モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「余命10年」感想ネタバレあり解説 坂口健太郎の顔くらい薄い難病×恋愛映画でした。

余命10年

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日本映画では近年「難病」モノの映画が年1ペースで製作されています。

余命1ヶ月の花嫁」、「タイヨウのうた」、「おにいちゃんのハナビ」、「抱きしめたい」、「君の膵臓をたべたい」、「1リットルの涙」、「湯を沸かすほどの熱い愛」「8年越しの花嫁」などなど、誰もが涙したことのある作品ばかりが並びます。

 

ただこうも似たような設定の作品が並ぶと、「また難病モノか・・・」と懸念する人も多いのではないでしょうか。

 

僕もその一人で、今回鑑賞する「余命10年」に対しても大きな期待は寄せていません。

 

だって「余命」が10年て長くね?って思っちゃいますよねw

1年で良くね?と。

こう思ってしまう理由って、自分自身が「まだ何十年も生きるに決まってる」って自信からくるのかなと。

明日も生きてる保証なんてどこにもないのにね。

 

それはおいといて。

手垢のついたこの「難病」モノを、あの「新聞記者」や「ヤクザと家族」で絶賛された監督が、どんな物語を見せてくれるのかに僕は期待しています。

早速観賞してまいりました!

 

 

作品情報

自費出版として文芸社に持ち込み書籍化され、念願の小説家デビューを果たしたものの、文庫版発売を待たずして病状が悪化、38歳の若さで亡くなった小坂流加の「最初で最後」の同名小説を映画化。

 

切なすぎる小説としてSNSで話題を呼び、多くの読者から反響を呼んだ本作。

自らの余命を知り恋することを諦めた女性と、生きることに迷い自分の居場所を見失った男性の人生が交差し、毎日が輝きだしていく10年の月日を描く。

 

「新聞記者」で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、名実ともに日本を代表する映画監督となった藤井道人が、約1年かけて四季を撮り続けることで、誰もが経験する大切な日々の美しさを、二人が歩む日々と共に最大限に映し出していく。

 

公私共に充実な人生を送る小松奈菜が難病を抱えながらも懸命に生きる姿を、そして30代を迎え成熟した演技で魅了し続ける坂口健太郎が、彼女の運命を変えていく男性を懸命に熱演。

原作者の思いを引き継ぎ、全身全霊で挑んだ。

 

また音楽には「君の名は。」で映画音楽に初挑戦したRADWIMPSが、本作でも劇伴を担当。

10年に渡る2人の人生に音で寄り添う。

 

この「涙よりも切ないラブストーリー」を見れば、明日からの10年が眩しくなるに違いない。

 

 

 

 

あらすじ

 

数万人に一人という不治の病で余命が10年であることを知った二十歳の茉莉(小松奈菜)。

彼女は生きることに執着しないよう、恋だけはしないと心に決めて生きていた。 

 

そんなとき、同窓会で再会したのは、かつて同級生だった和人(坂口健太郎)。 

別々の人生を歩んでいた二人は、この出会いをきっかけに急接近することに——。 

 

もう会ってはいけないと思いながら、自らが病に侵されていることを隠して、どこにでもいる男女のように和人と楽しい時を重ねてしまう茉莉。

 

 ——「これ以上カズくんといたら、死ぬのが怖くなる」。 

 

思い出の数が増えるたびに失われていく残された時間。

二人が最後に選んだ道とは……?(HPより抜粋)

youtu.be

 

 

監督

本作を手掛けるのは、藤井道人。

 

デイアンドナイト」、「新聞記者」、「ヤクザと家族」など数々の作品を世に送り出した監督。

映像表現に長ける一方で、現代社会に斬り込んでいく姿勢も忘れないのが監督流とでも申しましょうか。

特に新聞記者やヤクザと家族は、リベラル色が強いスターサンズのプロデューサー河村光庸氏とのタッグということもあり、色々な物議を醸したことでも記憶に残った作品でした。

 

