龍三と七人の子分たち
最近の北野映画はワーナー配給になってから拡大上映、しかも割と大衆向けな作品が増えありがたくもあり、昔の作品のように戻ってもらいたくもあり。
そんな思いもありながら見てきました。
元ヤクザの高橋龍三(藤竜也)は鬼の龍三と恐れられた過去を持つも現在は息子の家で肩身の狭い毎日を送りながら世知辛い世の中と嘆く始末。
ある日、息子と名乗る男からオレオレ詐欺に遭い、それを仕切る京浜連合なるグループと因縁の関係に。
黙ってられない龍三は昔の仲間を集め当時のようにひと暴れしようとするも、みんな手は震えるわ、持病を抱える者や、カネはないジジイたち。
龍三は一龍会を結成し京浜連合の悪だくみを邪魔をし始めると対立は激化、やがて子分たちを巻き込む一大騒動に発展する。
ビートたけしこと北野武監督の最新作。
個人的には久石譲のピアノが奏でる90年代の作品、なかでも、ソナチネやキッズリターンとかが好きです。
どちらかというと最近は音楽が鈴木慶一になってからは音楽が若干不気味でディスコードな感じがするのがどうも合わなくて。
ま、そんなことは置いといて。
今作の主役、龍三役は藤竜也さん。
背中の入れ墨がまぁ似合う!さすが、昭和のスター!そして、まあ酷い扱い。大ベテランにこんなことさせていいのかってくらい振り切った演技を見せてくれます。
そして龍三の兄弟分、若頭のマサ役に近藤正臣さん。
昔の作品あまり知らないんですけど、もう随分白髪になっちゃったんすねー。
確か龍馬伝で嫌味な殿様やってたのが記憶に新しいですかね。
今作もあるシーンでみすぼらしい格好して体張ってました。さすがっす!
はばかりのモキチ役に中尾彬さん。
孫娘に水商売で食わせてもらいながら寸借詐欺で生計を立てる情けないジジイ。
若干蝶ネクタイのせいで梅津栄さんと見間違えるなぁ。
前作アウトレイジでのヤクザっぷりから一転、これまたひどい扱いされてますww終盤はある意味見せ場!
他にも、京浜連合率いる西役に安田顕さん。
最近大泉洋より出演してる気がしますね。
そして刑事役に世界のキタノ!
龍三とは下っ端の頃からの付き合いという設定のようです。
と、豪華なジジイたちの競演の今作の感想は、
哀愁漂うスタンダードな笑いと妙に多いカメラ目線に違和感
ジジイでコメディという今までないキタノ映画だけにさすが昭和が生んだコメディアン、分かりきったウケ狙いに、思わず観客(つっても年配の方)は先読みして口に出してゲラゲラ笑うというマナーは悪いが気持ちはわかるよ、じいちゃんばあちゃん!な感じ。
こんな笑いをやるのは志村けんくらいだなーと思いつつもつられて私も笑いっぱなし。
とにかく分かりやすいお笑いで、しかもそれをジジイがやることで哀愁が混じってる。
義理と人情を愛する昭和気質の元ヤクザ達が、詐欺に簡単に騙されちゃったり。逆に騙してカネを巻き上げようとしたら相手のお涙頂戴話にハマってカネを渡しちゃう。
おまけに銃を持つ手は震える、いきなりドスを振り回す、右翼団体に成りすますなどなどやりたい放題なジジイたちに脱帽です。
それでも、町を肩で風を感じてるかのような闊歩する様はカッコイイ!
逆に違和感だったのが、カメラ目線での芝居。2人の掛け合いや一龍会対京浜連合の攻防などあらゆる面でいちいち変わるカメラ割り。
テレビドラマなどでよく見るパターンですが、あまりキタノ映画では見ないような。気のせいかな?
色んな人に見てもらいたいために会えてテレビで見慣れたカット割りにしたのでしょうか?
今までたくさんのヤクザをモチーフにしたバイオレンスな映画を撮ってきた北野武。そんな過去の作品で扱ってきたヤクザを古くてダサい、しかも笑われるような存在にしてコメディにする。
これって、自虐で笑わせてるってことなんでしょうか?監督!
そんな風に感じた作品でもありました。
もちろん、なーんにも考えずに誰もが読める分かりやすいケタケタ笑える娯楽作品です。
次回作は是非原点回帰で!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10