聖の青春
「せい」ではありません。「ひじり」でもありません。
まして「セント」でもありません。
「さとし」です。「サトシ」。
サトシの青春です。
わずか29歳にしてこの世を去った伝説の棋士のお話です。
病気と闘いながら将棋に命を懸け、名人・羽生善治を追い詰めた男。果たしてどんなドラマななのか。
一応将棋は出来ますが超素人級レベル。
頑張って2手先くらいしか読めないし、しばらくやってないし。基本、角と桂馬で攻めて、そっからはこれといった策もなく撃沈パターンです・・・。
どうせ後先考えない香車のような男ですたい。
そんな将棋話は置いといて、早速見てまいりました。
あらすじ
1994年、大阪。路上に倒れていたひとりの青年が、通りかかった男の手を借りて関西将棋会館の対局室に向かっていく――。
彼の名は村山聖[さとし](松山ケンイチ)。現在七段、“西の怪童”と呼ばれる新世代のプロ棋士だ。聖は幼少時より「ネフローゼ」という腎臓の難病を患っており、無理のきかない自らの重い身体と闘いながら、将棋界最高峰のタイトル「名人」を目指して快進撃を続けてきた。
そんな聖の前に立ちはだかったのは、将棋界に旋風を巻き起こしていた同世代の天才棋士・羽生善治(東出昌大)。すでに新名人となっていた羽生との初めての対局で、聖は必死に食らいついたものの、結局負かされてしまう。
「先生。僕、東京行きます」
どうしても羽生の側で将棋を指したいと思った聖は上京を希望し、相談を持ちかける。先生とは「冴えんなあ」が口癖の師匠・森信雄(リリー・フランキー)だ。聖は15歳の頃から森に弟子入りし、自分の存在を柔らかく受け入れてくれる師匠を親同然に慕っていた。
体調に問題を抱える聖の上京を家族や仲間は反対したが、将棋に人生の全てを懸けてきた聖を心底理解している森は、彼の背中を押した。
東京――。髪や爪は伸び放題、本やCDやゴミ袋で足の踏み場もなく散らかったアパートの部屋。酒を飲むと先輩連中にも食ってかかる聖に皆は呆れるが、同時にその強烈な個性と純粋さに魅了され、いつしか聖の周りには彼の情熱を支えてくれる仲間たちが集まっていた。
その頃、羽生善治が前人未到のタイトル七冠を達成する。
聖はさらに強く羽生を意識し、ライバルでありながら憧れの想いも抱く。そして一層将棋に没頭し、並み居る上位の先輩棋士たちを下して、いよいよ羽生を射程圏内に収めるようになる。
そんな折、聖の身体に癌が見つかった。「このまま将棋を指し続けると死ぬ」と医者は忠告。しかし聖は聞き入れず、将棋を指し続けると決意。もう少しで名人への夢に手が届くところまで来ながら、彼の命の期限は刻一刻と迫っていた…。(HPより抜粋)
監督・キャスト
今回監督を務めたのは、森義隆。
番組制作会社でドキュメンタリー番組を中心に演出を担当したのち、監督業に転向。
甲子園を目指す名門校の補欠部員たちにスポットを当て、レギュラー組との差を感じながらもベンチ入りを目指す2人の高校生を描いた「ひゃくはち」で監督デビュー。
その後の2作目には、大ヒットコミックを映画化したことで話題を呼んだ、幼いころから宇宙飛行士になることを夢見た対照的な兄弟が、実現すまでの長く険しい道のりと固い絆を描いた「宇宙兄弟」があります。
ひゃくはちは元同僚から薦められたものの、どうもDVDジャケットがヤクザ系Vシネ加工を施した、えらく影のある写真が悪印象を与え未だ見ていない状態。高良健吾と中村蒼って旬な俳優がメインだっただけにもっとタイムリーで見ておけばよかったなぁと後悔しています。
逆に宇宙兄弟は、コミックから好きだったので劇場に足を運んで見にはいったものの、コミックを2時間で納めるほどの技量がなかったのか、脚本がイマイチだったなぁという感想でした。
テーマソングがColdplayで挿入歌がシガー・ロスって超贅沢なタイアップで、おまけにアポロ11号に搭乗したオルドリンまで出演していたんですけどねぇ。
今回これが3作目ということで、監督史上最高傑作になることに期待したいですね。
主人公村山聖を演じるのは、松山ケンイチ。
期待作の記事でも書きましたが、人気コミック「3月のライオン」に登場する、主人公の幼馴染にしてライバル棋士・二階堂晴信は、この村山聖がモデルになっているといわれています。体が弱いという部分もおそらく彼をモデルにした結果と思われます。
さすがはカメレオン俳優。体重を増やしての役作り。見事です。
とはいったものの、彼をあまりカメレオン俳優と思ったことって実はあまりなくて。
確かに「デスノート」での「L」はそのおかしな行動と背格好、それでいてずば抜けた推理を原作のイメージ通り演技したことはすごかったわけですが、その後の「デトロイト・メタル・シティ」や「GANTZ」、「ノルウェイの森」ではカメレオンさを感じられなかった節があるため、この称号はいかがなものか、と。
