PK/ピーケイ
インド映画のイメージ。
とにかく踊る。
ヒロインがめっちゃキレイ。
祈る。
そして上映時間が長い。
特にこの時間の長さに関して言うならば、「おしっこ問題」がどうしても気がかりで・・・。
だからインド映画を見るにはそれなりの準備と覚悟と集中力が要されるわけであります。それを少しでも怠ると、こんなに面白いのにつまらないと感じてしまうわけで。
っつーわけで渋谷ユーロライブ試写会にて万全の体制で飲み物も入れずに見てまいりました!!!
あらすじ
留学先で悲しい失恋を経験し、今は母国インドでテレビレポーターをするジャグー(アヌシュカ・シャルマ)は、ある日地下鉄で黄色いヘルメットを被り、大きなラジカセを持ち、あらゆる宗教の飾りをつけてチラシを配る奇妙な男を見かける。
チラシには「神さまが行方不明」の文字。ネタになると踏んだジャグーは、“PK”(アーミル・カーン)と呼ばれるその男を取材することに。
「この男は一体何者?なぜ神様を捜してるの?」しかし、彼女がPKから聞いた話はにわかには信じられないものだった―――。
驚くほど世間の常識が一切通用しないPKの純粋な問いかけは、やがて大きな論争を巻き起こし始める。(HPより抜粋)
監督・キャスト
監督はラージクマール・ヒラニ。
どれだけすごいかまったく知らないのですが、インドではポリウッドが誇る超人気監督なんだとか。日本で言えば三池崇史監督みたいな感じなんですかね?ちょっとちがうか。まぁいいや。
作風は自身の経験を踏まえて気づいたこと感じたことをテーマに、エンタメ映画の名にふさわしい涙と笑いが詰まったハートウォーミングな作品を心がけているとのこと。
ヴィドゥ・ヴィノード・チョプラ監督に出会ったことで、映画製作に携わり、彼の協力の下作られた「医学生ムン・バーイー」で映画監督デビューを果たします。ヤクザの兄貴分が医師を目指すという表向きは奇想天外なコメディ映画だそうなんですが、現代の医療問題などにメスを入れた風刺もこめておりデビュー作にして国内大ヒットしたそうです。
その続編である「その調子で ムンナ・バーイー」でも憧れの女性に会うためにガンジーについて猛勉強するやくざの兄貴分についにガンジーが見えてしまうというとんでもない展開のコメディ。
そして彼の人気を決定付けたのが今回の主演アーミル・カーンとタッグを組んだ「きっと、うまくいく」につながってくるわけです。
そんな監督と意気投合し続けて映画を手がけた主人公PK役のアーミル・カーン。
その選球眼の良さからプロデューサー、監督もこなすという多彩なお方。
ん?ちょっと待て、前作は大学生役だったよな。
はい、調べてみると彼51歳です!!!
マジかっ!超ビックリ!!
どんだけ高く見積もっても30代にしか見えん!
インド人すげぇな、若ぇな!
やっぱりスパイスの力なのか・・・?
従兄が監督した初主演作「破滅から破滅へ」という作品が大ヒットし一躍注目浴びた後、製作にも携わった作品で、まだインドがイギリスに統治されていた頃に年貢を賭けてクリケットで闘う村人たちを描いた「ラガーン」がアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされる快挙に。
その努力と演技の幅の広さ、完璧さから「ミスターパーフェクト」なる異名ももち、今作も含めインド映画の全世界歴代最高興行収入の記録を4度も更新するという偉業も達成しており、インドでの彼の人気の凄さがうかがえます。
そして俳優以外の顔も持っており社会活動家としても積極的に活動してるそうで、自ら司会をするTV番組で、インドに根付くカースト制度での女性や子供の地位向上を訴えているんだとか。
それが実を結び「TIME」誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたり、ビル・ゲイツやヒラリー・クリントンとの対談が実現するなどグローバルに活躍しています。
そんな彼とヒラニ監督が日本でもブームを巻き起こした作品が「きっと、うまくいく」
私も公開した年のベスト3に入れるほど楽しんだ作品。
超難関の名門工科大ICEに入学したファランとラージューは、そこで超天才の自由人ランチョーと出会う。彼らは、一緒にバカ騒ぎを繰り返しては鬼学長の怒りを買い、いつしか“3バカ”として札付きの問題学生となっていく。そんな中、ランチョーは天敵である学長の娘ピアと恋に落ちるが…。
物語は、卒業して10年後、消息を絶ったランチョーが見つかったことで捜しにいく2人と、大学生時代の3人の生活の2つの時代を行き来しながら話は展開していきます。
インドの人って頭のいいイメージでしたけどそれもそのはず。
こんなに学歴社会でしかもそれが凄く問題というのをこの映画を通じて知ったのと、それを風刺してユーモアに描くから凄く楽しく見られます。
本当はなりたい職業があるのに親への反発もできず、決められた道へ突き進むことしかできない環境だったり、貧しさからのプレッシャーにより神頼みの毎日を送るしかできないやつだったり、そして、ちょっとでも躓けばエリートへの道は絶たれ命を捨てるところまで追い詰められるシビアすぎる学歴社会。
その中で異彩を放ち独自の発想でピンチを回避するランチョーの価値観や考えに納得し、お決まりの呪文「アールイズウェール」が見てる人を元気させる痛快な作品です。
ほかにもヒロインであるジャグー役をアヌシュカ・シャルマさんが演じてます。
というわけで、「きっと、うまくいく」でもその常識にとらわれない視点から物事を切り、見る人を歓喜にさせた監督と主演コンビが今回どんな問題をどんな切り口で描くのか、そしてそこから導き出した答えとはなんなのか?
