パディントン 消えた黄金郷の秘密
結構マジな話、パディントンがいたら世界は平和になると思ってる。
これだけ紳士に振る舞い、礼節を重んじ、他者に優しさを与える。
おっちょこちょいだし、お風呂の排水溝がしょっちゅう詰まってしまいそうだけど、今の人間にはないモノを持った存在なんだから、彼がいれば争いもなくなるんじゃないかと思ってしまうわけですよ。
そんな英国公式認定の紳士「パディントン」の3作目がお目見えです。
今回はロンドンを離れて故郷ペルーで叔母さん探しを家族で行う物語だそう。
「マッシブ・タレント」のニコラス・ケイジ同様、2作目っ大号泣した身としては期待しかありません。
彼の優しい心に涙したいと思います。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
1958年に発行されて以降150タイトルも出版され、アニメやグッズなどを通じて世界中で愛されてきたマイケル・ボンド原作の児童文学を実写化した3作目。
クマだけど中身な立派な紳士の主人公パディントンが、行方不明となったおばさんを探し出すため、お世話になってるブラウン一家と共に故郷ペルーで大冒険を繰り広げる姿を、英国ユーモアをふんだんに盛り込みつつ、パディントンのルーツを辿っていくシリーズ史上最大のアドベンチャー。
1作目と2作目を手掛け、抜擢された「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」ではティモシー・シャラメをパディントン化させたポール・キング監督は、本作で製作総指揮と脚本を担当。
変わって抜擢されたのは、本作で監督デビューを果たしたドゥーガル・ウィルソン。
初めての監督業に不安が絶えなかったが、馴染みあるスタッフや魅力的なキャストに温かく迎えられ、仕事ができたと語る。
またロケーションでは南アフリカに滞在しながら、舞台となるペルーの名所などで大規模な撮影敢行を行い、はしゃぎまわるパディントンのアクションが映えるような映像を生み出すことに成功した。
キャストは、パディントンのCVを「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」のベン・ウィショー、「ノッティングヒルの恋人」のヒュー・ボネヴィル、「リトル・ダンサー」、「メリー・ポピンズ:リターンズ」のジュリー・ウォルターズ、「ハリーポッター」シリーズのスラグホーン役でお馴染みジム・ブロードベントらが続投。
またこれまでブラウン夫人を演じてきたサリー・ホーキンスに代わって、「シャッターアイランド」のエミリー・モーティマーが担当。
他にも、「ベイビーガール」のアントニオ・バンテラス、「ファーザー」、「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマンらが出演する。
故郷ペルーを訪れたパディントンがどんな冒険を繰り広げ、どんな結末を迎えるのか。
涙なしでは見られないクマの大冒険をご堪能ください。
あらすじ
ロンドンでブラウン一家と平和に暮らしていたパディントン(CV:ベン・ウィショー)のもとに、故郷から1通の手紙が届く。
育ての親のルーシーおばさん(CV:イメルダ・スタウントン)の元気がないというのだ。
パディントンとブラウン一家が休暇をとってペルーへ行くと、ルーシーおばさんは失踪、里帰りは一転、彼女を探す冒険へと変わる。
だが、都会暮らしになれてしまい野生の勘を失ったパディントンは次々と大ピンチに遭遇。
果たしてルーシーおばさんを見つけることができるのか?
そして、パディントンを待ち受ける「消えた黄金郷の秘密」とは?(HPより抜粋)
キャラクター紹介
- パディントン(声:ベン・ウィショー)
ペルーからロンドンへやって来て、ブラウン一家の一員となったクマ。"紳士な"性格から街の人気者に。ついに正式に英国民と認められる。 - ブラウンさん(ヒュー・ボネヴィル)
リスク管理の保険会社に勤める。新しいボスに「リスクは友達よ」と諭され、パディントンと一緒に冒険へ飛びこむ決意をする。 - ブラウン夫人(エミリー・モーティマー)
冒険物語のさし絵画家。大らかな性格で、想像力豊かで好奇心旺盛。家族がバラバラになっていくのに危機感を覚えている。 - バードさん(ジュリー・ウォルターズ)
ブラウン家に同居する親戚。口は悪いが心根は温かい。一手に引き受けていた家事と子育てが一段落し、やりたいことリストを実行中。
- ジュディ(マデリン・ハリス)
ブラウン家の長女。大学進学と同時に家を出る予定で勉強中。ペルー旅行も論文にまとめるべくトラベルログの作成を怠らない。 - ジョナサン(サミュエル・ジョスリン)
ブラウン家の長男。「チル」したいと部屋にこもりきり。動かずに生活できる道具を発明して特許出願中。ペルー旅行で久々に外へ。 - グルーバーさん(ジム・ブロードベント)
アンティークショップの店主。自身も移民だったために、パディントンの良き理解者で、何かと親身に相談にのってやる。 - ルーシーおばさん(声:イメルダ・スタウントン)
幼い頃、川に流されて迷子になったパディントンを引き取り育てあげる。老グマホームで穏やかに暮らしていたはずが行方不明に。
- ハンター・カボット(アントニオ・バンデラス)
ペルーの観光ボートの船長。イケオジでユーモアに溢れて魅力的だが、秘密の匂いを漂わせている。黄金郷関連に激しく反応する。 - ジーナ・カボット(カルラ・トウス)
ハンターの娘。ボートの操縦だけでなく、何でも器用にこなす働き者。父親のことが大好きだが、人に言えない心配事を抱えている。 - 老グマホーム院長(オリヴィア・コールマン)
ギターと歌が得意で、入居者に対して明るく親切、シスターたちをまとめる一見理想的なリーダーだが、言動がどこか怪しい。
(以上HPより)
ケモナー必見の3作目。もしかしてこれで最後になってしまうのか。
ここから観賞後の感想です!!
