エクスペンダブルズ ニューブラッド
アクション俳優界のアベンジャーズといっても過言ではない、往年のアクションスターから次世代の若き肉体俳優が集う「エクスペンダブルズ」。
リーダーであるシルベスター・スタローンだからこそ集合できた面々に、80~90年代の映画ファンはおろか、若き映画野郎も大興奮したことは間違いないでしょう。
ただ僕個人、当時のアクション映画を敬遠していたことや、リアルタイムで見ていなかったことから、そこまでの思い入れがなく、本シリーズも「3」公開時まで全く手を付けてこなかったのであります。
しかしそんな僕でも、スタローンとシュワちゃんとブルース・ウィリスが横一列になって銃を乱射するシーンは大興奮したモノです。
やっぱり「顔と名前を認知してる」俳優同士が同じスクリーンに映るというだけで、映画の魔法をかけられてるな、そんな眩しすぎる映画がこの「エクスペンダブルズ」じゃないでしょうか。
今回鑑賞する映画は、そんな消耗品軍団と呼ばれる無敵集団が再び集う4作目。
既に鑑賞した人や海外評はすこぶる評判が悪いのですが、それが本当かどうかは自分の目で確かめろって話なので、早速観賞してまいりました!!
作品情報
アクション俳優シルベスタ・スタローンの監督・脚本・主演で始まった「エクスペンダブルズ」。
ギャラは高いが仕事は確実、〈消耗品軍団〉と呼ばれる兵業界にその名を置かせる最強無敵の軍団が大活躍するのが、この「エクスペンダブルズ」だ。
彼の名のもとに、アーノルド・シュワルツネッガー、ブルース・ウィリス。ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、チャック・ノリス、ジャン・クロード=ヴァンダム、そしてハリソン・フォードにメル・ギブソンなど、往年のアクション映画を牽引してきた名優たちが奇跡的に集い、我々映画ファンを魅了したシリーズだ。
本作はその4作目にあたる。
いつものメンバーに加え新たな顔ぶれが集ったエクスペンダブルズが、核爆弾を奪還するミッションに挑むも、これまでにない危機を迎えながらも再び立ち上がる姿を、爆弾、筋肉、肉弾戦と決してCGでは出せないド迫力のアクションで、我々の脳を完全にストップさせる物語を見せつける。
出演には、スタローンはもちろん、ジェイソン・ステイサム(MEGザ・モンスターズ)、ドルフ・ラングレン(クリード)、ランディ・クートゥアらお馴染みのメンバーに加え、50セント、「トランスフォーマー」シリーズのミーガン・フォックス、「マッハ!」のトニー・ジャー、「ザ・レイド」のイコ・ウワイス、そして「オーシャンズ」シリーズのアンディ・ガルシアなど、豪華メンバーが勢ぞろいした。
彼らが受けた大きな代償とは一体何か。
それでも立ち上がる彼らの姿に、熱い思いがタギる!!
あらすじ
自らを“消耗品”と名乗る最強無敵の傭兵軍団<エクスペンダブルズ>を率いるバーニー・ロス(シルベスター・スタローン)は、CIAから下された新たなミッションに挑むため、かつての相棒であるリー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)の元を訪ねる。
バーニーとともに再び組むことを決意したリーがアジトに足を運ぶと、そこにはかつての仲間だけではなく、新たなメンバーが顔を揃えていた。
新戦力を迎え【ニューブラッド】として生まれ変わったエクスペンダブルズが挑む今回のミッションは、テロリストが所有する核兵器を奪還すること——もし、失敗すれば第三次世界大戦が勃発しかねない危険なミッションに挑む彼らだったが、敵の卑劣な策の前にミッションは失敗に終わり、大きな代償を払うことに…。
失われた仲間の意思を継ぎ、そして仇を討つために再びエクスペンダブルズが立ち上がる——!(公式HPより抜粋)
キャラクター紹介
- リー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)・・・SAS(英国特殊部隊)出身。バーニーが心底信頼を寄せる懐刀。ナイフの使い手で、クナイ型の両刀投げナイフを愛用する。接近術では巧みなナイフさばきを見せる。
- バーニー・ロス(シルベスター・スタローン)・・・エクスペンダブルズのリーダー。旧知の仲間の身を案じチームを解散し、新たなチームを編成する。人生の大半を戦場で過ごし、統率力に長け、各種武器の取り扱いから飛行機の操縦までこなす戦闘のエキスパート。特技は早撃ち。
