ワンダーウーマン1984/WW84
「女性のヒーローは売れない」といわれ続けた映画業界の中、見事に成功をおさめ、その後の女性ヒーロー映画に活路を見出したワンダーウーマン。
女性だけが住む島で王女として育った環境から、外の世界を知らないことによるズレた価値観によるユーモラスな面や、スティーブ・トレバーと巡り合ったことで生まれる愛くるしい表情。
逆にどんな敵や巨大な武器でも、並外れた身体能力と戦闘能力で戦うことができる圧倒的な強さ。
そんなワンダーウーマン=ダイアナに誰もが心奪われた前作「ワンダーウーマン」から数年。
再び彼女が帰ってきます。
第一次世界大戦が舞台だった前作から、一気に数十年後の1984年に舞台を変えて描かれるダイアナの新たなる戦い。
全身金色でデザインされた鎧は、巷では「聖闘士星矢」の黄金聖闘士とうり二つだなんて言われてますが、マジで似てますw
アクアマンのスーツにも造形がどことなく似てる感じがしますね。
ただでさえ強いのに、さらなる進化を遂げるべく神々しい輝きを放つゴールドアーマー。
それだけ今回の敵も強いってことなんでしょう。
また、なぜ舞台が1984年なのかも気になるところ。
アメリカ人にとって1984年はいろいろな意味で象徴される年だなんていわれてますから、そこに現代の問題とマッチさせるような作りになっている気がします。
待望の続編、早速鑑賞してまいりました!
作品情報
MARVELと肩を並べる2大コミック「DCコミック」が原作の女性ヒーロー「ワンダーウーマン」が再びスクリーンに帰ってきた。
スピード、力、戦術と、アメコミヒーローの中で最強と謳われる彼女の次なる舞台は「1984年」。
スミソニアン博物館で考古学者として働くダイアナの前に立ちはだがるのは、全ての欲望を叶えると国民に訴えかける謎の実業家と、正体不明の敵チーター。
そして彼女の前に現れるのは、前作で命を落としたはずのスティーブ。
突如訪れた安らぎと強大な力を前に、ワンダーウーマンが再び立ち向かう。
前作から引き続きパティ・ジェンキンスが監督、ガル・ガドットがワンダーウーマンを演じる本作は、再三巻き起こす「80年代ブーム」を踏襲した演出になっているようで、スピルバーグ監督作品を彷彿とさせる冒険心のある楽しい作品に仕上がっている模様。
またアメリカ郊外の象徴ともいえるショッピングモールのシーンでは、ハイパーリアルな作りにすることでバトルシーンを展開しやすくさせ、さらには80年代らしいポップでカラフルな色彩といった工夫もされているとのこと。
果たして彼女は、無事世界を救うことができるのか!
あらすじ
スピード・力・戦術のすべてを備えたヒーロー界最強の戦士<ワンダーウーマン(ガル・ガドット)>を襲う、全人類滅亡の脅威とは。
世界中の誰もが自分の欲望を叶えられてしまったらーー。
禁断の力を手にした、かつてない敵マックス(ペドロ・パスカル)の巨大な陰謀、そして正体不明の敵チーター(クリステン・ウィグ)の登場。
崩壊目前の世界を救うため、最強の戦士が払う失うものとは何か!?(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、前作に引き続きパティ・ジェンキンス。
アメリカ犯罪史上初の女性連続殺人犯として人々を震撼させた女性の真実を描いた実録サスペンスドラマ「モンスター」でデビューした監督。
10数年ぶりに手掛けた作品が「ワンダーウーマン」というのがまず驚きですよね。
そんな監督は、なぜ数十年後の80年代を続編の舞台にしたのかを、「80年代に設定することで現代を間接的に伝えるため」と語っています。
80年代こそが今の我々を導いた、欲望のままに買い、やりたいことを何でもする、世界のどこへでも飛んでいく。
ロメロの「ゾンビ」に代表される消費の象徴、ショッピングモールが登場するのも、そんな理由だからなのでしょうか。
現代と80年代にどういうつながりがあるのか、楽しみです。
また監督は、ガル・ガドットを再び主演に迎えクレオパトラの伝記映画にも挑戦する模様。そちらも楽しみです。
キャラクター紹介
- ダイアナ=ワンダーウーマン(ガル・ガドット)・・・桁外れのスーパーパワーと【真実の心】を武器に戦う最強の戦士。もう一つの顔は、スミソニアン博物館で働く謎めいた考古学者・ダイアナ。世界の崩壊に立った一人で立ち向かうが…
- スティーブ・トレバー(クリス・パイン)・・・ワンダーウーマンと共に世界の脅威に立ち向かう元空軍パイロット。
- マックス(ペドロ・パスカル)・・・禁断の力を手にし、巨大な陰謀を企てる野心家の実業家。
- チーター・・・ワンダーウーマンを超えるスピードとパワーを誇る最凶の敵。その正体は?
