シェイプ・オブ・ウォーター
アカデミー賞作品賞含む4部門受賞!!
名匠ギレルモ・デル・トロ監督のファンタジーロマンスということで、正直「パシフィック・リム」しか観てないモンキーにとって、彼のファンタジー映画の世界観についていけるのか不安であります。
しかしながらまだ踏み入れていない分野というか、監督の作品を堪能できる絶好の機会なので期待も高まっているのも事実。
そんな期待と不安が同居する気持ちを抱え、早速観賞してまいりました!!
作品情報
「パンズ・ラビリンス」、「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ監督最新作は、声を無くした女性と、遠い海から連れてこられた彼の切なくも愛しい恋の物語。
ベネチア国際映画祭で最高賞である金獅子賞を受賞したのを皮切りに、各映画賞を今年総なめし、アカデミー賞でも最多の13部門ノミネート、作品賞含む4部門を受賞した。
何かに恐れ一歩踏み出せないでいる現代を生きる人へ向けた、言葉を発せられない二人が織り成す姿を描く不思議なおとぎ話です。
あらすじ
1962年、アメリカ。政府の極秘研究所に勤めるイライザ(サリー・ホーキンス)は、
秘かに運び込まれた不思議な生きものを見てしまう。
アマゾンの奥地で神のように崇められていたという“彼”の奇妙だが、
どこか魅惑的な姿に心を奪われたイライザは、周囲の目を盗んで会いに行くようになる。
子供の頃のトラウマで声が出せないイライザだったが、
“彼”とのコミュニケーションに言葉は必要なかった。
音楽とダンスに手話、そして熱い眼差しで二人の心が通い始めた時、
イライザは“彼”が間もなく国家の威信をかけた実験の犠牲になると知る─。(HPより)
監督
今作を手がけるのはギレルモ・デル・トロ監督。
アメコミ好きのモンキーですが、なぜか彼の作品である「ヘルボーイ」と「ブレイド2」を観ていない愚か者でございますw。
こんなトトロみたいな可愛い方ですが、幼少の頃日本の映画やアニメやマンガで育ったということで非常に好感の持てる監督さんです。
先日来日したときも、日本食を食べ過ぎてボタンが閉まらない、なんて茶目っ気たっぷりな部分も見せてくれた監督。
そんな監督の代表作をサクッとご紹介。
20代まで特殊メイクや造形などの仕事をしていた監督。
謎の精密機械によって虜になってしまった老人が吸血鬼と化していく異色のホラー「クロノス」で長編映画監督デビューを果たします。
人間とヴァンパイアとの間に生まれたヴァンパイアハンターを描いたアクションホラーの続編「ブレイド2」では、前作を超えるヒット。
原作コミックの大ファンである監督の夢が叶った、悪魔の子にして心優しい異形のヒーローの活躍を描いた「ヘルボーイ」、その続編「ヘルボーイ・ゴールデン・アーミー」。
スペイン内戦を背景に、空想好きの少女が現実逃避し森の中の迷宮へと迷い込んでいくダークファンタジー「パンズ・ラビリンス」では世界で高い評価を獲得。
日本のアニメや特撮を見て育った監督がその思いを具現化した、巨大怪獣と人型巨大ロボットの戦いを圧倒的スケールで描いた「パシフィック・リム」など、少年の心を忘れず、特殊メイク畑で学んできた監督ならではの表現が詰まった作品ばかりです。
キャスト
声を無くした主人公イライザを演じるのはサリー・ホーキンス。
彼女をきちんと認識したのは、「ブルージャスミン」が最初でしょうか。
ケイト様に徐々に感化されて浮気をしでかす妹役で出演してましたが、ちょっと田舎臭い感じながら恋をするとここまで女性は変わるものなのか!というのを体現されていましたね。
そしてモンキー的に抜群に心奪われた作品「パディントン」でのブラウン夫人役が有名でしょうか。
見た目がどこか天然っぽい感じですよね彼女って。
で、暖かな優しい心を持ち合わせているようなオーラを醸し出している所が、このパディントンも今作も観ていると感じます。
他にはひたすらポジティヴシンキングな女性が、それでもうまくいかない日常を懸命に生きるコメディ「ハッピー・ゴー・ラッキー」や、ハリウッド版「ゴジラ/GODZILLA」などにも出演しています。
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遠い海から連れてこられた“彼”を研究する職員ストリックランドを演じるのは、マイケル・シャノン。
もぉ~コワいんですよこの人w
もし007で殺し屋ジョーズを再び出すのなら、真っ先に彼を推薦したいです。
絶対イケるって。顔そっくりじゃん!!!
