モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

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映画「午後8時の訪問者」感想ネタバレあり解説 ダルデンヌらしさが際立った秀作ドラマ。

4月8日

午後8時の訪問者 

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意外と結構多い人いると思うんですが、基本的に私は突然の訪問には応じません。ピンポ~ンて鳴っても、居留守を使います。たとえ電気がついてようが、テレビの音が漏れて聞こえてようが関係ない。ヨユーで居留守。

 もちろん宅配とかあらかじめ来るのが分かってるものには対応しますけどね。

で、今回鑑賞したのは、そんな突然の訪問を拒んだために、なんであの時ドアを開けなかったんだろうっていう後悔と、その罪滅ぼしを実行していく女性のお話でございます。

まぁ自分の居留守とこの物語の状況を比べちゃいけないんですけどねw

てなわけで早速鑑賞してまいりました。

 

 

 

 

 

 

 

作品情報

作品を発表するごとにカンヌ国際映画祭にて出品され、その中でも2度のパルムドール受賞経験を持つ巨匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟

今回巨匠が選んだ題材は、名も無き少女に何が起こったのかを探るミステリー。ちょっとした判断の迷いから失った、救えたかもしれない命。もしかしたら何かが変わったかもしれない転機を探るうちに意外な真相にたどり着くヒューマンサスペンスです。

 

 

 

あらすじ

 

若き女医ジェニー。知人の老医者の代わりに小さな診療所を診ている。今度勤める病院から歓迎パーティーの連絡電話を受けているときに鳴ったドアベル。

しかし、時間は午後8時過ぎ、診療時間はとっくに過ぎていた。応じようとする研修医をジェニーは止める。

翌日、警察がやってきて、診療所の近くで身元不明の少女の遺体が見つかったと聞く。午後8時過ぎにドアホンを押している姿が監視カメラに収められた少女こそ、遺体となって発見された少女だった。

ジェニーは罪悪感から少女の顔写真を携帯のカメラに残し、時間を見つけては少女の名前を聞いてまわる。彼女の名前は何? 何のためにドアホンを押したのか? なぜ死んでしまったのか?……

あふれかえる疑問の中、少女のかけらを拾い集めるジェニー。ある日、患者のひとりを診察中に少女の写真を見せると、脈が急激に早まったことに気づく。そこから少女の目撃情報を得ていくジェニー。

少しずつ少女に迫っていけるように思えたその時、ジェニーは襲われ「この件に近づくな」と脅される。そして、警察からは名前がわかった、という連絡が入る。

すべては解決し、これから元の生活に戻るかに思われたその時、意外な真実が発覚する――。(HPより抜粋)

 

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監督

監督はジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ。通称ダルデンヌ兄弟。 

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 めっちゃ仲良いみたいです。

すでに活動してから約40年に渡り名作を生み出しているお二人。カンヌ国際映画祭では常に出品されパルムドールも2度獲得するほど高い評価を得ています。

作品の特徴はドキュメンタリー演出であること、社会問題に切り込んでいること、そ子から紡ぎだされるドラマに、時に涙し、時に考えさせられる、そんな作品を作り続けています。

 

最近の作品しか見ていないのですが、代表的なのをいくつか紹介。

突如理由も無く職場をクビになった女性が、社会の厳しい状況に立たされながらも必死に新たな職場を探していく姿を、全編手持ちカメラでドキュメンタリータッチに描いた「ロゼッタ」はカンヌ国際映画祭で初のパルムドールと主演女優賞を受賞しました。

そして2度目のパルムドールに輝いたのが、ベルギーの社会情勢を背景に、あまりにも未熟な若者夫婦の運命を、優しさと厳しさ両面で捉えた「ある子供」です。こちらも自堕落と貧困から、自分の子供を売ってしまうショッキングな内容ですが、ラストシーンに見えるかすかな希望に救われます。

 

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他にも、国籍取得のため偽装結婚する意味女性ノヒューマンラブストーリー「ロルナの祈り」ではカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞、父親に拒絶された少年が若い女性の交流を経て心を回復していく姿を描いた「少年と自転車」でカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞しています。

ちなみに5作連続でカンヌの受賞は史上初とのこと。

 

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個人的には前作「サンドラの週末」が大好きで、その年の個人的ベストにも入れたほど。ご興味あらばぜひ。

 