- バーバラ(クリステン・ウィグ)・・・ダイアナの同僚で、宝石学・地質学・岩石学・未確認動物学の博士。ある秘めた願望を抱く。(以上HPより)
前作のおさらい
女性だけが住む島・セミッシラ島で育ったアマゾン族の王女・ダイアナは、叔母であり将軍のアンティオペの修行に耐え、知識も武力も優れた戦士へと育った。
ある日、外の世界から不時着したスティーブ・トレバーを救出したダイアナは、「真実の投げ縄」を使って、「ドクター・ポイズンがマスタードガスを作っている」ことを聞き出す。
そして首謀者が戦いの神アレスだと確信したダイアナは、スティーブと共に外の世界へ出向き、戦争早期終結のため、彼の仲間と共にロンドンへ向かう。
まるで温室育ちのような世間知らずなのに、べらぼうに強い。
そして容姿端麗。
このギャップが物語の中でギャップを生み、観る者の心をつかんでいくキャラクター構造になってるんですよね。
そして彼女とスティーブのやり取りから生まれるユーモラスな場面もあれば、激しいバトル描写、ダイアナとスティーブが徐々に心を通わせ、悲痛な最期を迎えてしまう恋愛模様、戦争こそ人間の本性という敵の言葉からもたらされるヒューマン性など、映画的なジャンルが盛りだくさんのエンタメ作品になっています。
また、伸縮性に優れた武器で、捕らえられた者は真実しか言わなくなってしまう「真実の投げ縄」や、女性の自由であり男性支配に屈しないという意味を含んだブレスレットは、どんな銃弾もはじき返す能力や、強力な衝撃波を放つ「ガントレット・クラッシュ」といった技を繰り出します。
他にも剣や盾といった定番の武器防具なども装備して戦うのも印象的です。
そしてこの「ワンダーウーマン」は後に公開された「ジャスティス・リーグ」につながる物語としても重要な位置的作品。
残念ながらDCヒーロー同士が集結するような作品は現段階では製作されない様子ですが、当時としては、どう繋がっていくのかワクワクしたものです。
続編となる「1984」では、スティーブがなぜ生き返ったのかや、正体不明の敵、陰謀など気になる点がいくつもありますが、一番はゴールドアーマーの存在でしょうか。
とにかく前作をおさらいして臨んだ方がよさそうですね。
前作の重々しい色味から解き放たれたかのようなポップな色彩。
ダイアナがすごく映えそうな予感です。
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
欲望と真実のはざまで葛藤するダイアナ!
