モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

【ネタバレ】映画「殿、利息でござる!」感想と解説 村人たちの知恵と心意気が詰まった深イイ実話!

殿、利息でござる!

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羽生結弦ファンにとっては、劇場の大きなスクリーンで堪能できるとあってさぞ楽しみにしていた作品なのではないでしょうか。

しかも、ちょんまげ姿なんて!www

 私はフィギュアスケート競技なんぞにまったく興味がないのでそこ目当てで行くわけではないのですが、ただ面白そうだなってだけで見に行って参りました。

 

 

 

あらすじ

金欠の仙台藩は百姓や町へ容赦なく重税を課し、破産と夜逃げが相次いでいた。さびれ果てた小さな宿場町・吉岡宿で、町の将来を心配する十三郎(阿部サダヲ)は、知恵者の篤平治(瑛太)から宿場復興の秘策を打ち明けられる。

それは藩に大金を貸し付け利息を巻き上げるという、百姓が搾取される側から搾取する側に回る逆転の発想であった。

計画が明るみに出れば打ち首確実。千両=三億円の大金を水面下で集める前代未聞の頭脳戦が始まった。

「この行いを末代まで決して人様には自慢してはならない」という“つつしみの掟”を自らに課しながら、十三郎とその弟の甚内(妻夫木聡)、そして宿場町の仲間たちは、己を捨てて、ただ町のため、人のため、私財を投げ打ち悲願に挑む!(HPより抜粋)

 


映画『殿、利息でござる!』予告編

 

 

 

 

 

監督・キャスト

監督はたまぁにちゃっかり出演もしちゃうお茶目な中村義洋監督。

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人気小説家である伊坂幸太郎原作の映画化ならこの方にお任せ!というほど数々の伊坂作品を扱っている傍ら、最近ではサスペンスに力を入れているようにも見られます。

個人的にはこの人のサスペンスものはそんなに惹かれないので見てませんでしたが、久々の楽しそうな作品に中村節が満載であることを期待しております。

 

93年にぴあフィルムフェスティバルで準グランプリを受賞後、著名な監督陣の助監督を経て、「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズに携わっていたようです。しかも、現在でもナレーションを務めてるとか。

これは知らなかった・・・。え?あの「もう一度ご覧頂きたい」「おわかりいただけたであろうか・・・。」って言ってるの監督なのか?

 

引越し先のアパートの隣人から本屋で広辞苑を盗まないか?と誘われる大学生の現在の物語とある女性がペット惨殺事件の犯人に目を付けられるという2年間の物語が交錯していく「アヒルと鴨のコインロッカー」や、売れないパンクバンドが作った曲が時代を超えて地球を救う奇跡の物語「フィッシュストーリー」、首相暗殺の犯人に仕立て上げられた男の逃亡劇「ゴールデンスランバー」、空き巣で生計を立てる青年とプロ野球選手の奇跡の出会いと皮肉な運命を描いた「ポテチ」と伊坂幸太郎原作の小説を4本映画化するほどの名コンビぶりだったり、

チーム・バチスタの栄光」、「ジェネラル・ルージュの凱旋」の海堂尊原作の「田口・白鳥シリーズ」の小説も映画化したりというのが比較的多い監督です。

 

最近では、美人OL殺人事件の容疑者としてSNSで噂になってしまう女性とその情報に翻弄されていくTVディレクターを描いた「白ゆき姫殺人事件」(これも湊かなえ原作!)をはじめ、「予告犯」、「残穢~住んではいけない部屋~」などミステリー、サスペンスものが多く、かつて手掛けていた呪いのビデオシリーズで培った能力が活かされているのだと思います。

 

 

 

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 全く本を読まない私が、鑑賞後真っ先に読みたくなって原作を購入したほどハマッた、私の中では珍しい作品。

 

 仙台に暮らすごく平凡な30歳の独身男が首相の凱旋パレードを行うその日、大学時代の同級生に呼び出され、とにかく逃げろと謎の警告を受ける。やがて自分が首相暗殺の犯人に仕立てられていくことを大量のマスコミ報道で知る。大学時代のサークル仲間でもあった元恋人は、事件の報道に驚き、かつての仲間たちに連絡を取ろうとするのだが…。

 

堺雅人の普通の男っぷりが非常によく、何の変哲もないさえない男だけど人望と性格と日ごろの行いが彼を巨大な見えない敵から救ってくれるという、まさに人徳で逃げ切るという今までにない逃亡劇がすごく面白く、その主人公を助ける人たちの個性的なキャラ設定も凝った設定で愉快です。けっして犯人は誰だ?とかそういう話ではありませんのであしからず。

 

 

 

 

 

 

キャスト陣はぱっと見、クドカンが集めそうなキャストさんばかりですが、監督作品に出演経験のある常連の方々ばかりです。

 

主演の思い込んだら試練の道を行く男・穀田屋十三郎を演じるのは阿部サダヲ。

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この人主演だったんでクドカン作品なんだろなって思ってました。監督作品では「奇跡のリンゴ」以来2度目のようです。最近では「寄生獣」でのミギーの声が印象的でしたね。

え~キャスト多いんで細かい内容は端折ります!

