モンキー的映画のススメ

モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「そして僕は途方に暮れる」感想ネタバレあり解説 逃げまくるクズがたどり着いた結末とは。

そして僕は途方に暮れる

人生において目の前に立ちはだかる壁、壁、壁。

そこを乗り越えたものにしか見えない景色があるなんていいますが、別に越えなくても生きては行ける。

しかしそうやって回避の連続をしていけば、楽かもしれないけどツケは必ずやってくるのです。

 

自分も幾度か回避をした経験はあり、その選択をしたことを未だに後悔しています。

そうならないために「逃げては行けない」、そう肝に銘じて生きてるつもりです。

 

今回鑑賞する映画は、逃げて逃げて逃げまくる男の物語。

全てを失ってでも逃げたい気持ちってのはなかなか理解できないんですが、なぜそこまでして逃げたいのかは気になりますし、果てまで逃げたらどんな景色が待っているのか、映画なら体験できるのかと。

教訓にもなるだろうし、ただあざ笑うだけかもしれない。

 

自分がそうならないためにも目に焼き付けてこようと思います。

早速観賞してまいりました!

 

 

作品情報

愛の渦」や「娼年」など自身が手掛けた舞台を映画化することでも注目を浴びている劇作家・三浦大輔が、舞台と同じ主演を起用し映画化。

 

平凡な1人のフリーターが、ほんの些細なことから、あらゆる人間関係を断ち切っていく人生を賭けた逃避劇を、舞台での肝であったロード―ムービー的描写をさらに映画的に描写していく。

 

主演には、ジャニーズアイドルとして歌や演技はもちろん、TVバラエティでMCも務めるといった多彩な顔を持つ藤ヶ谷太輔

人間関係を断ち切ってでも逃げ続ける男を、舞台同様身を削って演じきった。

 

他にも「もっと超越したところへ」で抜群の演技を披露した前田敦子や、Netflixドラマ「First Love 初恋」の中尾明慶ら舞台組も続投。息もぴったりな掛け合いを見せていく。

そして映画化にあたり一新されたキャスト陣には、豊川悦司原田美枝子香里奈野村周平など豪華なメンツがそろい、熱量の高い芝居によって主人公を追い込んでいく。

 

またエンディング曲には映画のタイトルと同じく、1984年に大ヒットした大沢誉志幸の「そして僕は途方に暮れる」を起用。

今回の為にリアレンジで歌入れをし、映画に深みを与える。

 

逃げて逃げて逃げまくる。

その先に待ち受けていたものとは何か。

共感と反感が渦まく「現実逃避型」エンタテインメントです。

 

 

 

 

あらすじ

 

自堕落な日々を過ごすフリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、長年同棲している恋人・里美(前田敦子)と、些細なことで言い合いになり、話し合うこともせず家を飛び出してしまう。

 

その夜から、親友、大学時代の先輩や後輩、姉のもとを渡り歩くが、ばつが悪くなるとその場から逃げ出し、ついには、母が1人で暮らす北海道・苫小牧の実家へ辿り着く。

 

だが、母ともなぜか気まずくなり、雪降る街へ。

行き場を無くし、途方に暮れる裕一は最果ての地で、思いがけず、かつて家族から逃げていった父と10年ぶりに再会する。

「俺の家に来るか?」、父の誘いを受けた裕一は、ついにスマホの電源を切ってすべての人間関係を断つのだが――。(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

監督

本作を手掛けるのは、三浦大輔。

 

乱交パーティーに集まった男女の欲望とエゴむき出しの姿を滑稽かつ切なく人間模様を描いた「愛の渦」、就職活動にいそしむ男女6人の姿を描いた朝井リョウ原作小説の映画化「何者」、女性専用コール倶楽部で働く青年が性の多様性と悦びを知っていく「娼年」など、自身が手掛けた舞台を映画化することが多い方。

 

舞台からの映画ってのはいくつもありますが、最近で言えば「ファーザー」のような成功例のように、映画だからこそ表現できる奥行きを感じることがあります。

逆に舞台からの映画を見ることで、「え、舞台は一体どういうことになってるんだろう」という興味も沸くので、非常にお上手な誘導手段だったりするのかなとw

 

