ツイスターズ
ハリウッド映画の中には数々の名ディザスター映画が存在します。
高層ビルの火災を描いた「タワーリングインフェルノ」や、沈没寸前の船から脱出する「ポセイドン・アドベンチャー」、火山が噴火する「ボルケーノ」や「ダンテズ・ピーク」、最近では地震発生した都市を描いた「カリフォルニア・ダウン」や月と地球が衝突するというトンデモ映画「ムーンフォール」など、あらゆる災害に巻き込まれる市井の人々の描写がドラマを生みつつ、最新鋭の技術で描いた映像でスケール感を見せるのが特徴です。
日本でも地震雷火事親父なんて言い方があるように、いつ発生するかわからない災害を経験した方も多いでしょうが、竜巻ってそこまで経験がない。
小学校の運動会で瞬間的に竜巻を見る程度で、街を飲み込むような竜巻って全然ないですよね。
今回観賞する映画は、そんなアメリカではめちゃめちゃ被害の多い「竜巻」を題材にした映画。
かつてヤン・デ・ボン監督が手掛けた作品のリメイクなのか、リブートなのかよくわかりませんが、あまり過去作との関連性は低いと言われてる模様。
一体どんなディザスター映画に仕上がってるのか。
監督が職人監督じゃないのが不安要素ですが…早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮、製作陣には『ジュラシック・ワールド』のスタッフが集結し、ハリウッドの最先端VFXを駆使して、恐竜をも超越する巨大竜巻を生み出した映像を、「ミナリ」でアカデミー賞作品賞にノミネートした監督の手によって映画化。
オクラホマ州では巨大竜巻「ツイスターズ」が多数発生したことで、気象学の天才、竜巻インフルエンサーと、知識も性格もバラバラな寄せ集めチームが無謀ともいえる危険な計画に立ち向かっていく姿や、竜巻に巻き込まれていく姿を臨場感たっぷりに描く。
自身の半自伝的な物語「ミナリ」でアカデミー賞作品賞にノミネートを果たしたリー・アイザック・チョン監督は、今回スピルバーグからの使命を受けて抜擢。
本作のようなスケールの大きな作品を手掛けたいという思いが早くも実現できたことに大きな喜びをインタビューで現している。
そんな災害映画のキャストに選ばれたのは、「ザリガニの鳴くところ」のデイジー・エドガー=ジョーンズ、「トップガン:マーヴェリック」で知名度を上げ、「恋するプリテンダー」や「ヒットマン」の公開が控えているグレン・パウエル、「トランスフォーマー/ビースト覚醒」のアンソニー・ラモスなど、今後のハリウッド映画を牽引するであろう3人。
スピルバーグ製作、災害パニック映画に次世代スターのキャストという、ハリウッド映画の文脈をしっかり受け継いだ作品として、盤石の布陣となった。
監督曰く「恐怖から逃げるのではなく、恐怖にぶつかっていくことを描いた」本作。
果たして巨大竜巻という自然に人間は打ち勝つことができるのか。
あらすじ
気象学の天才ケイト(デイジー・エドガー=ジョーンズ)は、ニューヨークでし自然災害を予測し被害を防ぐ仕事に熱中していた。
そんな中故郷オクラホマで史上最大級の巨大竜巻が群れを成して異常発生していることを知る。
竜巻にトラウマを抱えたケイトだったが、学生時代からの友人ハビ〈アンソニー・ラモス)からの懸命の依頼で、夏休みの一週間の約束で竜巻を倒すために故郷に戻ることに。
そこで出会った知識も性格も正反対の竜巻チェイサーのタイラー(グレン・パウエル)ら新たな仲間と、無謀とも言える「竜巻破壊計画」に立ち向かっていく。(HPより抜粋)
キャラクター紹介
- ケイト(デイジー・エドガー=ジョーンズ)・・・気象学の天才。ニューヨークの国立気象局で自然災害を予測する仕事に就いている。幼少期から竜巻に魅了され、竜巻を予知する第六感と情熱にあふれていたが、大学院在学中の“とある事故”をきっかけに竜巻にトラウマを抱える。故郷オクラホマで史上最大級の竜巻モンスターが異常発生し、学生時代の友人ハビからの懸命な依頼で再び故郷へ戻り“竜巻破壊計画”への参加を決意。
- タイラー・オーウェンズ(グレン・パウエル)・・・竜巻チェイサーで、動画の“バズが命”なインフルエンサーとしての顔も持つ。竜巻を追いかけ衝撃的な映像を撮るクリエーターとして活躍しフォロワー100万人以上とスター性は抜群だが、過激な面々を率いており、時には無謀すぎたり悪ふざけがすぎたりする部分も。聡明で生真面目なケイトとは正反対で最初は対立するものの、チームを組んで協力することに。実は頭脳明晰で、誠実さも併せ持っている。
- ハビ(アンソニー・ラモス)・・・ケイトが信頼を寄せる学生時代からの友人。ケイトと同様に悲劇へのトラウマを抱えている。現在は竜巻リサーチ会社〈ストーム・パー〉を設立し観測装置の開発に取り組むなど、野心的な実業家として活動。ケイトはハビからの依頼で、夏休みの一週間の約束で竜巻を倒すために故郷に戻ることになり、無謀な竜巻破壊計画が始まることに。
(以上Fassion Pressより抜粋)
もう座組から扱う題材、災害から逃げるのではなく戦うという「ザ・ハリウッド」テイスト満載の本作。
絶対楽しいに決まってるだろとしか思えないので期待値爆上がりです!