感想
#パディントン消えた黄金郷の秘密 鑑賞。ブラウン一家と共にペルーを訪れての大冒険。相変わらずおっちょこちょいなパディントンに癒されるもかつての面白さと感動はかなり薄れる。特に家族の特性を活かすお決まりのパターンが弱い。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) May 9, 2025
ちゃっかりヘイリー・アトウェル出てんじゃん。 pic.twitter.com/9sIa9L513q
インディジョーンズよろしく、ペルーでパディントンがしっちゃかめっちゃかの大冒険!!
しかしロンドンを離れたこととブラウン夫人役の交代、そして監督の交代が、大きな弊害を生んだように思える。
以下、ネタバレします。
こんなもんじゃないだろう。
ポール・キングは脚本に専念、サリー・ホーキンスもスケジュールの都合で降板と、続編でよくある交代劇に一抹の不安を感じていたが、その不安は的中したというのが率直な感想。
元気のないルーシー叔母さんに会いに、はるばるペルーへやってきたパディントンとブラウン一家が、行くへ不明となったおばさん探しのためにジャングルを彷徨う中、ガイド役のハンターが一族の呪いによって欲を出すことで、さらに困難を極めていくというのがざっくりしたあらすじ。
鍵となる地図が黄金郷=エルドラドを指しており、そこを目指す中で家族とはぐれたり、呪いと葛藤するハンターの一人芝居を見せながら、ともに旅を続けるパディントンの安定のおっちょこちょいぶりにクスっと笑いがこみあげる。
しかしながら、シリーズお決まりの家族の特性を全く活かせてないことはもちろん、パディントンがロンドンの培ったはずの「礼儀」や「作法」によって突きつける社会性が大きく失われており、せっかく専念したはずの脚本がどこか「やっつけ仕事」でもしたのかというほど、シリーズのクオリティが落ちてしまっていると感じました。
僕がパディントンで感動したのは、古典的な喜劇を用いて笑いを取る姿勢と、移民としてやってきたパディントンが誰よりも紳士である行動をすることで変化する周囲の「優しさ」をちゃんとみせること、そして何よりも歯車のように伏線回収される家族の特性を生かした物語の組み立てが素晴らしかったからです。
今回それが大きく薄れてしまったのはなぜなんだろうと頭を抱えてしまいました。
特に感じたのは、家族を活かせてない点。
お父さんはリスク管理部門の担当になり、上司から「リスクは友達」だという概念を植え付けられてしまう。
夫人は家族が共に過ごす時間が減ってしまったことに悲しさを感じている。
娘は大学進学のための準備、息子は部屋から出ずにチルってるという設定。
シリーズでは毎回おばさんに出す手紙を読むパディントンが、家族の近況を我々画に伝える仕組みは今回も同じで、それがどう物語に活かされていくのか楽しみだったんですが、活かされたのはお父さんと息子程度。
乗った飛行機のタイヤが出ないトラブルを回避するために手動のハンドル口を開くと、紫タランチュラが出現、蜘蛛が苦手なお父さんは躊躇するが、リスクは友達という概念に感化され、意を決して蜘蛛を素手で捕まえ、挙句の果てには顔にくっつくという最悪なシチュエーションを迎えるが、なんとか回避してトラブルを解決する。
息子は部屋で動かないための発明を数々製作しており、飛行機の窓を覆ってしまった大きな葉を剥がすため、てこの要領で動く掴み棒を作って取る活躍をしたり、たどり着いたエルドラドでマーマレードを作るための機械を作ってクマたちに振る舞う見せ場がありました。
いつも通り設定を物語に組み込んだ見せ場が用意されていたものの、その特性を活かした見せ場に対しての驚きもなければ意外性もなく、過去2作であったような活かし方にはなってなかった印象が強かったです。
そして夫人と娘に至ってはこれといった見せ場が無かったのも残念。
夫人は基本ジャングルで不安な表情をしてばかりで、草むらの中で怪しい動きをする人影を対処するために率先して前に出る行動はあったものの、過去作でサリー・ホーキンスが見せたような肝っ玉ぶりは見受けられません。
娘に至っては写真撮影と旅行用の記録をする程度で、家族のためにそれが活かされたような部分も薄ければ、行動もない。
