しあわせな選択

5月に行われるカンヌ国際映画祭の審査員長を、パク・チャヌク監督が務めるというニュースがありました。
韓国映画界は「新作の製作がされてない」ほど興行が大変な状態になってる中、芸術や文化という点ではとてもいい情報だと思います。
そんなパク・チャヌク監督が、去年のヴェネツィア国際映画祭に出品し話題を呼んだ1作。
なんでも再就活する羽目になった中年が、とんでもない行動に出るというブラックユーモア満載の1作。
僕は監督作品をそこまで見てないんですが、「お嬢さん」のようなユーモアを想像すればいいのでしょうか。
実は前作「別れる決心」が全くダメだったんで、あまり期待値上げずに臨もうと思います…。
今回もアカデミー賞ノミネートを期待されてましたが、前作に続きかすりもしないという結果も残念。
せめて国際長編部門はいけるだろうと予想してましたが、こちらもふがいない結果に。
パク・チャヌク監督はオスカーに嫌われてるのか?
とにかく社会人は必見の作品になってそうな本作。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
ドナルド・E・ウェストレイクの小説「斧」を、「オールド・ボーイ」でカンヌ国際映画祭グランプリ、「別れる決心」で同映画祭監督賞を受賞した韓国の名匠パク・チャヌクが90年代のアメリカから現代の韓国に置き換えて実写映画化。
CJ ENMスタジオが製作を、NEONが北米配給を担当、最高のエンターテインメントを世界に放った。
妻子持ちで順風満帆に暮らす普通のサラリーマンが、長く務めた貨車を突然解雇され、その後中々再就職先が決まらないことで常軌を逸した決断をしてく姿を、AIやグローバル化といった現代的テーマに、家族ドラマ、スリラー、さらにパク・チャヌク作品としては異例の弾けるユーモアを取り入れたサスペンスドラマ。
本作についてパク・チャヌク監督は、「観客が質問できる映画を作りたかった。現代韓国における中産層の人生の最低ラインはどこなのか。どれくらい人生の営みを重ねたら、人間らしい人生と思えるのか。つまり、この男が守りたいものは具体的に何なのか」と語る。
90年代に原作を手に取って以降、映画化に向けてずっと模索してきた監督が、AIや機械によって仕事が奪われてしまうことがありふれた日常になった今に、問題を投げかける。
叩き上げで今の地位を手に入れたにもかかわらず、あっけなく解雇を言い渡されてしまう主人公マンス役を、「JSA」「コンクリート・ユートピア」のイ・ビョンホンが演じる。
他にも、危機が迫るほど強くなるマンスの妻・ミリ役を、「私の中の頭の消しゴム」、大人気ドラマ「愛の不時着」のソン・イェジン、製紙会社の班長・ソンチュル役を、「The Wicth魔女」、「コンフィデンスマンKR」のパク・ヒスン、再就職を望む男・ボムモ役を、「ソウルの春」のイ・ソンミン、その妻アラ役を、「無垢なる証人」「野球少女」のヨム・ヘラン、業界の実力者・シジョ役を「毒戦 BELIEVER」、「奈落のマイホーム」のチャ・スンウォンなどが演じる。
No other choice=他に選択肢がないという原題の本作。
「しあわせな選択」のはずなのに、どうして選択肢がない話になるのか。
外国人問題で揺れる日本も、「彼らに仕事が奪われる!!」という声が選挙のたびに出ますが、本当に仕事が奪われてしまうのか。
韓国の物語なのに身近に感じてならない作品、かもしれません。
あらすじ
製紙会社で働くマンス(イ・ビョンホン)は、美しい妻ミリ(ソン・イェジン)と2人の子ども、2匹の犬と郊外の大きな家で理想的な人生を送っていた。
しかし、25年間にわたって堅実に仕事をしてきたマンスは突然、会社から解雇を言い渡される。
必死に築いてきた人生が一瞬で崩壊し、1年以上続く就職活動も上手くいかず、自宅も手放さざるを得ない状況に。
追い詰められたマンスは、成長著しい製紙会社に飛び込みで履歴書を持ち込むが、そこでも無下に断られてしまう。
自分こそがその会社に最もふさわしい人材であると確信するマンスは、ライバルがいなくなれば仕事が手に入るのでは、という衝撃のアイディアを思いつく。(Movie Walkerより抜粋)
感想
#しあわせな選択 鑑賞。外国人問題で揺れる日本でも起きやしねえや心配なシニカルサスペンス。自分が採用されないからって次々と候補を殺めるんだけど、イ・ビョンホンがまぁ頼りないというか情けない中年で面白い。数こなすうちに手慣れていくのも面白い。… pic.twitter.com/i47hjgqhC5
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) March 6, 2026
リストラされました、家族を子供たちをせっかく手に入れた家を、そしてこれまでの安定を守るため、お父さん、面接にきたライバルたちを殺します。
ずっと我慢して手に入れた幸せをこれからも守るため、我慢してきたこともやめていくのが滑稽。
