プレゼンス 存在
スティーヴン・ソダーバーグ監督.
真っ先に思い浮かぶのは「オーシャンズ」シリーズや「エリン・ブロコビッチ」、「トラフィック」など00年代の人のイメージ。
どれも嫌いじゃないけど、個人的にはそこまでハマってる人ではない。
最近の人なら、コロナ禍にシチュエーションが似てるってことでバズった過去作「コンテイジョン」の監督って言ったほうが通じるかも。
彼の作品、アート性が強いからなのかどうもエンタメ色の強い映画だと面白みに欠けるんだよなぁ。外連味がないというか強弱がないというか。
特に監督業を一度引退して以降の作品をほとんど見てないってのも、僕にとって優先順位が低い表れなのかも。
そんな彼の作品が今回鑑賞する映画。
なんでも、屋敷に引っ越してきた家族の風景を「幽霊目線」で見るというホラー。
幽霊視点で描いたお話といえば「ア・ゴースト・ストーリー」が思い浮かびますが、あっちはドラマでしたから恐怖度はきっとこっちのほうが強いんでしょうね。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「オーシャンズ」シリーズの監督と、「ミッション・インポッシブル」の脚本化がタッグを組んで製作された「幽霊視点」で描くホラー映画。
崩壊寸前の4人家族が引っ越してきた大きな屋敷を舞台に、家族から嫌われている少女にシンパシーを重ねた幽霊の目線から家族の物語を映し出す、不穏かつエモーショナルな新感覚ホラー。
マルチな才能で知られるスティーブン・ソダーバーグ監督。
今回もピーター・アンドリュースと メアリー・アン・バーナードといういつものペンネームで撮影監督と 編集を担当しており、彼の独特な視点により没入感を与える物語になっていることが約束されるだろう。
また「パニック・ルーム」や「宇宙戦争」などを手掛けてきたデヴィッド・コープの脚本によって、複雑な家族の心理描写が表現されており、ただのホラーだけではない新たな体験を得ることだろう。
キャストには、「レッド・ワン」「シャザム2」のルーシー・リュー、「夜に生きる」、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」のクリス・サリヴァン、「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」のUSリメイク版『Bad Genius (原題)』(2024)では主役に抜擢されたカリーナ・リャンなどが出演する。
「もし自分が幽霊だったら」を体験させる本作は、気づけば幽霊と同じ気持ちになっていることだろう。
本当に怖いのは幽霊か、それとも家族か。
あらすじ
【それ】は、一家が引っ越してくる前からそこにいる。
【それ】は人に見られたくない家族の秘密を目撃する。
母親にも兄にも好かれていない10代の少女クロエ(カリーナ・リャン)に異常なまでに親近感を持つ。
彼女に何かを求めているのか、いや、必要としているのか。
家族と一緒に過ごしていくうちに、【その存在】は目的を果たすために行動に出る。
(HPより抜粋)
感想
#プレゼンス 存在 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) March 7, 2025
幽霊視点で覗く崩壊寸前の家族の風景。
具体的なことはわからんが、最後はなんだかウェットな気持ちに。
しかしこの幽霊は壁をすり抜けたりできないんか…
父ちゃんと母ちゃんの問題はどうなったんすか… pic.twitter.com/KtjbPH1Xmu
怖さを期待して見に行ってはいけない。
別に妹は嫌われてるわけではないし、どっちかっていったら母ちゃんの方がなんか怪しい。
ラストでなるほどそういうことかと、一定の理解はできる。
以下、ネタバレします。
幽霊視点とはいうけどさ。
とある一軒家に引っ越してきた一家。
共働きってこともあり、割とリッチな家族のように見える。
高校生の兄は水泳部と活躍する優秀なスイマーなんでしょう。
母ちゃんはそんな長男に過度な期待を寄せてる様子。
一方妹はどこか塞ぎがち。部屋に籠ってベッドでうなだれたり急に泣きだしたりと情緒不安定な様子。
それもこれも全ては親友の急死によるもの。
なんでもオーバードーズで死んでしまったとのこと。
父ちゃんは妹に一刻も早く立ち直ってもらいたく、セラピストを変えようと母ちゃんに提案するけど、母ちゃんは「時間が解決してくれる」の一点張り。
父ちゃん曰く「それは何もしないってことだぞ」と言われて母ちゃんご立腹。
兄貴は兄貴で学校で意地悪なことしたり、カースト上位に縋ろうとしてる様子が会話の中で読み取れます。
