クワイエット・プレイス/破られた沈黙
「音を立ててはいけない」設定により、静寂という名の緊張感で映画館内を極上の環境にさせたホラー映画「クワイエットプレイス」の続編です。
パンデミック後の北米興行成績では圧倒的大ヒットを記録していることや、先んじて観賞された方のアーリーレビューが非常に高い評価の本作。
正直僕は前作で抱いた感想が、楽しかったとはいえツッコミどころが多く高い満足度ではなかったのであります。
ですが、評判の良さを聞く限り期待せずにはいられない。
念願の子供を産んだ喜びもつかの間、夫を亡くしたことで女手一人で3人を守らなくてはならない主人公の勇ましい姿で幕を閉じた前作。
あれから家族はどのような日々を過ごして生き延びたのか。
どうやら「音を立ててはいけない」日常がどのようにして訪れたのかも描かれる様子。
色々詳細が明かされそうな気配もあるだろうし、更なる災難も用意されてる模様。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
「音を立ててはいけない」設定が口コミで話題を呼び大ヒットを記録した「クワイエットプレイス」の続編。
音を立てると襲い掛かってくる❝アレ❞から気配を消して生活する中で、子を産み、❝アレ❞との死闘の末、夫を亡くしたエヴリン一家。
女手一人で子供たちを守らなければならない過酷な日常を生き延びるため、新天地を訪れた家族たちに更なる災難が降りかかる。
本作では❝アレ❞が出現した最初の日が描かれるほか、家族以外に生存している人たち、ラジオから流れる音楽、秘密の島など、新たな謎やサバイブするための試練が出現、これまで以上に音を立てずにはいられない危険な状況が待ち受ける。
前作同様監督キャストが再集結した本作は、新たなキャストを迎えスケールも大幅にアップ。
普通のシチュエーションホラーでは済まない、壮絶なサバイバルホラーへと進化した。
果たしてエヴリン一家は無事危から脱出できるのか。
あらすじ
荒廃した世界の果てに、何があるのか?
“音を立てたら、超即死”という極限の世界を生きるエヴリン一家。
最愛の夫・リー(ジョン・クラシンスキー)と住む家をなくしたエヴリン(エミリー・ブラント)は、産まれたばかりの赤ん坊と2人の子供たちを連れ、新たな避難場所を求めノイズと危険が溢れる外の世界へ旅立つが...。
突然、“何か”の襲撃に遭い、廃工場へ逃げ込んだ一家は、謎の生存者エメット(キリアン・マーフィー)に遭遇する。
彼との出会いを発端に、新たな謎と脅威が明らかとなり、一家の運命は激しく動き始める。(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、前作に引き続きジョン・クラシンスキー。
前作同様、監督・脚本・製作・出演をこなす監督。
エミリー・ブラントの旦那様であり、プライベート同様夫婦として出演されてましたね。
前作では子供たちを守るために❝アレ❞と対峙し命を落としてしまいましたが、本作では「はじまりの日」が明かされることもあり、出演者としてもクレジットされています。
1作目の大ヒットに大興奮したものの「ある種の思い出」として続編製作はしないことを決めていたそう。
しかしスタジオは夫妻の出演なしでも続編製作を決めており、ライターがアイディアを持ち寄って企画を練っていたそうです。
しかしこれといったアイディアが出ない状況が続く中、「もし監督が再び続編を作るなら」という構想を奥さんであるエミリーに明かしたところ、「それなら出演する!」と決心し、続編製作に加わったとのこと。
また監督夫妻は2人の子供がいるそうで、「どんなことがあっても二人を守る」想いから前作を製作した経緯があり、本作は「続編」というよりも1作目の延長であることを強調。
前作で父を失った子供たちがその後どうするか?をテーマに、いつか親元を離れ巣立っていく子供たちへのラブレターとして製作したことを明かしています。
夫婦で出演するとヒットしないというジンクスを打ち砕いた本シリーズ。
本作では監督の出演時間が短いため製作に専念することができたようですが、しっかり反映されてるでしょうか。
とにかく非常に楽しみですね。
監督と前作に関してはこちらをどうぞ。
キャスト
主人公エヴリン・アボットを演じるのは、エミリー・ブラント。
くどいですが、監督の奥様でもいらっしゃるエミリー。
「プラダを着た悪魔」で存在感を示し、「ヴィクトリア女王 世紀の愛」で高い評価を獲得。
「アジャストメント」や「砂漠でサーモン・フィッシング」、「LOOPER/ルーパー」に「オール・ユー・ニード・イズ・キル」などにヒロインとして出演し、ハリウッドスターの地位を確立したのは言うまでもありません。
近年では「メリー・ポピンズ・リターンズ」や「ガール・オン・ザ・トレイン」、「ボーダーライン」に「ジャングル・クルーズ」と主演作が目白押し。
アカデミー賞受賞も夢じゃないですね。
旦那さんの作品に主演で出演し大成功させた点においては、もはやあげまん女優。
今後も別の作品でタッグを組んだりするんでしょうか。
僕はアリだと思います!