ヒーロー以外の姿での人間味あふれた役柄に共感。
しかし所々雑だな…。
以下、ネタバレします。
大まかなあらすじ
ダイアナの回想。
少女時代のセミッシラ島で行われている競技大会に参加する幼きダイアナ。
大人の女性たちが相手といえ、アドバンテージを見せない活躍ぶりを見せる少女ダイアナ。
SASUKEよろしく難易度の高いエリアを、小さな体と高い運動神経でスルスル抜けていく。
海にダイブし、2位との差を突き放すダイアナは、馬に乗り弓矢で的に当てる流鏑馬のようなレースでも抜群のセンスを見せる。
しかし、後ろを気にし過ぎたせいで木の茂みにぶつかり落馬。
このままでは優勝できないと確信したダイアナは抜け道を見つけ、離れてしまった馬に追いつき、そのままゴールへ一直線。
すると、彼女の教育係である将軍アンティオペに首根っこを掴まれ、ゴールさせてもらえない。
「なんで捕まえるの!?優勝できたのに!」
勝利だけに執着していたダイアナにアンティオペは、「真実に向き合う」ことが大切さを教え、それを成し遂げる者こそが真の戦士であることを諭す。
時は遡り1984年。
街はカラフルでポップな色味や、派手な容姿から豊かな空気を漂わせているものの、犯罪が横行していた。
宝石店に押し入った男性2人は、この店で裏取引しているブツを強奪。
しかし連れの男性が逃げる際に拳銃を落としてしまったことから、ショッピングモール内は大パニック。
刑務所に入りたくない一心の男は、たまたまそばにいた少女を人質に、高い階層から下へ突き落そうとする。
すると、ヘスティアの縄で颯爽とワンダーウーマンが登場。
監視カメラをティアラで破壊し、縦横無尽に戦う。
誰にも危害を加えず、被害者を出すことなく強盗グループを捕らえた彼女の存在は、ニュース番組でも一体誰なのか見当もつかなかった。
部屋に戻ったダイアナ。
辺りには前作での第一次世界大戦終結時の写真や、トレバー牧場での写真、トレバー愛用の時計が飾られていた。
外で食事をするも一人のダイアナにとって、スティーブの損失は心に深く刻まれていたのだった。
一方ダイアナの職場スミソニアン博物館。
地味で影の薄い存在でありながら、ヒールで通勤したバーバラは宝石学に精通した博士。
書類を落としても誰も手助けしてくれない姿と、それでも周囲から注目されたいとう願いが慣れないハイヒールから見えてくる。
すかさずダイアナがバーバラが落とした書類を拾うのを手助けする。
バーバラにとって、ファッションを着こなし社交力に長けたダイアナは正に憧れだった。
そんな彼女と親しくなりたい一心で、食事に誘ったバーバラは、FBIからショッピングモールの宝石店強盗の際に押収した裏取引用の宝石の鑑定を依頼衣される。
押収した宝石の中には「シトリン」と呼ばれる怪しい石が紛れていた。
挟まっていたリングの外側にはラテン語で「願いを叶える」と記載されており、たまたま通りかかったスタッフが「コーヒーが飲みたい」と冗談で願ったところ、コーヒーを買い過ぎた別のスタッフからコーヒーをもらうという事態が。
まさかとは思うモノの、バーバラに「あなたなら何を願う?」と問われたダイアナは、心の中で「スティーブとの再会」を願うのだった。
意気投合したダイアナとバーバラは食事をすることに。
その外見から博物館で働く以外は遊び放題なんでしょ?と問われたダイアナは、誰にも理解できない問題があることを主張、見た目だけで判断するのは違うと答える。
夜の帰り道、職場に向かうバーバラは、ホームレスに食事のお裾分けをする優しい一面を見せるが、ベンチに腰掛けていた男性から強引に送られようとされ、なかなか抵抗できないでいた。
そこへ職場に鍵を忘れたダイアナが現れ、バーバラを救い、急いで家に帰るよう促す。
バーバラは、会って1日で憧れの存在へと化したダイアナのようになりたい願望が強まり、魔法の石を握って「ダイアナのようにセクシーになりたい」と願うのだった。
職場にこもって朝を迎えたバーバラは、ボサボサ頭を直すも、さりげなくセクシーな雰囲気を漂わすように。
