モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ナイル殺人事件」感想ネタバレあり解説 ケネス版はミステリー要素よりも愛の秘密を描く。

ナイル殺人事件

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日本では「見た目は子供、頭脳は大人」な名探偵コナンが大人気。

TVはもちろん、劇場版も年間興行成績ランキングに必ず入るほどの盛況ですよね。

 

さらにここ数年「謎解き」ブームも席巻。

「リアル脱出ゲーム」は、全国でも展開されるイベントとして定着しました。

自分も東京メトロとコラボした「地下謎」シリーズは、かつてハマってましたね。

あれめっちゃコスパ良い遊びなのよw

 

そしてTVでも大人気の謎解きクリエイター・松丸亮吾さんも忘れてはいけません。

 

このように人は皆、謎を解くのが大好きなのです。

 

今回鑑賞する映画は「オリエント急行殺人事件」に続く、ケネス・ブラナー版ポアロ」シリーズの第2弾。

独特な口ひげの名探偵ポアロが、今回は豪華客船で起きた殺人事件を推理していきます。

前作も意外なオチと悲しい過去が描かれていましたが、今回は果たして。

早速観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

推理作家アガサ・クリスティが生み出した名探偵エルキュール・ポワロシリーズの中で、クローズド・サークルの傑作と称される「ナイルに死す」を、監督や俳優として現在絶好調のケネス・ブラナーの手によって映画化。

 

エジプトの神秘ナイル川をクルーズする豪華客船を舞台に、大富豪の娘の新婚旅行中に起きた連続殺人事件が発生。

容疑者は彼女を祝うために参列した者全て。

愛と嫉妬と欲望が絡んだこの事件に、ポアロはどう推理し犯人を特定するのか。

 

今回もケネス・ブラナーが監督主演を務め、これまで築き上げられてきた「ポアロ像」を一新。

「愛のためなら何でもしてしまう人の恐ろしさ」を肌で感じることになるポアロの姿を、舞台出身ならではの演出で躍動的かつ情熱的に魅せていく。

 

また本シリーズは豪華キャストが集結するのも楽しみの一つ。

ガル・ガドットアーミー・ハマーといったハリウッドの第一線で活躍する者から、今後の活躍が期待されるエマ・マッキーアネット・ベニングといったベテラン俳優まで、多様性も含めた布陣で挑む。

 

この事件で「人生を大きく変えてしまう」ほどの衝撃を受けるポアロ。

彼は一体何を見たのか。

 

 

 

 

あらすじ

 

莫大な遺産を相続したアメリカ人女性リネット(ガル・ガドット)は、親友ジャクリーン(エマ・マッキー)から「失業中の婚約者サイモン(アーミー・ハマー)を不動産管理人として雇ってほしい」と頼まれる。

ところが、リネットがサイモンに一目惚れし、2人は結婚することに。

 

リネットとサイモンはハネムーンのためエジプトへ向かうが、ジャクリーンが旅先に現れて付きまとう。

リネットは現地で知り合った私立探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)に相談するが、「まだ事件は何も起こっていない」となだめられる。

 

2人はナイル川を巡る豪華客船カルナック号に乗船するが、やはりそこにもジャクリーンの姿があった。

 

そしてある夜、客船の展望室でジャクリーンがサイモンと激しく口論し、彼の脚をピストルで撃ってしまうという事件が発生。

 

医師のウィンドルシャム(ラッセル・ブランド)がサイモンを介抱し、看護師のバワーズ(ドーン・フレンチ)が取り乱したジャクリーンに付き添うことに。

 

その翌朝、客室で射殺されたリネットの遺体が発見される。

 

容疑者は、結婚を祝うために集まった乗客全員…。

豪華客船という密室で、誰が何のために殺したのか?

そして、ポアロ(ケネス・ブラナー)の人生を大きく変えた≪衝撃の真相≫とは?(HPより抜粋) 

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監督

本作を手掛け、主演のエルキュール・ポアロを演じるのはケネス・ブラナー。

 

ローレンス・オリヴィエの再来と呼ばれ、シェイクスピア俳優として活躍しながら、映画の世界でも俳優に映画監督にと、順風満帆なキャリアを積んでいる監督。

 

それこそ「ヘンリー五世」、「から騒ぎ」、「ハムレット」でアカデミー賞にノミネートされる力を持ちながら、「マイティ・ソー」や「シンデレラ」、前作「オリエント急行殺人事件」と、ヒット作も作れちゃう実力。

 

