オーバーロード
J.J.エイブラムス制作の戦争アクション映画が、もしかしたらクローバーフィールドの続編なんじゃないか!?
という映画ニュースが報道されましたが、結局のところクローバーフィールド全く関係ないっていうね。
してやられたよ、JJ!!
いや勝手に思い込んでたこっちが悪いのかwまぁいいや。
一応日本では、ゾンビが出るって宣伝するとお客さんが入らない、というジンクスがあるようでして。
ブラピが主演した「ワールド・ウォー・Z」も、がっつり感染したゾンビだかアンデッドだかが山のように登場するんですけど、それを伏せて宣伝した結果大ヒット。
本作も「ナチスが秘密裏に人体実験かなんかしてる」ってだけで、そこから先は一切言及しないまま宣伝しているのです。
なので、僕も直接なことは言いませんが、お察しくださいw
はい、一応ノルマンディー上陸作戦を舞台にした内容ということで、がっつり戦争映画です。
そこにどんな要素を混ぜてエンタメにしたのか。
「最前線物語」とか「遠すぎた橋」とかを初めて鑑賞して、戦争映画オモロ!ってなってるんで、非常に楽しみです。
というわけで早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
第二次世界大戦下、ノルマンディー上陸作戦が開始された直後を舞台に、寄せ集めで作られた落下傘部隊が、ナチスが作り上げた今まで見たこともない敵と遭遇し、戦士たちが勇気ある戦いを仕掛けていく本格ミリタリーアクション。
製作には「スター・ウォーズ/ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー」のJ.J.エイブラムス。
これまでにたくさんのヒットコンテンツを手掛けた彼が新たに挑んだのは、戦争映画を入り口に、これまでにない猟奇的な映像とアクションを掛け合わせた新たなジャンル。
ナチスがもたらす残虐性にさらに拍車をかけた演出は、大胆な試みとひねりのきいた作風に仕上がっており、観る者に胃が縮むような恐怖を植え付けていく。
さらには終盤怒涛のアクションシーンが施されていることで、これまでになかった戦争アクション映画に仕上がっている。
若手キャストと斬新な設定により完成された今作は。きっと映画ファンの記憶に残る映画となるだろう。
あらすじ
1944年6月、ヨーロッパを圧政するドイツを駆逐するため、連合国遠征軍によるノルマンディー上陸作戦が開始された直後、第101空挺師団は、ある重要な密命を帯びていた。
彼らの任務はドイツ占領下のフランス・シエルブランという村に降り、連合軍の通信を妨害している教会の電波塔を破壊することにあったのだ。
だが戦闘機は敵兵からの激しい攻撃をくらい、兵士たちは敵の領土へと散り散りに落下していった—。
地上に降り立った師団のひとり、エド・ボイス二等兵(ジョヴァン・アデポ)と、 作戦の指揮をとるフォード伍長(ワイアット・ラッセル)たちは森でクロエ(マティルド・オリヴィエ)という名の女性と遭遇する。彼女は、ナチスの科学者が“研究”と称し、村の住民たちを教会に送り込んでいるのだ、と言う。
タイムリミットまで、残された時間はわずかしかない。
教会の内側から塔を破壊するため、ナチスの目をそらし、フォードとボイス、そしてクロエは基地へと進入する。
しかし、そこで彼らの前に立ちはだかったのは、今まで見たこともない敵だった。 (HPより抜粋)
監督
今作を手掛けたのはJJ!ではなく、ジュリアス・エイヴァリー。
今回で長編映画2作目の作品だそうで、デビュー作はユアン・マクレガーが主演したクライム・アクション映画「ガンズ&ゴールド」。
刑務所で出会った二人が金塊強奪計画に乗り出す、というお話だそうで、監督の出身国オーストラリアを舞台にした王道クライムものだそう。
ちゃっかりアリシア・ヴィキャデルも出演しているので、一見の価値があるかも。
きっと銃撃戦とかガンアクションが得意なんでしょうね。
今作で活かされればいいなぁと期待しております。
キャスト
主人公エドワース・ボイス二等兵を演じるのは、ジョヴァン・アデポ。
はい、まったく知りませんw
今作でわかるの一人くらいしかいなくて・・・w
とはいえ、お金のかかったアクション映画作れる土台があるハリウッドはほんといいなぁと。
日本じゃまず無理ですからね。
おっと、愚痴は置いといて。
彼はまだキャリアが浅く、そこまで本数に出演していないようなんですが、デンゼル・ワシントンが監督主演した映画で、アメリカで生きる黒人家族の人生や関係を描いた「フェンス」や、日本での公開が中止となり話題となった「マザー!」などに出演しています。
ほかのキャストはこんな感じ。
ルイス・フォード伍長役に、「エヴリバディ・ウォンツ・サム」に出演し、カート・ラッセルを父に持つワイアット・ラッセル。
隊を村へと導く女性・クロエ役に、新人女優マティルド・オリヴィエ。
ティベット役に、「マネー・ショート」のジョン・マガロ。
ワフナー博士役に、「ゴースト・イン・ザ・シェル」でバトーを演じたピルー・アスベックなどが出演します。
いったいどんなアクションとホラーになっているのか楽しみです。
というか敵がナチスってのが久々ですよね。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
これだからJJプロデュースは楽しい!!
