さんかく窓の外側は夜
心霊探偵バディが殺人事件の真相を暴くというお話だそうで。
幽霊関連のお話だと世代的に「幽遊白書」をすぐ連想してしまう引き出しの少ないモンキーですが、さすがに本作は霊丸やら邪王炎殺黒龍波などといった非現実的な世界のお話ではないでしょうし、「スーパーナチュラル」のように超常現象やら悪魔退治といったハンターのお話でもないでしょう。
まぁ何が言いたいかというと、原作コミック読んでないんで「妄想」でしかこの冒頭は語れないっていう・・・w
とりあえず原作コミックで人気ということと、バディものということで映画がヒットすれば第2弾、第3弾と続くのでしょう。
その点については応援したいところです。
というわけで早速鑑賞してまいりました。
作品情報
累計発行部数130万部を超えるヤマシタトモコ原作の人気コミックス「さんかく窓の外側は夜」が実写映画化。
霊が「祓える男」と「視える男」の二人が「除霊」という特殊能力を武器に様々な怪奇現象に挑む、今までありそうでなかった新感覚の「除霊ミステリー」だ。
本作では連続殺人事件と、カギを握るであろう「呪いを操る」謎の女子高生を追う。
CMディレクターとして広告賞を受賞した監督が手掛ける本作には、初共演&W主演のイケメン俳優、さらに「欅坂46」を引っ張ってきたカリスマアイドルが謎の女子高生を怪しく演じる。
果たして二人のバディは事件の謎を解明できるのであろうか。
新感覚のミステリーエンタテインメントが、ここに誕生する。
あらすじ
書店で働く三角康介(志尊淳)は、幼い頃から幽霊が視える特異体質に悩まされていた。
ある日、書店に除霊師・冷川理人(岡田将生)が現れる。「僕といれば怖くなくなりますよ」の一言で、三角は冷川と共に除霊作業の仕事をすることに。
そんな中、二人は刑事・半澤(滝藤賢一)から、一年前に起きた未解決殺人事件の捜査協力を持ちかけられる。
調査を進める冷川と三角は、やがて自殺した犯人の霊と出会う。
冷川が三角に触れると、犯行時の状況がフラッシュバックのように浮かび上がり、恨みがましい犯人の声が響く――
「ヒウラエリカに・・・だまされた・・・」
犯人の霊を通して視た情報を元に、真相へと近づいていくふたりの前に現れたのは、呪いを操る女子高生・非浦英莉可(平手友梨奈)。
〈ヒウラエリカ〉とは何者なのか?
連続殺人事件との関係は――?
死者からのメッセージの謎を解き明かそうとする二人は、やがて自身の運命をも左右する、驚愕の真実にたどり着く…。(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、森ガキ侑大。
「グランブルーファンタジー」や「資生堂」、「ソフトバンク」など、数多のCMを手掛け、「おじいちゃん、死んじゃったって」で長編映画監督としてデビューされたという経歴の持ち主。
前作と共通して描きたいと思った点は、「人を描く」ということ。
前作では死の価値観の違いを分かりあいたいというテーマに対し、本作は今まで分かり合えなかった人が同じ能力の持ち主と出会うことで成長を遂げていく。
ゴールまでのアプローチや表現は違えど、「人を描く」ことで「分かり合いたい」という核に結び付く点は共通していると仰っています。
また映像表現にもCMディレクターならではの発想で描いていると監督。
本作は「人間の穢れ」をキーワードとしているそうで、穢れた世界は黒、幽霊は対照的に白を基調とした配色を施していたり、とあるシーンでは「ファッションショー」から思いついた映像表現をしているとか。
自らの経験を活かし、「新しいエンターテイメント」の追求をしていく監督。
本作は一体どんな映像に仕上がっているのでしょうか。
楽しみです。
キャラクター紹介
- 冷川理人(岡田将生)・・・霊を❝祓える❞力を持つ凄腕の除霊師。警察の未解決事件にも力を貸す。
- 三角康介(志尊淳)・・・書店員だが❝霊が視える❞力を持つため、冷川に見出され除霊師の助手に。