また今回逃避をしながら旅を続けるロードムービーであり、過去作と比べるとだいぶ屋外での移動シーンを要する作品だと思います。

道中でどんな思いに駆られながら移動するのか、そこにどんな演出をつけるのか、非常に楽しみですね。

 

 

娼年

娼年

  • 松坂桃李
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登場人物紹介

  • 菅原裕一(藤ヶ谷太輔)・・・自堕落なフリーター、バツが悪くなるとすぐ逃げ出す。
  • 鈴木里美(前田敦子)・・・主人公・裕一が5年間同棲している彼女
  • 今井伸二(中尾明慶)・・・主人公・裕一の同郷の幼なじみで親友
  • 田村修(毎熊克哉)・・・裕一の大学の先輩でバイト仲間
  • 加藤勇(野村周平)・・・裕一の大学の先輩でバイト仲間
  • 菅原香(香里奈)・・・裕一の姉。東京に住んでいる。
  • 菅原智子(原田美枝子)・・・裕一の母、北海道・苫小牧で一人暮らし。
  • 菅原浩二(豊川悦司)・・・10年前に家族から逃げていった裕一の父。

(以上HPより)

 

 

 

 

 

 

 

 

自分も逃げっぱなしなところあるんで共感を得ることも多いんだろうけど、度を超えてしまうところもありそうな予感。

腹立ちそうだなぁw

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

意外とそこまでのクズじゃなくて拍子抜けしてしまったところがあるが、その分主人公に寄り添えたり共感できることも多く、誰しも起こり得ることかなと。

しかし「娼年」のようなインパクトは欠けたかな…。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

素晴らしき哉、人生・・・?

彼女と同棲するフリーターが、浮気がバレたことをきっかけに伝手を頼って転々と逃げ続ける様を描いたロード―ムービー的逃避行の行方は、序盤こそいいクズっぷりを見せていくも、そんな奴にもまだ人間の心は持ち合わせていたかと良心を見せ、やがては名作映画に倣って「善意」によって救われ改心しようと試みていく姿を、徐々にやせ細っていきながら切羽詰まっていく表情で物語をリードした藤ヶ谷太輔の代表作になる1本でしたが、個人的は演出面での展開の起伏が弱く、大きな満足は得られない作品でございました。

 

 

劇中で子供の頃親父とよく通った映画館でフランク・キャプラの名作「素晴らしき哉、人生!」に触れるシーンが登場します。

 

将来のビジョンがありながらも、お人好しな性格から徐々に逆の選択を強いられながらも状況を打破したものの、やがて大きな問題に衝突し命を絶とうとしてしまう主人公の前に、一人の見習い天使が舞い降り奇跡を起こすという、クリスマスシーズンを舞台にした物語。

 

「素晴らしき哉、人生!」はそんな主人公の人の良さによって救われた周囲の人物が善意でお返しすることで彼が救われ、人生はなんて素晴らしいんだ!と教えてくれる映画でした。

 

誰にでも親切にしていればいつか自分にも返ってくる、決して見返りを求めてやってるわけじゃないけれど、親切にされたら親切にしてあげたいってのが人の性ってもんじゃねえかと改めて思い知られるわけです。

 

実は本作も、そんな人の善意によって主人公が救われていくお話だったんじゃねえかと。

 

実際これまで生きてきた中でいろんな人と出会い交差し、どっか見切りをつけたり疎遠になっていくわけですが、その中でも継続してお付き合いしている友人や仲間の存在に対して、なんでまだ仲良くできてるんだろうとか関係を続けられるんだろうと、一度は思ったことってないですかね。

 

多分長く関係を続けていくと油断すると思うんですよ。

つい余計なことを言ったり人として良くない行為を見せちゃったりすることで、相手によくない印象を与えてしまうみたいな。

 

それって要は相手に対して「甘え」ちゃってることに繋がると思うんですけど、それでも許してくれる友人て、きっとその「悪しき行為」にだけ目を向けてないっていうか、そういうところを「側面」として捉えてくれてて、「こいつたまにダメな所もあるけれど、人としてどうかって所もあるけれど、こいつならではの良い面もある」っていう、そう簡単に関係を絶ち切れないものがあるんだろうなって。

