サマーフィルムにのって
僕にとって夏の映画に欠かせないのは「大作洋画」。
コッテコテのご都合的物語に、ド迫力な映像をCG描写で魅せるアレ。
でも、思いっきり清涼感のある青春映画も大好き。
そんなわけで、2021年要注目の青春映画を鑑賞してきました。
あらすじ
時代劇オタクの女子高生監督が主役に抜擢したのはタイムトラベラー!?
勝新を敬愛する高校3年生のハダシ(伊藤万理華)。
キラキラ恋愛映画ばかりの映画部では、撮りたい時代劇を作れずにくすぶっていた。
そんなある日、彼女の前に現れたのは武士役にぴったりな凛太郎(金子大地)。
すぐさま個性豊かな仲間を集め出したハダシは、
「打倒ラブコメ!」を掲げ文化祭でのゲリラ上映を目指すことに。
青春全てをかけた映画作りの中で、ハダシは凛太郎へほのかな恋心を抱き始めるが、
彼には未来からやってきたタイムトラベラーだという秘密があった――。(HPより抜粋)
感想
#サマーフィルムにのって
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2021年8月6日
最高だろラストカット。 pic.twitter.com/iaRG3382Jj
部活も恋愛も全力投球の登場人物たちが美しい!
青春に恋愛にSFに時代劇、各ジャンルが見事に調和された「映画愛」の詰まった映画でした。
以下、ネタバレします。
文化の灯は消えない。
僕が子供の頃は水戸黄門に大岡越前、暴れん坊将軍に鬼平犯科帳などTV時代劇はゴールデンタイムに欠かせないコンテンツでした。
気が付けば時代劇は、視聴率を求めるあまりクイズ番組やドッキリ、ただモニターを眺めるだけのつまらない番組の波によってすっかり茶の間から消え失せていきました。
こと映画に関しても、「たそがれ清兵衛」や「壬生義士伝」、「武士の一分」など00年代を代表する名作時代劇がありましたが、ここ数年はコメディ色の強い時代劇ばかりで、いわゆる王道時代劇は製作されるものの、集客という面ではなかなか振るわないのが見受けられます。
じゃあお前は時代劇をちゃんと見てるのかといわれると、ぶっちゃけ全然見れてません。
過去の名作をちょいちょいつまんで観ているモノの、なかなか優先順位上位に来ないジャンルでして。
時代だから、時代が求めてないからとだけ言ってしまうと、よくないとは思うんですが、どうにもこの波を止める術ってのは見つからないよなぁと。
だから今後「映画」自体が消滅してしまうことだって、この先の未来起き得ることなんじゃないかと。
実際配信スタイルが浸透してきているこの時代に、映画館で映画を観ること自体無くなってしまうことも現実味を帯びてるくらいですから。
しかし、作りたいと願う者がいれば、その灯は消えないと思うんです。
というか、本作を見ればその熱意が伝わると思うんです。
それが例え王道でなくとも邪道だとしても、時代の波によって変化はあるにしても、作り手の情熱が隅から隅まで反映されていれば、そのバトンはきっと未来に繋がる。
映画でなくとも、ポップカルチャーやサブカルチャー、文化の未来は明るいんじゃないかと。
・・・唐突に何の話か全然伝わらないと思うんでんすが、本作の主人公は女子高生にしてはめずらしい「時代劇フリーク」なんですね。
映画部に所属しているわけですが、大半は「キラキラ映画」に現を抜かす部員ばかりで、誰も時代劇に興味がない。
しかも年に1本しか部費が出ないことから、自分が作りたい作品を作ることができないと悩んでいるんです。
天門部や剣道部に所属する仲良しの女の子とたちと、廃バスを使って作られた秘密基地で、毎日勝新太郎の「座頭市」を見ては真似をし、本来やりたいことを実現できない悩みを抱きながらも、日が暮れるまで遊ぶ日々を送っているんです。
そんな時にふと現れた謎の少年。
主人公は彼を見るや否や、自分がこれまで温めてきた時代劇「武士の青春」の主人公にピッタリな顔だと感じ、彼を主演に自分が作りたかった映画製作を、個性的な仲間を募って実現していくというお話。