戦争映画のリアルさを見事に表現しながら、後半とんでもねえ展開になっていく新たなエンタメ映画の誕生でした!!
以下、核心に触れずネタバレします。
戦争映画として秀逸。
ノルマンディー上陸作戦決行後、生き残った兵士たちだけで教会の妨害電波を阻止する任務を遂行していくが、現地の教会で見たナチスの恐るべき陰謀に戸惑いたじろぐ。
そして匿ってくれた女性クロエの弟ポールが連れ去られたことで、任務はより困難なものへとなり変わっていく。
多勢に無勢という状況下で、果たして彼らは無事ミッションを遂行できるのか、というのが簡単なあらすじ。
冒頭、昔の戦争映画でも見るかのようなタイトルロゴから、無数の戦艦とその上を舞う戦闘機たちの絵面にまず拍手であります。
最近では「ダンケルク」が当時の戦争描写を見事に表現しておりましたが、こちらもその点では負けておりません。
目標地点まで輸送機の中で待機している兵士たちが、ナチスぶっ飛ばしてやるぜ!と息巻いていたり、ビビっている奴をおちょくったりという戦争映画でよく見る光景から、それぞれのキャラクターをあぶりだしていく手法は、お決まりながらも非常にわかりやすい。
その後ナチスからの攻撃を受け、予定より手前で降下することになるのですが、徐々に機内の揺れが大きくなり、空は戦火で覆われ、これが戦争なんだという恐ろしさを掻き立てます。
着々と降下準備に入るも動揺を隠せない兵士たちは、さっきまでの落ち着きなどとうに忘れ、緊張のあまり嘔吐したり上官の命令を無視したりと様々。
やがてナチスの攻撃は度を増し、輸送機も被弾されてしまう非常事態。
被弾により息絶えてしまう兵士もおり、戦争ムードが高まっていきます。
とうとう輸送機も墜落せざるを得ない状態まで被弾し、兵士たちは急いで落下。
主人公ボイスはなんとか落下することに成功します。
ここのカメラの視点がボイスを正面から映すんですが、不格好に落ちていく様を捉えながら、辺りは思っていた以上のドンパチ状態。
しかも時間が夜ということもあり、端々で燃え上がる戦火がなんと美しいこと。
陸での燃え盛る火の渦とは対照的に、川に落下したボイスの映像は、緑がかった青を強調した水中映像になっていて、これまたオツ。
上映開始10分足らずで、我々を戦争の最前線へと誘ってくれるこのシーンに、僕は舌を唸らせました。
その後もこの作戦が如何に険しい道のりなのかを教えてくれるシーンの連続。
ナチスの兵士に囲まれた上官が軽いジョークを言いながらも、どうにもならない状況に「ついてねえな」と吐き捨て射殺されるむごいシーンがあれば、
落下に失敗した兵士たちが森の中で木につるされたまま死んでいる無残なカット、
さらにはわずかに生き残った兵士が、戦争が終わったら書き溜めた日記を本にして一般市民にこの戦争がどういうモノだったか教えたいんだぁ~、
と将来の夢を語っている途中に地雷を踏んでジエンドという、夢見てねえで今を見据えろと戦争の現実をまじまじと見せつける描写もあり、序盤はガチの戦争映画として楽しませてくれます。
戦争に行く前の訓練で、ネズミの駆除すらできなかった主人公ボイスの視点で描かれる本作は、戦争の怖さ悲惨さ恐ろしさを彼を通じて教えてくれます。
なんで俺はこんなとこに来てしまったのか、
なんて恐ろしい場所なんだ、
果たして俺は無事家に帰れるのか、
ボイスの弱腰な動きや表情からからそんな心情が見て取れます。
そんな彼を鼓舞するのが伍長のフォードであります。
上官を殴って異動してきたフォードは、生き残った兵士の中で一番階級が上ということから、集まった兵士たちを束ね命令を下していくんですが、現状に怯えるボイスには特に気にかける姿が印象的です。
フォードはいかなる状況だろうが任務最優先を考えに持っており、仲間がピンチでも情に流されず突き進んでいくザ・ソルジャーであります。
