モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「オットーという男」感想ネタバレあり解説 オリジナル版の方が泣けるって!!

オットーという男

これまでの人生でめんどくさい人、気難しい人、遭遇したと思います。

学校、職場、それこそ家の近所など。

いちいち文句言ったり説教し始めたり、難癖までつけてきたり。

 

ぶっちゃけあまり関わりたくないですよね。

でも、ときどき思うのです。

なぜそのめんどくさい人は、めんどくさくなってしまったのかと。

 

今回鑑賞する映画は、なんでも嚙みつくことで町で一番の嫌われ者となってしまった男が、正反対の性格の女性によって、生きる希望を見出していく物語。

 

都会に住んでいると、近隣の人と接することが本当になく、本作のようなふれあいを描く物語が、自分にどんな影響を及ぼすのか楽しみです。

 

どうやらオリジナル版があるようなので、予習をふまえて観賞してまいりました!!

 

 

作品情報

スウェーデン在住のベストセラー作家フレドリック・バックマンが執筆した小説「幸せなひとりぼっち」。

妻を亡くし、生きる希望を見失った偏屈で孤独な男が、近所に越してきたイラン人女性とその家族と交流することで再生を図る姿をユーモラスに描いた映画として、スウェーデンで大ヒット。

第89回アカデミー賞では、外国語映画賞とメイクアップ&スタイリスト賞にノミネートする快挙を成し遂げた。

 

そんな本作に惚れ込んだトム・ハンクスがプロデューサーとなってリメイク権を獲得。

嫌われ者のイメージがない彼が、眉間にしわを寄せながら嫌われ者を熱演。

喜怒哀楽を絶妙に表現する芝居によって、主人公にどんどん感情移入していく。

 

監督は「プーと大人になった僕」で失った心をかつての友達によって取り戻していく主人公の姿を、やさしく温かく描いたマーク・フォスター

トムが持つ卓越した演技とユーモア性の二つをバランスよく演出し、誰もがほおっておけない、好きにならずにいられないキャラを生み出す。

 

どこにでもいそうな変わり者は、他者によってどのように変化を遂げていくのか。

人生をあきらめようとした男の再起の物語に、感動してください。

 

 

 

 

あらすじ

 

いつもご機嫌斜めなオットー(トム・ハンクス)は、曲がったことが大っ嫌いで、近所を毎日パトロール、ルールを守らない人間には説教三昧、挨拶をされても仏頂面、野良猫には八つ当たり、なんとも面倒で近寄りがたい男。

 

それが〈オットーという男〉。


そんな彼が人知れず抱えていた孤独。

仕事もなくし、最愛の妻にも先立たれたオットーは、妻の後を追って自らの人生にピリオドを打とうとする。

 

しかし、向かいの家に引っ越してきた家族に邪魔され、死にたくても死ねない。

それも、一度じゃなく二度、三度も…。

 

世間知らずだけど、とにかく陽気で人なつっこく、お節介者の奥さんのマリソル(マリアナ・トレビーニョ)は厳格なオットーとは真逆な性格。

 

苦手な車の運転や、小さい娘たちの子守を頼んでくる。

この迷惑一家の出現により“自ら人生をあきらめようとしていた男“の人生は一変していく――(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

 

感想

妻を亡くし、自分のためだけに生きてきた男が、誰かのために生きる素晴らしさを見出す物語。

トム・ハンクスってこんなイライラおじさんの役もできちゃうんだね!

でもオリジナルの方が好きですね。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

オリジナルとの比較

ルールを乱す者を「バカモノ」扱いしながら地域の治安を見守る男が、お向かいさん夫婦と交流を深めていくうちに「生きる目的」を見つけていくハートフルなドラマは、芸達者トム・ハンクスの眉間のシワ具合で激オコ頻度を感じながら、お向かいさんのメキシコ系移民マリソルが徐々にそれをほぐすしたり諭したりしていく過程がソフトな笑いを運び、センチメンタルなラストによりじわっと心に響く感動の物語でございました。

 

本作の観賞前日にオリジナル「幸せなひとりぼっち」を鑑賞して臨んだ私モンキー。

全体的なプロットはほぼ一緒だったために、これはオリジナル版の方が好みだなぁという印象を受けました。

 

本作はオリジナル版で明かされていった主人公の生い立ちや妻との馴れ初め、突如起きた事故や、妻の体が麻痺してもなぜ教師になりたいのかといった過去の部分を、幾度となく回想シーンを挟むことで、丁寧に主人公の出自を描いた作品でした。

 

悪く言えばしつこいほどの回想だったために、進行速度が遅かったのは残念ではあったものの、主人公がなぜクソまじめなのかやいつまでも死んだ妻に依存してるのかをしっかり受け止められることができたのは好感を持てました。

 

