モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

Netflix映画「ROMA/ローマ」感想ネタバレあり解説 あなたは私の家族です。

ROMA/ローマ

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ヴェネツィア国際映画祭では劇場作品でないにもかかわらず、最高の賞となる金獅子賞を受賞した今注目の作品です。

しかも監督は「トゥモロー・ワールド」や「ゼロ・グラビティ」でエマニュエル・ルベツキの撮影によって、超長回しと圧倒的映像美で魅了したアルフォンソ・キュアロン

 

今回いつものようなイントロダクションはやめて、感想からのらりくらり書き連ねたいと思います。(書く準備してなかったもので・・・)

 

感想

こうして我々は家族となっていく。

モノクロと無音、そして究極の映像美で描かれた人間賛歌でした!!

以下、完全ネタバレで行きます!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

あらすじはこうです。

1970年の激動のメキシコを舞台に、ブルジョワ層の家族の下で召使として働く女性クレオを軸に話は進んで行く。

クレオが住み込みで働く家は、医者のアントニオと妻のソフィそして4人の子供と祖母のテレサが住んでいます。

家のガレージにはボラスという犬がいます。

物語は家族内での出来事とクレオの身に起きる出来事が中心。

一見良好な関係を見せている家族たちとクレオら家政婦。

しかしよく見ると、研究で忙しく家を空けてばかりのアントニオは帰るやいなや妻のソフィに家政婦へのダメ出しを指摘したり、仕事を終えて自分の部屋に戻ったあと、監視されてるからとろうそくに火をつけてストレッチを始めるクレオら家政婦、再びアントニオが数週間留守にするということで、見送る際に愛を乞う妻ソフィでしたが、悲しみはやがて怒りに変わり、犬のフン掃除しといてよ!とクレオにいびるといった、良好関係はあくまで表向きだけ、に感じる序盤。

 

クレオは休みを利用して、同じ家政婦アデラと彼女のボーイフレンド、そのボーイフレンドのいとこフェルミンと映画館へダブルデートに出かけます。

フェルミンはせっかく晴れてるからとクレオと別行動に。

どこかの部屋で素っ裸のフェルミン。急にシャワーカーテンの棒を取ってフルチン(モザイクかかってません、しっかりイチモツが映ってます)で武術の型をクレオの前で披露。

今武術を教わっていて精神を鍛えてると語るフェルミン。それにうっとりするクレオ。

 

後日再びデートをする2人でしたが、クレオはフェルミンに生理が遅れていることを告げます。妊娠です。

それは良いことだ!と喜ぶフェルミンでしたが、トイレに行ってくるといったきり帰ってきません。トンズラです。

 

落ち込むクレオはとりあえず妊娠したことをソフィに報告しようとしますが、ソフィは何やら様子がヘン。

子供たちを呼んで家に帰ってこれない父アントニオに手紙を書くようにお願いします。

すると子供たちは各自部屋で書こうとしますが、ここで書きなさい!とソフィは怒鳴ります。怒鳴った後我に返り、子供たちにお願いした後クレオの話を聞こうとすると様子がおかしいことに気付き、彼女を抱きしめます。

夫が働いている病院の産婦人科の先生に診察をお願いすることに。その間ソフィは夫の同僚に質問攻め。何故夫はこんなにも忙しいのか本当に仕事なのか、そんなことを聞いている様子。

 

クリスマスが近づいてきたある日、お父さんが帰ってこないということで、仲のいい家族の家でクリスマスを過ごすことに。

昼間は外で銃を撃ちまくりながらピクニック気分、夜は屋内でパーティー三昧という楽しい一日。

クレオは別の家政婦に呼ばれメキシコ人たちが集う場所で乾杯をすることに。

みんなのいる場所に戻ろうとすると、屋敷の廊下で一人黄昏るソフィが。別の男性が彼女を抱き寄せ慰めようとするが拒否するソフィ。

その状況を端から見ていたクレオ、目が合うソフィ。

お互いが心の奥を覗くにも覗けないそんな距離感を見せたのち、森で火事が。

何とか火を消し大事にならずに済みます。

 