やはり自分は優れていると思い込んでるのか、塞ぎ込んでる妹には非常に冷たい態度。
家族との食事中、この家に何かいるという相談を小バカにして汚い言葉で罵るどうしようもない奴。
こんな様子じゃ家族が崩壊寸前てのも分かるな…。
・・・てのを、ただただ見せられる映画ですw
見せられる、というのを「幽霊の視点」で見せるから一定の形にはなってるので、それを面白いと思えるかつまらないと思えるかは人それぞれになるんでしょうね。
俺としてはオチでようやく「なるほどね~」となったので、それまではこの後どんなホラー描写が出てくるのかドキドキしてましたけど、要はそういうホラー映画ではございませんという話だったわけで、なんであんなにドキドキして待ち望んでいたか。
あのドキドキを返せ!とは思ってますw
さて本作は「幽霊視点」で描くお話ということで、冒頭からがっつり幽霊の気持ちになって、色々覗くことになります。
この幽霊、家族が来る前から家に居座っており、どうやら寝床は後の妹の部屋となるクローゼットの様子。
何かあればここへ戻って妹の私生活を覗くというものになっています。
しかも幽霊のくせに壁をすり抜けることができない。
もはやそれカメラでしかないじゃない!と思って見てはいけないと分かっていながらも、どうもしっくりこない。
まぁ幽霊は絶対壁をすり抜けられるって、誰かが見たわけでもないですから良しとしましょうか。
正直広い家ではあるけれど、行動範囲は限られてるし、導線もひとつしかない。
細かく言えば人間が出入りするトイレやバスルームには入らなかったですね。
一体その理由が何なのかは作り手の都合ということにしましょう。
とにかく1階のキッチンとダイニング、そしてリビングから2階の兄弟の部屋と良心の部屋を行ったり来たりしながら、家族の様子を覗き、塞ぎ込んでいる妹にばかり目をかける幽霊と「同化」して物語を見つめることになります。
よって物語のスピードも幽霊の移動と共に進むので、全体的にかなりゆったりとした時間が流れます。
しかし結構な具合でシーンを切って次の場面へ進む箇所があるので、なぜそこで暗転して次のシーンへ進むのかよく理解できません。
幽霊の記録的に不要だからなのか、それともそこで幽霊としての活動時間が終わってしまったのか、全く読めません。
と、幽霊の行動に関してはその辺にして。
本作の素晴らしい点は、家族の全員がカメラを幽霊の視点であることを認識して演じてる事でしょうか。
誰かに覗かれていることを頭に入れておきながら、覗かれてないように演じなくてはいけない。
これ簡単そうでなかなか難しいことなんじゃないかと。
しかも妹には幽霊の存在を時々感じている設定のため、時折部屋全体を見回して気配を捉えるような素振りをするんですよね。
尚且つ、一瞬カメラ=幽霊と目が合う仕草までするからちょっとリアル。
今そこに、誰かいるの?と。
最初こそ脅えていたけど、もしかしたら突然死した親友かもしれないと思い込むほど。
でも、シャワー中にベッドの上の書物を勝手に片付けたりしたときは妹も怖かったでしょうね。
さすがにそれはバレるって!!幽霊や!!
あれか、存在に気付いてほしかったんか。そうかそうか。
とにかく妹にだけ存在がわかる幽霊は、なぜ彼女にばかり気を向けるのか。
存在に気付き始めた家族は、どう対処するのかと展開していきます。
なるほどそういうことか。
さらに具体的な話になります。
食事をひと段落終え、リビングでくつろぐ一家。
父ちゃんは立ったままワインを飲み、長男の汚い言葉に注意を促しながら聞き入っています。
妹は妹で爪を弄りながら兄貴の話に何やら苛立っている様子。
そう、兄貴は母ちゃんに何やら学校で起きた笑い話をしているみたい。
どうやら悪友のライアンと少女に何かわなを仕掛けて、その時の写真を回したと。
父ちゃんと妹はさすがに嫌悪感を抱きましたが、その時幽霊は兄貴の部屋をめちゃくちゃにしたことで、家族全員、妹が言っていたことを初めて信じることに。
家の中で落ち着けないでいる一家は、今後どう対処するかを検討するも、兄貴だけは妹のせいで最悪だ!と責めてばかり。
さすがの父ちゃんもブチ切れて「一度でいいから妹の味方を出来ないのか!」と怒ります。
俺も妹がいますが、さすがに兄貴として最悪ですねw
確かに兄として妹の行動が良くないと思った時は一言言ったりしますが、これだけ気持ちがナーバスになっていてメンタルヘルス状態な妹に、こんなこと普通言いません。
兄として助けになってやるってのが家族だろうと、この時ばかりは腹が立ってましたw
一方先ほど名前が出てきたライアンという兄貴の悪友。
妹は彼に気があるようで、兄貴の目を盗んでは部屋でイチャイチャしてる光景が映ります。