- ガンナー・ヤンセン(ドルフ・ラングレン)・・・傭兵部隊「エクスペンダブルズ」のメンバーの一人。自称スウェーデン人。射撃と空手の名手。長年の戦闘ストレスとアルコール乱用によって一時、チームから放逐されたこともある、チームの不安定なメンバー。
- トール・ロード(ランディ・クートゥア)・・・傭兵部隊「エクスペンダブルズ」のメンバーの一人。破壊工作と格闘技のプロ。見た目に反してナイーブな性格をしている。
- イージー・デイ(50セント)・・・傭兵部隊「エクスペンダブルズ」の新メンバー。
- ジーナ(ミーガン・フォックス)・・・CIAエージェント。
- デーシャ(トニー・ジャー)・・・バーニーの旧友。
- ラフマト(イコ・ウワイス)・・・テロリスト。
- ガラン(ジェイコブ・スキピオ)・・・前作に登場したガルゴ(アントニオ・バンテラス)の息子。本作で新メンバーとして参加。
- ラッシュ(レヴィ・トラン)
- マーシュ(アンディ・ガルシア)・・・CIAエージェント。
(以上ウィキペディアより抜粋)
予告編を見る限り既にフラグが立っており、そういう年齢だもんなぁと製作上の都合が垣間見える本作。
マジでいなくなっちゃうの…?
ここから観賞後の感想です!!
感想
#エクスペンダブルズニューブラッド 観賞。年始早々景気の良い脳ストップアクションだったけど、冒頭から序盤がもうめちゃくちゃ。なんちゅう編集しやがる。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) January 5, 2024
限りある予算でやってのけたことは褒めたいが、色々と胸アツさせてこない演出満載でがっかり。 pic.twitter.com/FrpnWDuORX
やはりこの手のアクション映画はCGに頼り過ぎてしまうと、B級からC級映画に成り下がってしまう…。
エクスペンダブルズは、もうステイサムの映画として再出発していくということなのだろうか。それってホントにエクスペンダブルズなのだろうか。
以下、ネタバレします。
バーニーからクリスマスへ。
ラフマト率いる傭兵軍団が、リビアの将軍が保有していた核爆弾のコードを奪取する中、それを阻止するため、そしてバーニーが長年追っていた相手に繋がる案件のため、消耗品軍団が命を削って世界を救う本作。
広大な砂漠や工場、核爆弾が詰まれた貨物船などの風景の中、景気よく爆弾が投下されたり激しい銃撃戦を見繰り広げたり、アジアスターとの近接格闘戦などを見せることで、正に「脳がストップ」してしまうほど眼福で、アッという今に時が進んでしまうアクション映画だったわけですが、どうしてもおかしい描写が多々あって、違う意味で「脳がストップ」してしまった側面もあった作品でした。
これからいろいろと愚痴を書いていこうと思いますが、その前に今回最大の見どころは何といっても「バーニーの死」でしょう。
序盤の作戦において、ミッションよりもリーダーを救助することを優先した結果、本来の目的にも失敗し、さらにはバーニーも助けられなかったという状態に。
その責任を押し付けられたクリスマスは、CIAのマーシュから外されてしまうことになるが、恋人で新リーダーとなったジーナにGPSをこっそり忍ばせたナイフを渡すことで、単独でエクスペンダブルズの後を追い、チームに加わろうと画策する。
このように、本作の中心はバーニーではなく、クリスマスが中心となって描かれていくことが、これまでのシリーズとは違う内容になっているんですね。
兄弟同然として慕ってきたリーダーが長年追ってきたテロリストを追うため、そしてその敵を討つため単身タイに渡り、バーニーのかつての仲間を引き連れてチームに合流するという流れもまた、チームモノの映画とは一線を画したモノだったように思えます。
こうした展開を、果たして古参のファンンは受け入れてくれるのかどうかは置いといて、10年以上製作してきたシリーズに新たな風を起こそうという製作陣の意図は感じられた作品だったと思います。
そもそもスタローンも高齢であり、「クリード」のように次の世代へ譲るような行動をしてきたことから、クリスマスへバトンタッチした内容になってもおかしくなく、そうした「世代交代」をメインに描けば、大迫力のアクションと同時にウェットな展開も加わって、シリーズ最高傑作になったに違いありません。