帰宅後映画館へ行こうと子供たちと親戚の子供、クレオとおばあちゃんのテレサが付き添いで行くことになりましたが、子供たちは勝手にどんどん行ってしまい、クレオは必死で追いかけます。

映画館の前に行くと子供たちが待っていましたが、そこにアントニオらしき人物が通ります。あれお前のお父さんだろ?違うよ。そんな子供たちの会話を聞いてないふりをするクレオ。

 

クレオはフェルミンを訪ねに彼のいとこであり、一緒に家政婦をしているアデラのボーイフレンドであるラモンの家へ。

フェルミンはここで武術の稽古をしているはずだと教えられ、その場所に行くとフェルミンを発見。

俺今稽古で忙しいんだ、韓国人のコーチも来ててね。

でも聞いて、お腹の子はあなたの子よ。

絶対俺じゃない!いいか二度と俺の目の前でそんなこと言うなよ!召使いめが!!

 

その後些細なことでけんかをする子供たちを止めに入ったり、ガレージに思いっきりこすりつけて帰宅するソフィなど、みんながみんな穏やかでない日々が続く中、懸命に仕事で気を紛らわすクレオ。

 

祖母のテレサに連れられクレオは生まれてくる子供のためにゆりかごを見物に出かけます。

しかし外は一般市民が暴動デモを起こしており、若者たちが家具屋にまで押し寄せてきます。

追われた若者は別の若者により銃で射殺されてしまいますが、クレオの前にも銃が向けられてしまいます。しかし、銃を向けていたのは彼女の前から姿を消したフェルミンでした。

 

急な出来事もあってか、クレオは破水してしまい急いで病院へ向かいますが、残念ながら死産となってしまいます。

 

落ち込むクレオを励ますのと、新車購入のため今まで乗っていたギャラクシーを処分する前に最後の旅行をしようとソフィが計画、子供たちと共に海へ旅行に出かけます。

旅行先での夕食。ソフィはアントニオが別の女の元へ行ってしまったことで、彼と別居することを子供たちに報告。

旅行はアントニオが荷物を取りに来れるよう家を空けるためのものでした。

 

旅行最終日、浜辺で泳ごうとはしゃぐ子供たち。波が荒い為波打ち際で遊ぶよう注意するソフィは、一旦クレオに子供たちを預けて車へ向かいます。

クレオも一番下の子供の身体を拭くために浜辺から少し離れてましたが、残りの二人の子供たちがどんどん沖へ流されようとしているのを見て、泳げないにもかかわらず助けに行きます。

クレオの機転が利いた行動で無事救助に成功。子供たちとクレオそしてソフィが抱きしめ合います。

そこでクレオは今まで閉ざしていた本当の気持ちを打ち明けます。

欲しくなかった、生まれてほしくなかったと。

 そんなクレオにソフィは、それでもあなたが好き、家族だもの、とささやきます。

 

帰宅後、アントニオが本棚をもっていってしまったことで部屋の内装が若干変わっている自宅。

これまで雇う側と雇われる側でしかなかった人たちが、新たな冒険と称して家族として過ごしていく、そんな始まりを匂わせる姿で物語は幕を閉じます。

 

 

キュアロン節炸裂の物語。

はい、というわけで全部ざざざっと書いてしまいましたが、ぶっちゃけ物語というかドラマチックな要素ってないお話だったんですよ。

いわゆる家族の中の出来事をただ映してるだけ。

映してるだけなんだけどめちゃめちゃ没入できる映画だったんですよね。

 

そもそもですよ、タイトルが「ローマ」っていうもんだから、イタリアのローマでのお話かと思ったら、メキシコでの話で。

なんでローマなの?ってのがずっと頭の中で疑問に思いながら見てました。

 

調べてみてもよくわからなかったので、ほったらかしにしましたw

タイトルとかどうでもいいわ。

 