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キャスト

主人公である女医のジェニーを演じるのは、アデル・エネル

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初めて知る方です。大体ヨーロッパで活躍する俳優さんは、ハリウッドには出ないからほんとに知らない人ばかりで・・・。そっち方面の作品ももっと見ないとなぁ。

フランス出身の女優さんだそうで、来日の過去も。

性に揺れる思春期の少女たちがエロスを求めていく様をつづったガールズムービー「水の中のつぼみ」でフランスのアカデミー賞にあたるセザール賞にノミネートされ注目されます。

その後も、20世紀初頭を生きた娼婦たちの優美にして過酷な日常を切なくも官能的に描いたドラマ「メゾン ある娼館の記憶」でもセザール賞にノミネートするなど国内の数々の作品で評価されています。

 

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他のキャストとして、研修医ジュリアン役を、今作がデビュー作となるオリヴィエ・ボノー、少年の父親役を、「ある子供」「ロルナの祈り」など監督作品に多く出演するジェッレミー・レニエが演じます。

 

 

 

 

 

 

 

果たして少女はなぜ死んだのか。そこから監督はどんな問題を描いたのでしょうか。

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想

サスペンスよりもヒューマンドラマだった!個を描いた先に監督のメッセージが詰まっていた!

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

罪悪感と職業病

小さな町の診療所で働く女医がたまたま下した判断によって、一人の尊い命が失われたことから罪の意識に駆られ、真相を究明しながら、個人として医師としての尊厳を探求していくヒューマンサスペンスでありました。

 

診療時間も終わり、カルテの作成や診断書を大学病院へ送るといった、事務作業を研修医に教えていると突然なるチャイム。すでに1時間も過ぎているからとそれを無視。急患ならもっとチャイム鳴らすでしょ、その前にジュリアン!(研修医です)、あなた患者に寄り添い過ぎよ!と高圧的な態度で欠点を指摘するジェニー。

目の前の患者をたまたま見て見ぬふりをした彼女は、翌日それがとんでもない過ちだったと気づきます。

川沿いに転落し頭を打って死亡した少女は、直前に診療所を訪れたものの、ジェニーによって来院を無視されたことが警察の調べによって判明します。しかももしかしたら他殺の可能性もあると指摘。

そんな・・・なんで・・・私が無視したからこうなったの・・・。まるで自分が殺したかのように少女の死を捉え、悲しみに暮れるジェニー。

それからジェニーは、無心で彼女に何があったのか、そして彼女は何者なのかを独自で捜索していくのですが。

 

正直なぜそこまでして真相を探るのか、というほどジェニーは躍起になっています。確かに、あの時自分がああしてればという後悔を埋めるには、思いっきり忘れるか、行動して満たすしかないわけで。

しかも途中、別の警察官から脅されたり、少女のことを隠している人物から暴力を振るわれそうになったり拒絶されたりと色々虐げられるにもかかわらず、ジェニーは突っ走るんですねぇ。

 

これはきっと命を救うことを職務とする医者としてのプライドがそうさせたのだと思います。

自分が施した手術は完璧だ、これで治る。私の下した診断でこの患者は救われる。

じゃあその患者の様態が急変したら、死んでしまったら医者はどうなるのか。なぜこうなってしまったのか、なぜ救えなかったのか、という思いに駆られます。

今作も救えたはずの命を救えなかったことが医者としてのジェニーを奮い立たせたのでしょう。

 

 

医者が喫煙

ジェニーは医者でありながら、喫煙者というちょっとおかしい設定になってます。

映画ではタバコを吸うシーンというのは、心が揺らいでいる、または動揺していることへのメタファーとしてよく使われますが、今作の場合もそれにあたると思います。

ジェニーは、診療所での医者としての人生よりも、大きな病院でもっと大きな仕事に携わりたい願望が冒頭でうかがえます。

しかしジェニーはそれと同時に、本来医者として純粋に患者に寄り添って関わりたいという気持ちがあることが後に描かれていきます。

それはどこかというと、研修医であるジュリアンへの対応です。

最初こそ高圧的な態度で、ジュリアンの欠点を指摘していますが、彼が突然医者を辞め実家へ帰ってしまったことをものすごく心配し、彼のアパートへ出向いたり、実家にまで足を運びジュリアンを気遣ったりしています。