ここから鑑賞後の感想です!!!
やっぱり歌って踊って楽しませてくれる!そして考えさせられる!これがポリウッドムービーだ!
以下、核心に触れずネタバレします。
いやぁ~楽しかったw
まずは率直な感想です。
「きっと、うまくいく」のコンビということで、かなり期待して鑑賞したわけですが、正直言って前作の方が良い悪いではなくて好みです。
これはきっとどちらのテーマが身近に感じるかという些細な比較からくるものだと思います。
前作が学業をテーマにしていたとすると、今作は宗教がテーマ。
無宗教な私にとってはやはり学業のほうが理解できるということでその差が今回表れたんだと思います。
だからといって今作が面白くないわけではなく、歌と踊りを前半に固めることでインド映画を象徴するものにした後、中盤からじっくりPKの回想シーンを面白おかしく描いたあとの問題提起、そして、諸悪の根源との対決からまさかまさかの泣き落とし!!
うまい!うまいよ!
伏線の回収が!!
もうね、がっつり泣きました。
泣きながら途中笑いました。
ヤツがね、ヤツが邪魔するんですよヤツの顔がww
そして日本人にとってはあまり関心はなくても本国インドでは生きていく上で必要とされているであろう宗教問題を主人公の目線で大胆に切り込んでいます。
これ向こうの国でよく上映できたな!?と思えるほどあらゆる宗教をイジッているんだけど全然不快にならない演出になっていて(そりゃあ無宗教だからそう見えるだけだろうけども・・・)楽しく見ることができるし、主人公が思う疑問に「よく考えてみたらそうだよなぁ」と感心してしまうほど。
こういう問題をエンタメにできるインド映画!懐が深い!
150分以上ありますが、クライマックスを見ればちゃんとそこまでの物語に意味があり、削ぐことのできないシーンであり、見てる我々も報われることでしょう。
PKは○○人でした。
ん~ここは核心につくネタバレでないと踏んで書きたいと思います。
冒頭から宇宙船に乗ってやってきた裸の男=後のPKと呼ばれる男は遠く離れた星から似たような種族がいると聞きつけ調査にやってきた宇宙人です。しかし来た途端宇宙船のリモコンを盗まれてしまい星に帰れなくなってしまうのです。
彼は背格好こそ人間そっくりですが言葉を話すことができません。心を通わせて話すため言葉が必要ないのです。だから地球上の身寄りもいない友達もいない彼は意を決してリモコン探しの旅にでます。
素っ裸の男がその後どうやって言葉を覚え、衣服を身につけ、金銭を稼ぎ、ヒロインであるジャグーの前に現れるのか、ここまでの珍道中が面白いです。非常にコミカルになっています。
なんてったって、人間以上に車のほうが踊ってるっていうwww
そしてリモコンのありかを探るべく彼なりに努力をしますが一向に見つからない。お巡りさんに聞くと「そんなの神様に頼め、警察は神様じゃなくて人間だ」といわれてしまいます。
神様に頼めばリモコンが返ってくるのか!そう考えた彼は早速神様を探しに行くのですが・・・。
何だよ結局宇宙人だったのかよぉ~・・・ではなく宇宙人という地球外の生命体=部外者が問題を突くからこそ、この問題定義は意味があると思います。
これ普通に地球の誰かさんだったら揚げ足取られるでしょうし説得力がないかも。
だからこいつ宇宙人だからこんなこと言えちゃうんだなぁそういう見方もできるかぁって。
ここまでの道中で彼は周りの人たちからPKと呼ばれるんですねー。
PKとはヒンディー語で千鳥足「tispy ほろ酔いの~」という意味の「pee-kay=ピーケー」からきてるそうです。
彼の歩き方や言動や行動が酔っ払ってるように見えたからなんでしょうね。
そして、アルファベット二文字の宇宙人といえば「E.T.」!!これ絶対意識してると思います。なんてったって自転車じゃなくてバイクを二ケツして移動するシーンありますしw
PK演じるアーミルカーンも普通の人間とは違う動作を常にしているのが見てわかります。一切瞬きしない。耳がダンボのようにデカい。そして、走り方がおかしいwこれね~じっと見てるとちょっと怖いですww
我々地球人は言っている事と思ってることが違うことが多々あります。
PKは元々言葉を使わず心で会話するから、なぜそんなことをするのかわからないんですね。
それだけピュアなPKをみて思ったのは、彼が赤ちゃんから徐々に成長していく過程をこの作品は描いてるということ。
裸で登場⇒男と女を判別する⇒衣服をまとう⇒言葉を覚える⇒疑問を抱く⇒答えを見出す⇒とある感情が芽生える⇒そして思っている事と違うことを言う=○○を言うわけなんですね。
こういった伏線もたくさんあるし、兄貴と呼んでいる地球に来て最初に世話になった男との絆もいいんです!