ハイヒールを履きこなし、シャツを肩で斜めに着るスタイルから、今まで声をかけてこなかった男性スタッフから「今日は素敵だね」と声を掛けられる。
女性スタッフから石油会社である「ブラック・ゴールド社」のマックス・ロード氏が、博物館に融資をしていただく関係から、バーバラに館内を案内してほしいと頼まれる。
TVのCMのようにテンションが高く、パフォーマンスに長けるマックスにバーバラは妙な親近感を抱き、彼と意気投合しながら自分の部署を案内することに。
出勤したダイアナは、仲睦まじく話す二人に近寄り挨拶。
TVを見ないダイアナはマックスの存在を知らず社交的に振る舞うも、博物館に出資するような人間に相応しいとは思えないと苦言を呈す。
夜に行われる出資記念パーティーに出席してほしいと言って博物館を去ったマックスは、自宅兼会社へ帰宅。
大きな豪邸ではあるものの、事務所には秘書一人で、たくさん並べられたデスクには誰一人いない状態。
息子との再会に喜ぶマックスだったが、一向に石油が出ないことから融資を切りたいどこぞの会社のCEOの姿が。
夢を見たいと思わないか、願いはかなうんだ、あと一歩のところなんだとせっつくマックスだったが、結局打ち切られることに。
マックスには狙いがあった。
願えばなんでも叶うとされる魔法の石の在り処が、博物館にあったことを突き止めた彼は、宝石学の専門であるバーバラに近づき、石を盗もうと画策していたのだった。
出資記念パーティーにて。
魔法の石が気になるダイアナは、マックスに問い詰めようと探す。
一方マックスは、一段と見違える姿になったバーバラを見つけ、彼女と二人きりで飲もうと博物館の事務所へ誘う。
そして魔法の石を盗むことに成功したのだった。
ダイアナはマックスを探すも、周囲から声を掛けられる毎にあしらうばかりで気が散っていた。
そこへ見知らぬ男性がダイアナに声をかけ時計を渡す。
何と死んだはずのスティーブだった。
二度と会えないと思っていたダイアナは感極まり抱擁、熱い口づけをかわし、マックスのことなど二の次状態になっていた。
魔法の石によって蘇ったスティーブは、ある男性の身体を借りて蘇っており、ダイアナは彼の部屋へと向かい、これまでずっと夢に見ていたひと時を過ごすのだった。
魔法の石の在り処をスティーブと共に探すダイアナ。
何十年も経った世界は、スティーブにとってどれも新鮮でカルチャーショックばかり受けていた。
マックス邸にやってきた二人は、隙を見つけて邸内に侵入しようと試みる。
ガレージの鍵を壊して入ろうとするが、何時ものように力が入らないダイアナ。
何とか侵入しマックスのデスクに行くと、室内は竜巻でも起きたかのようなあれ具合。辺り一面砂埃が舞っていた。
マックスが魔法の石を探していたことを確信した二人は、ゴミ箱から彼がエジプトのカイロに向ったことを突き止め向かう。
パスポートを持ってないことと、最新鋭の飛行機を目の当たりにしてパイロット魂が疼いているスティーブに、ダイアナは博物館に展示されている飛行機を盗んで現地へ向かうことに。
夜間でも偵察できてしまう管制塔のシステムの存在を忘れていたダイアナは、航空警察の攻撃をかわすために、一度しか使ったことのない「透明化」の技を使って、見事脱出に成功。
独立記念日の花火を間近で見ながら、カイロへ向かった。
マックスが魔法の石で願ったことは、「自分自身の魔法の石に」という願いだった。
彼の願いによって物体は砂と化し、彼自身が魔法の石になった。
カイロで石油を発掘し、新時代の石油王と称された実業家の元へやってきたマックスは、「かつての王朝のような街にしたい」という彼の願いを叶え、その代償に石油を盛らろうとした。
しかし既にサウジアラビアに売却していたため、代わりに彼の傭兵たちをもらい、次の目標へ向かうのだった。
カイロの街では突如高い壁が立ちはだかり街を覆い、流れていた川がせき止められたことで、水を汲み取ることができず大きな貧富の差が発生。
