アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル
子供の頃、ワイドショーかなんかで頻繁にトーニャ・ハーディングの事件を扱っていたのを記憶していますが、全容はよくわかってない。
彼女がスケート選手で反則かなんかした、とにかく悪い女なんだなぁくらいでしょうか。
そんな具体的なことも知らない、彼女が悪いのかもよくわからない、事件があったことは知ってる程度の知識。
そもそも僕フィギュアスケート嫌いでして。
人が採点する競技だからなのかな。
だから劇中で行われる競技はあまり興味はありません。
いや、マーゴット・ロビーがどれだけちゃんと滑ってるのかは興味ありますけど。
とにかく映画を通じて真実を知りたいというのが一番強いですかね。
というわけで早速観賞してまいりました!
作品情報
アメリカ人女性初、史上二人目のトリプルアクセル成功者として話題となったフィギュアスケート選手トーニャ・ハーディング。
彼女が94年リレハンメル冬季五輪の出場権を得るため、元夫らにライバルであるナンシー・ケリガン選手への襲撃を指示したという疑惑が持ち上がる。
マスコミは格好のネタにし、報道は加熱していく一方だった。
そんな全世界が注目した一大スキャンダルの真相を、彼女の家族や人間関係、幼少時の出来事から選手時に起こした様々な問題まで、あらゆる部分からプリンセスの真実を追求していく。
アカデミー賞主演女優賞ノミネート、そして助演女優賞を受賞した話題作。
人気選手から人生のどん底へと落ちたスケート女王の半生が今明らかに。

- 作者: アビーヘイト,J.E.ヴェイダー,オレゴニアン新聞社スタッフ,Abby Haight,J.E. Vader,The Staff of The Oregonian,早川麻百合
- 出版社/メーカー: 近代文芸社
- 発売日: 1994/04/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 27回
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あらすじ
貧しい家庭で、幼い頃から暴力と罵倒の中で育てられたトーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)。
天性の才能と努力でアメリカ人初のトリプルアクセルを成功させ、92年アルベールビル、94年リレハンメルと二度のオリンピック代表選手となった。
しかし、彼女の夫だったジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)の友人がトーニャのライバルであるナンシー・ケリガンを襲撃したことで、スケート人生は一変。転落が始まる。
一度は栄光を掴み、アメリカ中から大きな期待を寄せられたトーニャ・ハーディングだったが、その後彼女を待ち受けていたのは・・・。
フィギュアスケート史上最大の衝撃的な事件と意外な真相、彼女の波乱万丈な半生の物語。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけたのはクレイグ・ギレスビー。
恥ずかしながら監督作品を見るのは今回が初となります。
ジャンルはコメディからホラー、ディザスター、ヒューマンなど幅広くこなす方のようで、今作はアカデミー賞に3部門ノミネート1部門受賞ということもあり、監督作の中では一番重要な作品になったのではないでしょうか。
そんな監督の作品をサクッとご紹介。
個性派俳優ビリー・ボブ・ソーントンがタフで意地悪な体育教師を演じたコメディ「Mr.ウッドコック~史上最悪の体育教師~」、そしてい小さな田舎町を舞台に、等身大のリアルドールを本物の彼女だと思い込んでしまった青年と周囲の人たちとの交流を暖かく綴った「ラースと、その彼女」で監督デビュー。
その後も、高校生とマジシャンが、ヴァンパイアが正体の隣人を退治すべく立ち上がるホラー映画のリメイク「フライトナイト/恐怖の夜」、インドから野球選手を輩出しようと目論むエージェントと、彼によって発掘されたインド人青年2人を巡る驚きの実話を描いたスポーツドラマ「ミリオンダラー・アーム」、嵐渦巻く大海で繰り広げられた奇跡の救出劇「ザ・ブリザード」を手がけています。
近年3作はディズニー配給なんですよね。
