あの日の声を探して
もうGWも今日で終わり。意外にも今月初の映画鑑賞。しかも、今週公開の映画、見たいの無いし!
セッション見に行った時に予告で見て気になってたので今日はこれだな、と。
1999年、チェチェンで暮らす9歳のハジ。彼は両親の銃殺が原因で声を失ってしまう。姉も殺されたと思い、まだ赤ん坊の弟を見知らぬ家の前に捨て1人放浪する。
街へたどり着いたハジは、フランスから調査に来たEU職員のキャロル(ベレニス・ベジョ)に拾われる。
キャロルは、目の前の戦争に無力な自分に痛感するが、ハジだけでも守ろうと決意する。
ハジが伝えたかったこととは?
そして、姉弟は再び出会うことができるのだろうか?
監督は、「アーティスト」でアカデミー賞最優秀作品賞を受賞したミシェル・アザナビシウス監督。
アーティストは、自分が初めて鑑賞したモノクロのサイレント映画でした。
個人的には良かったんですが、当時のサイレント映画が好きな人たちからはあまり良い評価じゃなかった話をよく耳にしました。
それはそれで私としてはまたひとつ映画の新しい扉を開けてくれた印象的な作品でした。
作品HPのイントロダクションを読んでみると、原案は「山河遥かなり」というナチスによってユダヤ人収容所に送られ、母と生き別れになった少年をアメリカ兵が助けるという作品を舞台をチェチェンに置き換えて作り上げた作品だそうです。
これも未見なので、鑑賞した後見てみて比べてみたいですね。
そして、監督の妻でありキャロル役を演じたのがベレニス・ベジョ。
やはり、この人もアーティストで知り、イラン映画「別離」の監督の作品、「ある過去の行方」でのシングルマザーの役が印象的だったのを覚えてます。
フランスの女性ってヒステリーだなぁって、ちょっと引いて見てたなぁ。
タバコを吸うシーンも多かった気がします。
そして、結構いい年齢なんすね、76年生まれですって。
そんな夫婦共作の作品の感想は、
少年の哀しい顔が頭から離れない。
まず、戦争映画は苦手ですが、そこに重点を置いた映画ではないのでまだ見れたものの、いきなり冒頭から直視できないシーンに目を背けたくなりました。
そして、終始哀しい顔をしたハジ演じる少年の顔がホント哀しそうな顔してて良い演技するなぁ、と思わず感心してしまいました。
そんな哀しい顔をさせてしまうほど戦争が残したたくさんの無惨な現実に無力だと痛感させられるキャロルの気持ちも痛く同情しました。
そして、始まりと終わりが実は繋がっていてループしてることで、この辛い現実が世界のどこかでまだ続いてるんだな、ということもまた伝えてる気がしました。
この映画は、キャロルがEUの職員として、いかにこの紛争に多くの犠牲者が出ていて救うことができない歯痒さ、ハジとの生活に声がでずうまくコミュニケーションをとれないもどかしさという点と、
幸い生きていた姉が兄弟を探す過程という点に加え、
もう1人の人物が登場し、話が平行しながら進んでいきます。
あることで警察に捕まり、刑務所送りには若いという理由でロシア軍に強制入隊させられる若者コーリャが翻弄される視点が絡んできます。
チェチェンの人たちを全てテロ組織扱いし、なりふり構わず銃を撃ちまくるロシア軍。
そんな彼らによってハジやおねえちゃん、このコーリャが戦争の渦に飲み込まれていくわけです。
ただ、突っ込みたい部分もあり、ハジはホントにショックで声が出なかったのか?や、
キャロルがハジを保護する明確な理由が見当たらない点、
あとは邦題ですかね。もっといいのあったっしょ。
そんな部分もありつつもラストに見せるハジの哀しい顔に温かなピンク色の頬がほんの少しの希望を見せてくれたと思います。
Mr.Childrenの口がすべってという歌の歌詞に、
争い続ける 血が流れている
民族を巡る紛争を新聞が報じている
わかってる 難しいですねって
片付くほど 簡単じゃないことを
というフレーズを思い出しました。
決して難しいじゃ済まされないことをわかってるクセに何もできないんですよね。
だから、こういう作品で世の中の関心を高めようとする監督は素晴らしいと思います。
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10