本作はそれらの作品と違い、2人の男女にスポットを当てた青春と恋愛要素が強く出ている映画です。

 

同じテーマで撮りたくないと語る監督。

原作を読んだ時に、この映画を作りたいという直感が働いたとのこと。

そのためには原作者が描きたかった四季の変化をしっかり見せる必要があると思い、1年の撮影期間を設けることを条件にオファーを受けたそうです。

 

一体どんな映像表現をされているのか楽しみですね。

 

キャスト

主人公で難病を抱える女性・高林茉莉を演じるのは、小松奈菜。

 

彼女の作品を見るのは「さくら」以来になります。

女優として様々な役柄を演じてきた彼女ですが、難病を抱える役柄は本作が初めてなんじゃないでしょうか。

 

今回撮影期間が1年という長い中での演技に、終わった後は抜け殻状態だったそう。

自分の人生と役の人生、2つの人生を1年続けるって、よく考えたらかなりハードなことだと思います。

イベント登壇の際には、このエピソードを語りながら涙を流した彼女。

全身全霊を注いだ演技に期待ですね。

 

 

他のキャストはこんな感じ。

真部和人役に、「仮面病棟」、「劇場版シグナル」の坂口健太郎。

富田タケル役に、「東京リベンジャーズ」、「ハザードランプ」の山田裕貴

藤崎沙苗役に、「君は永遠にそいつらより若い」、「劇場版あなたの番です」の奈緒

三浦アキラ役に、「劇場」、「佐々木、インマイマイン」の井口理

茉莉の姉・桔梗役に、「ノイズ」、「浅田家!」の黒木華

平田役に、「新聞記者」、「シン・ウルトラマン」の田中哲司

茉莉の母・百合子役に、「樹海村」、「ボクたちはみんな大人になれなかった」の原日出子

梶原玄役に、「キネマの神様」、「騙し絵の牙」のリリー・フランキー

茉莉の父・明久役に、「コンフィデンスマンJP英雄編」、「ヒキタさん!ご懐妊ですよ」の松重豊などが出演します。

 

 

 

 

 

 

他の「余命」モノとどう一線を画す作品になっているのか。

10年という月日を彩る映像にも注目ですね。

ここから観賞後の感想です!!

 

感想

よくある普通の「難病」モノに「恋愛」が加わった感動押しつけタイプの映画。

映像に気合い入れ過ぎて心理描写と演出が弱いなぁ。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

あと10年しか生きられないとしたら。

難病を抱え生きることになり普通の日常生活を送ることができずにいる茉莉と、生きる希望を失い自暴自棄になっていた和人が、中学の同窓会を機に人生を紡いでいく物語を、四季折々の映像を背景に、病に苦しに真柄も懸命に生きた茉莉が「歩みたかった人生」ではなかったとしても「こんな人生だけど巡り合えてよかった」という姿を通じて、生きていく上で必要な誰かがいることの大切さを教えてくれた作品でした。

 

あなたの余命は持って10年。

突如人生のピリオドを通告された時、一体どんな思いを巡らすのだろう。

まだ10年もあるのか、それとももう10年しかないのか。

これが1ヶ月とか1年なら、この世と別れを告げるための身支度なり身辺整理鳴り、やり残したこと一気になるなり行動に移せると思う。

 

しかし10年というと茉莉のように20歳だとしたら30歳が終わり。

20代であればバリバリ仕事もできるし、恋愛だって後腐れなしの程度ならそれなりに経験できると思う。

ぶっちゃけ中途半端に生活をしなくてはならない。

 

茉莉が恋愛をしない理由にはいくつか挙げられると思う。

恐らく和人からアプローチされても拒んだのは、体ある手術跡を見られたくないことや、それを見せたことで幻滅されたくないこと、あとは彼が難病で無いことだろうか。

あと数年しか生きられない女と付き合ってもしょうがないといった諦めもあったのかもしれない。

 

そんなことよりもただ普通に笑って過ごす方が気楽だったのかもしれない。

 