他にも、ひたすらガムを噛みながらボイスをいじるティベットや、カメラマンとして戦争に参加したチェイスとともに、目的地の村まで向かっていきます。
戦争映画から別の映画へとスライドしていく中盤。
一体この映画が、どういう流れになっていくか。
既にUS版のトレーラーを見てしまった僕はその真相がわかっていたために、いつ奴らが出てくるのかドキドキしていたわけなんですが、事はそう早いテンポで進んでいきません。
森の中で出会った女性クロエの協力により、家に匿ってもらうんですが、この人数で作戦を決行するか、はたまた決行時間が迫っているからこの人数で教会へ向かうか、という決断の時が近づいている状態。
とりあえず手分けして兵士を探したりしますか、ってことで、ティベットとチェイスは外へ繰り出します。
ナチスの将校ローゼンフェルドがクロエを訪ねにやってきます。
クロエに手を出そうとしているのを、屋根裏部屋から覗き戦況を見守るフォードに対し、ボイスは一刻も早く彼女を救いたいという気持ちが先行し、フォードをふり切って助けに向かってしまうんですね~。
良いですよ~、戦争にビビっているにもかかわらず人を助けたいというボイスの気持ちが見えた瞬間です。
彼らに存在を知られてしまった以上、作戦決行は急務ってことで、外へ出ていった二人を探しに出かけるボイス。
気が付くと教会の前まで来ていました。
そこでは研究対象になっていた村人が外に放り出され、バーナーで焼かれているではありませんか。
うわぁ~嫌なもん見ちゃったよぉ~さぁ~て帰ろう、と思った瞬間、犬に見つかり、仕方なく前を走っていいたトラックの荷台へ駆け込みます。
なんとそのトラックには死体の山が積んであるではありませんか。
しかもトラックは教会の中へ。
このままでは捕らえられてしまう!というわけで施設の中へ潜入するボイス。
はい、ようやく奴らがお目見えするんですね!
ゾクゾク!
巧く兵士たちの眼を掻い潜って研究室までたどり着くボイス。
牢屋でうめき声を出している男を覗くと、血まみれなのに死んでいるように生きているではありませんか。
おいおいなんなんだここ。
確かにクロエのおばちゃんも顔がぐちゃぐちゃだったな。
しかもローゼンフェルドも村人に生きる意味を与えたとか言ってたけど、それがこれなのか?
すると奥の方で女の声が。
カーテンを開けると顔だけの女がしゃべっているではないか!!
うわっ!!怖っ!!
おいおいおいおい俺なんてとこ来ちゃったんだよ~てかナチス何やってんだよ~!!
つり下げられた大きな袋から滴る血、恐る恐る中を開けるとぐっちょんぐっちょんの人間が助けて・・・と言うではないですか。
博士の行動を見ていると、どうやら村人を捕まえて血清のようなものを注射し、おかしな人間を作り上げていることが分かります。
道中で仲間のジェイコブを助けることに成功。
いったん引き上げます。
無事帰還したボイスは、平常心を保てない状態でフォードに何があったか報告。
それを聞いたフォードは、一体ナチスは何を企んでいるのかを聞きだすために、ナイフの突いたカイザーナックルを付けてボッコボコに拷問。
良心の塊であるボイスはフォードを制止しようとしますが、マッチョイズムなフォードを止められるわけがありません。
彼を使って教会へ突入しようと、チェイスはつるし上げで放心状態のローゼンフェルドを降ろそうとしますが、意識のあった彼によって銃弾を浴びて死んでしまいます。
ここで血清をチェイスに投与するボイス。
教会にいた死んだように生きている人たちのように蘇生するはず、願いは見事に通じたわけですが、何やらおかしい。
あれ?オレ軽傷だったの?あ~良かった、水頂戴、と一気に飲み干したのは良いものの、水筒を片手でペシャンコに。
しかも急に暑いなぁと言い出して薄着になるチェイス。
すると腕の血管がどんどん浮き出してきて、首筋から骨が飛び出てきます。
頭痛い!
頭痛い!
おい!
てめー!!
一体俺に何したんだ!!