そんな妄想はおいといて、彼といえば最近では「マン・オブ・スティール」や「バットマンVSスーパーマン」で登場したゾッド将軍が有名ですかね。
他に観ているので言うと、「レボリューショナリーロード」での不動産屋の息子役が印象的。
オブラートに包まずズケズケと物言う発言には笑ったし、なんて失礼なやつだとw
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最近では「ノクターナル・アニマルズ」でも存在感を発揮してましたね。
劇中激で末期の病気を抱えながらも、妻と娘を殺した犯人を探してくれる保安官役。
貫禄を見せながらも、体はガリガリで声もままならない、ホント病気してそうな感じがリアルでした。
他にも、竜巻の恐怖に囚われ、家族を守るためにシェルターつくりに没頭する男を描いた心理スリラー「テイク・シェルター」や、ごく普通の市民がサブプライムローンに翻弄され、平穏な人生を奪われていく社会派ドラマ「ドリームホーム 99%を操る男たち」などがあります。
こちらもどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
イライザの隣人ジャイルズ役に、「扉をたたく人」、「キャビン」、「スポットライト 世紀のスクープ」のリチャード・ジェンキンス。
遠い海から来た不思議な生き物の役を、「ファンタスティック・フォー/銀河の危機」、「ヘルボーイ」を始めとした監督作品に多く出演するダグ・ジョーンズ。
ホフステトラー博士役に、「シリアスマン」、「ヒューゴの不思議な発明」、「リンカーン」のマイケル・スタールバーグ。
イライザの同僚ゼルダ役に、「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」、「ドリーム」、「gifted/ギフテッド」のオクタヴィア・スペンサーが出演します。
監督が描く愛の寓話。
言葉を使えない二人はどうやり取りし、心を通わせていくのか。
決して掴むことのできない水のカタチが、一体どんな形となって描かれるのか。
それが何を意味するのか。
色々な解釈ができそうだし、純粋にラブストーリーとしても見応えありそうですね。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
声を失ったプリンセスの物語をどうやって伝えよう。
互いの欠けた部分を補い合うように愛を紡いでいく、大人の恋愛ファンタジー映画でした!!
以下、核心に触れずネタバレします。
異形の愛の物語。
第二次世界大戦後の冷戦下、ソ連との開発競争真っ只中の時代で、正確に繰り返す毎日を過ごす話すことができない女性と、アマゾンから発見され原住民から神と崇められた半魚人。
言葉を持たない二人が心で通じ合っていく様を、若干のダーク感とファンタジー色で彩り、当時の娯楽を随所にちりばめることで、当時の時代が生んだエンタテインメントをリスペクトしながらも、あの時の排他的風潮が今も繰り返されているという警告を促す社会へのメッセージや対する答えを2人の愛で示した、アカデミー賞作品にふさわしい映画でした。
途中でも書きましたが、私デルトロ素人であります。
彼が描くクリーチャー像に少しでも慣れておこうと、急ごしらえではありますが「パンズ・ラビリンス」と「ヘルボーイ」2作を見て鑑賞したわけですが、なるほどこれがデルトロ監督映画かと。
どのクリーチャーも一見グロテスクで今にも牙をむきそうな恐怖感を持った造形ですが、よく見ると彼らが持つ瞳はどれも純粋で無垢でかわいらしいじゃないかと。
だから今作もこの半魚人を見て同じ印象を持ちました。
そしてそれが監督の意図だったりもするのかなと。
どの人間も最初こそ見た目で判断してしまいがちなのですが、僕たちはしっかり目の奥に宿る彼らの心の美しさを見つめて向き合っているのだろうかと。
そしてそれを覗くことができたらどれだけ素晴らしいんだろうと。
そんな思いがこの半魚人には詰まっているんじゃないかなぁと思うわけです。
自分を慰める事でしか孤独を埋めることができないイライザは、普通の人間と違い言葉を話すことができないという設定。
声を黙殺されてしまうマイノリティというダブルミーニングを持つ彼女が、いかにして半魚人と心を通わせていくのか。
隣人のジャイルズは、同姓を好むいわゆるゲイ。