で、どうやらこの映画、監督の自伝的作品だそうで、監督自身メキシコシティ出身であり、年齢を逆算すると自分が子供の頃の年代のお話にあたるということで、きっとこの映画は彼がお世話になった家政婦へのラブレター的映画だったんだなぁと感じました。

 

もっと言うと、雇う側のソフィ(白人)と雇われる側のクレオ(メキシコ人)が、血は繋がっていないけど心をつなげていくことで本当の家族になっていく、という意味合いだったり、今起きている移民問題にも触れた内容に通じるお話だったんじゃないかなぁと。

さらには、当時男尊女卑だった時代に女性たちだけで子供たちを守っていったということを考えると、女性がいかに強いか、ということにも触れた映画な気もします。

 

全て見通してみると、まさに今世の中に強く伝えたいことの全てが刻み込まれた映画だったよなぁと感じています。

 

まだありますよこれ。

例えばクリスマスに泊まりに行った先で昼間みんなで銃を撃ちまくるシーンがあるんですよ。

そこで誰かが農場が奪われるぞ!みたいなことを言うんですけど、その夜そこの森が火事になるんですね。

これって銃規制で揺れるアメリカに対するメタファーにも取れるよなぁと。

要は銃を乱射したことでその災いが起きたって構図だと思うんですね。だから一般人に銃を持たせることってこういうことしか起きないよ、みたいな監督のメッセージなのかなと。

また暴動が起きたときもそう。

若者が家具屋に逃げ込んできて、銃で射殺されちゃうんですけど、悲劇しか生まれないわけですし、クレオが外へ出ると、必死に助けて!と叫ぶ女性がいるんですよね。あれ多分部外者の男性が撃たれた気がします。

そして二次災害として起きた渋滞にはまり、クレオの赤ちゃんは出産の際に命を落としてしまう。

なので今作は女性たちの自立する姿や移民問題と共に、銃問題にも触れた要素が入った映画だった気がします。

 

演出が巧い。

今作はとにかく映像が美しいです。

キュアロン監督といえば、彼の作品の撮影を手掛けるエマニュエル・ルベツキが切っても切れない関係になってますけど、今回は彼が撮影したわけではなく、監督自らが撮影したってことがあとからわかって。

カメラが基本1台でゆったり辺りをなめるように撮ってるんですね。しかも長回し。

町を走るシーンも、ひたすら被写体と並行して長回しで撮っていたりと、非常にルベツキっぽい撮り方をしてるなあと感じました。

 

映像自体も非常に美しい。

冒頭、車のガレージの床をひたすら映しながら始まるんですが、水を流した瞬間反射して空が映るんですよ。この演出ウマっ!!って。しかもそこに超タイミングよく飛行機が飛んで入ってくる。

で、全編モノクロということもあって、奥行きから白黒のコントラストに至るまでどこを撮ってもキレイだなぁと。どちらかというと白みがかったモノクロで全てが潤いのある映像だったなぁと。

 

クレオが消灯するシーンがあるんですけど、電気を一つずつ決して回るんですね、これをカメラ一台でちょっと遠目で追いかけて撮ってるんですけど、電気が消える瞬間の黒の美しさと、1つだけ電気をつけていくんですけど、そこで白く灯る灯りの美しさがまたなんともいえないんですよね。

で、ソフィたちが住むこの家仕切りが無いんですよほとんど。というかみんな部屋開けっぱなしなのかな?

