スペース・スウィーパーズ
2020年「パラサイト/半地下の家族」の大ヒットによって、再び盛り上がりを見せている韓国映画。
文化産業として国が支援しているにもかかわらず、自国の暗部に切り込むような社会派もあれば、純愛映画、かなりの予算を使った大規模なアクションやサスペンス映画など、強いメッセージ性を放ちながらも、しっかり「娯楽」の映画として描かれている点においては、「日本の映画よ、大丈夫か?」と毎度心配になります。
とりあえず日本の映画産業のことはおいといて。
確かにすごいぞ!面白いぞ!韓国映画!なんですが、ハリウッド大作好きの僕としてはいわゆる「ブロックバスター」級の作品てのは、さすが韓国でも予算がつかないのか、制作するのが難しいんでし…と思ってたら、やるじゃない!!
しかも何、宇宙SFモノ!?
僕の記憶が間違ってなければ、韓国映画としては宇宙モノって初なんじゃない?
きっとあちらの国の映画ですから、貧富の差とか下地に置いたお話とか、クオリティも高いんでしょうね…実写版のヤ○トとは違って…。
今回ネットフリックスが独占配信だそうで、自宅にて鑑賞いたしました!!
作品情報
これまで高水準の作品を世界に発信し続けてきた「韓国映画」が、満を持して送る初のSF大作映画。
監督が10年にわたって構想し、総製作費240億ウォン(約24億円)かけて作られた注目作だ。
2020年9月に、韓国で劇場公開だったが、新型コロナウィルスの拡大により延期。
この度Netflixでの独占配信となった。
近未来を舞台にした本作は、宇宙船「勝利号」に乗って、宇宙のゴミを拾い金を稼ぐ労働者たちをたくましく描く。
たまたま拾った人型ロボットの「性能」に驚いた彼らに、大きな危険が降りかかろうとする物語だ。
金儲け主義、元海賊、優しい機関士、小言の多い軍用ロボットなど、同船しているにもかかわらず一つにまとまろうとしない個性豊かなクルーは、どこか「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を見ているよう。
果たして彼らは人型ロボットとの出会いを通じてどんな危険に巻き込まれ、どんな成長を遂げていくのか。
韓国映画の底力を堪能しよう!
あらすじ
2092年の未来。
金のためなら何でもやる操縦士テホ(ソン・ジュンギ)。
過去に宇宙の海賊団を率いていたリーダーのチャン船長(キム・テリ)。
荒っぽく見えて実は優しい機関士タイガー・パク(チン・ソンギュ)。
小言が多いが魅力たっぷりの軍用ロボット(ユ・ヘジン)らは、宇宙に散らばるゴミを拾う宇宙清掃船「勝利号」に乗船し、日銭を稼いで過ごしていた。
ある日、いつものように宇宙のゴミを拾っていると、壊れたスペースシャトルを発見。
中には7歳の女の子が蹲っていた。
見た目のかわいい女の子だったが、調べた結果、彼女は人の形をした「大量破壊兵器」ロボットだった。
クルーたちは、彼女を使って一儲けしようと考えるが、事態は思わぬ方向へ進んでいく。
予期せぬ危険が舞い込む中、果たして彼らは計画の通り、大金を手にすることができるのか。
監督
本作を手掛けるのは、チョ・ソンヒ。
いつになっても韓国の方の名前と顔が覚えられないモンキーですが、調べてみたところ、彼の作品1本も見てませんでしたw
監督は今回の作品を10年かけて構想を練っていたそう。
本作の主演を務めるソン・ジュンギは、監督デビュー作「私のオオカミ少年」の撮影時に本作の構想を聞かされていたそうで、彼らしく温かく愉快な物語だと感じたんだとか。
デビュー時から明確なコンセプトを作っていた監督。
いったいどれだけ斬新かつ新鮮な内容になっているのでしょうか。
そんな監督の代表作を軽くご紹介。
人間社会から隔絶されたオオカミ少年と少女の淡い恋模様を描いたファンタジー映画「私のオオカミ少年」でデビューした監督。
数本のTVドラマで脚本を手掛けたのち、事件解決率99%を誇る、悪名よりも悪名高い探偵が、幼い娘を引き連れながら母の敵討ちに挑む、痛快クライムアクション「探偵ホン・ギルドン~消えた村~」を手掛けます。
過去2作を比べても本作は明らかにジャンルの違う内容。
彼が長年考えた内容はどんなものになっているのでしょうか。
キャスト
「勝利号」の操縦士テホを演じるのは、ソン・ジュンギ。