 

実際劇中では「好きな監督」を例えに伸二が裕一に語る場面があるんです。

めっちゃ推してる監督が、たまに駄作を作ってしまう時があるけれど、それをきっかけに追いかけるのをやめるってことはしない、それは監督の人間性を知ってるから「許せる」駄作であり、今後も追いかけて新作を見続ける、というもの。

 

これは映画好きなら非常に理解できるセリフだと思うんですけど、それを人間関係に当てはめていくと、結局今も仲良くさせてもらっている人との関係ってそれと似てるよなぁと。

そう簡単に断ち切る関係じゃないって所まで長く付き合ってるんだよなぁと。

 

本作はそんな親友からやがて姉や母、出ていった父にまで辿り、どんなに逃げ続けても決して簡単には断ち切れない関係に主人公は気づかされていくんですよね。

 

もし仮に逃げたままの状態だったら、ほんとに関係って終わってしまうんだろうけど、しっかり面と向きあったら受け入れてくれるんだよなぁ、人間関係ってそういうことだよなぁ、人間ていいなぁ、なんて所にまで行きつく映画だったんじゃないかなと。

 

それにしても何で逃げるかなw

こうして本作は、クズのクズによるクズっぷりに「ホントコイツバカだなぁ」とは思えない部分にまで持っていき善意によって救われるんだけど、やっぱり代償ってものがオチとして用意されており、裕一のセリフの如く「面白くなってきやがったぜ」と彼の今後を応援したくなる作品だったんですけど、それにしても序盤の裕一は、マジで「クズ」そのものだったなぁとww

 

彼女名義で借りているアパートで長い年月同棲をしているにも拘らず、未だフリーターで生計を立て、将来を棒に振っている青年の裕一が、何をきっかけに彼女から逃げ出すのかと思いきや、「浮気」ですよw

 

それがバレて感情任せにあれこれ言われ、急に動悸が激しくなり、理由も言い訳もせず「じゃあ俺出ていくわ」と彼女とも向き合わず詫びもせずただ「逃げる」という愚かな男・裕一。

そもそも裕一、彼女が近づくたびにいじってるスマホの画面を背にして体を動かしたり、必ずスマホを裏にしてテーブルに置く時点で、やましさ満点なわけです。

女の人ってそういうところちゃ~んと見てますよねw

 

それ以外にも朝忙しいにもかかわらず裕一の分の朝食を用意してくれてるのにありがとうも言わないし、寧ろ食ってねえw

挙句の果てには「トイレの電気切れてたよ替えといて」って気づいたならお前がやれよw

 

彼女の家から逃げた先は親友・伸二のマンション。

1週間寝泊まりを続けていくうちに、裕一は伸二にも甘えてしまいます。

勝手にTVを付け出し、食べたコンビニ弁当を片付けないまま風呂に入る。

伸二には「俺を布団轢いといて」とか「トイレットペーパー切れてるよ」なんて言う始末。

 

終いには伸二が寝てるのにTVを見てはデカい声で笑い出すから付き合ってられないw

さすがの伸二もこれに端を発し「お前の洗濯物を何でおれが洗ってるんだよ!」、「ゴミ位自分で片づけろ!」とこれまで溜まっていた鬱憤をぶつけてしまいます。

 

いやホントお前んちじゃねえから!

幾ら親友でも自分の家のようにされちゃたまったもんじゃないですよw

 

そして裕一は何の反省もせず再び家を出ては次の居候先を探すのです。

 

ここまでの時点で裕一という男は、友人や彼女にとことん甘えて自分では何もしない生粋のクズなのかと見てましたが、この後訪れる先輩の家では、後輩として身の回りのことは気を利かせて率先してるんですよね。

先輩の洗濯物をコインランドリーで洗い、切れかけてたティッシュも買い、お酒の買い出しまで済ませる。しかも自分のお金で。

 

もしかしたらこれまでの行いを反省してのものかもしれないし、寝泊まりさせてもらってる身としての正しい振る舞いをそもそもわかっていたのかもしれない。

もしくは彼女や親友とは違う間柄故「甘え」られないのかもしれない。

とにかく、生粋のクズではないなってのが見えた瞬間でした。

 