やがて世界中を巻き込む事態へと向かっていった。
逃げるマックスを捉えたダイアナは、スティーブと共に彼から魔法の石を奪い返そうと奔走。
行く手を阻む傭兵たちの手に苦戦するダイアナは、何時ものような力を発揮できないでいた。
マックスに魔法の石はどこか問うと「目の前にある」と言われ困惑するダイアナ。
すると道の真ん中で子供たちが遊んでいた光景が命に入り、救助を優先。
間一髪で助けたものの、マックスを逃がしてしまった。
何故力が発揮できないのか悩むダイアナだったが、あらかじめバーバラに魔法の石の歴史を調べてもらうと、ある共通点が浮かぶ。
それは「滅びた文明の時期に必ず登場する」ことだった。
古びたレコードショップの店員が事情に詳しいことを突き止めたバーバラとダイアナは、魔法の石が何なのかを知る。
かつて神々によって作られた神聖なるアイテムには、人間では計り知れない力が存在していた。
それはヘスティアの縄が真実を暴く力を宿しているのと同じで、魔法の石も何かの神によって作られたものであること、そして願いをかなえるためには、かつての小説の登場する「猿の手」のように大きな代償を伴うこと、そしてマックスを止めるには願いを取り消させることだと悟る。
ダイアナの力が弱まっているのは、スティーブを蘇らせたいと願ったダイアナへの代償だったことに気付く。
愛の力があればなんとかなると自分に言い聞かせていたダイアナは、スティーブの助言を振り切り、再びマックスを探し出す。
一方バーバラは、やっとなりたい自分になれたのに願いを取り消すことなど笑止千万と、逃亡を図る。
以前自分を襲おうとした男をいとも簡単に力でねじ伏せたバーバラは、ダイアナがひた隠していたこと、ホームレスに声をかけるといった優しい面が失われていることに気付き、ダイアナを止めることを企てていく。
スティーブと離れるなら、力など失ってもいいと思うダイアナ。
仕事で成功したいという欲が、息子との関係をも御座なりにしてしまうほど強欲になっていくマックス。
なりたい自分になれた喜びと、それを保持するために狂気を滲ませるバーバラ。
やがて3人の欲望が交錯し、世界は核戦争のカウントダウンにまで飛躍していく。
果たしてダイアナは世界を救うことができるのか。
・・・というのが大体3分の2くらいのあらすじです。
1984年、夏、ダイアナ。
1984年のアメリカを舞台に、これまでずっと孤独だったダイアナの前に現れたスティーブとの「愛」を堪能したい欲と、力を司る戦士としての世界平和への欲に葛藤するダイアナを軸に、豊かでありながら徐々に混沌と化していく世界事情の根底には誰もが抱く「欲」が原因であることを浮き彫りにし、平和を導くには「今の暮らし」=「真実」に向き合うことを提示した、壮大な物語でございました。
前作では圧倒的な力と力がぶつかったクライマックスから「これぞDC!」と思わせる壮大さがありましたが、今回は普通の人間が欲にまみれて暴走した結果、悪の権化と化していく敵との対峙に迫られるダイアナの姿が印象的な作品になってましたね。
幾らアメコミヒーローだからと言って、敵が外来からやってくるようなオーソドックスな物語ではなく、徐々に貧困や分断の道を歩むことになっていった現代の姿の起点となった時代に結び付けていったプロットには唸るものがありました。
本作で一番僕の心に刻まれたのは、やはりダイアナの悲恋でしょうか。
前作から数十年経っても尚、思いをはせるスティーブの存在が、彼女を真実から目を背けさせていたことが窺える序盤。
部屋には彼との思い出の写真が多々あったこと、スティーブとの思いがけない再会に目の前の事件を忘れてしまうほど熱い抱擁を交わすシーン、そして魔法の石がどれだけの脅威かを知ったところで、自分の願いを取り消したくない気持ちを抱く彼女の姿は、もう一度失いたくないという怖さがにじみ出ており、自分がその立場ならきっと同じことを思うだろうなと共感した場面でもありました。