- 非浦英莉可(平手友梨奈)・・・❝呪いを操る❞力を持ち、父親の指示で❝呪い屋❞をしている謎の女子高生。
- 半澤日路輝(滝藤賢一)・・・刑事。霊を全く信じないリアリストだが、事件解決の為には使えるものは使う主義。冷川の過去を知る人物でもある。
- 半澤冴子(桜井ユキ)・・・半澤の妻。半澤が唯一信頼し、心の拠り所にしている存在。
- 非浦松男(マキタスポーツ)・・・英莉可の父。妻の死をきっかけに石黒の宗教団体に所属し、娘の力を利用する。
- 逆木一臣(新納慎也)・・・英莉可のボディガード。呪い屋として暗躍するエリカの身を守ることを任務としている。
- 三角則子(和久井映見)・・・康介の母。忙しく働きながらも息子のことを気にかけるが、霊が視える体質であることは全く知らない。
- 石黒哲哉(筒井道隆)・・・ある宗教団体の教祖。謎めいた人物。
(以上HPより)
「ずっと真夜中でいいのに」が初の映画主題歌を担当するそうですが、作品とぴったりな予感です。
現代ならではの人間関係にも通じる物語だそうですが、いったいどんな除霊ミステリーになっているのか。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
なかなかのホラーじゃねえか!
言霊が呪いとなって渦巻く現代のSNS事情。
それでも繋がる=運命だと信じることの意味。
案外深いぞこの映画!
以下、ネタバレします。
除霊探偵コンビ、いいじゃん!
霊が見えてしまうことに恐怖を感じていた男と、「運命」だと彼に近づく除霊できる男。
長い年月をかけ、出会うべくして出会った二人が怪事件の真相に踏み込んでいく姿を、「さんかく」の結界やグロテスクな過去の断片的な記憶、体内を走る呪いじみた言霊など、CMで培った監督の巧みな映像表現とテンポの良い編集に加え、BL要素たっぷりの2人や「信じない」力で二人をも守る刑事、「呪う」ことに人生を呪われた女子高生などの魅力的なキャラたち、さらにはSNSによって距離感が近くなったことで生まれる信頼と危うさなどを秘めた、視覚でもミステリーとしても人間ドラマとしても楽しめる佳作でございました。
まず特筆すべきなのは冷川と三角の除霊探偵コンビのキャラクター像。
視える男と祓える男。
要は二人ひとつでないと力を発揮できない点ですよね。
昔で言ったら「ウルトラマンA」で、最近で言ったら「仮面ライダーW」みたいな、二人で一つにならないと戦うことができないヒーローにも共通するコンビ愛というモノが充満していた作品だったように思えます。
冷川自身は単独で祓えることができるけど霊をボンヤリとしか捉えることができず、本来の力を発揮できずにいたわけです。
逆に三角は見えてばかりの霊に脅え、ただただ縮こまっていることしかできずにいた。
そんな2人が互いの力を使って、除霊に取り組むってのが序盤の流れです。
性格も真逆。
三角はとにかく怯えてばかりなのに対し、冷川はどこか自信満々。
価値観も人間を信じることが大事だと語る三角に対し、自分で何でもできるし何事も損得勘定で考える冷川。
それもこれも二人が抱えるトラウマから生まれた感覚だということが、物語を追うと浮き出てくるわけです。
幼少時普通の人が見えない霊が見えてしまうことで、友達からも罵倒され敬遠されてきた三角にとって、霊は厄介者としか思えなかったのでしょう。
今まで見てきたモノを否定することでしか生きてこれなかった。
逆に冷川は過去に起きた大量惨殺事件の唯一の生存者という経緯から、誰からも教育されず大人に育ってしまったせいで、歪んだ価値観で物事を見てしまう性格に。
物語は、二人のの過去によって形成されてしまった今の自分像を乗り越えるために、心に蔓延ってしまったその「過去」の出来事と対峙することで、「信じる」こと、「繋がること」の大事さを心に刻み、バディとして絆を深めていくのであります。
