モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

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映画「ノマドランド」感想ネタバレあり解説 心が住める場所を開拓していく旅路。

ノマドランド

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 「リバタリアン」て言葉をご存じでしょうか。

「オバタリアン」ではありません(古いw)。

日本語では「完全自由主義」とか「自由人主義」なんて訳されるそう。

 

訳してみるとなんかリベラルのよう聞こえてしまうんだけど、どうやら経済的平等と個人の自由を重んじるリベラルとは違うらしく「個人の自由を徹底的に追及する」のがリバタリアンの特徴だそう。

 

さらに言うと、経済的自由を重んじ、個人の自由を軽視する保守派とも違う面があるらしく、経済的自由と個人的自由を重んじる。

要するに「右でも左でもない」層にあたるんだそうな。

 

ここ数年「保守VSリベラル」という二極状態が浮き彫りになってますが、そのどちらでもない「リバタリアン」が、現在のアメリカの政治を語る上で重要な位置にいるんだそう。

 

どうやらこの「リバタリアン」が掲げる「リバタリアニズム」という思想が、今回鑑賞する「ノマドランド」に登場する人物たちから読み取れるんだそうな。

 

激動の時代を歩むアメリカの「今」を知る意味でも興味深いですし、ものすごい才能を持ってるとまで言われる監督にも興味があり、今回早速鑑賞してまいりました!

 

 

 

 

作品情報

家を失ったアメリカの高齢者たちが、遊牧民の如く季節労働のの現場を渡り歩く姿を記録したジェシカ・ブルーダーの著書「ノマド/漂流する高齢労働者たち」を、中国北京出身のアメリカ人女性監督の手によって映画化。

 

2008年の金融危機の影響でゴーストタウンと化し住居をと夫を失ったことで車上生活を強いられてしまった高齢女性を軸に、同じ境遇の「ノマド(遊牧民)」たちとの触れ合いや過酷な季節労働の姿を通じて、個人の自由と誇りを雄大な自然の風景と共に描く。

 

世界で最も長い歴史を誇るベネチア国際映画祭で金獅子賞、さらにはオスカーに最も近い賞とも称されるトロント国際映画祭で観客賞を受賞という初の快挙を成し遂げた本作は、並み居る良作映画を抑え各映画賞を席巻。

現在最もアカデミー賞受賞に近い作品と位置付けられている。

 

前作が映画賞43ノミネート24受賞という栄誉、さらにはマーベル映画の監督にも抜擢された新たなる才能クロエ・ジャオが、ドキュメンタリーとフィクションの境界線を越えた、全く新しい表現ジャンルを確立させた。

 

また「スリー・ビルボード」でアカデミー賞主演女優賞を獲得した際の壇上でのスピーチが大きな反響を呼んだ女優が、主演を演じると共に製作にも参加。

自身のスタイルを反映させながら役を作り上げていった。

 

主人公やノマドたちの過酷で自由な旅路を通じて、今何が起きているかや新たな時代が訪れていることを噛みしめることができるであろう、2021年のマストムービーです。

 

 

ノマド: 漂流する高齢労働者たち

ノマド: 漂流する高齢労働者たち

 

 

 

ノマドランド (オリジナル・サウンドトラック)

ノマドランド (オリジナル・サウンドトラック)

  • 発売日: 2021/02/19
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

 

あらすじ

 

企業の破たんと共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーン(フランシス・マクドーマンド)は、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。

 

その日、その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく──。(HPより抜粋)

 

youtu.be

 

 

 

監督

本作を手掛けるのは、クロエ・ジャオ。

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北京生まれイギリス育ちでアメリカに移住された経歴を持つ中国系アメリカ人だそうです。

 

デビュー作「Songs My Brothers Tought Me」は、サンダンス映画祭でプレミア上映。

大けがをしたカウボーイが自身の生きる意味を探す物語「ザ・ライダー」はカンヌ国際映画祭でアート・シネマ賞を受賞。

他様々な映画賞で評価されたそうです。

 

ザ・ライダー (字幕版)

ザ・ライダー (字幕版)