とボイスに詰め寄ります。
ものすごい力でボイスの首を絞めるチェイスをみて、もはやチェイスではないと悟ったフォードは彼に向かって乱射。
それでも起き上がるチェイス。
見るに見かねてボイスはチェイスの頭を銃の柄でガンガン叩きます。
ナチスはこんな人間を製造しようと企んでしたのです。
ニタニタ笑うローゼンフェルド。
千年帝国を築き上げるためには、千年生きることができる兵士が必要なのだ、がっはっは!!と高笑い。
そしてクロエの弟ポールを人質に逃げられてしまうのでした。
自分たちの存在がナチスの部下にまで知られた以上、もたもたしてる暇はない。
教会を爆破するために一刻も早く向かうぞ、とフォードは命令しますが、ボイスがポールを助けることを優先しなければと上司の命令に背きます。
ここでうまく割って入るティベット。
二つの任務を遂行したら生存確率ゼロに近いけど、成功したら最高の気分じゃない?
ようやく折れるフォード。
クロエと救助したジェイコブを入れた5人で、教会爆破とポール救出作戦を決行するのであります。
ようやくゾンビの実態が垣間見えたわけですが、そこまでの過程も序盤の戦争映画一色の時の緊迫感同様に、スリル満点の内容でした。
村に入るときもナチスが見回りしていたり、重傷であるクロエのおばちゃんのうめき声が薄気味悪かったり、うっかり教会に潜入してしまう羽目になるボイスの件など、どこか潜入捜査をしているかのような、スパイ映画を見ているかのような緊張感がずっと続いているんですよね。
要は、バレたらTHE ENDって状態を保ちながら、この世のものとは思えない人物を目の当たりにし、緊迫に恐怖を重ねた空気を作り観客を煽る見事な演出。
またこの中盤からグロさが際立っていきます。
教会の施設で実験台にされている人間たちを包み隠さず映しますし、ゾンビ化したチェイスの頭をぐちゃぐちゃにするのもそのまま映してます。
後半からはさらにグロさが増していくわけで、特に血清を打ったローゼンフェルドの醜い顔はマジで怖いですし、檻から出てきた「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」のウェポンXIみてえなスキンヘッドゾンビが襲い掛かってくるシーンもゾクゾクものだし、ローゼンフェルドVSフォードの拷問逆状態でのシーンも直視できない映像。
前半戦争映画➡中盤任務アクション➡後半ゾンビホラーへとジャンルがスライドしていく一風変わった映画でしたが、これを見事に一つにまとめ緊張感あふれるエンタメ映画に仕上げた監督とJJのプロデュース力には脱帽でございました。
最後に
後半のお楽しみは劇場で見ていただくとして、グロい映像に耐性のある人ならかなり楽しめる映画だったのではないでしょうか。
特にボイスの弱々しくも根っこは正義感の塊だったっていうキャラ描写や、
何お前最初あんなに弱っちい奴だったのに急に逞しくなりやがって、けっ!しょうがねえお前の正義ってやつに乗っかってやるか!ニヤ、なティベットの心変わり(少年ポールと心をつないでいく描写も微笑ましい)、
俺の命令は絶対だ!戦争は遊びじゃねえ!友達や女の命なんかにかまってんじゃねえ!任務最優先だ!な伍長フォードもボイスに感化され、
寄せ集めのチームがやがて一つになって作戦に向かっていく、仲間モノ友情モノの素質も備わった映画でしたね。
フォロワーさんからこれ「フロム・ダスク・ティル・ドーン」だよ、っておっしゃっていて、なるほど、この劇中での変化球感は、確かにそれの遺伝子を含んだ内容だったなぁと観ながら感じていました。
できれば後半はもっとカオスな展開にしてほしかったなぁというのが不満でもあります。
あれだけ施設で実験台にされているゾンビがいるのだから、1体ずつ出させるんじゃなくて、ワンサカ登場させて怯える兵士たちって構図があっても良かったし、もっと阿鼻叫喚な描写を入れたらさぞゴキゲンな映画だったろうなぁと。
とはいえですよ、前半の戦争映画描写は大好きなんで簡単にここがダメ!みたいな気持ちは全然なくて、マジで楽しかったんで是非見てほしいなぁと心から思っております。
お金かけてB級映画作りました、って感じだけど、僕としては全然A級です。
あのね、施設から逃げるボイスのクライマックスの長回しがすごいのよ。ここはアガった!
いつもながらグダグダと書いてしまいましたが、GW後の弛んだ気持ちをスカッとさせてくれる楽しい映画でした。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10