ここから観賞後の感想です!!
感想
#映画ツイスターズ 観賞。次世代のハリウッドスター競演で送る超ド級のディザスタームービー!!話はあっさりだしグエンパウエルが急に良いやつになって標的変えるしでなんだかなぁなんだけど、むちゃくちゃ楽しい!
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) August 1, 2024
アーカンソーで育った監督の思いも詰まっていたのでナイス抜擢。撮影も素晴らしい👍 pic.twitter.com/iQhLyWTETi
良いよ!!良い!!
文句はあるけどさ、こういう景気の良いディザスター映画を待ってたんだよ!!
竜巻を手なずける者同士が一つになってトルネードアッパーよ!!
以下、ネタバレします。
良質なディザスター感。
最初から言いますが、むっちゃ楽しい!
竜巻から逃げるのではなく追いかける、しかも手なずけようとするし、それによって失った物もあって、トラウマがある。
それを理解しながら、共に「どうやって竜巻を破壊するか」に話を持っていく展開。
そこにちょっとしたロマンスも生まれて、正にハリウッドテイスト。
最後の締めまでハリウッド的なツイストがかかって、最高!!って気分でした。
まず特筆すべきなのは、何といっても本作の主役「竜巻」でございます。
気象学なんかまったく知らんし、科学もちんぷんかんぷんな俺ですが、そんなこと知らなくても「竜巻やべ~~~~っ!!」と思ってしまう圧倒的無敵感。
冒頭、主人公ケイトとハビは仲間たちと共に学位欲しさに、竜巻を手なずけるための研究をするシーンから始まります。
センサーを竜巻の中に放り込み、竜巻に吸水体をぶちまけることで、竜巻の威力を弱めようとするんですが、たまたま標的にした竜巻が「EF5」と呼ばれる最大級の竜巻であることがわかり、研究どころじゃねえ避難だ!!!と、ケイト一行は車から降りて高速道路の高架下へ逃げ込むことになります。
しかしながら、仲間たちは次々と竜巻の威力に敵わず、体が宙に浮き飛ばされてしまうのであります。
ケイトの恋人も必死に彼女を守るものの、愛の力は竜巻には敵わないという証明を、我々に思い知らすのであります。
車内から見える景色も凄まじく、豪雨によって外が見えないことはもちろん、視界が悪いせいで何が飛んでくるかわからない怖さもあり、見てるこっちは冒頭から手に汗握る展開となっておりました。
それから数年後、ハビの依頼によってNYから故郷オクラホマへと一時的に帰郷したケイトは、ハビと共に幾度も竜巻を追いかけることに。
最初こそYouTuberチームであるタイラーらに一本取られてしまいますが、翌日発生した双子の竜巻では、残る竜巻を見事に選択し、竜巻の中へ車ごとツッコんでいくではありませんか。
データを採取したい一行は、結局うまくいかなかったモノの、その竜巻によってめちゃめちゃにされた街を訪れ、その悲惨な状況を目の当たりにする流れに。
その後も、石油施設を飲み込んだことで「燃える竜巻」と化すんですが、渦を巻いて風を起こすもんだから、真っ暗な雲の中から火の玉が飛んでくるような「この世の終わり」的映像が我々の目の前に現れるんですね。
おいおい黙示録かよ!とでも言わんばかりのとんでもない光景、しかも目の前でハビの車が横転していて、そっちも気がかりでケイトとタイラーお前ら何ボケっとしてんだよ!といいたくなるんだけど、いやいやこれどうしようもないだろ、行ったら確実に死ぬぞ!ってくらいヤバい状態なんですわ。
夜の竜巻もまた怖い。
ケイトの部屋を訪れたタイラーが、ロデオにい連れていき、彼女の経緯などを語るシーン。
ここで一気に距離が近づき良いムードになっていくかと思いきや、突如警報が発生。
雲行きが怪しくなり風が強くなる中、皆が一斉に避難することで、一気に緊張感が高まっていくわけです。
単独で馬が暴走して人を踏んづけてしまう光景や、急いで車で逃げるあまり車同士がぶつかってしまう姿から、どれだけ早く逃げなくてはならないか、危険度の高さが窺えます。
逃げ込んだモーテルではカップルが管理人にいちゃもんをつけており、挙句の果てには「竜巻なんて来ない」とか言う始末。
何を呑気な事を言ってるんだ、お前らなんか竜巻に飲まれてしまえ!!