  • 発売日: 2018/11/07
  • メディア: Prime Video
 

 

この映画の評判によって、MCUフェイズ4に大きな役割を果たすであろう作品「エターナルズ」の監督に抜擢された監督。

そっちの方が僕としては大いに期待を寄せてますが、まずは本作とこの「ザ・ライダー」は要チェックですね。

 

本作に関して監督は、圧倒的に白人で保守派が強い土地に住むノマドたちを描いたことで、トランプ支持者たちの人間味を強く描いているという意見に対し、政治的メッセージは一切ないと主張されています。

 

トランプ支持者の多い土地での撮影だったそうですが、何か災害が起きた時に政治思想など関係なく、みんなで生き延びるしかないということを描いてるそう。

違いよりも共通することが多いはずの私たちは、失われてしまったアメリカ開拓精神を彼らを通じて伝えたいと語っています。

headlines.yahoo.co.jp

 

 

 

キャスト

本作の主人公ファーンを演じるのは、フランシス・マクドーマンド。

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ファーゴ」、「スリー・ビルボード」でアカデミー賞主演女優賞を受賞した大女優さん。

 

今回の役柄は、「もしマクド―マンドがノマドだったら?」という想像を軸に、彼女自身を投影した役作りになっているそう。

劇中に出てくるアイテムは彼女がノマド生活で使いそうなものをチョイスしたものだったり、お皿は彼女の私物、編み物セットも実生活で使ってるものなんだそう。

 

しかもファーンの妹役を古くからの友人が演じているそうで、劇中での激しい口論はこのことを知っておくとマクドーマンドの素に近いリアルなシーンが予想されそう。

 

ちなみに旦那さんのジョエル・コーエンは登場しないとのこと。

キャスティングしたいという監督の要望を断ったらしく、自分の中にあるものから引き出すのが俳優の仕事である一方で、作品に合うようにイメージした役作りだから、旦那と共演することで役作りに対する必要性がないからだそう。

 

あくまで一人のノマド労働者を演じたいという彼女の強い意気込みが感じられますね。

実際に労働者として工場やキャンプ地の整備係などで働いたとも語られています。

 

ほとんどの出演者がノマド労働者たちというドキュメンタリーに近い作品。

女優と彼らがどんな化学反応を起こすか楽しみです。

headlines.yahoo.co.jp

 

 

 

 

他に「グッドナイト&グッドラック」のデヴィッド・ストラザーンがデヴィッド役で出演します。

 

 

 

 

 

 

 

日本人である私たちも、こんな生活を余儀なくされる時代が来てもおかしくない本作。

悲観的でなくポジティヴなメッセージであることを期待したいですが果たして。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

心の中に家はある。

喪失を抱えながらも、まだ出会ったことのない人たちや景色を見て、人生の何たるかを歩むロードムービーでした。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺にはこんな生活できない

夫も色も街も失ったファーンの車上生活から始まる物語は、アリゾナの雄大な自然を惜しみなく背景として映し出すと共に、様々な場所で出会った仲間とのかけがえのない友情を育む美しい姿と相反して、短気の仕事をこなしながら孤独を背負う姿をも容赦なく描くことで、社会から追い出されたとはいえこういう生き方をすることで安らぎや豊かさを得ることができることを教えてくれたポエティックな作品でございました。

 

 

ファーンとデイブ以外は皆素人。

実在する人物がファーンにノマドとしての生き方や極意を伝授しながら、「さよならじゃない」とハグをして再開を望む。

 

ドルと市場に首を括りつけられながら生活するのならば、いっそのこと車に詰めるだけ詰め、その日暮らしの金を稼いだ方が、身も心も身軽なのではないか。

そして同じ境遇の仲間を見つければ、手を差し伸べて助け合えればいいのではないか。

 

仲間と再び会うまでの日々は、辛く過酷なものかもしれない。

しかし自身の心の中には、寄り添える思い出がある。

アメリカの大自然が生んだ荒野と夕焼けに浸れば、いつでもそこに還ることができる。

 

ハウスは失なったかもしれないが、ホームは失ってはいない。

ファーンは、ただ居場所を失ったからノマドになっただろうが、還る場所は失っていなかった。

なんて強い人なんだろう。

 