すみません、彼のことも存じ上げず…韓国映画は専門外なもんで…。
監督紹介でも語った通り、彼のデビュー作に出演した時から本作の構想を聞いており、テホの役を熱望していたそう。
そんな彼の映画出演作を軽くご紹介。
高麗末期の宮廷を舞台に、高麗王含めた男女の三角関係を描いた歴史恋愛映画「霜花店 運命、その愛」で映画デビュー。
ドラマへの出演と並行しながら「私のオオカミ少年」や、島で強制労働させられていた朝鮮人400人が脱出を試みる映画「軍艦島」などに出演し、存在感を発揮しています。
他のキャストはこんな感じ。
勝利号の船長チャン役に、「お嬢さん」のキム・テリ。
見た目と中身の違う機関士タイガー・パク役に、「エクストリーム・ジョブ」のジン・ソンギュ。
軍用ロボット、バブズの声とモーションキャプチャ担当を、「タクシー運転手/約束は海を越えて」、「ベテラン」でおなじみのユ・へジン。
宇宙で階層を作った人物サリバン役に、「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」、「ホビット」シリーズのリチャード・アーミティッジなどが出演します。
韓国初の宇宙SF大作映画。
中国でもブロックバスター作品が製作されているということもあって、今後アジア圏で「ブロックバスター」ブームが来るのか?
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
韓国映画凄いな!!
CGのクオリティが邦画以上!
スペースオペラとして申し分ないSF活劇でした!!
以下、ネタバレします。
おおまかなあらすじ
2092年。
砂漠化と土壌の酸性化により、植物が育たなくなった地球。
宇宙開発企業のUTSは衛星軌道上に居住地を建設し、火星での移住に着手していた。
152歳になるUTSのCEO,ジェイムズ・サリヴァンは、生命の木【スーパープラント】によって火星の開拓に成功したが、未だ地球に住み続ける95%の人間や宇宙労働者は、危険で悲惨な生活を強いられていることに関しては、建前として尽力すると言っていいる者の、この場所には「自然に背く人間は済むことを許さない」と豪語。
二の次のような考えを持っていた。
宇宙空間では火星移住のために使われたであろう人工衛星や宇宙船の破片が散乱しており、ものすごい速さで飛び交う「宇宙ゴミ」を、清掃人たちが生活のために追いかけまわしていた。
場所を宇宙にしたところで、貧富の差を解消する世界ではなかった。
宇宙のごみを拾って生計を立てる「スウィーパーズ」たちの中で、ダントツに腕のいい船が「勝利号」だ。
穴の開いた靴下で船を操縦するテホ。
船の外で杜を操りゴミを狙う軍事ロボット、バブズ。
船の中で機関士として操るパク。
そして彼らを束ねる女船長チャン。
金のためなら欲望のままに獲物を狙いチームワークを発揮する彼らだが、その強欲のあまり絆は浅い。
賭け花札でも相手を出し抜いて暴れる始末だ。
それもこれも非市民として優遇されないばかりか、税金や船のメンテナンス費用がかさみ、金が底を突いているからだ。
そんな彼らが回収した船を漁っていると、コンテナの中から一人の少女を発見する。
クルーの面々はただの迷子だろうと思い治安センターに連絡するかと呑気に子供をあしらおうとしていたが、速報で入ってきたニュースによって一同驚愕。
何と少女は、水素爆弾を搭載した大量破壊兵器だった。
少しでも危害を加えれば爆破しかねないと思い込んだクルーは、少女がくしゃみをするや否や大慌て。
各自部屋に閉じこもりモニター越しに警戒する者もいれば、警察に連絡したり、荷物を奪って詳細を調べていく。
少女が持っていた荷物の中には、お絵かき用のスケッチブックやクレヨン、様々な書類やスマートフォンが。
スマホにはヒョヌ・カンと名乗る人物に頻繁に連絡していることが分かり、彼に連絡を取れば少女と金銭を取引できると考えたテホは、早速クルーに相談。
少女を奪い去ったテロ集団ブラック・フォックスはスペースガードなる警察組織に逮捕されたことから、どちらも大量破壊兵器と称された少女を血眼で探している。
要するに価値があるということ。
そこでテホはブラックフォックスに取引を持ち掛け、巨額を手にしようという算段だ。
早速音声変換器と送信機を使って連絡を試みた一行は、交渉成立。