しかしながら、なぜか本作はそのような方向に向かっていかなかったことが、逆にファンを怒らせたように思いますし、個人的にも「なんじゃそりゃ」と思ってしまったわけです。
一体全体何がおかしかったのか、愚痴を晒していこうと思います。
CG全開でしたなぁ…
まず、ジョンウィックやジェイソンボーンのようなアクション映画と違い、ド派手な破壊描写や爆発描写がメインだったエクスペンダブルズの最大の魅力は、やはりスタローン全盛期に見る「火薬の量」だったと思います。
如何に無茶苦茶な内容でも、今にもこちらにまで煙のにおいが立ち込めてきそうなほどスクリーンいっぱいに広がる爆炎があるからこそ「良いモノを見た」と思うわけです。
それが90年代映画最大の魅力であり、スタローンらゴリゴリのアクションスターらが背負った宿命でもあり、それに魅了された映画ファンを楽しませる試練でもあるわけで、それを2010年代に蘇らせた本作は、そういった意味で希少な存在だったと思うのです。
しかしながら本作は、前作でも見られたCG合成に頼り過ぎており、本作最大の魅力をことごとく排除した映像だったのです。
まず冒頭、リビアの工場を拠点にしていた将軍らの元に、ラフマトらが奇襲をかけてくるところから始まります。
デジタルだからなのか映像の質感は、これまでより妙に明るいせいで、作品全体に重みが感じられないなぁと最初から違和感をもったわけですが、その違和感がさらに加速。
エクスペンダブルズらが目的地にやってくるや否や、バーニーが操縦する飛行機「ビッグ・バード」と地上の工場が既に合成になってるではありませんか。
もちろん投下する爆弾も、それによって起こる爆炎もCGで、タッチ&ゴーで地上に降り立ったクリスマスら一行の乗る車も、背景と合成されてるではありませんか。
製作時はパンデミック時だったことから、様々な配慮がなされたうえでの作品だったのかもしれませんが、明るすぎる映像というのも手伝って、より「合成感」がマジマジと広がってるわけです。
いくつかのシーンで実際に撮影した様な部分があったにせよ、この序盤のアクションを皮切りに、とにかくCG合成が多々見受けられる描写が続くのであります。
あくまで「予算があまりなかった」ことや「パンデミックの影響」という言い訳は受け入れるとして、やはりこの手の映画で「火薬の臭い」や「特殊効果」を感じさせてくれないと、せっかく掲げたであろう「90年代ド派手アクション映画アゲイン」の旗の意味が無くなってしまうではないかと。
よって、序盤から非常にがっかりしたシーンを見る羽目になってしまいました…。
死が軽すぎるって…。
さらに本作を冷めさせるのは「バーニーの死」による軽すぎる扱い。
これまでチームを牽引してきたリーダーは、ラフマトの攻撃を受けたせいで操縦していたビッグバードが墜落、それにより事故死してしまうのであります。
ラフマトに逃げられた一行は、いつも集うバーでカバーバンドの演奏によるレクイエムと共に彼を悼むシーンが流れます。
理想であれば、ここにはシュワちゃんやブルース・ウィリス、ジェット・リーやハリソンフォードなどといった過去のキャラクターが集い、彼の死を悼むことで、リーダーの存在がどれほどまでに大きかったものなのかを見せる特別なシーンになったのでしょう。
しかしいろいろな事情で登場できなかったでしょうから、そこにツッコむのは申し訳ない。
だけども、今いるメンバーがもっと彼についての思い出を語ったり、野郎同士が肩を落として悲しみに暮れる映像があってもいいではないかと。
本作にはそんなシーンは一切ありません。
クリスマスがショットで酒をかっくらいながら黄昏る映像くらいしかありません。
しかも、任務の失敗の最大の責任はクリスマスの単独行動にあると、新入りのイージーが責める始末。
長年連れ添ってきたガンナーが胸ぐらを掴む反発はあったものの、既に「バーニーの死」などどうでもいいような展開になっております。
そもそも本作は、どの展開もあっさりした様な編集で施されており、行間も溜めもあったもんじゃありません。
バーニーの死を悼むシーンをとりあえず形式的に見せ、さっさと次の展開へ進みたいかのようなエピソードになっているのであります。
本来ならここでしっかりウェットに見せておけば、クリスマスが単独でチームに強引に合流する理由も、さらには最後一人残り船を沈めようと決断する描写にも感情移入できるってもんですが、このシーンで全然ウェットにさせてくれないので、彼が勝手にやってるようにしか思えず、バーニーの死という重い事実すらも忘れてしまうほど、彼の死がどうでも良いモノになってるようにしか思えません。