彼女に関してはこちらをどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
新たな生存者エメット役に、「バットマン・ビギンズ」、「28日後・・・」のキリアン・マーフィー。
アボット家の長女リーガン役に、「ワンダーストラック」のミリセント・シモンズ。
アボット家の長男マーカス役に、「ワンダー君は太陽」、「フォードVSフェラーリ」のノア・ジュプ。
謎の生存者役に、「ブラック・ダイヤモンド」、「キングスマン:ファースト・エージェント」のジャイモン・フンスーなどが出演します。
果たしてアボット家は音を立てずに危機を脱出できるのか!?
エヴリンは無事に子供たちを守ることができるのか!?
そして生存者たちは、一家にとって救世主なのかそれとも!?
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
#クワイエット・プレイス /破られた沈黙。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2021年6月18日
1より2の方が面白い!
ラストしびれた!! pic.twitter.com/UtmX3zx00d
前作は「母」の物語でしたが、本作は完全に「子供たち」が主役。
いつの間にか逞しくなった彼らが成長を遂げたラストは感涙でした!!
以下、ネタバレします。
「DAY1」から始まる続編
音を立てると襲ってくる「何か」に脅えながらサバイブしていく家族の姿を描いた続編は、前作で正体も対処法も明かされているにもかかわらず、次々と危険が押し寄せるアトラクションムービーとして面白みを増していたし、これまで「守られる側」だった子供たちが、大人顔負けの逞しさを見せる成長譚として大成功を見せた素晴らしい続編でした!!
「何か」が襲来した「DAY1」をしっかりみせることで、既に奴らは音に敏感であることや一瞬にして街の人たちを食い尽くす暴力性、またどうやって地球にやってきたのかが明かされていく冒頭。
前作で心の乖離が見られたリ―とリーガンでしたが、父についていく娘の姿を見せることで彼女はお父さん子であることだったり、その後見せる逞しさってのに繋がっていく場面だったなぁと。
逆にマーカスはお母さん子で、まだ何をどうしたらいいかわからない様子てのが見えたかなぁと。
そして新キャラクターとして登場したエメット。
鑑賞前では何やら不穏な空気をもった人物なのかなぁと想像してましたが、実際アボット家と家族ぐるみのお付き合いをしていたことが「DAY1」で明かされることで、劇中での彼らの再会に繋がる流れになってましたね。
「DAY1」を見せた後、すぐさま前作のラスト直後から始まる序盤。
酸素ボンベやアンプなど必需品を揃えて次なる場所へ向かう一行は、来たの法学でのろしを上げているのをリーガンが発見したことで、人がいるであろう場所へ向かっていきます。
砂を敷くことで足でも音を立てずに歩いて行けたわけですが、その先は砂利を踏みながら進んでいかなくてはならず、必死の移動となっていきます。
相変わらず無音という静寂を与えることで緊張感が走る部分は、ここでもしっかり発揮され、トラップに引っかかり音を鳴らしてしまったエヴリンの焦りや、先頭を走るマーカスが見事にトラバサミに足を挟んで大声を出してもがき苦しむ場面を見せることで、「何か」に居場所がバレてしまう危機感がこちらにもひしひしと伝わります。
中盤から面白さが増していく
本作の肝は、妻も子供も失って希望を見いだせずにいるエメットが、夫リーを失ったアボット家と出会うことで一歩踏み出すこと。
父がいない今、自分がしっかりしなければ、家族を引っ張っていかなければと親父譲りの肝っ玉をポテンシャルとして秘めていたリーガンが、ラジオから流れる楽曲「ビヨンド・ザ・シー」の意味を解き、単独行動で助けを求めに行く中盤。
勝手に出ていった娘の安否を心配し、エヴリンはエメットに連れ戻しに行くよう説得し、物語はエメットの住処に残るエヴリンとマーカスと赤ちゃん、リーガンとエメットの二手に分かれて進行していきます。
薬品や包帯の不足、そしてマーカスのケガの具合を考慮して待機するエヴリンでしたが、このままでは悪化する一方のため、単独で薬局に行くことを決意。
ケガによる健康状態や頼る者がいないマーカスにとって、試練の時がやってくるのです。
赤ちゃんを一人あやす中で、外の様子も気になりエメットの住処を見回るマーカス。
そこで大きな音を立ててしまうほど驚きの何かを見てしまうことで、ピンチになっていきます。