しかし例え短い命であったとしても、大切な人との時間や一瞬はかけがえのないものなのだ。

本作は、ただただ生きてる僕らに、誰かと過ごす日々がどれだけ素晴らしいことなのか、誰かと笑ったり怒ったり泣いたり悲しんだりすることが人生にどんな「彩り」をつけてくれるのかを教えてくれる作品だったように思う。

 

 

物語の終盤、彼女は夢を見る。

それは病を抱えていなければ送れたかもしれない「if」の世界だ。

普通に和人と付き合い、いろんな場所に行き、色んな思い出を作る。

結婚して出産して家族を作り、幸せな毎日を過ごす。

 

もちろんそれは叶わない。

しかし和人という大切な存在が現れなければ、そんな「if」すらも想像できなかっただろう。

病気に苦しみながらも人生と向き合ったことで、和人と出会ったことで「モノクロの私の毎日」にたくさんの赤黄色緑が染められたのではないだろうか。

 

中々のパワープレイ

一丁前にそれっぽく感想を述べてみましたが、ぶっちゃけ全然ハマりませんでした。

 

10年間を2時間で描くことの難しさは、そこそこ映画を見てれば十二分に理解してるんですけど、どうも中身があるのかないのかわからない中途半端な映画でしたね。

 

たぶんですね、和人の視点を減らして茉莉の視点を増やせばよかったのかなと。

基本的には茉莉の物語ではあるんでけど、彼女の言葉によって人生リスタートをした和人がどう変化していくかも見せなくてはいけないような構成になってるので、彼の視点もけっこうあるんです。

 

そりゃ難病モノですけど恋愛映画でもありますから、相手の視点も大事。

だから茉莉に想いを寄せる和人の心情をみせつつ、茉莉にはその気がない態度を見せる。

何故拒むのか見てるこっちはわかってるけど、和人にはわからない。

そう、これが序盤結構な尺を使って描かれるんですね。

 

僕が一番「なんで?」って思ったのは、「なぜ茉莉は自分が病気であることを周囲に伝えないのか」だったんですよね~。

 

そもそも彼女塩分摂取にはかなり気を配らないと命の危険にかかわるわけです。

めっちゃ居酒屋行ってますよね。もちろん付き合いだけど。

「お酒飲めないの私」てのには配慮できるけど、居酒屋の飯は塩分モリモリですよ。

それに手を付けないってなったら誘ったこっちは「あれ、このお店のチョイスダメだっかな…」ってなりますよ。

 

それに海に旅行に行く際、彼女だけ海に入りませんでしたね。

アレも旅行のノリで一緒に海に入るってのがセオリーじゃないすか。

え~茉莉だけ入らないの~ノリ悪い~みたいな空気になると思うんですよ。

 

きっと事情を知ってるであろう友人の沙苗がうまくやったと思うんですけど、やっぱりさ、無理あるって、みんなに黙ってるの。

 

要は何が言いたいっていうと、あらかじめ「私病気なの」ってことを伝えておくことで、和人が「なんで茉莉ちゃんは俺に感情を示してくれないんだろ」って悩むパートも短縮できるし、事がテンポよく進むと思うんですよ。

 

茉莉が黙ってるから全然恋愛パートに進まないし、ようやく思いが実ったらダイジェストですよ。

予告編で映ってた花火やら海やらクリスマスなんて付き合いだしての映像じゃないってことです。

 

恋愛諦めなくてよかった!私の命はあと数年だけどこんな人と巡り合えてよかった!ってのをもっと尺を使って映像で表現してほしいわけですよ。

だってさ、人前ではあれだけ普通な表情してる彼女が、実は裏でどれだけ葛藤していたんだろうって辛い描写が多いわけですよ。

それと対極的に見せてもいいよなぁと思ったんですよね~。

 

 

あとは演出面ですね。

本編では四季折々の映像、特に桜の季節はここぞとばかりに気合いの入ったシーンが映し出されていました。

もちろん綺麗です。

2人が互いに頑張って生きようと誓い合った瞬間に吹く風と共に桜の花びらが舞い散るシーンは特に印象的で、これをきっかけに和人が茉莉に想いを馳せていく始まりだったと同時に、茉莉にも何かしらの変化があった瞬間でもありました。