いずれもコケてるし話題になってないので、監督にディズニーは合わなかったのかも。
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キャスト
主人公トーニャ・ハーディングを演じるのはマーゴット・ロビー。
久々に現れためっちゃエロいハリウッドスター。
最初見かけたときからなんか目と鼻と口が大きくなったのは気のせいか。
「スーサイドスクワッド」で来日したときのお茶の間での気さくな振る舞いと笑顔にますますファンになった人も多いはず。
今作でアカデミー賞主演女優賞に初めてノミネート。
今後の活躍がますます楽しみな彼女が出演した作品を簡単にご紹介。
チョイ役ではありますが、僕が大好きな映画「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」に出演してたんですね~。
主人公の妹の友達役。
主人公が一目惚れして告白するんだけど、あれこれ上手く逃げて、そもそも友達の兄貴なんて眼中にないそぶりを見せる女の子の役を演じておりました。
そして彼女のブレイクした作品が「ウルフ・オブ・ウォールストリート」。
僕の中ではどんなにシリアスな役をやってもコメディをやってもクソ真面目で一生懸命すぎて面白みを感じないデカプーが、それでも彼なりにぶっ飛んだ男を演じた株屋の栄光と転落のお話。
マーゴットちゃんは、元モデルで後に主人公の妻となる役柄。
こちらも弾け飛んでる役柄にもかかわらずデカプーを手なずけてましたねw
まぁ一番の見どころはそのスレンダーボディを惜しげもなく見せてくれるところですけども。
それからは、サブプライムローン危機を題材に空売りで一儲けする男たちを描いた「マネー・ショート/華麗なる大逆転」で泡風呂にシャンペン片手にボクちゃんたちにわかりやすく説明してくれるマーゴット本人役で出演。
DCコミックの悪役達が一堂に集まり、政府の犬として奮闘する「スーサイド・スクワッド」では、世の女性達がこのキャラをコスプレすれば3割り増しで可愛くなると評判の超絶可愛いバッドガール、ハーレイクイン役で知名度は一気に上昇。
このハーレイクインの続編がこちら。
こんな作品も出てますよ。
他のキャストはこんな感じ。
トーニャの鬼母・ラヴォナ役に、「アメリカン・ビューティー」、「ヘアスプレー」に出演し、今作でアカデミー賞助演女優賞を受賞したアリソン・ジャネイ。
トーニャの元夫ジェフ・ギルーリー役に、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」のウィンターソルジャー役、そして「オデッセイ」にも出演したセバスチャン・スタン。
そのジェフの友人で実行犯のショーン・エッカート役に、「リチャード・ジュエル」のポール・ウォルター・ハウザー。
そしてトーニャの幼少期の役を、「ギフテッド/gifted」で名子役と絶賛され、観衆を泣きに泣かせたマッケナ・グレイスちゃんが演じます。
ナンシー・ケリガン襲撃事件とは
1994年1月6日。
米フィギュアスケートのリレハンメルオリンピック選考会となる全米選手権の会場で、練習を終えたナンシー・ケリガンが何者かに襲われた事件。
ケリガンは膝を殴打され怪我を負い全米選手権を欠場、トーニャ・ハーディング
はこの大会で優勝を果たす。
事件発生から2週間後、ハーディングの元夫らが逮捕されハーディングにも疑惑の目が向けられた。
全米スケート協会とアメリカオリンピック委員会は、ハーディングをオリンピックチームから追放しようとしたが、ハーディングは法的措置をほのめかして代表にとどまり、リレハンメルオリンピックに出場。
しかし靴紐の不具合などで振るわず8位入賞に終わった。
一方のナンシー・ケリガンは銀メダルを獲得した。(HPより抜粋)
これが事件の全容になります。
輝かしい人生から一転ヒールへと転落していった彼女。
相手を蹴落としてまで出場したオリンピック。
勝つためなら何をしてもいいのかとさえ見えてしまう行動の数々。
その根幹には母親の影響が大きいようですが果たして。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
どいつもこいつも残念なバカばっかりw
アメリカの象徴にも見える主人公の育ちの悪さが生んだハングリーさが、どんな状況でも自身を奮い立たせた波乱万丈な物語でした!!