大手を振って歩けるような時代ではなかったセクシャルマイノリティの意味合いを持つ彼が、いかにしてイライザをサポートするのか。
同僚のゼルダは夫との関係に不満を持つ主婦。
コミュニケーションができなくなった典型的夫婦の象徴である彼女が、いかにして夫との関係を解消していくのか。
そんなあらゆる弱者たちが、愛を知り、愛を失い、愛を育んでいくといった様々な愛が描かれた作品でありました。
水の形というタイトルであるように、きまった形を持たない性質の水と同様に、愛もまたそれぞれの形を示し形成されていくものであり、例え形が歪だからとか変だからとか他者から何か言われるものならお門違いもいいところだと。
水の中で浮かびながら抱き合う二人には圧力もなければ重力もない。
そんな優しい愛で包んだ映画だったのではないでしょうか。
誰かに邪魔されるならいっそ邪魔されないところへ行って2人だけの世界を作ればいい。
ストリックランドの正体。
本作で描かれる「愛のカタチ」を成立させるには、彼らを執拗に抑圧する人物がきちんといなければならないわけで、それを担ったのがマイケル・シャノン演じるストリックランドです。
何でも力で押しつけ、上昇志向で何でもポジティブに変換する。
用を足す際、前後2回も手を洗うやつは弱い奴だと決めつける言動が彼を象徴するように、半魚人を小バカにし執拗に痛みつけ挙句の果てには解剖してやろうと企む。
半魚人を神と崇める先住民を小バカにし、話すことのできないイライザを性欲の相手としかみなさない。
全ては成功するためであり、自分よりも下の立場の人間を踏み台としか見ていない。
子供の頃から食べ続けているキャンディを大人になった今でも好むのは、未だに幼稚な考えを持つという意味合いなのか、ひたすらこだわりを持つということで、頑固で不寛容な男をイメージするアイテムなのか。
そして成功者の証であるキャデラックに乗り、子供の話もロクに聞かず、欲に任せて黙々と妻を抱く姿は、愛を受け入れない独りよがりな男という意味あいなのか。
全ては自分が成功するための道具。
自分意外の弱い者は力で踏みつけ、自分は強い人間だ、強い者こそ正義で弱い者は悪、俺はできる男だと思い込んでいる。
そんな彼はやはりトランプ大統領を意識した存在だと思います。
移民を追い出し、メキシコに壁を作ろうとし、他国を非難し、とにかく強いアメリカを作ろうとしている彼は正しくストリックランドとダブります。
嫌な奴特有の空気感を常に発し、失敗を取り戻そうと奔走する姿はもろホラーです。
影からヌメっと顔を出したり、ずぶ濡れになって真っ青な顔で追いかける様は怖いとしか言いようがありません。
半魚人の性質
最初こそストリックランドの指を噛み切る狂暴性を見せる半魚人ですが、彼は自分を守るために相手を攻撃したり脅かしたりしてるんだというのが随所でわかります。
イライザが卵を与えるシーンでも最初は手で渡そうとするんですが、何か自分に危害を与えるものかもしれないと判断し、イライザを脅かすんですね。
他にも、ジャイルズが半魚人を浴槽で見張っていたものの、うたた寝をしてしまい、その隙に居間に入り込んでしまうんですが、そこで対峙した猫が威嚇してしまったために、その猫は食われてしまう悲しい末路を辿ってしまいます。
ここはグロかった・・・ネコ好きの方はご注意を。
このようにはじめからなのか、捕らえられてからなのかはわかりませんが、彼はとても臆病な性格なんだろうということがわかります。
その反面、とても優しい心の持ち主であることも描かれています。
特に印象的だったのは、ジャイルズがうたた寝後居間に行くと、猫を食べている彼を見て止めようとしますが、ジャイルズの腕を引っ掻いて部屋を飛び出してしまいます。
その後無事見つかりますが、反省している姿勢を見せようとジャイルズにつけてしまった傷を撫でたり頭をなでたりしていました。
イライザと共に施設から逃げるのを手伝ってくれたセルダにも衰弱していたとはいえ危害を加えようとはしていなかったし、ホフステトラー博士にも研究対象であるとはいえ、きちんと彼から学ぼうという純粋な姿勢があったし、解剖を何とか阻止しようと奔走していたことが理解できていたと考えると、彼にも好意的であったことが窺えます。
要は彼に好意を持つ人には何もしないわけです。
半魚人ということで肺呼吸もできれば鰓呼吸もできる水陸両用の人間なんですが、陸には一定の時間しかいることができなかったんですね。
