モンキー的2023年映画ベストテン
いつも読んでいただきありがとうございます。
管理人のモンキーです。
この記事を持ちまして、当ブログ「モンキー的映画のススメ」は丸9年を迎える形となりました。
満9歳です。
今年はせっかく観賞したのに、ちょいちょい手を抜いてブログに書かない失態を犯してしまいましたが、来年10周年を迎えることもあり、そうしたことのないように心がけたいと思っております。
そんなことを頭の片隅で考えながらも、思ったことを正直に、情熱かつ冷静に、これからも感想を述べていきたいと思います。
さて、今年も恒例の年間ベストを決めました。
満足度の高かった作品、劇場や自宅での鑑賞回数、依存度などなど、あらゆる角度から吟味し、当初の満足度に加点して順番をつけてみました。
要するに好きな映画順ですw
あくまで私自身のベストですので、どうか冷ややかな視線でなく、温かな目で参考程度に覗いてもらえればと思います。
ちなみに2023年の上半期ベストはこちら。
2023年鑑賞した新作映画の本数は、121本!!
話題作は網羅したものの、昨年から引き続き配信系を抑えての新作観賞だったため、例年より比較的少ない本数となりました。
また今年は映画仲間から薦められた過去の映画を多数鑑賞したこともあり、そちらに時間を割いた次第です。
それでは発表です!!
ランキング発表
- ブルー・ジャイアント
- 枯れ葉
- AIR/エア
- フェイブルマンズ
- 春画先生
- CLOSE/クロース
- トリとロキタ
- ザ・フラッシュ
- TAR/ター
- ダンジョンズ&ドラゴンズ
となりましたぁ!!
モンキー的2023年映画の総括
個人的な変化の年。
今年は新作以外にも旧作を自宅でたくさん観賞した年でした。
これまで人から薦められた映画を観る習慣を持っておらず、頑なに「自分が見たい映画」ばかりを追求してきたわけですが、どういう心境の変化か映画仲間からのおススメ映画を「まずは見てみよう」というスタンスを持つようになりました。
その結果もあってか、それまで全く振り向きもしなかったアキ・カウリスマキ監督映画に触れる機会を経て、年末に「枯れ葉」を見て感銘を受けたわけであります。
もちろん作品の中身や既に「枯れ葉」と化した自身の現状に深く刺さったわけですが、自分が他人のおすすめ映画を受け入れた心境の変化がなければ、このような結果は生まれなかった、出会うことはなかったということ。
そういう意味では「感謝」しかない1年だったように思えます。
さて、僕の年ベスに関してですが、今年はコロナ明け元年と位置付けられた年でもあったように、様々な娯楽大作がひしめいた「楽しい」年でした。
特に5月公開の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.3」から8月にかけて、ハリウッドメジャー大作が毎週の如く公開した時期は、この一年の中で一番週末が待ち遠しかったですね。
ただその期待とは裏腹に、内容が伴っていなかったと感じたのも事実。
「ワイルドスピード」や「インディ・ジョーンズ」にしろ「ミッション・インポッシブル」にしろ個人的には正直厳しかった部分が多かった作品たちでしたね。
また「バービー」や「リトルマーメイド」といった辺りも、「その程度か」と落胆したこともあり、これまで夢中になっていたハリウッドメジャー大作は、僕の中にある一定のラインを越えられない作品群になってしまったのかもしれません。
その反発もあってなのか、ヨーロッパ映画が3作ランクインする事態に。
これまで全く見向きもしなかった(厳密には何作か見てるけど)ヨーロッパ系の作品が、1作ならまだしも3作も入るとは。
ちなみにダルデンヌ兄弟はランクインすることが多かったのですが、前作があまりよくなく今回もそこまでの期待値はありませんでした。
しかしそこは巨匠。見たら移民問題にめちゃめちゃ怒ってるじゃないですか。
救いの無さで締めるのが監督らしくないんですけど、そこがよかったなと。
また「CLOSE/クロース」も非常に良かった。
バレリーナを目指すトランスジェンダーの少年を描いた「Girl/ガール」を見て臨んだのですが、それよりもはるかに効果的な演出で少年の心の機微を映し出してたんですよね。
もうね、主人公同様、俺もずっと苦しかった…。
ルーカス・ドン監督は2作続けて心の葛藤を「運動」で表現してるんですけど、本作の方がその演出力が上がってる気がしたし、自転車の並走に至ってもビフォーアフターを見せることで画で訴えることに成功していたように思えます。
邦画では、自身の過去の愚かさを振り返らされた「ブルージャイアント」を1位にしました。
音楽を志して東京へやってきた自分がなぜ挫折したのか。答えはこの映画にあったように思えます。
自分を信じられなかったこと、そして圧倒的に努力が足りなかったこと。
夢を成功させるには、この映画の主人公たちのような「覚悟」がなければ成しえないのだと思い知らされました。
僕ができなかったことを実現し、夢の舞台に立った彼らの景色は、さぞ美しかったことでしょう。
そういった意味で思い知らされたのと同時に、音楽映画、青春映画としても秀逸な作品でした。
もうひとつは「春画先生」。
全く調べもせず「ただ時間が空いたから」という理由で観賞したらめちゃめちゃ面白かった本作。
物語が進むにつれ春画の如く構図化していく映像や、春画の如く笑いが止まらなくなってしまう男女の恋愛のもつれ。
そして内野聖陽による決して下品に聞こえない説明と艶のある声、芝居の巧さ!!