俳優としても、自身が監督した作品に主演として務めたり、近年で言えば、「ダンケルク」での海軍中佐役、「テネット」での悪役ぶりは記憶の新しいところ。

 

第94回アカデミー賞においては、監督の半自伝的作品「ベルファスト」が作品賞はじめ7部門にノミネートされており、初の受賞に期待が寄せられております。

 

ただ僕は、監督としての彼はともかく、俳優、特に主演の時の彼はあまり好きではありませんw

だって~オリエントの時もそうだけど、終始かっこつけてんじゃ~んw

ユーモア描写入れてもカッコつけなんだも~んw

まぁシェイクスピアとか舞台でガンガンやってた人ですから、そりゃこういうスタイルだよねってのは理解してるんですけどねw

 

なるべく意識せずに堪能したいと思いますw

登場人物紹介

  • エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)・・・≪世界一の名探偵≫明晰な頭脳と鋭い洞察力によって数々の難事件を解決してきた、ベルギー人の私立探偵。トレードマークは独特の口髭。

 

  • リネット・リッジウェイ(ガル・ガドット)・・・≪美しき花嫁≫莫大な財産を持つ、優雅で自信に満ちた美しきアメリカ人女性。親友のジャクリーンから紹介されたサイモンと結婚し、エジプトには新婚旅行で訪れている、財産がある限り誰も信じることができず、サイモンと出会うまで真実の愛を知らなかった。

 

  • ジャクリーン・ド・ベルフォール(エマ・マッキー)・・・≪謎めいた恋人≫魅力的で機知に富んだリネットの親友。フランスの上流階級の生まれだが、現在は貧しい生活を過ごす。サイモン・ドイルに恋をしている。

 

  • ブーク(トム・ベイトマン)・・・≪探偵の友人≫ユーモアのセンスあふれる、ポアロの友人。友人リネットの結婚式に出席するため、母と一緒にエジプトへ。

 

  • ユーフェミア・ブーク(アネット・ベニング)・・・≪過保護な母親≫息子のブークと共に結婚式参列しながら、画家としてエジプト描いている。息子に対して干渉過ぎる一面も。

 

  • ロザリー・オッタボーン(レティーシャ・ライト)・・・≪敏腕マネージャー≫シンガーであるサロメの姪で、叔母のマネージャーをしながら世界中を旅している。機知に富み、若いながら野心家でもある。

 

  • サイモン・ドイル(アーミー・ハマー)・・・≪リネットの夫≫クルーズ船に乗って新婚旅行に訪れる。

 

  • ルイーズ(ローズ・レスリー)・・・≪花嫁のメイド≫メイドとしてリネットに献身的に尽くしながら、自分もいつか上流階級の一員になりたいと願っている。

 

  • ウィンドルシャム(ラッセル・ブランド)・・・≪高潔な医師≫紳士的な貴族であり、物柔らかな医師。かつてリネットと婚約していたが、いまは友人として彼女の結婚式に出席。

 

  • アンドリュー・カチャドーリアン(アリ・ファザル)・・・リネットの財産管理人。

 

  • サロメ・オッタボーン(ソフィー・オコネドー)・・・≪華麗なるシンガー≫リネットとサイモンの結婚式でパフォーマンスするために雇われた、アメリカ人のジャズシンガー。ダイナミックな歌声で人々を魅了する。

 

  • マリー・ヴァン・スカイラー(ジェニファー・ソーンダース)・・・≪花嫁の後見人≫リネットの名づけ親であり後見人。自らも富豪であったが、財産を放棄して共産主義者になる。気性が激しく虚弱体質。

 

  • ミセス・バワーズ(ドーン・フレンチ)・・・≪ワケアリの看護師≫スカイラーの看護師として、つねに彼女を支えている。株の大暴落によって資産を失った過去を持つ。

(以上HPより)

 

 

 

 

 

 

果たして犯人は一体誰なのか。

そしてエジプトとナイル川の美しい景色と、豪華キャストの競演も見逃せません!

