ハードコア:ヘンリー
アメリカの興行収入ランキングで初登場5位にランクインしたことが映画ニュースとして取り上げられ、気になってYoutubeで予告を見てみたら。
え、ずっと一人称視点でこのアクションと迫力なの?
え?これどうやって撮ってんの?
何だこれ!?超面白そうじゃん!!と。
それからというもの、いつになったら日本で公開すんのよ!?と待ちわびていましたが、こんなに待たされるなんて聞いてませんでしたよ。
最悪DVDスルーになったら激オコぷんぷん丸(古いかこの表現w)でしたよ。
配給がついてよかったよかった。
てなわけで早速鑑賞してまいりました。
作品情報
時は3年前の2014年。突如としてYoutubeにアップされた約7分間の動画。
世界初の試みと呼ばれたその映像は、今までの常識を覆し、ネットユーザーの心を鷲づかみにしたことでアクセスが集中、後にSNSで拡散され最終的には再生回数1.2億という驚異的な数字をたたき出した。
全編主人公の視点でのみという、いわゆるFPS(ファーストパーソンシューター)さながらの臨場感を味わえるこの映像に、撮影した監督はクラウドファウンディングサイトにコメントで「この続きを長編映画として観たくないか?」と投稿。
支援者は着実に増え、完成した作品が2015年トロント国際映画祭にて観客賞を受賞。
2016年に本編公開後、全米映画興行収入ランキングで初登場5位を記録。そして2017年満を持しての日本公開となりました。
あらすじ
愛する人を救い出し、記憶を取り戻せ!
準備はいいか?
あなたは今から、愛する人を取り戻すためこの“クレイジーな世界”に放り込まれる。
妻であり、絶命したあなた...の身体をサイボーグ化し蘇生させた一流の研究者である美女・エステル(ヘイリー・ベネット)が、エイカン(ダニーラ・コズロフスキー)という奇妙な能力を使うヤツに誘拐されてしまった。
道先案内人は変幻自在のジミー(シャールト・コブリー)。あなたの身体を狙うエイカン率いる傭兵たちを倒し、エステルと“記憶の謎”を取り戻すことが出来れば、あなたの存在する目的と真実を知ることができるかもしれない。
幸運を祈る。(HPより抜粋)
監督
監督はイリヤ・ナイシュラー。
こんなぶっ飛んだ発想の持ち主っていったいどんな映画監督よ?って調べてみたら、この人バンドマンだよ!!マジか!?
ロシアンパンクバンド「バイティング・エルボーズ」のフロントマンだそうで、自身のバンドのPVも同じくPOVで描かれたもので話題を呼んだそうです。
今回の作品を経て、POVアクションの第一人者として名を知られ、最近ではあのThe WeekendのMVも手掛けるほどまでに。
お前のバンドは活動しなくていいのか?w
キャスト
一人称視点なので、主人公は我々観客なのです!!う~ん最高じゃん!!