この映画、先ほど言ったように消えかけている「時代劇」というジャンルを、斬新な使い方で起用し、時代劇ってこんなに楽しいんだぞ!という思いが主人公や登場人物を通じて、情熱的に我々に訴えてるんですね。
まずここが素晴らしい。
そして時代劇とは対照的な「キラキラ映画」も混ぜてくる。
映画部では花鈴という女子高生監督が「大好きってしかいえねーじゃん」という、とにかく「好き」を連発する作品を制作していて、シーンを取っては皆が大絶賛する寒気MAXな光景が描かれてるんですね。
「キラキラ映画はもう見れない」自分としては、主人公同様顔をしかめるくらい見てられないシーンの連発でして。
そんな「キラキラ映画」を毛嫌いしている主人公が、後半時代劇で主演を張る謎の少年に恋心が芽生えていくのと並行して「キラキラ映画悪くないじゃん!」という思考になっていくんです。
要は食わず嫌いとでもいうんでしょうか、それとも今の自分の心境とリンクしたことによる効果の表れなのか。
何はともあれ、「時代劇」と対照的な「キラキラ映画」は、案外ちゃんと見てみると面白いぞ!というメッセージにも捉えられますし、「大好きってしかいえねーじゃん」を手掛ける花鈴から言われた「思いを伝える」ことに関するセリフが、「武士の青春」のラストで予定されていた「ライバル同士が勝負をしない」結末に揺らぐ主人公に、大きな後押しをする伏線になっていく非常に大事なシーンにもなっていて、よくこのジャンルを上手くつなぎ合わせたなぁと。
また、主人公の前に突然現れた謎の少年・凛太郎は、未来からやってきた設定。
天文部のビート版(どういう経緯でついたあだ名なんだw)が、タイムスリップする作品として有名な「時をかける少女」やSF作家として知られるロバート・A・ハインラインの作品を読んでるあたりが匂わせの要素を秘めていたの印象的でしたが、彼女が宇宙にのめり込んでいる設定が、凛太郎が明かしてはいけない事実を、現在の人間い明かしてしまったことで起きてしまうかもしれないタイムパラドックスを、ユーモア込みで言及している点も、脚本にうまく入れているあたりが秀逸。
それらを高カロリーなおかずをただ詰め込んだような満腹弁当ではなく、お弁当のスタンダード的存在である幕の内弁当のようにバランスよく「青春映画」に盛り込んでいるのが、よく出来てるなぁと。
高校生を主体とした青春映画であるからには、「後悔のない夏」をいかに観る者に伝えるかが、面白いか否かの分かれ目だと思うんですが、本作はこのようなあらゆるジャンルを織り交ぜながらも、部活も恋愛もそれ以外の好きなことも悔いのないように決着をつけることが青春たらしめる要素であることを十二分に伝えているんですよ。
さらにさらにクライマックスには、映画の枠を超えた展開が待ち受けており、多少の戸惑いを抱いた点はあるんですが、あまりにも美しい着地で、あまりにも美しい演出で、思わず拍手したくなるほど感動しました。
最後に
だいぶ手抜きな感想で、感想どころか分析みたいな話しかしてない内容になってしまいましたw
主人公以外にも個性的な面々がおり、デコチャリ好きのヤンキ―もいれば、キャッチャーミットに収まったボールの音で誰が投げた球か聞き分けてしまう天才的な耳の持ち主、老け顔の筋肉バカに文科系に運動部、キラキラ映画大好き少女などが、ひと夏を共に過ごしていくんです。
全く違うヒエラルキーが一堂に集ってひと時を過ごす「ブレックファストクラブ」のように、その場だけで終わることのない関係性であってほしいと願う作品であったと共に、どのジャンル映画も素晴らしいという映画愛、さらには「過去と今を繋ぐ素晴らしさ」を未来人が受け取ることで灯を絶やさない想いも含めたことで、映画ファンならたまらない内容になっていたのではないでしょうか。
勝新太郎の動きもしっかりコピーした主演の伊藤さんも、ものすごく輝いてました。
細かい点が唐突だなぁとも感じましたが、ラストカットがすげえカッコよくて。
それだけでチャラですw
なので満足度は大甘でw
高校生の諸君!勉強も大事だけど、一度しかない夏なんですから!
いろんなことに白黒つけて青春しましょう!!
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10