しかしながら本作は、そうした回想シーンを極力省き、全体的にスムーズに進行することを優先した作品だったように思えます。

主人公に関する情報を必要最低限の尺で収めることで、オリジナル版よりはラフな深み、よりスッキリさを求めた作品だったと思います。

 

いつも映画を見る際「長すぎる」「端折れ」だなんて文句を言うことが多い僕なんですが、本作は総じて「短すぎる」という印象を強く受けたわけです。

 

 

ただ本作の改変も良い部分は多々あったので、その辺を語ろうと思います。

まずはトム・ハンクス自身の演技でしょう。

 

オリジナル版は59歳という設定でしたが、見た目はもっと年上に見える姿となっており、怒りっぷりがよりリアルになっていた感じがしました。

 

その点トムハンクスは、恐らく年齢はオリジナル版と変わらないと思いますが、まだ現役で働けそうな見た目となっており、どんなに町のあちこちで治安が荒れた状態を見て怒っても、まだどこか可愛げがあるように見えました。

 

そう思えた大半はトムハンクス自身の人柄を知っているというパブリックイメージによるものだとは思いますが、フレンドリーな印象を持つ彼が冒頭から怒っていても、怒り具合が緩和されていて、そのギャップからユーモア性が増していたように思えます。

 

またマリソルからチキンをもらったりクッキーをもらうシーンがありましたが、頬張った時の「う~ん」という漏らし声は絶妙でしたね。

今から自死しようとしてる時でも、飯を食べればまだリアクションできる余裕があるんじゃねえか!という面白さをこの「う~ん」で表現できていたような気がします。

 

とにかく、オリジナル版の主演の俳優さんは見た目がだいぶ年上に見えてしまっていることで、何に怒っても「老害」チックに見えて不快だったんですけど、本作はトムハンクスが怒っても、まだ茶目っ気があるように見えるんですよね。

 

だからマリソルの子供たちと遊んでも、猫と絡んでも、病院でピエロに歯向かったとしても、幾度となく自死に失敗しても、まだ可愛げがある=ギャップによるユーモアが生まれるんですよね。

これはプロデューサーも兼ねたトム自身のセルフブランディングの賜物だと思います。

 

他にもお向かいさんのメキシコから移住してきたマリソル一家たちも改変しております。

オリジナル版は中東から移住してきた家族でしたが、本作はアメリカが舞台もあってメキシコに変更。

しかもマリソルは大学で学士を取得するほどの学力を持った女性という設定になっており、ステレオタイプになってないのが現代的。

 

そんなマリソルのテンションが凄くよかったですね。

オリジナル版のお向かいさんは一時感情的になるところが見えたんですけど、本作のマリソルは怒る表情よりも泣く表情の方が多かった気がします。

またオリジナル版のお向かいさんは、女性でありながら決して主人公に引かない姿勢という強さを秘めたタイプの女性でしたが、本作のマリソルはチャーミング先行型の愛嬌の良さが目立ったお母さんでしたね。

 

多分ですけどオリジナル版のお向かいさんのような態度だと激オコトムハンクスの場合、対等にならないと判断したのではないか、だからより愛嬌の良いお向かいさんに改変したのではないかと推測します。

そうすることで対人関係にマイルドな空気感が生まれ、掛け合いもソフトな笑いにできたのではないかと。

 

 

細かい点で言えば、オットーが持っている1964年発行の25セント硬貨に意味を持たせた件は良かったと思います。

オリジナル版でも病院でピエロが違うコインを渡したことで揉めるシーンがあり、何故主人公が同じコインにこだわるのかが不透明だった(多分深い意味はなく同じものを返して欲しかっただけかも)んですが、このコインにしっかり意味をつけることで、オットーが妻にこだわっている理由が強く表わせたように思えます。

 

このコインは妻との馴れ初めのシーンで登場した硬貨で、2人の近づけた非常に大事なモノ。

冒頭からオットーが出かけるたびにこのコインを持っていくカットが何度も挿入されてるんですが、回想シーンでどういうモノかを明かし、ピエロに執拗に返却を求めた理由がしっかり浮き彫りになっていくんですよね。

じゃあ、なんでそんな大事なモノをピエロに貸すんだ!?という野暮なツッコミは控えましょうw

 

また終盤の展開に関しても、若干の変更がされていました。

オリジナル版は元親友で自治会長の座を争った犬猿の仲である男性が、介護職員から強引に要介護を判断され、それに主人公が盾突く姿を描いてましたが、本作は要介護という点では一致しているモノの、誰も介護できる人がいないことから物件を売却させようと企む不動産会社の連中という設定でした。

 

ダイ&メリカ不動産という社名ですが、オットー曰く「ダイアメリカン=アメリカ死ね」という訳し方もできる名称になってるんですね。

アメリカはこうした人たちも含めた国民で成り立ってるんだ、そう簡単に死なねえよアメリカは、みたいにも取れるラストだったのではないかと。

きっともっと深い意味合いがあるんでしょうけど、僕の知識と思考では思いつきませんw

 