一方、リーガンは銃とアンプスピーカーを持って万全の態勢で旅に出ますが、やはり一人では「何か」に対処するには力不足。
エメットと合流することでコンビプレイを見せていきます。
また、家に戻ろうと説得するエメットでしたが、リーガンの頑なな姿勢に根負けし、二人で音楽を流しているであろう島に向かって進んでいくのでした。
この二手に分かれる展開、何が面白いってどちらにも同じタイミングでアクシデントがやってきてピンチになり、危機的状況を打破していく編集。
いわゆるクロスカッティングという手法によって、ピンチの危機感も打破する爽快感も二倍になっているのが効果的。
マーカスは住処を徘徊、エヴリンは薬局へ単独で移動、エメットとリーガンは船のある港へと3つの視点で進んでいくんですね。
そこでマーカスがエメットの息子の死体を見て驚き、エヴリンは前作で失った息子ボーのお墓と再び対面、エメット一行は子供による罠に引っかかり、怪しい奴らに身柄を拘束されそうになるんです。
この危機的状況を一挙に見せることで、「何か」に襲われそうになる以外でも緊張感を与える演出は上手だなと感じました。
その後、マーカスは何とか寝床に戻り、赤ちゃんを連れて焼却炉に逃げ込むんですが、防音効果と中から出られるための安全策として用意されているタオルを見逃してしまったために中に閉じ込められてしまい、徐々に酸素が無くなっていく状態に。
赤ちゃん用の酸素ボンベで難を逃れようとしますが、赤ちゃんは泣きだし、酸素も少なくなる大ピンチ状態。
港ではエメットは首をひもで括られお縄状態、リーガンは持っていた補聴器を取り上げられ連れていかれようとされます。
薬局から帰ってきたエヴリンは「何か」の叫び声を聞き、マーカスと赤ちゃんに危険が迫っていることを察知。
「何か」を自分に引き付けるために策を練ります。
彼らが危機的状況をどう打破していくか。
エメットたちは「DAY1」で描かれていた伏線を回収することで危機を脱し、エヴリンは持ち帰った酸素ボンベを使ってマーカスから「何か」を離すんですね。
これもタイミングをほぼ一緒で描くことで爽快感が増し、面白いと感じさせてくれる瞬間だったように思えます。
後半はこの繰り返しとも言える手法により「ピンチ➡脱出」で描いていくので、しり上がりに面白くなってましたね。
子供たちの成長譚
前作では得体のしれない「何か」に脅えながらも、それでも産みたいと願い子を授かる夫婦の姿をドラマチックに描くと共に、ついに姿を現した「何か」の凶暴性や対峙、次々と用意されているトラップにハマってしまうことでピンチになっていくアトラクション型ホラーとして作り上げていたわけですが、本作はアトラクション的楽しさを前作以上に用意し、子供たちがこの苦しい環境の中で見違えるほどの逞しさを見せるドラマ要素にシフトしていた作品でした。
マーカスに至っては、自分がケガをしてしまうダメージを負いながらも、一人でやったこともない赤ちゃんの面倒を見て、さらに「何か」から赤ちゃんを守るために一人健闘する姿が描かれてました。
リーガンに至っては非常に逞しく成長しており、耳が聞こえないにもかかわらず単独で行動してしまうガッツ、子を失って希望を見いだせないでいるエメットを行動で引っ張て行くことで、エメットの行動力を発揮させるリーダーシップなどが見えました。
クラシンスキーとエミリーは2作を通じて「子どもたちへのラブレター」と語っており、どんな状況下でも子供を守る親でありたいと思いを込めた前作から、いつか親から離れて巣立っていく子供たちが、知らぬ間に逞しくなっている姿に感銘を受けるラストで締めくくることで、子供たちへの愛が垣間見えた2作になっていたと思います。
マーカスもできないよぉ~と言いつつ、母親のそばでどうすれば赤ちゃんをあやすことができるかしっかり見てるわけです。
いつ泣き出すかわからない赤ちゃんは時限爆弾だと例えられていたわけで、マーカスにとっては非常に過酷な試練だったように思えます。
こんな厳しい状況でもできることを証明したマーカスは立派に育っただなぁと親目線で見てしまった瞬間でしたw
またリーガンは前作で既に行動力がありましたが、本作はさらに成長の一途を辿っており、エメットとのコンビプレイも見事でしたし、エメットをサポートする役割もできるほど判断力や行動力、実行力の面において強さを発揮してましたね。
エメットもこの状況で人間は救う価値などないと投げやりな態度でしたが、リーガンの強い姿勢に引っ張られ改心し、大人が子供を守る重要性を再び見出していくキャラとして十分に機能してましたね。
本作の裏の主役は彼だったと思います。
「何か」はやっぱり怖い!