 

ただこれ以外は特に普通に思えるシーンばかり。

涙を流す演者をクローズアップして撮影したり、そこにピアノ主体のラッドの劇伴が流れ、さぁ泣いてください!みたいに押しつけがましく演出。

 

日本映画に思うことなんですけど、そんなに泣く人撮ってどうさせたいの?って思うんですよ。

人が泣いてるのを見ると自然と涙が出る性質だってのが人間だと思うんですけど、実際はクドイですからね。

 

例えば、先生から強い薬に変えましょうって言われた時に、茉莉は「特効薬はできた?なんなら私が実験台になるからね」っていうシーンがあるんです。

この時茉莉ではなく、後ろに座ってる黒木華にあらかじめフォーカスしてるんですよ、手前の茉莉はボカして。

で、涙ぐんで部屋から出ていき洗面所で泣くってシーンに切り替わるんですけど。

 

ここはさ、もう後命がわずかなんだなって病弱な表情をしている茉莉をメインに映して、後ろに座ってる姉ちゃんはボカしておいて、急に部屋を飛び出していく姿だけ映せば、「あ、姉ちゃんきっと泣き出したんだろな」って風に読み取れません?

 

他にも、スノボ旅行から帰宅して母ちゃんの肩に頭のっけて「私の普通に生きたい」って泣きながら嘆く姿を後ろ姿だけで見せれば、「今母ちゃんも涙しながら娘を慰めてるんだろな」っておのずと想像できると思うんですよ。

 

細かいところで言うと、リリーフランキー演じる焼き鳥屋の店長が、和人に「もう上がっていいよ」って言った後に、出てった和人の後にもう一回リリーフランキーの顔を見せるんですよね。

あれも要らない。

背中だけ見せてれば彼が一体何を考えてるかわかりますよ。

 

別に「泣いてる顔」をお芝居がクドイってわけじゃないんですよ。

小松奈菜が鼻水たらしながら涙を流す芝居も、「あたしと家族、どっちがかわいそうなんだろね」って言った時に顔をしかめる黒木華も良い顔だし、茉莉の事を想いながら精悍な顔つきを見せる坂口健太郎もいいです。

でも表情を全部見せちゃう演出ってのは、逆に観客を信じてない気がしちゃう。

泣いてる姿を敢えて見せないから感情移入できると思うんですよ。

でもこの映画はそれができない。

させないのか?

いやだったら、あそこまで感動を押し付けるような画ばっかりにしないよね。

 

藤井道人は優れた人だと思う分、こういう演出ばかりしてほしくない想いです。

 

 

最後に

なんか断片ばかり切り取って、そこに文句ばかり垂れた感想になっちゃいましたけど、もちろん良い話だとは思います。

 

死にたい奴にズルいって言って軽蔑しながらも、実は自分もそうやって逃げようと思った時期もあって、でもやっぱり生きようと。

でも特効薬はできなくて、これ以上戦うことができない諦めを抱きながら、それでも日々を生きる。

そんな時に、自分を必要だと言ってくれる人がいて、これまでの景色が一変する。

だけどずっとこのままってわけにはいかず、彼を愛してるからこそ突き放して、撮りためた映像も消去して、大切な想いは文に認めていく。

それを読んで、ようやく自分に対する思いを知った和人。

さて、この物語はどう結末を迎えるのかっていう。

 

とりあえずMVPは松重豊ですかね。

黙って一筋の涙を流す父の姿は一級品でしたね。

まぁあそこも、黙って椅子を組み立ててる後ろ姿だけ映して、急に手が止まってうつむく風にすれば、お父さん今話聞いて泣いてるのかなって想像できるんですけどね。

 

しかしなんも残らなかったなぁ。

まぁ「泣ける!」って感想が連発するんでしょう。

それでいいんじゃないですか、日本映画は。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10