どうやら原作では二人の絡み具合がBLチックだということでファンから人気なようなんですが(すいません原作読んでませんw)、作品の中でも彼らの友情を越えた描写が露わに映し出されている点も魅力の一つ。
やはり印象的なのは二人が除霊をする際の姿。
欠けていたメガネを外すことで霊が本物かどうかを見極める三角。
その背後から右腕を廻し三角の胸に当て除霊作業を行う冷川。
なんだか半ば強引に抱き寄せてそれに脅える三角みたいな構図に見えてしまうんですが、この姿がBLファンにとっては萌えるのでしょうか。
ぶっちゃけ三角のどの部分に触れても冷川は見えるのだから、別に背後から腕を廻して触れなくても、背中だったり肩に触れてみればいいじゃん、なんて雑な見方をしてしまったりもしたのですが、岡田将生と志尊淳の美形俳優だからこそ「映える」瞬間でもあり、何度もこのシーンを見ていると、不思議と「お!除霊シーンきたきたぁ!!」と胸が高鳴る自分がいましたw
また、彼ら以外にも魅力的なキャラが登場します。
2人に調査を依頼する刑事、半澤がその一人。
観たモノしか信じない、全てを疑うことで自分を保っている刑事特有の考えを持ってるんですね。
実際事件現場に行っても、二人には目の前に霊がいるのに、霊に脅えてしまったり驚く表情をしているのに、あっけらかんとした態度でガンガン現場を物色してくし、一体何が起きてるのかも理解せずに事件を捜査していく姿が描かれています。
そんな彼の「信じない力」が、逆に冷川にとっては有り難い効果をもたらしてるんです。
だから実際に見えないモノを見て除霊を行うコンビとは対照的な立ち位置にすることで、自ずと物語の「核」が見えてくるんですよね。
その辺はあとで語るとして。
また呪いをかける女子高生、非浦英莉可も異彩なオーラを放ってましたね。
新興宗教に心酔した父親に頼まれ、自身の能力を悪用していた彼女。
日常生活で蓄積された人間が持つ「穢れ」を手に入れるために呪いをかけ、とあるビルを貯金箱代わりに貯め込むことをしてるわけです。
自分の存在を嗅ぎつけ始めた三角に近づき呪いを変えようとしたり、三角の依頼を経て近づいてきた半澤を成敗しようと呪いをかけようとしたりと、邪魔者を排除するシーンなどもありました。
また、父親や背後にいる黒幕に利用されていると理解してはいるものの、自分にできることをすることだけが命を繋いでいるかのような姿に見え、物語が進むにつれ彼女のバックグラウンドや抱えている孤独感が浮き彫りになっていきます。
彼女を演じた平手友梨奈は、欅坂46でも見せたカリスマ性が本作でも見事に発揮されてます。
特に目力が凄く、相手を見下す仕草や呪いをかける瞬間など、彼女の表情がクローズア
ップされるたび、観てるこちらも呪いをかけられるんじゃないかと一瞬ドキっとします。
基本的に一言程度でしかセリフを発しないんですが、つぶやくだけでも成立してしまう説得力を感じました。
過去に主演した「響ーHIBIKI-」も鑑賞しましたが、それとはまた違う一面を堪能できると思います。
「信じる」こと。「繋がる」こと。
SNSの発達により、リアルな友達とは違った繋がりを持つことが当たり前になった昨今。
本名ではなく匿名で何でも思いのままに言葉を発することが自由度を高め、誰でも気軽に思いのままに言葉を発することができるのが大きな利点であると思います。
この効果により、僕らは実際に会わずとも知らない誰かと距離と縮めることができ、これまでとは違った「信頼」だったり「絆」だったりを深めることができるのがメリットの一つではないかと考えます。
しかし単なる言葉のつぶやきが、周り回って誰かを傷つけてしまうことも。
SNSを活用する際には、それらに注意を払うことが今、改めて必要とされていることと思います。
物語では、そんな現代に潜む「言葉」が、どのようにして人を追い込んでしまっているのか、また「言葉」がやがて穢れを含んだ「言霊」として他者を傷つけ、知らず知らずのうちに「呪い」となり「死」に追いやっているのかにも言及した作品になっていたと思います。
