく室井。

 

やがて室井は遭難、町の人で結成された消防団や消防隊などを動員して捜索を続けるものの、天候の悪化により翌朝に持ち越すことに。

そこで杏は室井が飲んでいた薬を発見する。

室井は狭心症の疑いがあったのだ。

 

やがて崖の下で秋田犬が吠えている姿を発見したが、室井は意識不明だった。

 

時は経ち、室井が座っていた椅子に花束が置かれている。

そこに制服を着てやってきた新城は、「室井モデル」と題した捜査システムの計画書を持ってくる。

よそ者扱いしていた町の人たちも、室井の「正しいこと」によって感化され、心を入れ替え贐にやってくる。

 

室井は決して暴力を振るわなかった。説教もしなかった。

なのに、彼らは自ら考えることを与えられ、実行し、室井の考えに気付いていく。

いなくなって初めて気づかされていく。

 

室井の最後をちゃんとつくりたい、そんな作り手の言葉から想像はしていたが、こんな幕切れだったとは聞いてない。

そりゃ、泣くだろ普通に。

 

いつか酔っ払って口を滑られた室井の姿で幕は閉じる。

いつかここに大きな家を建てて、子供たちをいっぱい連れてきて、畑を耕したりしたい。

それまで見せていたしかめっ面の室井は一切ない。

とにかく子どもたちとの未来を想像しながら、目の前の事を考えたり苦悩したすることが楽しくて仕方のない室井の姿が、そこにはあった。

 

エンディングで流れる松山千春の「生命」という歌には、子供たち見守る母親の思いがつづられたバラードだが、本作を見ればわかる通り、この歌の歌詞を室井に当てはめて聴くことができる。

室井が加害者や被害者の子供たちに、どんな眼差しで見ていたか。

それは「どうか どうか すこやかな毎日を 与えてください」という、実の親でもない彼の、切なる思いが詰まった瞬間でもあった。

 

これを泣けずにいられるか。

こんな最後を認めたくはなかった。

できれば職務を復帰してほしかった。

しかし、30年近くこの役を演じてきた柳葉敏郎の苦しみも理解しなくてはならない。

 

でも、でも。

 

もう一度でいいから、青島と室井が事件を解決する場所を与えてほしかった。

 

今、そんな思いで溢れている。

 

 

最後に

今回特別ゲストとして、日向真奈美役の小泉今日子と、レインボーブリッジ事件の犯人の一人である国見役のマギーが登場しましたが、それ以外のゲストは登場しませんでした。

 

また衝撃的なセリフとして、恩田すみれ巡査は、警察を辞めたという発言も驚き。

確かにお踊るINALで彼女は警察を辞め、実家に帰るところだったが、青島のピンチに駆けつけるという活躍を見せていました。

あそこでもう一度警察に留まる決意を見せたかと思いましたが、やはり後遺症はきつかったようで。

 

それを室井さんの口から聞かされたのは驚きでした。

 

そして、そして。

映画はそれだけでは終わりません。

室井の訃報を聞き、彼がやってくるのです。

あのグリーンの迷彩コートを着た、あいつが。

 

正直、顔がパンパンで、髪も中分けで、かつてのあの人ではありませんでしたが、確かに彼です。

結局家を訪ねることはできず、呼び戻されてしまうというオチでしたが、あのマーチング調のドラムの音が、確かに「踊る大捜査線」の復活を祝福するかのように聞こえ、旨の鼓動が病みませんでした。

 

1つの物語が悲哀として幕を閉じたのに、再び別の物語が幕を開ける。

正直気持ちが収まりません。

これだから「踊る大捜査線」を嫌いになれない。

 

一体このプロジェクト、どうなるんだ!?室井も、すみれさんもいないんだぞ??

 

うぉ~~~~~!!!乞うご期待だ!

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10