以下、核心に触れずネタバレします。
率直な感想。
自ら悪役に徹し日々罵倒する母親のスパルタ教育によって、生まれ持った才能に傲慢さとハングリー精神を叩きこまれ、超ド派手自信過剰フィギュアスケーターと化した主人公の波乱万丈な半生を、当時を振り返るビデオインタビューで、それぞれの言い分を語りながら、時折挿入されるデッドプールよろしく第4の壁突破、テンポよく進む編集の妙、そして何より完璧なまでにトーニャ・ハーディングを演じたマーゴット・ロビーの熱演が光った、それでも這い上がる女の残念で悲惨だけど滑稽な物語。
白人で貧困層の事をホワイトトラッシュと言うそうですが、そんな貧乏根性によって生まれた主人公が、踏まれても踏まれてもすくすく育つ雑草魂で成長を遂げるんだけど、いかんせん暴力夫とそのお友達である、超嘘つき妄想癖スタトレ大好き引きこもりデブの童貞君のシェーンのいかにも残念過ぎる計画によってそれからの人生を台無しにされてしまうなんともお粗末な話。
アメリカンドリームというのは貧困層が努力を積み重ねて手に入れることの結果と共に、特に何もせず人生の一発逆転を狙おうとすることに夢を観る者たちがいう言葉だということ。
そのアメリカらしさを彼らが魅せると同時に、スケート協会が語る理想の家族像を世界に知らしめる仮面をつけるようなやり方もまたアメリカらしい点だったり、とにかく敵を作り自分の正しさを主張し、嘘をはぐらかし、私の言うことが正しいとインタビューでたかる彼らこそが、アメリカそのものだと言っているように聞こえるのが非常に滑稽で、作り手が彼女たちと国をうまく重ねて物語る作りは巧いなと感じる作品でありました。
このように登場人物がそれぞれの言い分をいうもんだから誰が本当のことを言っているのかわからない。真実が見えてこないわけです。
そうやって私たちは真実を作り上げていく、というのがシニカルでありコミカルなお話だったように思えます。
まともな奴いねえのかよw
それに加え、どの登場人物もクセがありすぎて魅力的。
トーニャは5番目の夫の子として育てられ、血のつながっていない父親とハンティングをするなどして愛情を注がれていましたが、日常のほとんどは母親からの暴力と罵声の中で育つ、フィギュアスケーターを夢見る乙女なのでした。
富裕層でないと中々することのできないフィギュアスケートを、母親が稼いだなけなしの金で教わる毎日。
それでもめげずに頑張ったからか、ただの才能でのし上がったのかはわかりませんが、見事にオリンピック候補になるまでになりましたが、スケーターとしての技術は伴っていても育ちの悪さが協議にまで反映されるからか、目立てばいいという派手な衣装やメイク。
ミスさえしなければいいという考えだったからか芸術点も低く、さらに品性も感じられない演技に協会側は彼女に高得点をつけません。
中々優勝できない苛立ちは私生活にも影響を与え、母親に八つ当たりしたり、ジェフに口答えしたりしますが、そのことでモノの投げ合いをして腕を負傷したり、ジェフにボコボコに殴られてアザを作ったり。
そんな状況でもめげずにスケートにかける情熱は絶やさず持っていたようで、その結果やっとの思いで成功したトリプルアクセル、掴んだオリンピック。
彼女の苦しかった毎日が報われるかと思いきや、悲劇は訪れてしまうのであります。
ダイナーで働きながらトーニャを育てる母親も変わった人でした。
母親はトーニャのためを思って厳しく指導する。
私が汗水たらして働いたお金であなたスケート教室へ通わせてるんだから、その才能活かしてメダル獲るために根性いれて打ちこめや!
ションベンなんか我慢しな!
そいつは友達じゃねえ!敵だ!
などとプカプカ煙草をくわえ罵倒を浴びせ育てる姿に、なんて恐ろしい母親だと序盤から驚かされる。
お前のために嫌われ役を買って出たんだというが、幼い少女にそんなこと言ったところで受け取れるわけがないだろうに、それをやり続ける鬼畜な教育。
ただ、それも母親なりの愛情表現の一つでありました。
強くきつくしつけることで、彼女は本領を発揮する。
それを大人になっても影でする母親の歪んだ愛情はちょっと怖かった。
トリプルアクセルを披露する大会で、知らない男に金を渡して罵声を浴びせるシーンは中々でした。
まるでそれがあったからトリプルアクセルができたと言っているような場面。
大人になっても親からすれば子どもに過ぎないとはよくいうものですが、そんな一面が見えた瞬間でもあったのです。
その後もトーニャが結婚しても「普通初めての彼氏と結婚するか?」と幸せな表情を浮かべるトーニャに向かってきつい一言を言うものの、決して反対するようなことはそこでは言わないちょっとした優しさ。
仕事中にTVで彼女の演技が流れれば、最後の表情が気になって仕事どころじゃない。
本人の前では決してそんなそぶりは見せないけれど、影ながら応援する姿はやっぱり母親なんだなぁ、でもこんな母親絶対いやだ!と思うのでありました。
・・・と感じてしまうように見えてしまうVTRでの言い分。
そしてトーニャに惚れる男ジェフ。
15歳の時にスケート場で彼女を一目見て掘れたジェフ。
なぜおまえはそこにいたのか、なんてのは置いといて、母親同伴でデートしても、彼女への愛を貫くのですが、これまた残念ただのDV野郎でありました。
口答えすれば平手で殴り拳で殴り、顔を壁にぶつけたり、鏡にぶつけたり、とにかく暴力はエスカレート。
接近禁止命令なんて出されても俺はお前をあ~いしてるんだから来たっていいだろう!