最近カメレオンぽいのは鈴木亮平とかですかね~。ちと違うか。
決して演技が下手とって言ってるわけじゃなく、そんなにコロコロ変われるほど引き出し持ってないよね?ってことで。
そんな中でも、彼のベストアクトだなぁ、と思ったのは「僕達急行 A列車で行こう」。
遺作となってしまった森田芳光監督作品で、趣味を持たない大人たちの怖さ、という発想から作ったとか作らなかったとか。
いわゆる鉄道マニアの二人の友情と恋をコミカルに描いたコメディ映画なんですが、元々人柄の良さがある人だと勝手に思っていた分、素で演じているかのような、彼の素朴で人懐っ濃いところが随所に出ているなぁと。
「怒り」では、明らかに犯人こいつだろ!!と思うような、死んだ目をした素性の知れない男を見事に演じていたし、役者・松山ケンイチの演技の幅を感じられた作品でした。
聖の憧れにして目標、ライバルでもあるスター棋士・羽生善治を演じるのは東出昌大。
おお~似てるねぇ~!!いいね、入ってるね~東出君!その装いから、公文式やってた感が出てきてますねぇ。「やっててよかった。」て。
さて、東出君といえば「デスノート Light up the New World」で、「クローズEXPLODE」以来の汚点を作ってしまった下手な演技だったわけで。
彼も妻夫木聡同様普通の男をやればいいんですよ。
絶対いい人オーラが消えないんだもん。
変に頭いいインテリな役とか、不良の役とか向いてないんで、とにかく好青年をひたすらやってほしいという願いがあります。
やっぱり彼のベストアクトは「桐島、部活やめるってよ。」での菊池役ですよ。
「 出来る奴はなんだってできるし、出来ない奴はなんだってできないんだよ、」とかる~くシュートするだけで入っちゃうバスケのシーンから、何でもできちゃうタイプ故、やりたいことがなくてふわふわした感じを醸し出し、クライマックスで夕日を浴びながら号泣!!うんうんまだ演技がぎこちなくて初々しさもあって一番印象に残っている作品です。
今回はライバルで天才ではあるものの、悪い役ではないのでいい人オーラでまくってる感を活かしてもらえたらと思います。
他にも聖の師匠・森信雄役を、どこに出てもあなた爪痕残しますね!リリー・フランキー、
聖の母親・トミ子の役を、元祖三択の女王って古いかww竹下景子、
聖の弟弟子・江川貢役を、今年はこれといった作品がなかったようで残念ですね!染谷将太、
聖をサポートするプロ棋士・橘正一郎役を、TEAMNACSの2番手!安田顕、
聖の仲間でプロ棋士・荒崎学役を、兄ちゃん垢ぬけてかっこよくなったけど、君は変わらないね!柄本時生、
将棋雑誌編集長・橋口陽二役を、久々に見た気がするよカケイ君!筒井道隆が演じています。
というわけで、天才との戦いや周りの人物との触れ合い、師匠や家族など、今まで語られてこなかった天才の素顔を松ケンがどんな風に演じてくれるのでしょうか!
ここから鑑賞後の感想です!!
命尽きるまで勝つことにこだわった男の執念が詰まった1本!
以下、核心に触れずネタバレします。
天才は眺めるくらいがちょうどいい。
将棋。子供の頃はおじいちゃんたちが縁側でやる遊び、そんなものだと思っていたけど、学校で流行ったことで、休み時間は一時期将棋ブームで。一通りルールは覚えハマりはしたものの、それ以降打ち込むことはなかった。
将棋の世界が厳しい、というのは、いつだったか朝の連続テレビドラマ小説「ふたりっ子」をみていたこともあり、なんとなくは知っていた。
そのなんとなく、が今回の映画で蘇った。
厳しいわ、これは。
長い年月をかけリーグ戦を戦い、勝てば昇格、負ければ降格。
下部の者たちは一定の年齢を超えても上がらなければ引退を勧告される厳しい世界。
そんな中で、命を削ってまで勝つことに執念を燃やした男の物語だ。
冒頭、将棋会館まで聖を担いで運んだおっさんの「あいつ何者なんだ?」から主人公・聖のなんかすごそう感が、ふわっと漂う。
牛丼は吉野家に限る、散らかった部屋、無造作に置かれたマンガ本、パーティーへの準備もせず「イタズラなKiss」に没頭する様、師匠だろうが先輩だろうが御構い無しに啖呵を切る姿。
積み重ねるように聖の変人ぷりというかこだわりが随所に表れることで、一見共感できなくてやだなぁ、こんな奴いたらこっちから距離とるなぁ、とも思ったりしたが、そこはスクリーンの向こう側。
天才と付き合うのは直接よりも、こうやって覗く程度の方が凡人にはちょうどいいのかもしれない。
麻雀だろうが酒の強さだろうが、一番でなければ意味がない、と豪語することから、相当な負けず嫌いだったはずだ。
幼い頃から病に冒され、病床で目の前に置かれた将棋盤から、患者と対戦するにつれ、勝てないことへの苛立ちが彼をそうさせたように見えた。