そう思った人は少なくないはず、ハリウッドはそうした空気の読めないはた迷惑な奴には容赦しません。
カップルは車に逃げ込んだと同時に、竜巻によって見事に車が横転!
あっという間に竜巻の餌食になってしまうのであります!
ケイトたちは水の張ってないプールに逃げ来み、力を抜いたりちょっとでも立ち上がれば風に持ってかれてしまう状況下で、必死に柵に捕まって耐えに耐えます。
クライマックスでもケイトが単独で車ごと竜巻にツッコんでいくスペクタクルなシーンは秀逸だし、何より映画館に逃げ込んだ人たちが必死で椅子にしがみつきながら暴風に耐えるしかない絶望感は、正に映画的。
古典映画「フランケンシュタイン」を上映している最中の出来事というのも相まって、非常によくできたクライマックスだったように思えます。
フィルム感満載のドラマ。
上でも紹介しましたが、本作は「ミナリ」のリー・アイザック・チョン監督が手掛けたディザスター映画。
どうやらストーリーの原案はジョセフ・コシンスキーということで、エンタメ的な展開とケイトとタイラーの関係性は彼によるものだと思います。
そんな座組で作られた本作は、もっと話を切ってテンポを上げても良いジャンルだったとは思いますが、敢えてケイトのトラウマ、彼女をちゃんと理解し寄り添うタイラーの人間の本質をドラマチックに描いており、ディザスター映画と並行してドラマにも力を入れていたことが素晴らしいと思います。
ケイトは親友と恋人を自分のミスによって失い、喪失感を抱いたままハビの頼みでオクラホマに戻るという設定。
頼まれ仕事でやってみたものの、やはり竜巻を目の当たりにすると足がすくみ、仕事の手伝いを全くこなせないほどトラウマになっていることが浮き彫りになるんですね。
その後タイラーと仲を深めていくうちに、タイラーは彼女を闇を抉るような行為をしてしまうんですが、しっかりそれを理解し自分になのができるかを考え行動していくのです。
もちろんケイトも彼の言葉を受け止め、「どうすれば竜巻をくいとめることができるか」という問題に直面していく物語なんですね。
そもそも本作の序盤では、気象学のプロVSYouTuberという対立構造で描かれており、とにかくタイラーが嫌な奴なんです。
田舎者の陽キャならではのヒャッハー!な感じで、仲間とノリノリで竜巻にツッコんで花火をぶっ放す姿を、ライブ配信でみんなに見てもらって収益を稼ぐという、気象学のプロや竜巻を真面目に研究している奴らからしたら非常にはた迷惑な存在。
普通YouTuberやインフルエンサーみたいな類は映画ではことごとく殺されるような立場なんですが、タイラーはそうじゃないってのが、徐々にわかっていく物語でもあるんですね。
それが竜巻で被害に遭った人たちを救う姿。
瓦礫に挟まったであろう犬を捜索したり、Tシャツを売って作った金を救援物資に充てて配布するというボランティア精神が、ただのお騒がせYouTuberではないという側面、さらには決して勘だけで竜巻を追いかけてるのではなく、「怖いと思っている存在をしっかり理解したい」という思いから生業にしているという、見た目とは全く違う真面目な一面を出してくるんですね。
やがて「竜巻を追いかけ手なずけたい」という根幹が共通項であったことや、なぜか竜巻からケイトへと標的を変えて追いかけてくるタイラーにくすくす笑ってしまうんですが、二人が共に行動する理由が見えてくるという図式へと変化。
クライマックスで街の人々を助けながら、竜巻をどう退治するかへと進行してくのであります。
本作がまた面白いのは、今やこの手の映画で環境問題は必須なんですけど、それを一切触れることなく話が進んでいくことろ。
オクラホマで幾度となく連続して発生する竜巻を調査してデータを採取するという目的で話が進行しますが、決して「なぜ竜巻が連続発生するのか」という点には触れておりません。
もし触れるのであれば、例えばケイトのNYの職場の誰かが原因を突き止めて、我々に注意喚起するなんて魅せ方もあったかもしれない。
だけど、そこに一切触れずに目の前で起きていることをどう解決するかを、全く異なる2人が手を取り合い、かつて取り組んだ研究をアップデートして立ち向かうという行動にフォーカスをあてていくわけです。
また、監督はオクラホマ州と同等に竜巻発生数の多いアーカンソー州で育った人間。