映るってことは、その視点は幽霊なので、何を幽霊は妹のイチャイチャをガン見しとんのやと少々笑えて来ます。
いくら妹にシンパシーを感じてるからって。がっつり覗いて何の得になるんだ!と思ってましたが、どうもこのライアン、何かと行動が怪しいって話。
兄貴はライアンの親が薬剤師であることから、ドラッグの調達がお手の物ってことでちょいちょいもらってる様子。
で、こいつもこっそりそれを妹の飲み物に混入して飲ませようと企んでいるのが映るんですね。
正直一体このドラッグがどういう効き目のモノなのかわかりませんでしたが、彼女の親友がオーバードーズしてる設定のため、こいつがこの後物語を掻き回すんだろうと推測。
さて、幽霊の存在に気付いた家族は、伝手を頼って霊感のある女性を家に招くことに。
彼女が家に入るや否やすぐさま幽霊の存在に気付く態度を見せるので、こりゃホンモノ連れてきちゃったなと。
そしてリビングに在る鏡月の古い家具の前で、事前に父ちゃんから聞いてないことまでズバズバ言い当てます。
彼女曰く、この幽霊は過去や現在といった時間の概念がなく、どうしてここに留まっているのかさえも分かってない様子。
ただ妹が塞ぎ込んでいる姿を見てコンタクトを取ろうとしているのは事実だそうで、具体的にどうすればいいのかは教えてくれなかった。
母親は霊感のある女性を疑ってましたが、父ちゃんは自分の母親との一時的な不和状態の過去を例にして、自分の娘の言うことを信じることを告げます。
もう真相に突入しますが、ライアンは薬剤師である親からドラッグを盗み、両親のいない夜に尋ね兄貴の飲み物に睡眠薬を混入させ、妹と二人きりの状態を作ります。
そして妹の飲み物にアンビエンという強い睡眠薬を混入させ眠らせます。
そしてポケットから超薄型のラップを取り出し、彼女を窒息させようと試みます。
そう、ライアンは妹の親友を同じ手口で殺害した張本人だったわけです。
決してオーバードーズで死んだわけではなく、こいつの仕業だったことが明かされます。
とんでもない変態だったわけです。
その様子を間近で見ていた幽霊は、ライトを点滅させたり超音波を引き起こして兄貴を起こさせ、妹ののピンチを救うのであります。
ただ、その救い方が「ライアンを自分もろとも窓の外へ放り出す」というもので、二人は亡くなってしまうのであります。
家を引き払うことに決めた家族でしたが、兄に過度な期待を寄せていた母親は、未だ家を離れることができない状態。
最後に今に在る古い鏡の突いた家具を前に泣き崩れます。
鏡には母親以外に、兄の姿が映っていたのであります。
視点は、緩やかに家を出て空の上へと昇っていくのでした。
最後に
これ結末まで書かないと何も解説出来ないため書かざるを得なかったんですが、要するに、家に住みついていた幽霊は、兄貴だったということ。
過去も現在も時間の概念のない幽霊は、妹を助けるために居座っていたということです。
そう考えると、何故幽霊は妹がシャワーを浴びている時に部屋を片付けたり、ライアンとエッチしてる時もクローゼットの中で隠れていたのかだったり、睡眠薬の入ったジュースをわざとこぼしたり、兄の部屋を荒らしたのか、色々わかってくるのではないかと。
特に自分の部屋を荒らした理由は、ライアンと結託して女の子をいじめたことを悔いている証拠なのではと。
また、親父に「一度くらい妹の味方をしろ」という言葉もまた、彼の行動理由に繋がるわけで。
あまりの唐突なオチに戸惑ったものの、ラストを見終えた後思い返すと、色々つじつまが合う物語だったのではないでしょうか。
ただ、両親が子供のいないところで複雑な話をしていたのは謎でしたね。
親父が家の外で法律に詳しい友人に、いろいろ聞いてましたよね。
配偶者が関与してる場合はどうなるのかとか。
どうも違法行為をしているかも、みたいな。
俺はてっきり母ちゃんが不倫でもしてるんかなとも思いましたが、母ちゃんのPCにウィルスが入ったことや、家でやたら仕事をする仕草、冒頭で兄に対して「たとえ法を犯しても正しいと思えば問題ない」みたいな発言。
兄の学校にまつわることなのか、それとも詐欺行為でも働いていたのか。
具体的なことは不明のため、どうもこれだけがしっくりこないんですよね。
とにかく、怖さを求めて見てはいけない作品で、幽霊視点であることと、時間を超越する存在だからこそ成り立った、前々崩壊寸前の家族の話ではない、ハートフルな作品だったと思います。
ただね~見てる最中は、ぶっちゃけ退屈だったんですよね~w
こればかりはオチまで行かないとわからないので、人には薦めにくいホラー映画でしたね。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10