てなわけで、そのほかのキャストをサラッと。
まず主人公を手助けする道先案内人ジミーを演じるのはシャールト・コプリー。
「第9地区」、「エリジウム」、「チャッピー」といった、人種的差別や格差社会への痛烈なメタファーなどを散りばめたSF映画を立て続けに制作しているニール・ブロムカンプ監督。
その彼と制作会社を立ち上げ、監督作品にすべて出演しているお方です。
「第9地区」でのセリフは全て即興という度胸、「エリジウム」でのキレのある動き、「チャッピー」ではモーションキャプチャーでの演技もこなすなど、適材適所で役をこなす俳優さんです。
はい名作ですね。
マーティン・スコセッシ制作、ブリー・ラーソン主演のクライムアクション「フリー・ファイヤー」にも出演してます。
主人公の妻にして科学者のエステル役には、ヘイリー・ベネット。
「マグニフィセントセブン」では、むさ苦しい男、オトコ、漢!だらけの中で、お前は娼婦か!?、と思うほど胸の谷間でひと際癒しを施してくれたヘイリー。
「ガール・オン・ザ・トレイン」でもエミリー・ブラントに負けず劣らずの情緒不安定な美人妻を好演していました。
彼女の出演作はこちら。
他のキャストに、主人公の妻をさらった男、エイカン役にダニーラ・コズロフスキー、主人公の父役に、「ヘイトフル・エイト」や「海の上のピアニスト」のティム・ロスが出演しています。
全編一人称視点の、スクリーンと同期しながら鑑賞するという前代未聞の映画。
ゲームのようでゲームでないこの映画は果たして画期的な映画なのか、それとも無謀な挑戦なのか。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
これが新しい映画なのか⁉︎ゲームをそのまま見ているかのような臨場感!グロ描写!そして…
以下、核心に触れずネタバレします。
トンデモ映像だよ。
記憶を失い、サイボーグと化した男が、自らを作った組織をたたきのめすため、そして愛する人を助けるため、あらゆる武器と並外れた運動神経を武器に、戦いを挑んでいく様を、全編一人称視点という斬新かつ画期的な映像で見せる怒涛のアクションムービー。
それはまるでゲームをしているかのような錯覚に陥るほど終始主人公の視点。
主人公ヘンリーが飛んだり跳ねたり攻撃をよけたり攻撃を食らったりとすべて彼の目線で物語は進んでいく。
しかもヘンリーの目の前で敵を殺す様もまたリアリティ溢れる描写。
ナイフで一刺しするシーンもあれば、目の前の敵から情報を聞こうものなら追手がショットガンで頭をふっ飛ばして口封じ。
自らの体にプラグインしたり、バッテリーチャージするときも肉体をはがせば生々しい体内が丸見え。
上映時間のほとんどがこんな状態であり、血のないシーンなどほとんどないグロイ描写の連続なのであります。
今回初めての体験
恐らくこういったゲームを好む方、またはPOV方式に慣れている方は、きっとへっちゃらなんでしょう。
しかしながら、ゲームもやらない、POVもそんなに見ない私にとって今回の鑑賞は非常に苦しい時間でありました。
2時間前に食べたチーズバーガーが良くなかったのか、はたまた館内の空調が効きすぎたのか、それとも前から2列目というかなり前列で鑑賞したからなのか。いいや違う。原因はわかっている。
はっきり言おう、気持ち悪くて酔いました。
船酔いだったり、ジェットコースターだったり決して弱いわけではないんですが。
中盤までのヤリ部屋での格闘シーンまでは良かった。
良かったというかへらへらしながら見ていた。
なんてったってブロンドボブの巨乳ねーちゃんたちがわんさか群がって出てくるんですから、そりゃあ興奮状態ですよ。
アドレナリンが出る出る。
しかしこの後から徐々に頭痛と胃の調子が悪くなってきた。
丁度このシーンは暗くて赤い照明で映っていて目に悪かったし、ここに来るまでの展開も凄まじくヘンリーが動きまくるもんだから、字幕でセリフを追いながら縦横無尽に駆け回るヘンリーも目で追わなきゃいけない。
もちろん私のような耐性のない人のために、もしくは物語の進行上緩急をつけるために、休憩という形で、会話だけのシーン(といってもヘンリー喋らないけどね)を定期的に挟むという優しい気配りもできている。
そうだよ監督ずっとあれじゃあキツいぜ!
だけど私にとってそんなの休憩でも何でもなかった。
それからというもの直視できる状態ではいられず、様子見しながら休み休みでないと見れないところまで体調は悪化。
若干ながら呼吸は乱れるも、せっかく楽しみにして見に来たんだ!
しかも今日は映画の日!
1100円というリーズナブルな値段で見られるという月に一度のご褒美ではないか!!
だから私は耐えました。
うつむきながら一休みし、終盤はラスボスであるエイカンとの闘いまでのサイボーグ集団との一騎打ち、いわゆるヘンリー無双をきちんと見ることができず、悔しい思いをしながらもなんとかラストまで見終えることができました。
このようにグロい描写で気分を悪くしたのでなく、完全にFPSにやられてしまった、なんとも情けない結果で映画館を後にしました。
それでもすごかったアクションシーン。
こんな状態での鑑賞に何を書いても説得力なんかありゃしない。
だって3分の1、いや4分の一は伏せていたのだから。
それでもだよ?