色々これ見よがしな演出やってますけど、編集も構成も展開もかったるくて嫌いな映画でした。
以下、ネタバレします。
物語の枝葉が多すぎる。
製紙会社がアメリカの企業に買収され、リストラされてしまったマンス。
高卒ながら科学の単位を夜学で取得し就職、たたき上げで班長という地位を手に入れたこの25年、彼は家庭を守るために一生懸命働いてきたのだろう。
酒もたばこも我慢し、観葉植物の手入れといった地味でそこまで金のかからない趣味。
妻は社交ダンスやテニスをたしなみ、彼女の連れ子である息子も大きく育ち、娘は天才的なチェロの才能を秘めているが、家族は一度もちゃんと聞いたことがない。
2匹のゴールデンレトリーバーを買いながら、庭付き3階建ての大きな家に住むという、日本の中流家庭でも手に入れるのが難しい、裕福な暮らしを送っていた。
職を失うということは、コツコツ積み上げてきたステータスが全て失われてしまう可能性が非常に大きい。
ぶっちゃけ、怖いだろう。
俺は独り身だから失うのもカバン1つ程度のものだが、いざ家長ともなるとそのプレッシャーは計り知れない。
だからこそ家族の理解や支えが必要なわけで、マンスの妻ミリも応援や励ましの声をかけてフォローしているところをみるに、この家族は夫の失業程度で傾くような浅い絆ではないことが窺える。
しかし物語を追っていくと、再就職にありつけない。
13か月も経ってしまっている。
食いつなぐためにマンスはアルバイトのようなものをしているようだが、それだけでは生活費や家のローン、ライフラインの支払い、さらに妻のダンスやテニスの費用、娘のチェロ教室代、挙句の果てには犬二匹にかかる費用も賄えない。
本作がおかしいのは、13カ月も絶ってるのに、未だにマンスが面接を受ける会社がこれまで務めてきた製紙業界に固執している点だ。
家族を生活をそして家を失いたくないのなら、藁にも縋る思いでみんなを路頭に迷わせないくらい稼げる仕事を探すのは当たり前のことだと思う。
しかしマンスはどうしても諦めきれず、新聞に偽の広告を打ち出し、同じく製紙会社に再就職しようと応募してきた競争相手を、キャリアの良い順に殺そうと試みるのである。
いま世界では移民を排除しようという動きが活発に行われている。
理由は様々なだが単純に移民が増えると自国民の仕事が失われるからだ。
その波は日本にも流れていて、ついに選挙でも争点になるほどだった。
確かに今やコンビニエンスストアの店員のほとんどが外国人だ。
国籍を移したのかはたまたビザが切れるまでなのか理由は色々だと思うが、レジに立つ日本人の姿は都心ではほとんど見かけない。
果たしてこれは外国人が仕事を奪った結果なのだろうか。
また、人間の代わりにAIが担うことも増えてきた。
人を雇うより機械の方がコストも削減できれば利便性も高い。
気が付けばファミレスの料理を運ぶのも機械だ。
これもAIに仕事を奪われたということなのだろうか。
本作の主人公マンスに至っては、そう考えている。
ライバルを消せば、自分が採用されると思っている。
自分が経験してきた技術を「専門職」だと言い張り、会社に貢献できると。
しかし企業側はその技術が必要ではなく、機械を動かす技術を必要とする。
それでもマンスは製紙業界にしがみつき、自分こそふさわしいと豪語する。
原題はNo Other Choice=他に選択肢がないという意味。
冒頭マンスが抗議するアメリカ人も「ノーアザーチョイス」と言っていたが、そのセリフとは恐らく捉える者が違うだろう。
要するに、マンスにとって競争相手を殺すことしか選択肢がないということを意図したものだ。
そして我々は思う、本当にそうか?と。
まず私が彼なら、競争相手ではなく自分を解雇に追い込んだアメリカ企業の重役に対して何かしらの復讐をする。
それをしたところで何かを得ることはないが、恐らく腹の虫がおさまらないから行動するんだろう。
お前さえ俺をクビにしなきゃこんな目に遭わなかったんだ、俺の人生を返せと。
だが、マンスはそれをせず、競争相手に照準を合わせるのが本作の画期的な部分だと思う。
その後のマンスは、一人目こそ偶発的に成功するが、二人目、三人目となるとスムーズに計画、実行を移せるようになっていく。
警察に目を付けられたり、庭に死体を埋める所を息子に見られたり、それを妻に知られたりと、逮捕される可能性や家族崩壊の危機など、次々にマンスにとって不都合な事態が訪れるが、物語は意外にも家族が共犯関係を結ぶという、本来とは違った形の絆が映し出されていく。
就職に成功したマンスを見送る妻と息子の表情は、冒頭とは違う固さが見て取れる。
人を殺したという罪を一生背負いながら「かたちだけのしあわせ」を送る彼ら。
AIを駆使して工場を仕切るマンスの姿は、本当に彼が手に入れたかった姿なのだろうか。
なんでこんなに面白いと思えないんだろう。
物語を追いながら、マンスという男の中にある「こうでなくてはいけない」という人間像を見つめてみました。