 

 

 

自称吉岡宿イチの知恵者・菅原屋篤平治を演じるのは瑛太。

 

最近映画ではお目にかかるのは久々な気がします。一応今64ーロクヨンー前後編ってやってますけど脇役なんでね。役の大きさはこちらの方が大きいのかなと。監督とは「アヒルと鴨のコインロッカー」以来2度目の参加。

 

 

噂では“ケチでしみったれな”金貸し・浅野屋甚内を演じるのは妻夫木聡。

 

映画「悪人」で殻を破ったはずなんですが、やっぱり何をやっても普通の好青年にしか見えないんだよなぁ。それだけ人の良さが出すぎてんのかな。今年公開予定の「怒り」では綾野剛とゲイカップル役を演じるということで早くも話題になっています。

 

 

 

皆に愛される飯屋の女将(未亡人)を演じるのは竹内結子

 

いやいや、阿部サダヲに瑛太に竹内結子じゃ「なくもんか」の再来ぢゃないか!だからクドカンっぽいんだよこの映画。絶対誰か間違えて見に来るんだろな。てかね、中村監督作品にこれで5度目の出演ですよ。やっぱり彼女が放つほんわかしたエアリーな感じ?wが監督作品に合うんだよなぁ。何語ってんだおれ。要するに好きなんだよ!竹内結子!

 

 

 

そして!!仙台藩の第七代藩主・伊達重村役にフィギュアスケート男子の絶対王者・羽生結弦!!

 

まぁこの際演技がどうとかやめましょうねwww役者初挑戦なんですし。仙台出身と合って地元復興のために頑張ってくれる彼の晴れ姿を是非堪能しましょう。お願いですからファンの方は登場するや否や「ゆづく~ん!!」なんて奇声を発しないようにww。

 

他にも、冷酷無比な藩の役人・萱場杢に松田龍平、武士の身分に憧れる純粋な百姓・千坂仲内に千葉雄大、イクメン肝煎・遠藤幾右衛門に寺脇康文、噂好きで疑り深い両替屋・遠藤寿内に西村雅彦などが脇を固めます。

 

 

 

 

 

それでは、つつしみの掟によって今まで明かされなかった、町の人たちを救うため私財を投げ打ってまででた庶民たちの大博打。はたしてどんな銭バトルを繰り広げるのか!?

鑑賞後の感想です!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおい、めっちゃ良い話じゃねーか!!

以下、核心に触れずネタバレします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

鑑賞後、心が洗われました。

とにかく行儀の良い作品でした。いや、品の良い作品といった方がいいでしょうか。
決して、お上から利息を巻き上げてよっしゃーっ!て話ではなく、
身を削ってまで町の人を、果てはこれからを背負って立つ子々孫々のことを思いながら、周りの人にどケチ!銭ゲバ!と陰口を叩かれても、銭をひたすら貯めていった商人たちの知恵と覚悟と心意気が詰まった映画でありました。
 
そんな話を監督お得意のオフビートなゆる〜いテンポと粋なジャズ、
そしてやっぱり出てきた中村組若頭!
オマエの名前が無いからおかしいと思ったぜ!と心でボヤきながら、濱田岳のナレーションがまたお行儀の良いこと!
 
この演出のおかげもあって時代劇特有の堅苦しさや言葉の難解さを吹き飛ばし、人情味あふれる深イイ話に仕上がっていました。
 
 
正直ね、あまりにもテンポが遅くて若干退屈気味だったわけですが、後半ある事実が発覚してから、あまりにもイイはなシーサーな展開に思わず涙腺が弱まりましたよ。ホントに。
一番私利私欲の為にお金持ってる奴がまさか一番の功労者だなんて!!
理由も理由だし、なぜ笑っていられるんだ!!
ホント是非ですね、ゴードンゲッコーのような強欲な奴は、彼らの爪の垢を煎じて飲んで欲しいなと!
 