やはりアクションシーンやCG技術ははすごかったわけですよ。
研究施設から脱出ポッドで外へ出たら高速道路。傭兵軍団に追い込まれ電気ショックで高速道路から高架下に真っ逆さまぁ~~っ!!でドォォォォォン!!
あ~愛しのエステ~ル!!必ず助けに行くからね~と思ってるのか思ってないのか。
しゃべんねえし顔が見えねえから何思ってるかわかんねえよ。
おいおいおいいきなりスゲェ映像じゃねえか。
そしたら間髪入れずに車のワイヤー引きちぎって相手の喉にブシュ!!っと一刺し!!ワアォ!バイオレンス!!
辛くも逃げ出し、バスに乗り込むとホームレスが向かいの席に着席。
誰かと思えばお前の仲間だよジミーだよ!!
ってよくここが分かったね。
あ、なるほど腕に追跡装置。
これでやつらを煙に巻けるねと思ったら、外にロボコップみたいなやつが道路を行進中。ジミーがからかったとたんロボコップによる火炎放射!!
バス炎上!バス炎上!!
ジミーあえなく焼死!!
乗客にも飛び火!
これがホントの飛び火!
また連絡するってジミーの最後の言葉。
は?え、何?
蘇生すんの?
とりあえず自身のバッテリー残量がわずかということでジミーの指示通り敵のアジトに向かいバッテリー確保へ向かうヘンリー。
やはり入り口にはあの傭兵軍団がワンサカ囲っているじゃないですか。
じゃあ裏口から入ろうかと思ったら、ヘンリーまさかの壁よじ登り作戦。
え?パルクールも習得してるんですか?
さすがっすね!
何とか中に潜入成功、でもやっぱり敵がうじゃうじゃ武装して警戒中。
ここからまたもや銃撃戦突入!!
あらかじめ渡されていたペンチでさえも武器に変えてしまうサイボーグヘンリー。
敵の鼻をペンチで掴み、それを盾に本丸へと突っ込みます。
すると部屋には中ボスらしき人物が。
持ち前の格闘センスで相手を追い詰めるも逃げる中ボス。
ここから怒涛の追いかけっこの始まりです!
屋上からロープにつかまりトラックの荷台をクッション代わりに無事着地。
市街地へ逃げる中ボスを追いかけます。
足の速い敵ですが、こちとらサイボーグ。
バッテリーがありゃあ疲れ知らずなんだぜベイベー!
途中エスカレーターで女性が巻き込まれ転がり落ちることろなんかめっちゃリアルでしたよ。
思わず「危なっ!」と声を漏らす始末。
何とか中ボスを捕まえますが、何か言おうとした途端、顔が吹っ飛ぶ!!
ぎゃあああああっ!!
ホラーだ!ホラーだ!!
視界も血まみれだ!!
怖いよぉ怖いよぉ・・・。
手がかりを失ったヘンリーだったが、死んだはずのジミーから着信が。
オイラっち、今ここにいるからおいで~、といわれたところに向かうとに何やら怪しいクラブ。
中へ入ると、パツキンショートボブのロシアンレディーがボンテージ姿で群がってるじゃありませんか!
何だここは。
桃源郷ってのは実在したのか。
真っ赤な照明にもかかわらず、その色白いすべっすべの素肌だけはオレの超高度スキャンカメラが逃しません。
もはや俺もサイボーグ。
あんた乳首にピアスって・・・俺そういうの嫌い。
奥へ進むと死んだはずのジミーが、明治十勝6Pチーズしてるじゃありませんか!
しかも、バックかましながら背中にヘロインまき散らして吸いながらエッチするなんて「ウルフオブウォールストリート」のディカプリオ並みの高度なセックスじゃないですか!