音楽映画として感動した「さよならくちびる」以来2度目の年ベスに入った塩田明彦監督は、もしかしたら結構オレ好みの映画を撮ってるのかもしれないので、後で過去作を見てみようと思ってます。
他にも「AIR」、「TAR」は資本主義へのアンチテーゼだったり権力構造やキャンセルカルチャーへのの言及を面白く描いた作品として、そして「ザ・フラッシュ」と「ダンジョンズ&ドラゴンズ」は絶滅しかけているファンタジーアドベンチャー映画の復興という願いや、本来あるべきフランチャイズ映画の作り方として抜群に面白かったという思いを込めて選出しました。
今年は老齢監督活躍の年。
という理由から選んだ年ベス。
ここからは今年の映画興行を個人的に振り返っていきたいと思います。
まず一番印象に残ったのは老齢監督らが一斉に新作を公開したこと。
スコセッシ、リドリー・スコット、スピルバーグ、ジョージ・ミラー、ポール・シュレイダー、ヴァーホーベン、ヴェンダース、アルジェント、クローネンバーグ、ダルデンヌ兄弟、宮崎駿、北野武。
これらに共通するのは、どれもみな75歳以上の監督だということ。
こんなにおじいちゃんたちが作った映画が集い、映画業界を盛り上げた年って、果たしてあっただろうか。
なんなら、ここにイーストウッドも入れてあげたいくらい、巨匠たちがそろった年でしたね~。
上に挙げた監督の新作をすべて見たわけではないけれど、やはりそんじょそこらの若い衆が作った「新感覚」の作品より圧倒的に経験値が高い作りでしたし、どれも監督の「色」がある。
パワフルなものもあれば、一人よがりすぎてついていけない作品もあるなか、年を取っても枯れない力、年を取ったことで世間の評価など気にしないといった、良くも悪くもおじいちゃんな映画が並んだ2023年でしたw
個人的な「賛」としては、やはり自伝的な内容を描きつつ、映画が与える善と悪の影響も盛り込んだフェイブルマンズは素晴らしかったですね。
物語はもちろん、どのシーンをとっても印象が強いため、いつ何時思い返してもそのシーンが鮮明に蘇えるという、ある種の魔法に未だかかっている状態。
またリドリー・スコットの「ナポレオン」は、カメラの台数を増やしたことで大掛かりな撮影を手早く撮ってしまう技を駆使。
絶景なロケーションや大人数のエキストラを使っての戦争風景は、これぞ映画館で見るべきという圧倒的スケールを感じた映画でした。
スコセッシの「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」も、今年度賞レースのトップランカーとなってるだけあって、当時の風景をしっかり再現しつつ、今起きようとしてること、置き続けていることを我々にしっかり見せる強い意思を感じた作品でした。
その一方で厳しい評価をした作品もしばしば。
それこそ宮崎駿や北野武ら日本人勢は、物語を見せることへの意欲を感じられなかったですね。
宮崎監督に至ってはもはや「物語を作る気がない」くらい独りよがりでしたし、北野監督は編集のキレが悪いのかかつてのような鋭さもないし、やけに笑いを色濃くさせた内容で、正直がっかりでした。
ここ数年、物語の作り方や見せ方が従来のモノから変化を見せてきている風潮を感じてますが、そんな中老齢監督は昔と変わらぬ作り方で楽しませてくれると思ってたんですが、ここへきて一気に作り方を変えてきた二人は、期待値を遥かに下回った作品でしたかね。
他にもウェス・アンダーソンの「アステロイドシティ」なども同じ感じで、そんな複雑な作劇で一体誰が面白いって思えるのさ?という非常に難解な構造になっていたんですよね。
彼はまだ他の老齢監督に比べたら若い部類ですけど、彼もフェーズ2に入ったのかな?というほど、過去作から逸脱した作品でした。
とにかく、パンデミックの最中、細心の注意を振り払って製作したであろうお爺ちゃん監督たち。
若い人たちより免疫力が下がりがちな年代でしょうし、まだまだ映画を作りたい思いが彼らを奮い立たせたことでしょう。
内容の是非はともかく、ホント力強さを感じた作品群でした。
ハリウッド映画はどこへ向かうのか。
コロナが明けて、いよいよハリウッド映画が本腰を入れてくるぞとワクワクした2023年。