水中でもきちんと塩分濃度が8%を保っていないと体調を崩してしまうとてもナイーブな体質。
そんな半魚人にはとんでもない力がありました。
ジャイルズの腕と頭を撫でた翌日、ジャイルズの頭皮から髪が生え、腕の傷が無くなっていたのです。
やはり神なのか、というジャイルズの言葉がその力のすごさを際立たせていました。
特徴的な色。
今回の作品は60年代前半という時代を背景に描かれていたわけですが、どこもかしこもある色が特徴的でした。
劇中でも出てくる言葉ですが、ティール色という色が背景や服の色、そしてストリックランドが購入したキャデラックに使われていました。
そして、主人公イライザは半魚人への思いが強くなっていくと徐々に赤いアイテムをつけていくのが印象的でした。
この時自分は、女性同士の切ない恋模様を描いた「キャロル」という映画を思いだしました。
「太陽がいっぱい」で知られる小説家パトリシア・ハイスミスが自身の体験をもとに書き記した原作を映画化した作品で、50年代のニューヨークを舞台に心の奥に悲しみを持ったまま過ごしている富裕層の人妻と若い女性デパート社員が互いの心と体を通わせていく中で自分らしさを見出していく純愛ラブストーリーなんですが、この映画でも、赤とティール色を基調とした配色をしていたんですね。
ルーニー・マーラ演じるテレーズは、ケイト・ブランシェット演じるキャロルに思いを寄せていくときは赤い服を着て、彼女への思いを断ち切った時は部屋の壁をティール色に染めたりする様をはじめ、様々な場所でこの2色が対比的に使われているんです。
で、今回の映画と照らし合わせてみてみると、このティール色というのが水の色という意味もあるんだけど、悲しみだったり孤独だったり、何かに抑圧されている抑えつけられているという意味合いを持つ色の象徴だということがわかります。
そして徐々にティール色から解放され赤い服や靴カチューシャや帽子などを身に着けていくイライザは、半魚人への想いが強くなっていく度合いだったり、今まで血の通っていなかったような彼女に血を巡らせる=生きている意志を持つ意味合いを強調していることが分かると思います。
実はこの2色、補色のテクニックを使ってると思われます。
全く反対の異なる対照的な色を使うことで、互いの色を強調させる=コントラストの差が一番強く映し出される効果を持つんだそうです。
だから施設も作業服もティール色で統一する中で、イライザが赤く染まっていく姿を見ると、彼女の心境がどういう状態にあるかというのがより一層際立つ演出なのかがわかると思います。
それ以前にこのティール色はその時代の流行色だったのかなとも考えられます。
たぶんそうでしょう。
え~このパートの解説は、映画ブロガーとして盟友であり、ライバルであり、良き飲み仲間である、Machinakaさんの過去記事から引用させていただきました!
すいません!あざっす!完全に受け売りです!
こっちで詳しく解説していますのでよろしければどうぞ!
最後に
「パンズ・ラビリンス」を見て、これってハッピーエンドなのか?と疑問に感じるほど切ない終わり方をしていて、物語の結末は見方を変えればハッピーにもサッドにもなるんだなぁと痛感したわけですが、今作も「パンズ・ラビリンス」ほどではないですが似たような終わり方だったと思います。
冒頭ジャイルズの語りで、「彼女の話をどうやって伝えよう」とこれがおとぎ話なのかそうでないのか意味深な語り口で始まるんですが、結末を見ると語り方によってこの映画もどっちにもなるんだなぁと。
途中ミュージカルになったり、イライザの自慰行為や裸体での抱擁、おまけにストリックランドのがっぷりよつなベッドシーン(モザイクひどかったw)などドキッとするシーンや、さりげなく大量の血が床にまかれていたり、切断された指だったりと生々しいシーンを挟むことで飽きさせない工夫も目立つ内容でした。
しいて言えば、もっとイライザと半魚人が心を通わせていくまでを少しづつ丁寧に見せてくれたらもっと感情移入できたかなぁという欲張りな感想もあったんですが、終始してピースの欠けた2人が愛を育んでいく美しい物語だったことに変わりはありません。
というわけで以上!あざっした!!
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満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10