確かに25年もやってきたモノを奪われたら取り戻すことに躍起になるし、25年かけて手に入れた妻、家族、家、そして何より大事な「安定」を守ろうと躍起になりますよね。
本当なら、家を売れば、車を1台にすれば、それまで実は贅沢だったことを減らせば、家族の形だけは守れるんですよ。
あんな顔して仕事に行くマンスを見送らなくて済んだんですよ。
だけど、それができなかった、要はプライドですよね。
観葉植物とか地味な趣味をやってるけど、中身はしっかり昭和男子の価値、見栄です。
劇中でもマンスがこれまでたくさん我慢してきたような姿が見て取れますね。
面接でも「僕の短所は嫌ですといえないところです」っていうくらい、溜まってるものがあった。
酒を断ち、タバコを絶った。
おかげで貧乏ゆすりが止まらないわけですよ。
きっと彼が見る理想の男は、そういうものに我慢しないのが「男らしさ」だと。
最初こそ息子にあまりムチャな要求してこなかったけど、彼が捕まってしまった際に「自分で考えろ」とか「女を守ってこそ男だ」みたいなことを言うわけですよ。
そういう思考が、彼にノーアザーチョイスさせてしまったのだろうと思えてならないわけです。
ある種の中年の危機みたいなもので、時代にアップデートできないとか譲れないモノが邪魔して落ちぶれていくってのが本作の見どころだったりするんでしょうかね。
ただですよ、俺はもう終始退屈で退屈で・・・。
まずね、本作の物語が動く最初の大きなところは「1人目の男を殺す」所だと思うんですよ。
それまでにマンスにどんなことが起きて、どう失敗が続いて、どう選択肢がなくなって、殺害しようと考えるのか、そして実行に移すって流れを見せるんです。
ここまでの過程がね、長いの!
これをさ、なんか全部一個ずつ見せていくのがかったるくて!
しかも途中娘のチェロ教室がどうとか寄り道しだすし、一人目の男を殺害するために色々ストーキングするんだけど、家と彼の家の往復が多すぎるし、殺害した後も後始末するために、社交ダンスパーティーと彼の家を行ったり来たりと化するしさ~全部怠い!
さすがに移動を端折ってる節が見えるけど、そういうことじゃねえ。
なんならよ?もういきなりリストラされて路頭に迷ってるところから描けよと。
冒頭からウナギ焼いてバーベキューとかいらんのですよ。
てかぶっちゃけ家族たちの描写をもっと排除しても良い。
マンスという冴えない中年が男に目覚めるまでを、家族に知られないように映していく方がスムーズで面白いはず。
いや、それだけじゃ面白くねえな。
これ俺しか感じてないかもしれなんだけど、字幕がおかしくなかったですか?
これは感覚でしかないんだけど、脈絡のない会話に聞こえたり聞き慣れないワードで訳されてたり、全体的にリズムの良くない訳になってる気がして。
それがつまらなさを加速させてて、物語に没入できなかったんですよ。
ユーモアのある会話も、理解はしたけど別に笑えるわけでもなく。
何人か笑ってましたけど、それが会場をかっさらうようなことになってないってことは、あまりハマってない人も結構いたんじゃないだろうか。
確かにイ・ビョンホンの情けない姿は滑稽でしたよ。
でっかい植木鉢を持ち上げて叩き落そうとするんだけど、住人に見られて「これ買います」って言ったりとか、一人目をさっさと殺害できなくて、奥さんと3人でわちゃわちゃしちゃう構図とか、奥さんの浮気を疑ってパンツ嗅いだりとか、それまで見たことのないイ・ビョンホンが詰まっていたように思えます。
太陽光がマンスを差す演出とか、爆弾酒を一気飲みする様をジョッキの中から捉えるショット、小さくなった家族を上から見つめる意味深な演出など、パクチャヌク流の不可解な映像が多々見られましたけど、それがいったい何を指すのかわかりません、
寧ろどうでもいい、そんなことより抑揚とかスピード感とか編集を何とかしてくれ。
最後に
「別れる決心」でも思ったけど、やっぱりかったるいんですよね~パクチャヌク。
JSAもおもろかったし、オールドボーイもお嬢さんも好きなんだけど、今回も前作も全く面白みを感じないです。
そこまで年取ってないですよね?キレがなくなった?
彼の芸術的センス、わからなくなってきたなぁ。
テーマだけで考えれば色々思える作品でしたよ。
そこは面白かったんじゃないですか。
殺害方法が3人目になると面倒なことをしてる感じ、だいぶ自惚れてるなぁと。
窒息させるためにひき肉詰めて酒流してって、そんなことしなくても窒息できるでしょうに。
僕としてはちゃんとマンスに落とし前をつけて終えてほしかったですけどね。
事件の顛末が偶発的だし、それはあまりにも都合が良すぎるというか。
次の彼の作品を見て、追いかけるかどうか決めようかな。
やっぱり僕は韓国映画は厳しい見方をしてしまうようです。
でも業界は応援します。滅びるなよ、韓国映画。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10