取引場所を指定し、行動に移すことに。
大量破壊兵器だと信じてやまないクルーだったが、どこをどう見ても人間の少女にしか見えない彼女と交流する度、情が沸いてくる。
パクは見た目のごつさとは裏腹に、心の優しい持ち主。
いち早く彼女の虜になっていく。
警察の職質に遭うも時間通りに取引場所にやってきた一行は、無事200万ドルと少女の取引に成功したかと思ったら、バッグの中に隠していたはずの少女が消えてしまう。
外に飛び出しクラブ内を練り歩く少女。
音楽にノリながら踊る人たちは、彼女の顔を見て一目散で場内を離れようとすると、取引を盗聴していたスペースガードらに囲まれピンチ。
包囲されたテホとパクは、銃弾を目前で蒸発させる少女の力によって難を逃れ脱出に成功する。
大金をあとわずかのところで逃してしまい落胆するクルーは、少女の名前がコンニムであることや、屈託のない彼女の笑顔に少しづつ癒されていく。
船のメンテナンスによって足止めを食らってた彼らは、コンニムと心を通わせていく。
バブズはお化粧をしながらクルーたちの素性を話し、一番嫌がっていたテホはコンニムの能力によって実ったトマトを他の清掃人に1ドルで売り、儲けを出していた。
徐々に金もうけのための道具でなく、一人の少女として相手に渡したくないと気持ちを変化させるクルー。
そんな矢先、コンニムが誘拐されてしまう。
必至の追走によって犯人を捕まえた彼らは、正体に驚く。
なんとゴミを換金するカルムだった。
カルムたちはなぜコンニムを誘拐したのか。
それは彼らがテロ集団と称されたブラック・フォックスだからだとチャン船長の口から明かされる。
そしてコンニムはロボットではなく、普通の人間だということも。
元々環境団体だった彼らはUTSが進める火星の開発に関し、死の灰だった場所が様変わりしたことに対して注視してきた。
また、火星地球化ラボの科学者カン・ヒョヌ博士の娘である彼女は、脳神経が破壊させる先天的な病に冒されていたが、博士の最終手段として、稼いで開発するために作られたナノボットを投与したところ、コンニムがみるみる回復したことに驚く。
しかも、コンニムとナノボットが交信するようになる。
彼女の能力を使えば、ナノボットによって作られたスーパープラントを地球に植えれば、植物が再び育ち、地球も回復することになる。
カルムによれば、コンニムはサリヴァンによる火星の開発に利用され、しかも地球人には植物はもはや火星の土でなければ育たないという嘘の宣伝をしていること、また地球を一刻も早く破壊しようとも企んでいた。
そんな矢先にスペースガードに嗅ぎつけられた一行は、コンニムを彼らに渡さないために、そして多くの人が残っている地球を救うために奔走することに。
果たしてサリヴァンの悪行を防ぐことはできるのか。
そしてコンニムを守ることはできるのか。
というのが半分くらいのあらすじです。
実質GoGだろこれ。
近未来の荒廃した地球と新たに居住区域を開拓した宇宙空間を舞台に、宇宙ゴミ回収業者に託された使命の行方を、韓国映画とは思えないほど洗練されたCGのクオリティをベースに、韓国映画お得意の笑いや涙、バトルアクションに加え、スペースシップバトルまで盛り込んだエンタメ要素満載に仕上げ、細かいカット割りや随所までこだわったであろう美術にもうっとりしてしまう、非常に痛快で楽しいSF大作映画でございました!!
いやぁ~~楽しい!!
感想前に「これガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」みたいになるんじゃない?なんて想像してましたが、正に韓国映画版GoGになってました!
例えとして挙げると先入観を与えてしまいそうですけど、劇伴とかモロに寄せてるし、元海賊の船長に、元スペースガードで娘を育てていた過去を持つテホ、元麻薬組織のボスでコワモテにもかかわらず心根が優しすぎるパク、そして人工皮膚によって人間に見られたい意識を持つ軍事ロボットのバブズといったキャラクター構成、そこに突如加わる純真無垢な少女コンニム。
歪な絆だった彼らに使命感がという共通認識が生まれていくことで、金もうけ主義だった彼らが人々の生命を守るために巨悪に挑んでいくという流れはこりゃもうGoGでしょ!と。
他にも韓国映画ならではの笑いと涙、そして見せ場ね!