しかしここでも酒の勢いで絡んできた先輩をラックに突き飛ばしてしまい、あわや怒鳴られて縁を切られてしまうのではないかと察した裕一は、再び家を飛び出してしまうのであります。

 

 

ここまでの場面で「芸能人がYouTubeを始めること」に対して触れるのが印象的でした。

TVを主戦場としているタレントがYouTubeをやるって結局逃げてることなんじゃないか、とか、つまらなくなったTVなんか出てないでYouTubeで好きなことだけすればいいじゃないかとか。

 

要は逃げることへのメタファーとしてのセリフだと思うんですが、裕一はYouTubeを「逃げ場」と捉え、先輩はYouTubeを「主戦場を変える意義」を指していると思うんですけど、どちらも間違ってないんじゃないかなぁなんて思った瞬間でした。

 

これに関して様々な意見があるとは思いますが、芸能人も食っていかなきゃならないし今の現代TVだけがタレントとして輝く場所ではないわけで、TVからお声がかからなければYouTubeに移行するって全然恥ずかしいことではないし、そこに需要があれば率先してやっても全然問題ではない。

だからと言ってタレントである以上TVに出演することも頑張ってほしい思いがあるというか、もう一度そこで踏ん張ってほしい気持ちもどこかにあるわけで。

 

これは芸能人だけで決められる選択肢ではないとは思いますけどw

 

だから裕一は「逃げる」ことに対してはどこか「ダサい」みたいな思いがあるにもかかわらず、自分の事は棚に上げて逃げるんですから滑稽です。

 

やがて裕一は姉のマンションを訪れ、実家を経て親父と再会。

この親父が家族を捨て再婚したかと思えば、すぐ離婚。

慰謝料を知り合いから片っ端に借りて払うも、返済のめどが立たず縁を切って逃げ切るという最高のクズ。

こうして逃げちゃえばどれだけ人生気楽に過ごせるかってのを息子である裕一に諭すのであります。

 

恐らくこういう感じで生きてる人って結構いると思うんですけど、確かに誰とも接することなく暮らすせばもう逃げる必要もなく気楽なんでしょうけど、親父が言うように「映画の主人公」みたいな「面白くなる」ことってきっとないと思うんですよね。

 

牢獄と呼ぶ最北の地・親父の家でこのまま孤独に暮らす道を選ぶか、それとも改心し来た道を戻るか。

父親の姿を見ながら裕一が下す決断をご堪能いただければ。

 

 

最後に

物語の構成が「娼年」のように、様々な他者と触れることで自分に何かが起こり次のステージへと進むという作品でしたが、過去作と比べてみると他者との掛け合いの尺が短く感じたり出来事自体が薄かったりと物足りない部分はありました。

 

また裕一自身が生粋のクズで無い部分が中盤から透けて見えてきており、答えは出てるはずなのになぜアクションしないのかといった疑問や、どうして彼は相手から怒られたりすると何もかも投げ出してしまうのかというきっかけの部分が全く描かれておらず、個人的にはそこまでの満足には至りませんでした。

 

終盤も締めが来たかと思いきや、その後のエピソードにも尺を使うようになっていて締まりが悪いというか。

オチは面白かったんですけどw

そういうことだよなぁってw

 

とにかく今の時代、スマホだけが人間関係を続けられる唯一の武器で、これが無くなったらホント色んな人と繋がらなくなっちゃうんだよなぁってのは感じましたし、何よりやらかしてしまったらちゃんと謝ったり反省したりすること、それこそ問題自体を投げっぱなしにせずコミュニケーションを取ることが大事だよなぁと。

何も言わない状態だと相手が何を考えてるのかわからなくて段々嫌になってきますよね。SNSが普及してそれが加速したようにも思いますし、リアルに顔を突き合わせるような関係だとなおさらですもの。

 

裕一が次に起こすアクションが気になりますよね、特に親友との関係はww

 

しかし香里奈を久々に見たな…

彼女もプライベート写真をきっかけに主演から遠ざかってしまいましたが、途方に暮れることなくお仕事されてる姿を見ると、本作をどのように感じたのか知りたいですねw

下世話だw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10