 

 

はい。

レビューっぽく書いてみましたが、ダメですねw

というわけで、オスカー候補作品を堪能してきましたが、一言で言えば「俺はまだこんな生活はしたくない」ってのが率直な感想です。

 

確かにアメリカの雄大な自然をあれだけ美しく描いて悠々自適な生活を送ってるシニア層の人たちを見てると、俺もこんな老後を送って死ねたら最高だよなぁとは思いましたが、仕事にやる気がないとはいえ、まだバリバリ働き盛りだし、恋も趣味も時間の限りに費やしたい身分ですから、こういう価値観だったり生き方だったりってのを提唱されても、そこまでの共感は得られなかったのは仕方のない事です。

 

 

まぁ冒頭から衝撃でしたね。

街の住民ほとんどが働いていた企業が金融危機により倒産したってだけで、町全体が消滅してしまうという。

郵便番号まで消えちゃうって日本じゃあり得ないよなぁと。

さすがアメリカ、規模が違うといったところでしょうか。

 

 

夫を亡くして最低限の荷物でハウスレス生活を送ることになるファーンは、アマゾンの工場で日銭を稼ぎながら社内のRVパークで車中泊。

 

雇用期間が終われば月額300ドル近くを払えば泊まれるらしいですが、せっかく稼いだ金が一気にとんじゃうので、出会った仲間リンダ・メイの伝手を頼ってボブ・ウェルズが主催するRTRっていうRV生活を送る人たちが集うコミュニティに参加。

 

ここでデイブやスワンキーといったそれぞれ事情を抱える人たちと友情を育んでいくんですね。

 

ファーン自身、夫とともに過ごした場所から離れたくない気持ちが強かったですが、彼らからノマドの精神だったり極意だったり心得だったり生き方に触れていく度に、「家」とは何かってことを考え出していくんですね。

 

例えばボブのコミュニティで出会ったスワンキーは小細胞ガンを患った過去のため、余命7~8ヶ月と言ってました。

鳥が大好きで無数のツバメが飛び交う姿を湖の上で見ることが出来たら死んでもいいだなんて語ってましたが、彼女にとってはそこがホームだということなんでしょう。

 

デイブも気ままな車上生活を送ってましたが、息子の子供が生まれることを聞かされると今の生活を続けるべきか悩み始めます。

父親をちゃんとしてこなかった恥じらいが彼をそうさせていたことが明かされると、ファーンはなるようになるからと背中を押したことをきっかけに息子の家に定住しはじめます。

彼もまたそこがホームだということを認識したのでしょう。

 

コミュニティ主催のボブに至っては息子を5年前に自殺で亡くして以降、誰かに話すこともままならないほど喪失感を抱いていますが、ノマドたちに手を差し伸べることが息子の供養になる=自分の安らぎになることに気付き、それが自分のホームであることを語ってます。

 

ファーンは彼らの話を聞いて、心に宿しているはずの「家」を探しに旅を続けていくんですね。

かつてアメリカに移住し始めた開拓者のように。

 

一時は車が故障して姉に頼るシーンもありましたが、そこに留まることなく旅をつづけ、ようやく決心して倉庫に入れっぱなしだった家財道具を処分。

家の裏側から見える広大な風景を目に焼き付け、旅を続けるのであります。

 

冒頭から最後まで、ファーンの顔つきや目のか輝きの変わり様と来たら。

ここまで人を変えさせることができるのか車上生活よ、と。

 

 

正直、社会的に追いやられた彼らからアメリカの現状を知るための映画だとばかり思ってましたが、全然違いましたね。

ドキュメンタリー調ではあるものの、しっかりとしたドラマ。

 

監督の前作「ザ・ライダー」を鑑賞して臨んだ甲斐もあり、素人さんたちの表情をナチュラルに映したり、テレンス・マリックを彷彿とさせる自然の魅せ方は本作でもおしっかり引き継いでましたね。

 