前作「ミナリ」はそこで暮らす家族と青空と緑とのコントラストが抜群に映える映像で心地よい作品だった記憶があります。
それを意識してなのか、本作は撮影を舞台であるオクラホマ州で35㎜フィルムで撮影し、次世代のハリウッドスターを自然の中に溶け込ませてるんですよね。
もうさ、ルックが完全にかつてのハリウッド映画なんですけど、そこにシレッと良いショットが紛れ込んでるからたまらない。
やってることはゴリゴリVFXなのに、なぜか自然が映える、映し出されている役者の表情がかつてのハリウッド映画の装いで、なんで科学と歴史がこんなにもナチュラルに機能するのかマジで理解できない、それくらいたまらん映像の連発でしたね。
さらに言うと、これは宇野惟正氏の「MOVIE DRIVER」の受け売りなんですけど、リベラルな立ち位置のケイト(NYにいるってことで)と、保守的な立ち位置の田舎者YouTuberのタイラーが、目の前の問題に立ち向かうために手を取り合うという図式は、正に今アメリカがなさねばならないことにも思えてくるから面白い。
上でも書いたけど、環境問題なんかに手を出さない辺りや、スピルバーグが製作総指揮に入っていることやアジア系アメリカ人の監督といったリベラルな臭いって一切ないわけです。
政治的な臭いを出す映画ももちろん必要だけど、無理して扱う必要もないわけで、映画界を牽引するハリウッドが本来の役目を、こういうエンタメで果たす意味合いって、やパリこういうことなんじゃないのかな、それを敢えて表に出すことなく作り上げたリー・アイザック・チョン監督の作る力に脱帽しました。
最後に
言わずもがな、本作の活気をもたらしたのはグレン・パウエルでしょう。
序盤こそマジでコイツ嫌な奴だなと思えるような暴れっぷり迷惑っぷり、そしてKYぶりだったのに、いつしか「理解したい」存在が竜巻からケイトにわかっていく、しかもその手前でめちゃめちゃいい人だって発覚する超おいしい役回りw
しかも表情はどちらも同じなんだよなぁ。喋り方に差はあれど。
また、なんて言うんだろ、軽薄な感じで近づいて実は超優男な感じが、かつてのトムクルーズを彷彿とさせて、ハリウッド映画だなっえ思えるルックスなんですよね。
シティボーイもハマるんだろうけど、田舎のカウボーイもめっちゃハマるという器用さもマッチしていて最高でしたね。
さらにデイジー・エドガー=ジョーンズの美しさも素晴らしい。
ザリガニの鳴くところではその美しさが物語の説得力を弱めてしまうダメさがあったけど、今回はそういう役柄ではないから、気象学のプロってのも決して的外れになってないリケジョっぽいルックスで、それでいてグレン・パウエルとの相性も見事。
そのまま恋に落ちていっても誰も文句言わないペアでした。
もうね、ラストシーンが最高なんですよ。
空港に見送りに来たタイラーが、「もうこれっきり?」とケイトに言うと「感じたなら、追うのよ」なんて返すもんだから、レッカー移動寸前の車からドリルで固定して持っていかれないようにして、空港へダッシュするっていう一連のシーン。
タイラーの車は竜巻のど真ん中へ行く用の車だから、竜巻に車体を持っていかれないために固定用のドリルが搭載されてるわけで、このガジェットをこんな風に使うオシャレな使い方、さらに「竜巻を追いかけてきた者」同士だから伝わるニュアンス。
そこにあのニヒルでスケベっぽいグレン・パウエルのにこやかな表情!!
イエス!!!でしたねw
とにかくハリウッド映画はまだまだ面白くなれることを証明したと言っても過言ではない一作。
もっとタイトに見せてくれたら俺の超お気に入りでしたが、そこはドラマにも光を当てたい監督の糸を汲んで理解したつもりです。
何より、竜巻の被害に遭う人たちがあの地域にはたくさんいるわけで、監督自身肌で感じてきたからこそ向けた視点だったと思うんですよ、被災地のシーンは。
決して抗っても勝ち目のない自然現象。まずは逃げる事隠れることが最善策であることをしっかり見せながら、それでも科学で解決できる方法があるかもしれないことも見せる。
今後の課題と防護策を提示しながらエンタメに仕上げた作品、お見事でした!!
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10