だからってこともあって非常に奥の方まで隅々見渡せる構図になってるんですよね。

 

こういうのばかり見せてるかと思いきや、近距離で捉えてる映像ってのも多くて、一番印象的なのは、アントニオとソフィの対比ですね。

ガレージに車を入れる時に、アントニオはタバコを吸いながらハンドルまわして何回も切り返して車庫入れするんですよ。表向きはすごぉく丁寧なんですけど内心はイライラしてるってのがここで見れます。そのためにいちいち手元見せたりサイドミラー見せたりして彼の心情を映してるんですけど。

一方のソフィはガサツです。

車庫入れに関しては思いっきり横を擦って駐車するし、クレオを病院へ連れていく時も、右手人差し指が浮いたまましかも指揮棒を振るかのような仕草。その後車と車の間を割って入ろうとするもんだから挟まっちゃって、結果隣の車に積んでいた棒が刺さったまんま運転してたっていうオチ。

この二人の一連の運転テクニックを近距離でピンポイントで映すことにより二人の心情というか性格を示唆していたわけです。

 

引いて撮るのと、寄って撮る構図の緩急が巧い描写でございます。

 

また色んなシーンで、その後を示唆する画を撮っていたのも面白い。

一つはクレオのおなかの赤ちゃんに対する映像。妊娠が発覚し診察をお受けた後、ソフィがまだ用が済んでないから3階の託児室で赤ちゃんでも見てなさいって言うので、赤ちゃん見に行くシーンがあるんです。

そこで見ていると地震が発生。しかも結構大きめ。看護師さんが必死で赤ちゃんを別の場所へ移そうと懸命の中一応地震が止まるんですが、そこで赤ちゃんが寝ている場所の上に瓦礫が乗っかっているんですね。

もちろんカバーというか透明の容器の中なので直接当たってはいないんですが、これってクレオの赤ちゃんが守られているっていう風に見て取れるんですね、この時は。

でもその後、パーティーで乾杯して飲もうとするとき、横で踊っている女性がぶつかってきて持っていたコップが割れちゃうんですよ。これをずっと見せるんですよ。

これは結果死産してしまう赤ちゃんを予見した画っていう風に見て取れます。

 

他にも、冒頭の水に反射して映った空の画。ラストは実際に飛行機が飛んでいる空を見上げて終わるんですけど、水に映った風景はあくまで実像ではなく虚像という意味で考えると、ラスト実像を映すことでクレオは現実を手に入れたというか、幸せを手に入れた、って解釈ができるかなと。

序盤でも死んだふりしている子供に寝そべって私も死んだふりする、みたいなこと言っていて、死んでるって楽だね、みたいなこと言うんですよ。その時の彼女の心情を現してるというか。

これも含めると、ラスト家族として迎えて貰えた彼女の気持ちがああやって映っていたようにも思えるし、生きた心地がしたようにも思えるというか。

 

また、フェルミンに会いに行く時に、武術の師匠がやってきてて、今からすげえの見せてやるって言って目隠しで片足地面に付かないで両手上げてキープするポーズをとるんですね。

最初みんな笑うんですけど、何笑ってんの、お前らメンタル鍛えるってのはこういうことなんだぜ?やってみ?っていうんですね。

すると弟子たちは誰もできないし、後ろで見ている女性たちもできないんですよ。で、クレオだけできてる。

要は彼女だけメンタルが鍛えられているということなんですね。ハートが強いんですよ。

見返してみると、彼女そこまで喜怒哀楽を見せてないんですよ。というか怒られてもイラつかないし、妊娠して捨てられても泣かない。

要は我慢できる。

 だから終盤の海辺のシーンで本心を吐くってことが、ものすごくこの映画の中で意味を持ってていちばん感動できるシーンであって。

やっと心を解放できたんですよ、家族の前で。

 

最後に

「宇宙からの脱出」って映画内映画が流れるんですけどあれってゼログラビティ意識なんですかね。まぁいいや。

海辺で全員が抱きしめ合うシーンは涙が止まりません。白い太陽を浴びて抱き合う姿はこの映画で一番美しいシーンでしたし、監督が望むことにも感じます。

最後「リボへ」って表示が出るんですけど、これ監督の子供時代の家政婦さんの名前なんでしょうか。

もしそうなら最高のラブレターだなぁと。ただの召使なんかじゃない、あなたは私の家族ですと。

 

 

というわけで以上!あざっした!!

 

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満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10