また、彼らに溶け込むように芝居をするマクドーマンドの自然な存在感。

外で用を足したり、車内でバケツに排泄したり、時には全裸で川で泳ぐなど、自身を惜しみなく露わにした演技もすごい(実際にはしてない気がするけど)。

アマゾンで働いてもコインランドリーでたそがれても、蛾が群がる洗面所で髪を切っても普通のおばちゃんにしかみえません。

 

日本じゃこういう生活ってかなり難しいんだろうけど、アメリカではルールさえ守れば寛容なんですかね。

一般道路や施設での勝手な車中泊はダメなんでしょうけど、RV生活を送る人用に設備が整ってる辺りから、ノマドでもそうでない人でも安心して暮らせるというか。

 

リバタリアンについて

さて、冒頭で書いた「リバタリアン」やら「リバタリアニズム」について本作で描かれていたのかどうかですが、ストレートに描かれていたかというと答えはNOでした。

 

途中でも書きましたが、あくまで現状の問題を浮き彫りにした映画ではなく、こういう生き方をしている人たちを肯定しているかのような映画でしたし、彼らの豊かさを全面に出した作品でした。

 

とはいえ、ボブが途中で語った通り、社会から追い出された老いぼれだからこそ、経済や市場に振り回されずに自由に生きる人たちがあれだけいるということは、やはり避けて通れない部分なのかなと。

 

実際にファーンは夫がまだ生存していれば、会社が倒産などしなければ車上生活などしなくて済んだわけで、彼らのようなノマド民が増加した背景には経済的困窮の問題は避けて通れないわけです。

格差社会がこのまま野放しになれば、ノマド民の人口も増加するだろうし、やっぱり本作をただのドラマだけで考えるのはもったいないというか。

 

登場する人物たちは皆白人ばかりで、評論家からトランプ支持者を描いてるという批評に反発した監督でしたけど、事実ラストベルト地帯に住む白人ブルーカラーは恐らく職を失った怒りをトランプが救ってくれたと思い込んで彼らに投票したなんて言われてるけど、彼らはきっと今後車上生活を選択して、個人的自由と経済的自由の両方を尊重するリバタリアンになるなんて未来もあるのかもしれない。

 

ファーンが住んでいたネバダ州のエンパイアも企業城下町として形成された街で、会社の倒産により街が無くなってしまったことを考えると、ラストベルト地帯も似たような地域であるが故に、これまで保守派だった人たちがノマドになっていくことを考えると、完全自由主義に思想が変わるかもしれないし、本作はアメリカのそう遠くない未来を描いてるのかもしれない。

 

とまぁ、自分で投げてみた疑問をかなり強引に書いてみましたが、あくまで教養のない僕の妄想であり過大解釈なんでw

なんせ、本作のために2時間くらい記事読みまくって5%くらいしかこの政治思想を理解してないんで…。

 

 

最後に

あくまで本作は、何もかも失った主人公が死に場所を探すまでの残りの人生を動機ルカにフォーカスを当てた、ポエティックに描いたリアルな映画でしたが、自然を上手く使ってマジックアワーの照明を最大限に活かしたいわばファンタジーとも思えちゃうんですよね。

 

個人がたどり着いた答えにいちゃもん付けるわけでもないんですが、現実的に彼らはあの後どうやって生きるのかって近い将来を考えると「素晴らしい映画」だけでは片づけられないよなぁと。

 

あんな固いベッドで寝ていたら体なんてすぐ悪くなるだろうし、メシも栄養バランス偏り過ぎていて病気になりがちになるだろうし、何より明日を生きる保証がない。

急な資金調達が必要になったらどうするんだ?死を待つだけなのか?

心は豊かかもしれないけど、それだけで生き抜くほど世の中甘くねえぞって思えて仕方ないです。

 

こんなことを思えるのは、やはりスワンキーとデイブの立ち位置があったからとも。

最後まで路上で生活して死を迎えるか、それとも子供に引き取ってもらうか。

彼らが登場したから色々考えさせられるのかなと。

 

決して本作を否定するつもりは毛頭ないんです。

年齢的な価値観による疑問というか。

きっと老後を迎えてひとり身になったらこの映画が沁みるんでしょうね。

 

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10