見逃すともったいないですよ!!
ジャグーかわいいぞ!!
PKの回想シーンの前にジャグーがPKと出会うまでの物語が描かれています。
将来メディアで活躍するためにペルーに留学していたジャグーは詩人であり大物俳優であるアミターブの講演会および舞台を見に会場へ向かいましたが、着くとすでに満席。
ダフ屋が持ってるチケットを手に入れようと駆け寄りますが同じくして一人の男(サルファラーズ)も購入しようと駆け寄ってきます。
チケットは100ユーロ。定価の倍以上の値段です。
2人とも所持金が足らず諦めていましたが、男からの提案で前半の舞台と後半の詩の朗読を変わりばんこで見るということで交渉成立・・・のはずがあれよあれと騙されて見れずじまいに。
その縁もあって、パキスタン人であるサルファラーズと仲を深めやがて恋人同士に。
ただこの恋には大きな壁が立ちはだかっていました。
それは宗教が違うということ。
ジャグー自身は親がどっぷりヒンドゥー教徒でありそこから派生した新興宗教の導師様に何かあれば相談し指示を仰ぐほどの熱の入れ様、その反動からジャグーは父の考えが大嫌い。
やがて異郷であり異教徒である彼氏の存在がばれてしまい、父は慌てて導師様の下へ相談に。
男は必ず裏切ると預言した導師に、ジャグーはとんでもない行動に出て預言が間違っていることを証明するため歯向かうのですが・・・。
ここで描かれているのはパキスタン人でイスラム教徒であるサルファラーズとインド人でヒンドゥー教徒の家族を持つジャグーが異なる人種と宗教であるが故に、それを元に数々の争いや衝突を繰り返して憎しみあってきたという歴史的背景が彼らの恋路を邪魔させているということ。
物語の最初でこういう問題を放り込んでいるので、なんとなくしかお国事情をわかっていなくても全然問題ないでしょう。
私もよくわからん!!
ジャグーがヒラヒラのスカートで舞いながら歌って踊ってというキュートな演出がとにかくかわいいです!
笑顔も素敵だし。インドの女性でショートカットでスカートやショートパンツを履いているイメージがなく、明るく元気で活発なジャグーは色々な決まりごとなどに囚われないキャラとして表してるような気さえします。
そしてPKと出会い、ふとしたジャグーのいたずらからPKは思いもよらない発想をし、インド中を巻き込む騒動へと発展していきます。
いよいよここからという感じで物語は熱を帯び、感動のクライマックスへと向かっていきます!
神様一生のお願いです!!って生きてきて何度いっただろう。
願いがかなわなかったのは私が無宗教だから?そもそも神様に願いは届いたのだろうか、はたまた神様は聞き流ししたのか、その願い事は神様ではどうにもできないことだったのだろうか。
そんな何でも願いを聞いてくれる神様は実在するのか?
なぜ人々はいるとわかって信じているのか?
なぜあの導師様には神様からお告げが来るのか。
沸々と沸いてでる疑問にひとつの答えを出すPK。
そして新興宗教の導師との対決から劇的なジェットコースター級のクライマックスを堪能してみてください。
なんか宗教とか難しそうとか、150分も長そうとか思ってる人!大丈夫!
あっという間でずっと笑えます!
んで泣けます!楽しい娯楽映画です!
というわけで以上!あざっした!!