またサリー・ホーキンスにあった強い母性と献身的な母親像はほぼなく、もしかしたらパディントンはこのまま故郷に残ってしまうのではないかと危惧して悲しむ姿を通じて、やがて離れていく子どもたちの巣立ちを受け入れる覚悟をする程度。
その巣立ちという部分も本作では何か回収されるわけでもなく、母親としての役目や活躍、そしてかつてあった夫人の映画内における頼もしさは、交代劇によってかなり薄れた印象です。
そしてパディントンが持つ優しさを通じて伝えるメッセージ性も弱かったです。
今回ハンターが娘か財宝かで悩まされる役柄だったことから、ともに旅をすることになったパディントンが、彼に「何が大切か」を伝える瞬間がありましたが、シリーズで伝えられた我々への気づきとなるメッセージ性は乏しく、どう考えても娘が大事なのは目に見えてるシーンで当たり前のことしか言わないセリフは、全く響きませんでした。
相変わらずのパディントン
不満ばかりが出てしまう本作ですが、やはりパディントンの持ち味である「おっちょこちょいぶり」は今回も健在で楽しかったですね。
冒頭、パスポート申請のための証明写真撮影では、赤い丸の中に顔を収めようとするもガラスにべったり顔を張りつけてしまい、再度撮影を試みようとすると椅子がとれてしまい、椅子の脚が硬貨口に引っかかって小銭がジャラジャラ、慌ててしまったパディントンは、ひたすら個室の中で暴れまわって、最後にはカーテンにくるまって隣の露店に突っ込んでしまうという安定のはちゃめちゃぶり。
船に乗った際もハンモックで上手く寝られずにミノムシ状態になって寝る羽目になる可愛らしい姿もあれば、船を操縦するはずのハンターと娘がいないことに気付いたパディントンが、家族に伝えるために船内用のアナウンスマイクを掴むも、線に絡まって身動きが取れず、足で舵を取らざるを得ない状況、さらには脱出を試みるも、今度は舵が体に絡まってしまって船が揺れる度にあっちへ行ったりこっちへ行ったりしてしまうおっちょこちょいぶりを見せ、楽しませてくれます。
辿りついた遺跡ではハンターと追いかけっこをすることになりますが、モノの拍子で抜けた石畳によって大きな岩が転がってきてしまうことで、追いかけっこどころじゃなくなるパディントン。
ラマにマーマレードサンドを与えて逃げ切る姿も面白かったですし、結局大きな岩に道を遮られ下まで逃げるしかない姿も楽しかったです。
最後に
前作でヒュー・グラントが演じた役回りを今回はアントニオ・バンテラスが担当したんですが、割と良かったです。
一族で一番欲に執着心がないキャラなのに、結局呪いによって欲をむき出しするキャラで、今回一番感情が忙しいキャラだったにもかかわらず、ユーモアを出しながら悪者を演じた点は、物語を掻き回す存在としてしっかり機能していたと思います。
逆にオリヴィア・コールマンの役どころはもっとうまくやるべきだったように思えます。
コールマン自身がダメだったのではなく、素性を隠した存在であるにもかかわらず、あからさまに怪しい表情をするかと思ったら、実は味方…と見せかけてもう一度騙すという裏の裏をかいた存在が、物語を邪魔してるだけにしか思えないキャラになってしまってやしないかと。
だったら最初から怪しい表情なんかさせずに家族をサポートして、最後に本性を出せばいいだけ。
終盤での「別れ」を匂わせるパディントンと夫人のやりとりも、勿体ぶって溜めに溜めたやり取りが描かれており、シリーズらしい締めのシーンではありましたが、それまでの過程にワクワクもしなければカタルシスもなく、涙は出ませんでしたね・・・。
一応「家」とは「故郷」とはといったテーマが敷かれた内容で、故郷を訪れたパディントンが、どんな決断を下すによってそれが強調されはしたものの、肝心の子供たちが巣立つシーンがないのであまり意味を成さないものになってしまいました。
ラストのおまけでブキャナン役のヒュー・グラントが登場し、ユーモアセンス抜群のやり取りを見せてくれたことで元が取れた感覚です。
彼は出所してまた悪さをするんでしょうか。それともクマたちと演劇をする興行を展開するんでしょうか。
続編が作られれば見に行きますが、是非過去作に匹敵する感動の物語を作ってほしいものです。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10