それもそのはず、結局彼は生きていて最後助けるという筋書きだったということで、仕方ないのかなと思えるんですが、自分が思い描くような演出をしておけば、バーニーが生きていたというサプライズはもっと効果的になったのではと思うんですよね。
そうした意味でも非常に悔しい作品でした。
冒頭から序盤が特に不満
個人的に一番引っかかったのは、実は冒頭から序盤の流れにありました。
実は冒頭でのリビアの工場でのシーンは、それと同時にバーニーとクリスマスによる寸劇がちょいちょい挿入されるという構成になっておりました。
ジーナと喧嘩しているクリスマスの元にバーにが訪ねるバーニー。
前夜に賭け指相撲で負けて撮られた指輪を奪い返したいという理由でクリスマスを誘い、バーへ向かってチンピラどもを蹴散らして指輪を奪い返すというシーンを見せた後、いきなりエクスペンダブルズらがアジトで合流。
上司にあたるマーシュからミッションを受け、リビアの工場へ向かうという流れでした。
このバーニーとクリスマスの一連の流れを、ラフマトが工場を奇襲しているシーンの間間に挟んでいく構成だったんですよね。
普通におかしくないですか?
何がおかしいって時間の経過がおかしいんですよ。
ラフマトが奇襲してる時間と、バーニーとクリスマスが出会ってバーでフルボッコにした後集合してリビアに向かう時間が、まるで並行して進んでるかのように見せてるんですよね。
どういう編集してるの?と。
それをやるのであれば、先にバーニーとクリスマスがバーに向かうシーンを見せた後、ラフマトパートに移り、緊急集合をかけられたエクスペンダブルズらが向かうってのが正しい構成だと思うんですよ。
なんでこんな変な見せ方してるんだろうって。
酷い見せ方するなぁと最初の方からゲンナリしてたんですよね・・・。
また、ジェイソン・ステイサム主演のような見せ方をしているせいで、ミーガン・フォックスら新メンバーや、古株のドルフ・ラングレンらの見せ場が余りにも薄い。
特にガンナーの視力低下による銃の標準悪化の解消を、禁酒を破って開眼!ていうサブエピソードを蔑ろにしてるでしょう。
そういう細かい伏線用意してるのなら、最後は胸アツな展開で見せてくれなくちゃ困る。
そもそも「チーム」の映画なのだから、外野を退場させてステイサムの見せ場に持っていくクライマックスも正直エクスペンダブルズではないよなぁとも思ってしまうわけで、あくまでサブ要員だとしても、ガルゴの息子がオヤジばりに暴れる所とか、とかトールとガランの恋愛発展のきっかけとか、もっと取り入れるべきだったと思うんですよね。
トニー・ジャーにしてもイコ・ウワイスにしても、もっと活躍するシーンが欲しかったですし、イコ・ウワイスに関して言えば、一応ボスキャラにあたるわけですから、ステイサムと1度だけでなく2度くらいは拳をかわしてほしかったですね。
それくらい彼らがハリウッド映画に出る価値があると思ってるので、せっかく出演させたのなら、スポットライトはもっと当てるべきだと。
しかしミーガン・フォックスを久々に見たけど顔やら体やら色々いじり過ぎてて見てられなかったかな…。エロかったけど。
最後に
やっぱりスタローンが脚本やってくれねえとアクションスター勢揃いのエクスペンダブルズもこんな散々な内容になってしまうんだなというのが、本作でものすごく理解できました。
あくまで予算や撮影期間の影響があるから表層的な部分で判断してはいけないんだろうけど、それにしても脚本がひどすぎるよと。
撮影段階の前の時点で嫌な臭いがしなかったのだろうかと。
一応「ニュー・ブラッド」というだけあって、次の世代のリーダーとしてステイサムに光を当てたんだろうけど、確かクリスマスって前作で「おっさん扱い」されてなかっただろうか…。
本来のニューブラッドって前作のグレン・パウエルらの事なんじゃないのか?とも思ってしまった邦題でしたね・・・。
とにかく、サクッとアクション映画を楽しみたい人にはもってこいの作品なんだろうけど、シリーズにおけるこれまでの実績を考えると、かなり劣ってしまうよなぁ…。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆★★★★★★★3/10