本作も対処法が分かっているにもかかわらずアボット家を苦しめる「何か」。
やっぱり今回も怖い!
ケコケコ喉を鳴らしてジワジワ歩行してくるだけで、十分にゾッとします。
「DAY1」では猛突進して人間を食い散らかしたり、ちょっとでも音を鳴らすだけで猛ダッシュしてガブついてくる怖さを見せてましたし、その後もこれまで安全とされてきたエメットの住処である地下室にも、ぶっとい爪で鉄を剥がして見つけに来ますし、エメットたちがたどり着いた島にもやってきて逃亡用の車のボンネットをいとも簡単に剥がしてくる。
如何にやばいモンスターなのかを随所で見せてくれた「何か」でしたね。
また静寂を巧みに使うことで緊張感を煽るのが本作の一番の魅力。
前作以上に静寂を巧みに使ってました。
例えば序盤でエヴリンが金網を潜るシーンがあるんですが、今にもカバンがひっかかりそうなドキドキ感を見せ、巧く回避したと思ったら足元に紐があって連動して瓶が垂れ下がり音が鳴ってしまう、いわゆる「そっちかよ!」なパターン。
疾走して廃墟に逃げ込もうとするけど、今度はマーカスがトラバサミに足を挟んで絶叫してしまうという怒涛のピンチの連続。
緊張と緩和を見事に使った怖さでしたね。
他にもリーガンが破壊された列車内で狭い隙間から救急箱を取ろうと手を伸ばした瞬間、「何か」ではなくミイラ化した死体が目の前に倒れてくるシ~ンや、それに驚き尻をついたリーガンを手前に置き、奥の方で「何か」が待ち構えている場面。
途中まで劇伴が流れてるんだけど、尻をついた瞬間からリーガンの「聞こえない世界」に切り替わることでドキドキがさらに増す展開も前作同様お馴染みの演出で、解っちゃいるけど怖いんだなぁ!と感じたシーンでした。
まだまだたくさんありますが、是非ご自身の五感で怖さを体感してほしいのでこの辺で。
最後に
ぶっちゃけマーカスが出歩かなきゃ「何か」に見つからずに済んだし、「何か」が実は泳げないという新たな弱点が発覚したのに、結局船に乗って島に来ちゃうのかよ!など、前作でも感じた粗やツッコミどころはあるんです。
でも本作は前作以上にラストシーンが最高なんです。
エヴリン達もエメットたちも、どちらもめちゃんこピンチの中危機を脱するために立ち上がるのがリーガンとマーカスで、リーガンが無事島にたどり着いたことも把握していないマーカスが、焼却炉に持ち込んだラジカセの音楽がハウリングに変わった瞬間、リーガンが生きていることに気付き、まるでリーガンから勇気をもらったかのように立ち上がって男気を見せるマーカスがカッコイイったらありゃしない!
これまでの失態はチャラだぜ!とも感じましたし、リーガンが鉄パイプ持ってとどめを刺す姿も前作のエヴリン以上に女性の逞しさを見せてくれた瞬間だったかなと。
要はこのラストで、これまでのツッコミどころはなかったことでいいじゃないか!とw
今後続編やらスピンオフやら製作されるそうです。
ここで終わってはいけないよなとも思えるラストですので、是非早く続編を作ってほしいと願うばかりです。
特に子供たちの成長は早いです。
実際ノアくんもミリセントちゃんもだいぶ大きくなってましたから。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10