しかし、本当の局面はその後に起こってしまうという年でした。
脚本家組合によるストライキから始まり、俳優組合もストライキに。
何十年ぶりという2つの組合によるストライキは、およそ半年かけて行われ、製作や宣伝などがストップしてしまう事態へと発展。
それにより今後の公開スケジュールにも影響を及ぼしたり、それこそハリウッド周辺の経済にも影響が出てしまうなど、パンデミック時以上の損失を出したと言っても過言ではないでしょう。
劇場公開やソフト化などの二次使用、TV放送以外に、今やサブスク主流の時代。
今までの契約通りでは俳優も脚本家も納得できるお給料をもらえない環境へと変化したわけで、もっと出せよという被雇用者とそんなに出せないよという雇用側に大きな溝が生じ、このような事態へと発展したわけです。
加えて、スタジオやサブスク側はAIを多用することで製作面でのコストカットにも踏み切ろうとする横暴に打って出ます。
そもそもハリウッドメジャー、それまでS級規模の作品のほとんどをシリーズもので製作したり、一つの作品を二つに分けるようなやり方で延命措置をし、それが結果的に損益分岐点に達することができず、負のループをひたすら回ってしまっているわけです。
だって、ファンは喜ぶかもだけど、新規のお客さんはシリーズものに興味がないんですから当たり前。
そうした財政難にもかからわずトップのお給料は上がる一方なんだから意味が解らない。
そりゃストライキは起こって当然です。
こうなる直前に公開された「AIR」は、シグニチャーモデルによって利益分配という革命をもたらしたナイキの功績を描いた作品でしたが、正に今映画産業がやらなければならないことは「富の分配」であり、それが産業の未来にどういう影響を与えるかは、ナイキが物語ってるわけですから、どうか株主にばかり色目使うことをやめて、しっかり利益を分けて産業を盛り上げてほしいモノです。
もちろん映画ファンファーストな作品をお願いしたいですけどね。
さて、こうした事態により、ハリウッド映画はどんな地殻変動が起きたのか。
ひとつはスケジュールの延期により、掛ける映画が無くなってしまった状態を改善すべく、テイラー・スウィフトやビヨンセなどの「ライブ映画」が興行を引っ張っていきました。
僕自身どちらもそこまで興味がないので見てませんが、映画館で見るライブは実は音が良いし何より居心地がいい。
また映像作品へのこだわりからカメラワークも巧みで見ごたえ十分なんですよね。
日本でも嵐のコンサートフィルムが大ヒットしたし、10年くらい前からアーティストの音楽ドキュメンタリーが増え、それなりに結果を残してるわけで、意外にも需要があるんですよね。
新しい映画をかけられない以上、こうした措置によって映画館が生き残れるのであれば、ある種正解なのでしょう。
また最近でいえば宮崎駿の「君たちはどう生きるか」や山崎貴監督の「ゴジラー1.0」が大ヒットしているのも、ストライキの影響がもたらした副産物と言えるでしょう。
どちらも「字幕」で上映したそうなんですが、なぜこれがアメリカ人に受け入れられたのかって話なんですよね。
これもパンデミックの最中、自宅で若い人たちを中心に「字幕付きの作品」を漁ったことで慣れたことが影響してるそうで、これが日本映画大ヒットに繋がるという思わぬ展開を見せたらしいです。
東宝も100%自社資本でアメリカに配給会社を作り、多数の映画館でゴジラの公開にこぎつけたそうで、今後東宝映画が北米を中心に旋風を巻き起こすかもしれません。
ただなんでもかんでも当たるわけじゃないでしょうから、作品選びは慎重にしたほうがよさそうですね。
あくまでゴジラは海外でも認知された日本発祥のキャラですし、今後手をつけるのであれば、あくまでアメリカで受け入れられているコンテンツまたはキャラの映画でないと興行は難しいと思われます。
実際イルミネーションスタジオが製作した「スーパーマリオブラザーズムービー」も、日本が誇る世界的コンテンツとして認知されているからこそヒットした作品。
次の一手を色々リサーチしないといけないとは思うんですけど、どうやら次はゼルダの伝説を映画化するみたいです。大丈夫か?