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

ケネス愛の劇場であり、愛の激情なお話でしたね。

意外な犯人もいいんだけど、謎解き駆け足過ぎるだろ。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

退屈ではなかったのだが。

友人の婚約相手を略奪した資産家リネットの新婚旅行パーティーに参列した者たちによる連続殺人の行方を、カッコつけおじさんことケネスブラナーが、ただのミステリーではなく「なぜ人は愛するが故に狂ってしまうのか」を取り入れることで、雄大な歴史的建造物と背景と相まって美しくも儚く描写した一級品のドラマでございました。

 

今回予習として1978年版の「ナイル殺人事件」を鑑賞したために、犯人や動機、登場人物といった全容をインプットして臨みました。

もはや「犯人は誰か」という謎解きを楽しむことを捨て、如何にケネスブラナーが本作をリメイクしたのかに重きを置いて臨んだ次第であります。

 

一体どんな改変をしたのかや、どこに軸を置いて描くのか。

そんなことを期待しつつ観賞したわけですが、何より驚いたのはオープニングでポアロ自身が1914年のベルギーでの戦争(第一次世界大戦かな)に参加し、橋を奪還する作戦とその顛末を描くことで、彼にまつわるエピソードが思わぬ形で感動を呼ぶというモノでした。

 

トレードマークである口ひげには意外な秘密が隠されていることが今回明かされるのですが、まさかそれが本作のテーマである「愛の秘密」に繋がるとは露知らず。

そうか、あの独りよがりで自身かで神経質でキザな男にも、そんな過去が…。

 

ラストシーンでは、ようやく彼が「探偵」でなく「人間」として一歩踏み出す手前で終わることで、本作のテーマである「愛」に重みが出たような気がします。

 

 

さて本作は127分ありながら、殺人事件が起きるまでが非常に長いです。

それもそのはず、ポアロ自身がリネットに招待されてパーティーに参加したのではなく、半ば巻き込まれてしまう形になっているため、登場人物の背景や思惑などを見せる必要があり、どうしても事件発生までに尺が必要となっています。

 

これは仕方ないことですし、犯人は誰かを楽しむには、我々もポアロ同様「人間観察」は必須。

ポアロの視線の先にいる人物が今どんなことを考えてるのかや、その後ヒントになるかもしれない些細な癖や所有物、さらには言動に至るまで、隅々覗くための尺だと。

 

 

ただ僕は事件発生から犯人解決、特に犯人特定までの時間が短すぎたのではないかと思ってしまい、前半と後半の時間的且つ情報量のバランスが良くないなぁと感じてしまいました。

 

とにかく後半は駆け足なんですよ。

ジャッキーがドイルの膝を撃ってからの一連の行動は、もっと慎重に見せるべきです。

なぜなら、その間にリネットが殺されていたのですから。

誰がどういう風に移動し、誰と誰が一緒にいたのか、導線はどこを辿ったのかなど、この後行われるアリバイ探しで、観るこちら側が回想したとしても追えないスピード感だったんですよね。

 

また凶器として使用されるベレッタ銃も、ソファーの下に転がったかっとはありましたが、その後行方不明になる流れも結構雑。

結果的にはヴァン・スカイラーのスカーフを盗んで川に投げ捨てたことが分かるんですが、もっと拳銃の行方を捜してくれないと、この後再び事件が起きるかもしれないみたいな胸騒ぎが生まれないんですよね。

ルイーズの死体が発見されても、もしかしたらあの拳銃が?みたいに観衆がドキドキできないですし。

 

また犯人特定の尺も短かったですね~。

全員をデッキに閉じ込めて行われる演出たっぷりの「ポアロ劇場」でしたが、そもそもこれポアロが犯人捜しでなく「愛の秘密」にばかり時間を割いていたせいで犠牲者が増えてしまったわけですよ。

だからまず負い目を感じながら一連の真相を明かし、犯人を睨むなりしてほしかったですね。

 

そして犯人がどうやってリネットを殺したのかをじっくり説明してほしかったです。

犯人を明かすシーンて、我々が予想していた部分との答え合わせじゃないですか。

めっちゃタタタって喋っちゃうんですよね。

誰かが合いの手とか入れずに、ポアロがどんどん喋ってしまう。

 

ピラミッド見学の際に上から石を落としたのは誰かの部分もあっさりですし、いよいよ本題突入となると、回想の映像は入るんだけどめっちゃ駆け足。

○○が実は○○で、○○が○○してるわずかな時間を狙ってリネットを殺害。

その後○○は○○して、あたかも○○であると見せかけたって説明を一瞬で片づけちゃうんですよね。

多分ポアロは気が立ってるんだと思います。

失いたくない人を失ったことに対する激情が芽生えてるから。

だから説明が駆け足になってるのかなと。

 

とはいえ後半はトリックとか謎解き目当てで見に来る人にはちょっと不親切なのかなぁと。

 

愛は人を何でもさせてしまう

ミステリー映画として御座なりになってると難癖付けて語ってる感想ですが、意外と今回の改変は良かったのではないかと思ってます。

 