またここでうまく登場させるのが、SNSで活躍するジャーナリストの姿。

プラットフォームから飛び降り、電車に惹かれて自死しようと試みていたオットーだったのですが、直前で体を悪くしてホームに落ちてしまう男性を発見、誰もが撮影に夢中になってる中、オットー自ら救出するというシーンがありました。

オリジナル版でも同じようなシーンだったんですが、そっちは地元の記者という設定だったんでんすよね。

でもSNSで発信するジャーナリストという設定が現代的であり、ラストでもオットーら地域の住民と不動産会社の連中が対立する姿を、そのまま生配信するという姿は非常に現代的で効果てきめんだったのではないかと。

 

こうした改変は良かったのではないかと思いました。

 

やっぱりオリジナルの方が泣けるんだよなぁ

ここからは不満だった点の詳細を語ろうと思います。

 

上でも書きましたが、本作は必要最低限の尺で回想を描いているため、オットー自身がどれだけ妻を愛しているかや、自治会長との因縁、その原因が車メーカーによるものという可笑しみ、そしてオットーの出自そのものを省略した作品となっていました。

 

必要最低限の回想に留めた分、エンディングは観衆をウェットにさせるための尺に使っていたのは、演出含め良い判断だったと思いますが、結果的に小さくまとめた感じが強く残りました。

そもそもマーク・フォスター監督自身、僕からすれば職人監督の人だと思っていて、凄く手堅く作ったようにしか見えなかったんですよね。

確かに上手な運びとドラマメイクになっているんだけど、深みは感じられない、そんな作品だったんですよね。

 

それに対してオリジナル版は、主人公オーヴェの過去をちゃんとディテール込みで描いてるから、なぜ彼がそこまでして怒るのか、亡くなった妻に依存してるかが凄く理解できるし共感してしまうんですよね。

 

妻との馴れ初めに関しても本作はサクッと見せてしまっています。

軍に所属することができず背中を丸めて帰宅する際中に出会ったソーニャ。

わざわざ落とした本を帰りとは逆方向の電車に乗ってまで返すその真面目さに惚れたのだと思うんですが、ここからすぐディナーにありつき「君に好きなモノを食べさせたくて」というオットーの優しさに感動し、ソーニャはキスをしてしまいます。

 

オリジナル版も出会い方は若干違えどほぼ同じなんですが、もっとソーニャの表情を捉えた会話になってるんですよね。

そもそもオーヴェは女性に対して不器用な部分が垣間見え、その姿にときめくソーニャの表情をしっかり見せてるんですよ。

こういう姿をちゃんと見せているから、ディナーでのキスは驚きと感動が沸くんですよね。

 

これをサクッと見せてしまうのがホント勿体ないんですよ本作は。

凄くドラマティックだったんですよ、オットーとソーニャの馴れ初めは!

 

求婚のシーンも学校の卒業式でですけど、あそこも真面目で不器用な主人公の性格がしっかり出たシーンで、ソーニャもそんな彼を理解してるから「ちゃんと言って」って背中押すんですよね。

そういう相思相愛な関係を見せてほしかったなぁと。

 

またオットーの若かりし頃を、トム・ハンクスの息子(トールマン・ハンクス)が演じてるんですよ。

今回が本格的な俳優デビューだそうなんですが、同じが名優なのに表情が乏しすぎていて残念でしたね。

初めてなんだからとは思いますが、もっとできるだろうと。DNA受け継いでるんだからやれんだろとw

 

結局、オットーがなぜこんな性格になってしまったのかってのを、本作は明確に描けてないんですよね。

妻が亡くなったからに留めてしまっているように感じてしまうわけです。

実際はもっと悲しい出来事があったり、親父譲りの性格だったりっていう過去があるのに、本作は見事に端折ってしまっていて、オットーが抱く悲しみを疎かにしてしまっているように感じました。

 

 

最後に

マーク・フォスターの手堅くまとめてドラマにする手腕は認めますが、だいぶオリジナル版の良さを殺しちゃってる感は大きかったなぁと。

 

それでももっとアメリカチックに、現代的に改変したのは良かったと思いますし、何よりトム・ハンクスと猫の相性はこちらの方が抜群に可愛らしいw

 

オリジナル版は「もっと必死に生きる」ということを亡くなった妻が言っていたことに、お向かいさんから教えられるというカタチでした。

しかし本作は、かけがえのない人を無くし孤独を抱える人が、自分のために生きることに固執しこじらせてるわけですが、前へ進むためにはこうした他者との触れ合いが大切だということを前面にした作品だったのかなと。

 

もちろん本作も泣けますけど、オリジナル版の方が泣けるんだよなぁ…。

あまりにも大切な人を亡くしてるからさぁ…

是非オリジナル版も見てくださいw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10