ジェニーにとってジュリアンは自分が医者としてありたい姿であり、彼が医者を辞めるということは、それが失われることが怖いから、という見方ができるのではないでしょうか。

 

実際に医者って男性がほとんどのような気がします。女医がいるのって小児科とか歯科医くらいか。それほど医療の世界は男性社会なわけです。その中で生き残っていくには、いちいちくよくよめそめそしてるわけにはいかない、堂々としてなくてはいけないわけです。

「私、失敗しないので。」って名セリフの高慢さが人気の主人公の女医も、そういう世界で生きていくには強気じゃなきゃいけないっていうことへの設定だったのかなと。

 

そういった本来ありたい姿との葛藤の現れが喫煙シーンだったのかなと推測してみました。

もちろんラストシーンは、彼女がどちらの道へ進むのかを画で現しています。非常にうまい終わり方だったと思います。

 

 

監督の巧みな演出とメッセージ

前作「サンドラの週末」や「ロゼッタ」のように一人の女性が葛藤しながら答えを見つけていく姿を描いた作品が多い監督作品ですが、今作でも1人の女性の葛藤とその先を描いていました。

 

いつも通り物語を助長するような音楽や盛り上がりはなし。手持ちカメラで一人一人人物だけを抽出し、余計なものは一切排除した徹底的に計算されたつくり。

見えるものをあえて見せないようにすることでサスペンスは生まれる、と監督はインタビューで仰っており、特にそう思ったのはインターホンのカメラ。チャイムが鳴ってもカメラを映さず、応対しないとインターホン越しで会話しないと誰が来たのかわからない。

亡くなった少女も知ったのは警察署だし、そのことに絡んでる人は、決してカメラは映らない。しかし、来院した患者は映ってどうぞと一言でドアを開ける。

 

実際、事の真相も回想シーンとかは出てこないし、こいつ臭うなみたいな余計な演出もなく、人物にフォーカスをあてることで、誰が犯人かというよりもその人の心情が浮き彫りになってたように感じました。

 

 

そして、一人の人物の行動の奥底には、監督が思う移民問題も透けて見えてきます

色々訳ありで大きな病院へ行けない人たちが訪れる診療所。なんでこんなになるまで放っておいたか尋ねれば、パスポートを見せろと言われるから、と。

そんな診療所を訪ね、亡くなった少女は黒人でした。彼女の名前も後半で明かされますが、なるほどと。

 

診療所はヨーロッパであり少女は移民。ドアは受け入れる場所、いわば港のようなもの。それを受け入れなかったことに対し、少女は謎の死を遂げ、ジェニーは悲しみに暮れ後悔するわけです。

世界的にも移民を排除する動きが活発となっている現代。彼らのせいで仕事がないと不満を上げ、その気持ちを利用して政権を握ろうとする政治家たち。そういったことに関心を持たない人たちによって窮地に立たされる人たちがいます。

ジェニーはまさに無関心だったわけです。本来訪れた人に関心をもって耳を傾けなければならないのに。

そのジェニーの行動に、快く思わないもの、本音は言いたいけど立場上言えない人、様々な人が出てきます。そういった人物もまた、今の移民問題に当てて考えるとこの作品がより強いメッセージを放っていると捉えることができるのではないでしょうか。

一人の死によって自分の犯したことに後悔し考えることは非常に人間らしいこと。そういったメッセージをジェニーにあてたことで生まれるドラマは、あらゆる社会問題を織り交ぜることで多大な評価を得ているダルデンヌ監督だからできる、手法が冴えた作品でした。

 

 

 

 

最後に

他にも、ジェニーの服から、医者がどれだけ忙しいかなんてのも読み取れるし、来ているセーターの色も彼女の心情を現していることがうかがえます。

小さな町に暮らす一人の人物に焦点を絞り、そこから社会問題をあてて描くダルデンヌ監督の強みが際立った作品でした。

サスペンスだと思って見に行くと肩透かしを食らうかもしれませんが、これを見て色々な問題に関心を持ち、できることをしたいですね。

わたしは、ダニエル・ブレイク」然り、今日見た「T2 トレインスポッティング」然り、ヨーロッパの実情を色濃く描いた作品がガンガンやっているので是非どれか一つでも鑑賞してみてはいかがでしょうか。

 

www.monkey1119.com

 

 

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というわけで以上!あざっした!!

満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10