また、冒頭でアンティオペから諭されていた言葉が、序盤ではまだ彼女は気づいていないことが示されていましたし、スティーブのおかげで外の世界に溶け込めるようになったものの、やはりまだ「孤独」の壁を越えることができていなかったのかと感じます。
こうした彼女の弱みが、敵に上手く付け入られてしまう後半。
叶った願いを固辞したくなる気持ちが体現化されたマックスとバーバラを食い止めるには、本来備わっている力を取り戻さないといけない。
しかし願いを取り消すということは、再びスティーブと離れ孤独に過ごさなくてはならない。
そんな迷いを解放するのがスティーブでした。
スティーブからしたってダイアナとの再会は本望なんですよ。
でも、彼女のことを思って答えを選ぶわけですよ。
ダイアナとしてもワンダーウーマンとして深い理解を示しているスティーブだからこそ、彼女を説得できるし、そんなスティーブだからダイアナも受け入れるわけで、そりゃもう二人の別離のシーンは涙モノです。
あのですね、ガル・ガドットってただでさえ美しいのに、ダイアナとしてスティーブを見つめる視線が、ガチで好きな人を見てる視線なんですよ。
よくあるじゃないですか、女の子が好きな人を見てるときだけ目が違うみたいな。
もうアレです。
そんなときほど女性って美しいよなぁ~って僕は勝手に思ってます。
いわゆる「恋するオンナはきれいさ~」って郷ひろみのあの歌ですw
だからスティーブとのつかの間の日常や掛け合いしている時のダイアナは、マジで目が違うんですって。
それあっての別離のシーンはたまりません。感極まります。
スティーブ初めての80年代。
前作では、外の文明とは切り離されていた島で過ごしたせいで、外の世界で島時代の振る舞いをしてしまうダイアナに、スティーブ同様見てるこっちも困惑しながらギャップから生まれるユーモアを楽しませてもらいましたが、本作は1910年代から80年代へとやってきたスティーブが様々なカルチャーショックを受けるという、ダイアナとスティーブが前作と立場が逆になった構図が描かれてましたね。
登場するや否や、別の男性の身体を借りて彼の部屋で過ごしたというスティーブは、布団の存在に驚愕したと思えば、80年代ファッションを堪能。
ダイアナがしっかりダサい!とか違う!とか、スティーブのファッションセンスを真っ向否定しないのがステキでしたw
全員ポケットが付いた服に興奮したり、国旗柄のポーチを痛く気に入ったり、シャツとジャケットの小―でバランスが微妙な辺りはクスクス笑えます。
特にバックトゥザフューチャーのマーティよろしく当時のハイテクスニーカーに興奮するスティーブ、どうしてもこれがいいと駄々をこねる姿はかわいらしかったですねw
また屋外では、エスカレーターで下る際に「落ちるかと思った」と吐くシーンや、かつて自分が乗っていた飛行機が驚くような進化を遂げていること、自分がいない間に人類が宇宙へ行っていたこと、そして目の前を猛スピードで横切る地下鉄を目の当たりにして、開いた口が塞がらない、言葉が出ないスティーブの姿はすごく印象的です。
この時のクリス・パインの表情が素晴らしく、普段見慣れている光景をよくあそこまで誇張して驚けるものかと。
役者ってすげえなと思った瞬間でもありました。
とはいえ雑な仕上がり。
前作の感想は、いろんな要素を薄く盛り込んだ結果エンタメ色が強く描かれていたものの、何か一貫したが捉えづらく、逆に面白みが欠けてしまった感があったんです。
そこを上手く修正できていたらなぁという期待があったんですが、そこ以前に妙なとっ散らかり感と、無駄にスケールを大きくしてしまっている感じがしました。
物語ではエジプトの王朝復活を起点に、人々の間に不安がよぎり、当時のレーガン大統領のほうふつとさせるマッチョイズムな大統領が大量の核保有を願ったことで、ソ連との関係が悪化、やがて核戦争勃発寸前まで飛躍していく流れになってました。