「幽霊よりも人間の方が怖い」と半澤が語っていました。
劇中では人間はみな黒い服を着て歩き、幽霊は白い布を羽織って登場します。
恐らく人間が着ている「黒」は穢れの象徴なのでしょう。
増幅してしまった穢れを浄化するには言霊として吐き出すことしかできないのかもしれません。
僕らは何時しかそうやって生きてしまっていることの現れなのかもしれません。
人間の方が怖いってのは、その通りだなと。
また、三角も冷川も非浦も普通の人間とは違い、特異な体質の持ち主。
霊が見えたり、霊を祓ったり、呪いをかけたり。
劇中ではそんな彼らの悲痛な過去が描かれています。
いじめられたり勝手に崇められ束縛されたり、または利用されたり。
なぜ自分はこんな能力を持ってしまったのか。
普通に生きることが出来たらどんなに楽だろう。
そんな辛い過去を背負って生きてきた者たちが、ようやく出会い慰め合うことで、他者を信用する物語になっていたわけです。
恐らく自分ひとりで生きていると縮こまっていたのでしょう。
だって自分の能力を見せたら結局非難を浴びるわけですし、それを話すこともできずにいたわけですから。
だったらひっそり孤独に生きていた方が楽だと。
三角も見てきたモノを否定して生きてきたし、冷川も誰も信用せず孤独に生きてきた。
ヒウラエリカも言われるがままに能力を使ってきた。
けれど実際会って触れて言葉を交わしてぶつかっていく度に、相手を大事だと思えるようになって、密かに発信していたサインだって読み取れるかもしれない。
一人で生きていると信じ込んだって、結局は誰かと繋がって生きている。
その誰かを信じることが出来たら、心に刺さった棘は案外消えるのかもしれない。
除霊だって二人で一つになって初めてできる作業。
誰かと繋がらないとできないわけで。
糸と糸が手繰り寄せた絡みは「運命」に変わり、人生に彩と豊かさを与えてくれるんですよ。
冷川が覗いていた万華鏡は、三角と覗いたことできっと別世界に見えることでしょう。
本作は、言葉の重みを伝えると共に、「信じる」ことの素晴らしさ、「繋がる」ことの意味、「信じ込む」=「依存」という恐怖、それによる失望や妬みが言霊となって「呪い」をかけてしまう怖さなど、「信じる」「信じない」「信じたい」の「さんかく」の対立構図でキャラクターを当てはめることで、生きていくのはこのバランスを保つことが大事なのかなの思わせてくれる作品だったのではないでしょうか。
最後に
なんか途中ポエムみたいな内容になってしまいましたが、思っていた以上に面白かったと思います。
特に監督が仰っていた通り、白黒の衣装で判別させてくれる「穢れ」の意味だったり、現在と過去のパートをテンポよく進める所もあれば、あえてじっくり見せる演出、これ普通にホラーじゃね?と思ってしまうゴア描写、「死ね」という言霊が血管のように連なって体内に入り込んでくるキモさ、いきなり「さんかく」の中に入って除霊を行う異世界感など、視覚で没入させてくれる映像表現が際立っていたと思います。
またミステリーとしてもなかなか優れてましたよね。
ヒウラエリカの何者感や、冷川の隠された過去、新興宗教の謎など、この後一体何が明かされるのか意外と読めない工夫もされていて、映像も内容も意識が途切れることなく堪能できる仕組みになっていたと思います。
まるで結界のように自分の領域にしてしまっている「さんかく」の外側から見る景色が、夜から夜明けに変わる願いなんてのも込められてたりするのでしょうか。
知らぬ間に築いてた「自分らしさ」の檻の中でもがく僕らですから、そういった意味でも「救い」の映画になってくれてる気がします。
本作がヒットすれば恐らく続編も製作することでしょう。
是非シリーズ化を希望したいですね。
てか、ちゃっかり北川景子出てたなw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10