忘れ物だよと言い寄っては、拳銃をぶっぱなし、家に連れて帰る強引さも兼ね備えた力こそ男なジェフ。
女性からしたら絶対こんな男は嫌でしょうが、それでも彼はトーニャへの純粋な愛情表現に過ぎなかったわけです。
トーニャは何度も愛層をつかし離れていきますが、ジェフからは離れようとしません。それが何よりの証拠。
結局トーニャは彼と結婚離婚を経てフィギュアスケーターとして成長しますが、そんな腐れ縁が後の悲劇をもたらすわけで、別の男性が現れたらトーニャもこうはならなかったのになぁと。
そして一番のバカ、シェーン。
改め、嘘で固めた引きこもりニートの童貞君。
ジェフと少年時代からの付き合い。
彼に助言したり応援したり、家に匿ってやったりと色々友人として尽力しているように見えますが、ほんの些細な脅しを襲撃事件にまで発展させてしまった大馬鹿野郎であります。
俺が別の女の方がいいぜ、なんて言わなければ二人はくっつかなかったとか、実は俺はテロに詳しいとか、一流の工作員と友達だとか、トーニャのボディーガードだ、俺は今回の事件の事誰にも言ってないとか、全てが嘘っぱち。
前半はトーニャと母親の教育ぶりや確執何かに焦点を充てて描かれてますが、後半から肝心のあの事件に入ってからは、こいつのバカさ加減が笑いどころの大半を占めており、なんでジェフはこんな奴とずっとつるんでるんだろうと思ってしまうほど。
せっかく才能があるにもかかわらず、努力してきたにもかかわらず、母親によって傲慢になり、夫によってスケーター不遇の時期を迎え、シェーンによって事件の中心人物にさせられてしまうトーニャの哀しき半生。
でも、何度も言いますがそれが果たして本当の事なのかは本人しか知らないこと。
誰が本当のことを言ってるかはわからないのです。
スケートの臨場感
物語の面白さはもちろんのこと、今作で見逃してはいけないのはマーゴット・ロビーのスケーティング。
難易度の高い部分に関しては、顔を当てはめたかのような合成ではありますが、普通に滑る部シーンに関しては恐らく本人。
これを我々が普段見るようなテレビカメラの視点ではなく、スケート場の中で彼女の後ろを追うように見せることで、普段見ることはできない角度で見ることができます。
トーニャにかなり迫った視点を映すことで、彼女の真剣な表情から呼吸の荒さ具合も感じることができ、実際に味わうことのない感覚を覚えることでしょう。
また最初のオリンピック時は見た目がかなり下半身がずんぐりむっくりで重い体格でしたが、2度目はロッキーに倣っての特訓の成果もあり、だいぶ体をシェイプしており、そういった部分でも努力したんだなぁというのが見える変わり様でした。
最後に
これが事件の真相なのかは映画ですから全く分からないし、むしろそれを言いたかったかのような構成だったように思えます。
しかしながら、表向きは彼女の辛かった幼少期、それを乗り越えハングリー精神でくらいついた時期、ジェフとの幸せな日々から一転した暴力に怯えた日々、そしてスケーターとして成熟したにもかかわらず、周囲の人間によってメディアにさらし者扱いにされ大事なものを奪われるまで転落した半生だったわけです。
しかし、それでもめげずに前を向いて生きている彼女を見ることができたこと、それが良くも悪くもアメリカの象徴だということを示しており、波乱万丈とはいえ深く見ていくと色んなお国事情的なことにも見える作品でございました。
マーゴット・ロビーの代表的作品になること間違いなしの1本でした。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10