確かに当時の政権からアメリカは負のスパイラルにハマっていく感じがありましたし、そこから湾岸戦争へと向かっていく背景から、本当のこの時代の歯車が上手くいけば原題はこうはならなかったんじゃ、なんてのも透けて見えるんですが、物語的にここまで飛躍しなくても良かった気がするし、何よりここまでの展開がなかなか強引というか。
そもそもマックスが相手に願いを叶えさせる代償によって自分を大きくさせていく作戦で、あれよあれよと大統領の前にまでいけるようになるんですね。
果て無き欲の最終形態は大統領の権限だと。俺が国家だと。
要はここに来る過程がもっと段階を踏んでると説得力があると思うんですけどね~、色々すっ飛ばして大統領のところまで行っちゃうから。
だったら一つの街で括って知事を最終目標とかにしても話は変わらない気がするんですけどね~。ニューヨークとかロサンゼルスとか。ここまで話を大きくしないとだめなのかな。
また、せっかくアステリアのゴールドアーマーって奥の手が出てきたのに、相手がチーターってのも弱すぎやしないですかね。
ぶっちゃけ戦力的に普段のワンダーウーマンでも勝てるような力の差だと思うのは僕だけでしょうか。
あれを使うなら、せめてチーターに敗戦して使う方が効果てきめんだと思うんですよ。
確かに一度負けてますけど、あれはスティーブの願いを取り消すことをせずに、本来の力を出せていない状態のダイアナなので、別にゴールドアーマー要る?って。
ちなみにゴールドアーマーが部屋にあるってのが結構不可解。
伝説の鎧的扱いなんだから、部屋に置いてあるんじゃなくてどこかから発掘されるとか、真実と向き合う決意をしたダイアナと鎧が共鳴したみたいな描き方の方が、神話っぽく見えて良くない?
てか、84年の時代にあれがあるなら「ジャスティスリーグ」の時にも使ってほしかったですねw
あとは、スティーブと別れて目的地へ空飛んで向かうんですよ。
でも、一旦家に戻ってゴールドアーマーに着替えてきてるんですよ。
別に家に戻って着替えてくるのがダサいわけではないんでんすけど、いちいちいったん引き返すシーンを入れてるのがダサいんですよ。
挟まなくていいじゃん。
こういうツッコミが実は結構あって、スティーブと飛行機を奪ってカイロに向かうシーンなんて、付け足し付け足しですからね。
なんですか「透明にする力」を使うって。
TVシリーズの「インビジブルジェット」をここで披露するっていうファンサービスはわかるんですけど、唐突過ぎますって。
ここぞとばかりに「とっておきの技」を出すのって、なかなかダサいですよ。
加えて二人の再会を祝うかのような「花火による素敵なデートシチュエーション」も、とって付けたかのように挿入した「独立記念日」。
確かに夏っぽい季節だったけど、せめて冒頭とかにカレンダーとか見せるシーン入れろって。
急に独立記念日だから花火って。
このシーンは非常に不自然でしたね。
もっと言えばパスポート内から飛行機盗んでカイロに行ったのに、あっという間に帰ってきたのは何ですか。
盗んだ飛行機で戻ってきたってことでいいんですかね。
この辺は想像しろってことですか、そうですか。
後、アクションが全体的に安いCG感があって、ちょっと拍子抜けでしたね。
走ってるシーンが特に。
最後に
どんなに強いヒーローでも、弱い部分はある。
今回それが「欲望」だったということ。
「真実」から目を背けなければ、きっと本当の希望が見えてくる。
今こうして息苦しい世の中になってしまったのは、そんな人々の「欲」が先行してしまったからではないだろうか、と本作は言っているような気がします。
ダイアナのように今と真実を受け入れれば、それを一人一人が実行すれば、もしかしたら貧困や分断、争いはなくなっていくのかもしれません。
とまぁ、キレイにまとめてみましたが、作品的には前作同様可もなく不可もない面白さだったなぁというのが率直な所。
次回作を作るならどの時代をやるんでしょうか。
90年代かな。
ジャスティスリーグの後の時代でもいいと思うんですけど。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10