どうなってんだおい、お前俺の目の前で思いっきり燃え盛って倒れたじゃないか。
と、ヘンリーはきっと思ってた・・・はず。
でもさっきのジミーとどこか違う。
そんな時とうとうバッテリーが切れる事態に。
意識がもうろうとする中、ロシアンレディーたちがヘンリーを囲い慰めます。
アタシのおっぱい触ったら元気になるわよ~、
いやんずるぅいぃ~アタシのもぉ~、
と聞こえたような気が・・・。
すると彼の潜在意識からエステルとの愛の営みをしていた時の残像が。
冒頭白衣を着た状態だったエステル、いやヘイリーベネットの色っぺぇ~映像がようやくお目見えです。
もうあなたにはそういう描写しか私期待してません。
すると敵に居場所を知られる事態に。
何とかバッテリーも入れ替え、ここから抜け出すぞ!ってお前ジミーじゃん。
どうした?さっきまでヒッピーみたいな格好してたのに急に区役所の事務員みたいな装いで現れて。
ん?さっきのジミーは寝っ転がってる。
ジミーお前はいったい何者なんだ???
この後、サイドカーからガトリング銃で乱射からの手投げ弾で敵一掃、
からの!
バイクでジャンプに、カーチェイスにサイボーグ軍団と殴る蹴るの大乱闘!
ジャングル、廃墟、屋上、ヘリの中とあらゆるシチュエーションであらゆるアクションの連発!しかもこれ全て主人公目線!
見終わった後ぐったりすること間違いなし!
果たしてジミーはちゃんとした味方なのか。
何故ヘンリーを助けるのか。
そしてジミーは何人いるのか。
エステルは無事なのか。
彼女を連れ去ったエイカンとは何者なのか。
ぜひ確かめてみて下さい。
小ネタもあったよ。
最近こういうの見つけるの好きになってきました。
気になったもの、気づいた点をいくつか挙げてみました。
壁に貼られたポスター
途中他人のアパートに侵入するシーンがあり、壁に映画のポスター悪しきものがたくさん貼られていました。
そのうちの一つは「湖中の女」という作品。
個人的にも大好きな「ロング・グッドバイ」の主人公フィリップ・マーロウが登場する レイモンド・チャンドラー原作のハードボイルド小説を映画にしたものです。
ロンググッドバイではエリオット・グールドが演じていますが、この映画は実はマーロウの視点で描かれているそうです。
ということは、これPOV映画なんですね。
今作と一緒ってことです。
しかも調べてみるとこれPOV映画の最初の作品として有名なんだとか。
今作が主人公視点で描かれているいうことで、リスペクトを込めた演出だったんですね。
ヘンリーの携帯着信音
ジミーから渡された携帯電話。
度々彼から連絡が入りますが、この着信音はフランク・シナトラの「I've got you under my skin」という曲だそうです。
後にジミーが研究施設で歌い踊るシーンがありますが、この曲を歌ってます。
私の好きなマイケル・ブーブレバージョンでおひとついかがでしょうか。
馬にまたがるシーン
傭兵軍団とのカーチェイスの後、足を失ったヘンリーの前に一頭の馬が。
彼を使って追いかけようとすると、ある名作映画のBGMが流れます。
その映画とは「荒野の七人」のメインテーマ。
今年はリメイク作である「マグニフィセント・セブン」のエンディングでも流れ、ファンに大変喜ばれた演出として一役買っていた、映画テーマ曲の中でも超有名な曲です。
その後ヘンリーは、馬にまたがるも乗れずにおちてしまい音楽は終了。
監督のささやかなギャグ演出でございました。
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他に上げるとすれば、ヘンリー役をやっていた一人に監督が演じてたり、冒頭の研究施設で音の魔術師と呼ばれる研究員が作った声が、ルイ・アームストロングだったり、ダースベイダーだったり(I'm your fatherって言ってましたね)と監督がきっと好きなんだろうなぁという演出が垣間見れました。
最後に
結果的に言えばちゃんと見れた状態でなかったし、気分が悪くなったという点においては満足のいかない作品でしたが、こういった今までにない作品が世に出てきて、しかもこれを機にゲーム好きの人たちが映画館に足を運んでくれたら最高だよなぁと。
これは映画じゃないって思う人もいるかもしれませんが、映画はその時代その時代に合わせて進化していくものです。
こんなのがたくさん出てきては困りますが、これも一つの表現の一つということでいいことだと思います。
気持ち悪くなったやつが何言ってんだよ!ってのは置いといてw
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10