正直笑いの数は比較的に多いわけではないのだけど、コンニムちゃんとクルーの掛け合い、特にパクと彼女の掛け合いは微笑ましくて。
おなら娘と名付けられたコンニムちゃんをみんなで囲んで仲を深めていくシーンや、テホとパクでどっちがシャンプーをするかで争うシーン、お化粧をしながら心を通わせていくコンニムちゃんとバブズなど、ゲラ笑いでなくニンマリしてしまうシーンが多々見受けられます。
ならず者と子供という関係性は、彼らの過去の描写と運命を左右する戦いに身を投じていく彼らの末路がオーバーラップしていくことで、涙も倍増!
特にテホは非市民を取り締まるスペースガードのリーダーとして命令通りに行動していたけど、たまたま救った赤ちゃんを育て挙げたことで自分の良心に気付き、命令に背き、立場を投げ出されやさぐれていくんですけど、自分の素行の悪さによって娘と離れ離れになってしまうわけですよ。
だからコンニムちゃんと娘をダブらせてみてしまうことで、テホは終盤まで複雑な気持ちで進んでいくんですね。
宇宙のどこかに消えてしまった娘の遺体を探すには莫大な金が要るわけで、コンニムちゃんの取引が成功すれば娘も見つかる、だけど彼女の屈託のない笑顔を見るたびに揺れ動くわけですよ。
そんなテホが紆余曲折を経て大金を手に入れるんだけど、娘の遺品を見ることで直前で躊躇するわけです。
良いパパでいてねと書かれたノートを見て。
ここは号泣です!
さすが韓国映画!
ベタだけどテホの背景にしっかり時間を割いて描くことで、ちゃんと泣かせどころを用意するやり口に、見事にやられてしまいましたw
そして、コンニムを守るために命をかけて巨悪に挑んでいく他のクルーたちの覚悟の姿がとにかく最高な作品でございました。
また本作の敵として描かれるサリヴァンも魅力的。
UTSなる企業のCEOとして火星を開拓する偉業を成し遂げた彼ですが、ほじくってみると選ばれた者こそ人類として生き残るにふさわしいと選別し、汚れた存在は排除する性格で。
神にでもなったつもりかと思える思考に、苛立ちしかありませんw
確かに酸素排出を普通の樹木の8倍出す植物を開発する点においては、なんでそれ地球で活用しねえのよ!とツッコみたいし、その技術を持っている能力は買うんですけど、完全に私利私欲として使ってるし、カーストのトップに立って創造主にでもなりたいんだろうなという欲が見え見えの男でしたね!
そしてナノポッドによって植物を増大できる能力を持ったコンニムちゃん。
主によって毒にも薬にもなる存在ということで物語にドキドキさせるような設定になってたのも良かったですね。
最後に
一応2時間17分と少々眺めの上映時間でして。
体感的にはちょっとだらけてしまう部分もあるし、専門的な言葉がそこそこでてくるので集中力が途切れてしまう点もあるんですよね。
あと韓国映画特有の感情爆発的スクリームだとか、演者同士の掛け合いのテンポがちょっと悪かったかなぁとも。
とはいえ、エンタメ要素が満載なので、アガるところはアガるし泣けるところは泣けるというメリハリの効いた仕上がりになってるのが良かったですね。
忘れちゃいけない。
アジアの大作SF映画ってハリウッドに比べるともちろん見劣りがあるんですけど、明らかに一定のクオリティを保ってます。
錆びた金属と垢の溜まってそうな体のの臭いがしそうな美術にメイク、ごちゃごちゃしていてどのスイッチ押したら動くかわからないくらい入り組んでるコクピット、数多の銃弾をスルスル避けて敵戦を撃ち落とすスペースシップバトル、その中で縦横無尽に飛び回って杜を突き射すバブズなど、上でも書きましたけど実写版ヤ〇トより素晴らしいですw
え?韓国の映画で宇宙SF?と思ってる方、なめちゃいけません。
意外に面白いですので是非ご鑑賞いただければ!
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10