このように、ストライキの影響によって製作がストップしてしまったハリウッドメジャー作品。
まずは「バービー」や「オッペンハイマー」といったオリジナル作品が大ヒットしたわけですから、シリーズものに縛られるのではなく、「良質な脚本」と「優れた俳優」をキャスティングして、素晴らしいオリジナル作品を当てるような方向へとシフトしてほしいモノです。
そして今年は「AppleTV+」や「AmazonPrime」などが製作し、メジャースタジオが宣伝する方式で、数作公開された年でもあります。
予算がなければあるところで作ってもらい、メジャースタジオが宣伝するという餅は餅屋方式で公開される作品が増えていくと思います。
映画ファンからすれば、多額の予算をかけてるのに家でしか見られないってホント苦痛なんですよね・・・。
特にネットフリックス映画は、こういうやり方で劇場公開に踏み切ってほしいんですけど、特に日本では大手配給会社からそっぽ向かれちゃってるので、実現は難しいのかな。
いつまで殿さま商売してるのかわからないですけど、こういうカタチが当たり前になっていけばいいなぁと願っております。
現在パラマウントとワーナーの合併話が浮上したり、自社サブスクにおけるコンテンツの供給過多と多様な社会の押し付けな内容が裏目に出てしまい。業績悪化となってしまったディズニーのテコ入れ、そこを虎視眈々と狙うApple社など、今後もハリウッドメジャースタジオによるハリウッド映画の地殻変動が予想されます。
今回のストライキによってハリウッド映画業界の終末時計が1秒進んでしまったわけですが、今後どうなるか見守っていきたいと思います。
最後に
日本映画も戦争前後を扱かった作品が、下半期続々と公開されヒットしている傾向があります。
夏に公開するのは理解できますが、何故秋以降に「ゴジラ」や「鬼太郎誕生」、「あの花が咲く丘で、君と出会えたら」などが公開されるのかよくわかってません。
それでもどれもヒットしてるのは良いことだと思います。
特に「あの花」は若い世代で盛り上がってるようですし、「鬼太郎」や「窓際のトットちゃん」もアニメファン以外の映画ファンがこぞって高い評価を出してるし、「ゴジラ」は北米でもヒットしてるので、こうした戦争を背景にした物語が増えてくるのかもしれません。
ぶっちゃけ、過去の日本映画での戦争描写の方が遥かに見てられえないほどエグい描写ばかりなので、これらを「戦争映画」と括りたくないんですが、あくまで未だ世界で侵略や領土をめぐる争いが起こっていることに関心を持つための入り口としてはいいことだと思います。
そう思って見てる人がいるのかは知りませんがw
また戦争という面においては、ガザ侵攻問題に対するハリウッドの動向も気になります。
どうしてもユダヤ資本であるが故にイスラエルの肩を持つ傾向がみられており、反ユダヤ主義を含めた発言をすれば干されてしまうような、かつての赤狩りにも近い空気が漂っているように思えます。
来年以降もこの問題は続くでしょうし、「新しい戦前」という言葉がより足音を鳴らしてきそうな雰囲気の中で、映画産業はどのような道を歩んでいくのか見守っていきたいと思います。
とにかく1年の締めくくりとして色々分析しましたが、後半のほとんどは宇野惟正氏の「MOVIE DRIVER」からの受け売りですw
あれ、意外と見てて面白いんですよw
意外とは失礼かw
僕もああいう興行を見守る系の話が好きなのでつい丸パクリしてしまいましたが、おじいちゃん監督の活躍は、僕が今年一番強く感じた部分です。
来年はイーストウッドの新作が見れるかなぁ。
そして来年の僕の年べスがハリウッド映画で埋め尽くされるような良作に期待したいですね。
それはさすがに再来年かなw
スケジュール延期しまくり出し・・・。
というわけで以上!あざっしたっ!!
来年もよろしくお願いします。