というのも本作のテーマが「愛」なんですよ。

ケネスはここに重きを置いて描きたかったんだろうと。

そしてこの事件を経てポアロがどう変わっていくのかを描きたかったんだろうと。

 

実は登場人物全員が「愛」に対して何かしらの悩みや嫉妬や憎しみを抱えてるんですよね、

ジャッキーは婚約者をリネットに奪われたことに対する執着心。

逆にドイルは狂気じみたジャッキーからリネットを守るために行動。

ポアロの友人ブークは、旅先で出会ったサロメの姪ロザリーと結ばれたいと願い、そんな息子のためを思って突飛な行動を裏でしていた母ユーフェミア。

表向きは猿芝居だと言っていたものの、本気でリネットを愛していた医師ウィンドルシャム。

好きな人と結ばれたいのに、リネットにより破談にさせられてしまったルイーズ。

ヴァン・スカイラーとパワーズの関係は、共産主義になり財産を捨てたにもかかわらず、何故使用人を雇っているのかという疑問から隠されていた真実が浮かび上がるし、サロメとポアロにも何かが生まれる予感を見せながら進行していくんですよね。

 

もちろんこれらはポアロが犯人を捜すための尋問の際に明かされることであり、これらを明かすことでリネットを殺す動機の可能性を見出したり、彼らがなぜ塞ぎがちなのかが判明するわけです。

 

だから本作のキャッチコピー「愛の数だけ秘密がある」ってお見事だなぁと。

愛にまつわる秘密を皆持ってるということなんですよね。

 

で、これがポアロ自身にも関わってくるんだから素晴らしい。

探偵という職業のために人々の前では色々構えなくてはならないことや、自身の弱みを明かせない事情が彼自身にもあり、それが口ひげに繋がる。

そして事件解決後に見せる彼の姿によって、僕らは「良かったなぁ」と感無量になれる構成になってるんですよね~。

 

 

ただね、これも結局不満になっちゃうんだけど、殺人事件の主軸はリネットとドイルを執拗に付きまとうジャッキー、この3人なんですよ。

どうもこの3人の描写が弱い。

だってジャッキーは好きな人を、友達に取られてしまったんですよ。

お金よりも愛だと語ってるジャッキーは、本来ならもっとトチ狂ってないと。

 

パーティーにしれっと参加しに来たジャッキーを見たりネットは、急に脅えて部屋に閉じこもるんですけど、彼女のしつこさに脅えてるんじゃなくて会わせる顔が無くて部屋に戻ってるように見えるんですよね~。

で、これに対してドイルの態度も弱いんですよ。

お前なんで来た!帰れ!じゃまだ!僕の愛する人を困らせるな!くらい激昂してもいいと思うんですよ。

 

船に乗船した時も、ドイルが盾になって追い払うのが筋だと思うんですよ。

でも、帰国しようと騒ぐリネットをなだめるだけ。

彼女は乗客だ、僕らでは何もできない!みたいに。

 

要はもっとジャッキーが二人を怖がらせて刺激すればいいんですよね~。

それこそパーティ―で暴れるとか、事件発生の時も唐突なんですよね。

ドイルから絡み出してくるんですけど、絡むきっかけがジャッキーの素行の悪さに対してじゃないんで、思い返してみると芝居がかってるんですよね~なんか。

 

しかも膝を撃ってしまった際の取り乱し方も弱いなぁ…。

この後愛する人を撃ってしまったことで取り乱してから意気消沈するんですけど、もっとオーバーアクトでやった方が信ぴょう性出るなぁと。

 

だからこの3人の芝居がもっと激情になれば「愛は人を何でもさせてしまう」っていう説得力が生まれたのになぁと。

 

 

最後に

1937年のエジプトが舞台ですけど、登場人物を多様性なものに配置することで、スカイラーとパワードの愛の秘密だったり、黒人のエピソードが引きだせたので良い改変だったのではないでしょうか。

 

またほぼCGだろうとは思うんでんすが、ナイル川に浮かぶ夕陽やラムセス2世の巨像があるピラミッドなど景色は絶景。

旅行に行けない今だからこそ大きなスクリーンで堪能できる風景だったと思います。

 

しかしミステリーとしては不親切だよね~。

原作読めってことかね。

そもそも有名なプロットですから、そこを再び掘り下げる必要が無かったってことなのかな?。

 

劇中で出た台詞「愛があれば例え嫌いな所も変な所も魅力的に見えてしまうモノよ」。

仰る通りですよ。

なんでもさせちゃうのが果たして愛なんでしょうか。

もしかしたら本作はそんなことを伝えたかったのかもしれませんね。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10