その苛立ちに拍車をかけた男が現れる。
前人未到の7冠を達成した東の天才・羽生善治。
聖の野性味溢れる攻めの将棋とは対照的に、スマートに確実に、だけど内に秘めた闘志は誰よりもすごく。
そんな将棋をさす羽生のスタイルは瞬く間に頂点へと上り詰めた。
同じ世代として先を越された聖は、彼と一局交えた後、これではダメだ、彼のそばで戦わなければ追い越すことは出来ないと確信、単身上京を決意する。
しかし、その勝ちにこだわる姿勢が、後に彼を追い詰めていったことになるわけで。
いつもと違う感じで書いてみましたが、うまくいかねぇなぁw
淡白な口あたりでも中身は濃厚。
命を賭けて頑張る、思っていたって実行しなけりゃ意味がない。
そんなことを痛感させられた、男の生き様が詰まった作品でした。
目標を、ライバルを見つけてからの聖の焦燥感や葛藤は相当なものでしたね。
1つのことを極めるにはここまでしないと達成できないのかなぁ。
そんなことまで思ってしまったりも。
何をそんなに生き急いでるのかっていうのを、羽生とのサシ飲みで吐露するわけですけど、なんだお前キャンディーズかよwと。
その夢が叶ったって、あれだけ負けず嫌いだったんだから、頂点まで行ったらその先は勝ち続けることに執着するだろ、どうせ。
まあお前ごときが語るなっ!って言われるのはわかってるんですけどね。
そんな熱い闘志を燃やす男の話ですが、この映画は将棋という一見地味な戦いをうまく演出していて非常によかったんです。
終始一貫して弦楽器を中心とした薄いBGMで構成させたことで、駒を指す音がすごく際立っていて。
しかも、どちらが優勢か劣勢かなんてのをいちいち控室の人間たちが細かく説明しない。
したとしても観てる側からしたら何行ってるかわからない。
もう添え物のセリフでしかない。
そんな初心者のためにいちいち説明をいれるようなことをせず、村山聖と羽生善治をクローズアップさせた人間ドラマに重きを置いたことが非常に良かったですね。
で、極め付けは松ケンと東出くんの顔でした。
ひたすら盤を睨み、額に汗を浮かべ、考えに考えて一手を打つ。
小刻みに体を揺らしたり、頭の中でめちゃくちゃ攻防してんだなってのが伝わり、これがすごく緊迫感を生み出していて良かったですね。
また2人の模写がハンパなく似てる。
松ケンは写真よりも相当太ってますwパンパンです。
一瞬表情が「とにかく明るい安村」に見えたのは気のせいかなw
髪も爪も伸ばしていていて役に寄せてきたなぁと。
これよりもめっちゃ似てたのが東出くん。
やはり知名度で言えば羽生善治の方が断然上だから、似てるなあってのが余計にわかる。
寝ぐせもきちんと作り、険しい表情で頭を掻きむしったり、扇子を開いたりたたんだり、顎に手を当てて考えてる姿は羽生善治そのものでしたね。
ただ喋ると、ん?とはなりましたが。
それとサシ飲みのシーンで、羽生が悔しい思いを吐き出したときのコップを持つ手の小さな震え、あれは見事だった。
わざとらしくない、それでいて見落とさないように表現していたのはうまかったなぁ。
やはり彼はこういうおとなしい役の方が向いてる。
エンドロールに気になる名前が。
映画の余韻に浸れる、現実に戻るためのクールダウンにもなるエンドロールの鑑賞。
最近では最後まで見てもらうための工夫としてエンドロール後のおまけ映像なんかも多用されてますが。
今回も余韻に浸るべく秦基博のテーマソングを聴きながらエンドロールを眺めてたんですが、ひとつ気になる名前を見つけました。
それは、
製作 竹内力
あ?なんて?
そして最後の方にも「RIKIプロジェクト」なる名前が。
なんで?
あー同姓同名のプロデューサーかなんかだ!と思って、終わった直後RIKIプロジェクトを調べてみると、
なんと!
あの永遠の不良番長!
ナニワの金融王!
竹内力の事務所じゃありませんか!
しかもしっかり弊社製作「聖の青春」公開中と宣伝もされてる!
いやぁ意外でした。
思わず笑ってしまったw
こりゃ失敬。
本人出演してないけど、そういうのもやってるんですね〜。
「オケ老人!」もこの会社が製作してました。
個人事務所のようで、所属タレントは誰1人出ていない。
きっと映画に育てられた彼だからこそ、製作にも力を入れているんでしょうね。
最後にプチ情報をブッコミましたが、作品としては、将棋という地味ながらも凄まじい戦いを役者同士で作り上げ、将棋に命を燃やし尽くした男の熱い生き様を薄い味付けで描いた、クオリティの高い作品だったように思えます。
もちろん笑いも少量ではありますが散りばめられていて、いいアクセントになってました。
小道具もひとつひとつ時代を感じるものになっていたので隅々まで見ると面白いです。
久々に将棋さしてみたくなったな。クソ弱いけどw
というわけで以上!あざっした!