 
 
 
 
 
 

悲願達成にはあまりにも長かった。

そもそも、何で村がこんなに財政難なのか。その理由から物語は始まります。
 
宿場町なのだからさぞかし賑やかな町かと思えば、旅人達はなぜか裏ルートを使
って立ち寄らず、活気もなければ金回りもない。ほとんどは大した畑も持っていない百姓ばかり。
そして、一番きついのがお上たちの宿から宿への荷物運びに必ず使われる伝馬役に選ばれ、その資金は村が負担するという二重苦三重苦。正に負の無限ループが続いていたわけです。
そんな貧しさに押し潰され店をたたみ夜逃げする村人たちが後を絶たない状況の中、京から自称知恵者の茶師・篤平治が嫁を連れて町へ帰ってきます。
 
辛気臭い町に辛気臭い顔をした町人たち。仲のいい十三郎に何かいい案はないかと尋ねられ、とっさに思いついたアイデアをずっと前から考えていたように話したのが、お上から利息を払ってもらうというアイデアでした。
 
町からお上に大金を貸し、その利息を伝馬役に充てることで、村人たちからお金を徴収する手間がなくなり、その分本業にお金を回すことで町が潤うというアイデアに十三郎は全てを賭けることを決心します。
 
最初こそ口から出まかせだった篤平治も覚悟を決め、町の役人である肝煎始め有志を集めゴールを目指して日々節制していくわけですが、そうは問屋がおろさないわけです。
 
 
 
 
利息を巻き上げて私服を肥やすのではなく、ただただ町の復興の為に身を削る、それを公にすれば評判は上がり鼻高々になり大手を振って歩ける、それが後世まで残り歴史に名を刻む、
オレはこんなにお金出したのにあいつは全然出してない、
などといった欲を持った者も中にはいましたが、そんな気にならないように、勘違いしないようにと、公平を期す為につつしみの掟を自ら課すように彼らは誓いました。
  • 口論や喧嘩はしない
  • このことを決して口外しない
  • 寄付するときは匿名で。
  • 道を歩くときは端っこを歩く。
  • 寄り合いや集まりの際は上座に座らず隅っこで。
このことを肝に命じ、彼らの長きにわたる険しい道のりが始まっていきます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

瑛太主役じゃね?

一応主役は十三郎を演じる阿部サダヲなんですが、物語の中で起点となったり一番感情が激しくなるのは篤平治を演じる瑛太なので、阿部サダヲより非常に目立って見えます。
それも前半部分に多く見られるだけで後半渦中の人物は阿部サダヲになっていくのでどちらかといえばダブル主役な感じにも見て取れます。
 
それでも瑛太の主張しながらも脇で良い仕事できる、そしてセリフの滑舌の良さはいつも見てて気持ちいいなと。
個人的には彼のせいで阿部サダヲが霞んじゃってしまい、彼が泣こうがいいところを演じようがあまりグッとはこなかったのがもったいなかったです。
笑わせるようなリアクションも今回は少なかったから余計そう感じちゃったかも。
 
瑛太同様十三郎の弟役を演じた妻夫木聡もよかったですね。前半と後半での微妙な顔つきや口調の変化がうまかったですね。意外と同じ演技かと思いきや全然違う人に見えてしまう技量はさすがでした。
 
藩の役人を演じた松田龍平も毎度おなじみの腑抜けたマイペース感を消し去り、こわい部分をチラつかせながらキレ者を上手く演じていました。
 
やはり両替屋を演じた西村雅彦のイヤミな役柄はさすがです。
真田丸でいなくなってからあのしたたかな欲張りっぷりを見れなくなって寂しかったですが久々に見れて良かったw今にも「黙れ小童!」と言ってくれそうな役でしたw
 
 
そして、フィギュアスケート絶対王者のゆづくんこと羽生結弦もワンシーンではありましたが、苦しゅうない面を上げぃな立派な殿様を演じきったと思います。
悪くなかったですよ。そんなに棒読み感もなく。
なんかこのシーンは誰が殿様をやるか役者陣には全く知らされてなく、サプライズ本番だったそうで。
登場した時の役者陣のリアクションに要注目ですw
 
 
 
 
 
 
 

映画としての作品性

今まで頑なに公にされてこなかった小さな町の美談を目にし、確かに見た後は爽快ではありました。
ただ、映画としては如何なものか?と問われれば話は変わります。
この美談を丁寧に丁寧に作り見せたかったのか、前半のナレーションでの当時の状況や難しい言葉を現代訳が頻繁に語られ、
これNHKの歴史バラエティじゃね?と思ってしまいました。
後半ではほぼナレーションでの説明がなかったのと、感情移入できる人物も何人か出てきたり、伏線の回収もなんとかできていたので映画として成立していたようにも感じましたが、
ラストシーンで出てくる現在の跡地が出てきたことで、あーNHKだなぁとまた戻される始末。
 
映画にするためになんとかならなかったのだろうか。
 
 
そして、お金をかけ集めた割には当事者たちの苦労っぷりがそこまで映し出されておらず共感が持てなかった。
どちらかといえば百姓たちの方が貧しすぎてそっちの方が見てられない感じ。
 
 
ほんと話が良いだけにもったいないなぁと感じましたね。
 
 
 
 
 
 
 
松竹配給ならではの人情時代劇でした。最初こそコメディ色の強い、お金の絡んだドタバタ時代劇コメディかと思って見に行ったら、ホロっと泣けて心の温まる古き良き江戸時代のお話でした。
豪華キャスト目当てで行っても全然アリだと思います。

満足度 ☆☆☆☆☆★★★★★5/10