ビースト・オブ・ノー・ネーション/BEASTS OF NO NATION
これぞNetflix!!
先週末全米公開と同時に全世界同時配信された映画というわけで早速自宅にて鑑賞致しました。
あらすじ
西アフリカのとある国に住む少年アグー(エイブラハム・アタ)は、内戦下にありながら平穏な毎日を送ることのできた平和な場所だった。だが反乱軍NDFを弾圧すべく政府軍が村に押し寄せてきた時、アグーの目の前で幸せな日常が音を立てて崩れ去る。命からがら逃げ切った時には、たったひとりで恐怖に身を震わせていたのだった。圧倒的な支配力を持つ指揮官(イドリス・エルバ)の率いる武装軍に見つかり、否応なしに一味に加わる。数々の武力攻撃に参加するうち、アグーは弾薬運び係から機関銃を掲げる兵士へと変貌していく。愛する家族に囲まれ笑いの絶えなかった楽しい時は遥か彼方に浮かぶ幻だったのかーー。《東京国際映画祭HPより引用》
ビースト・オブ・ノー・ネーション予告編 - A Netflix Original Film [HD] - YouTube
監督・キャスト
監督は、キャリー・ジョージ・フクナガ。
フクナガという名前だけあって、日系の人だと思われます。
イギリスの恋愛小説で住み込みで働いた孤児ジェーンが、家の主と結ばれる様を描いたジェーン・エアのリメイクを監督したのが有名ですが、こちらは未見でして。
個人的には、彼の長編デビュー作、「闇の列車、光の旅」で彼を知りました。
中南米からの不法な移民問題と、その地域に蔓延るギャングたちに焦点をあてたストーリーで、
ギャングに仲間入りした少年が列車強盗の際、リーダーに少女が暴行しているのを見兼ねて殺してしまうのを機に、少女と逃避行していくといったもの。
不法ながらも、希望を求め北へ向かう少女が次第にギャングの少年に心を開いていくほのかな恋心と同時に、 追っ手から逃れるのに必死なギャングの少年のスリリングな展開にドキドキしながら見られ、ラストのもの悲しさに心打たれる作品です。
また 2020年には「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」の監督を務めます。
大出世です。
きっとドラマシリーズ「トゥルー・ディテクティヴ」の高評価が大きいと思うんですけど、彼のシリアスな描写は今作でもよく出ていると思うので、すごくいい抜擢だと思います。
サム・メンデスに近いタッチの映像ですし。
楽しみです。
主役のアグーを演じるのは、エイブラハム・アタという男の子。
特に情報がないため、これがデビュー作なんでしょうか?
まあ、素敵な笑顔!でも、こんな彼が突如笑うことのできない現実を突きつけられる少年を演じるなんてこの写真だけじゃ想像できないですよ、ほんと。
監督もキャスティングうまいなぁ。
そして、反政府軍NDFの指揮官を演じるのがイドリス・エルバ。
この写真じゃよくわからないと思うので、
これならどうだ!
そう、あのパシフィックリムで司令官を演じた彼です!!
この役を見て上層部に楯突き任務を全うした勇敢なイメージが勝手にありますが果たして今作は如何に。
てか、この人他にも、ロックンローラやアメリカンギャングスター、テイカーズといった悪な役もやってて、
すっかり忘れてたけど、マイティソーのアズガルドの門番ヘイムダルもこの人だったんですねー。
そこそこキャリアあるお方ってことです。
これレンタルビデオ屋で働いていた時にエライ高回転でレンタルされてた作品でした。
ざっくり説明すると、ミスのない完璧な仕事をする強盗グループとそれを追う警察の話で。
イドリスは、確か強盗グループのリーダーだったはず。
キャストもマットディロン、ヘイデンクリステンセン、ポールウォーカーなど小物や落ち目の俳優がズラリww
強盗グループ目線の話なので、オーシャンズみたいな感じで見たらいいんじゃないかと。そこまで華やかではないですが(^◇^;)
そんな、若手有望の監督が描いた内戦に巻き込まれた悲運な少年の作品の感想は、
リアルな戦場と内容に顔をしかめてしまうほどの出来。
以下、核心に触れないようネタバレします。
少年から兵士へ
内戦が活発化する中で丁度中立地域に住んでいたアグー。
冒頭は、アグーが友達と遊んだり、家族とのふれあいといったごく普通の幸せな風景が描かれていることで、
その後の出来事がより辛く感じるように思えました。
家族を政府軍にスパイ扱いされ殺されてしまい、ひとり逃げ隠れるも反政府軍NDFの捕虜にされ、
指揮官に死ぬか兵士になるか選択を迫られるアグーは問いただされます。
親を殺した奴らが憎いと思わないのか?
仇を取りたいと思わないのか?
と。
人は殺したくない、でも、このままじゃ死ぬしか選択肢はない、いっそ死ぬしかないのなら…
そんな自問自答と指揮官の煽りに選択は狭まれ
生きるために兵士になることを選びます。
気がつけば、無邪気だった少年が捕虜の時は怯えた表情に、見習いの時は常に顰めっ面で、兵士になった時は覚悟を持った顔にと様々な顔を見せたアグー演じたエイブラハムくんの演技が素晴らしいものでした。
中でも、クスリで情緒不安定になり見知らぬおばさんに生き別れた母親を重ね、泣きついた後正気になり撃ち殺すシーンはさすがです。
最初こそ、神様に赦しを請う心の声にピュアな部分も見えますが、次第に怒りで心が蝕まれていき、人を殺すことが日常的になっていく描写は胸を痛めます。
時折、仲間と遊ぶシーンや同年代の兵士ストライカとの交流が挟まれ、微笑ましくもなりますが、そんなのはほんのすこし。
内戦での現実を我々は突きつけられます。
指揮官のクソっぷり
THE強欲の称号を与えたいほどのあらゆる煩悩の持ち主であった指揮官。
何かあれば、下っ端たちは、
指揮官は最高です!!
の連呼。
忠誠を誓う兵隊。
あー絶対政治がここにも。
まだあどけなさの残る善悪の区別もつかない少年たちを兵士にし、権力で封じ込め、妙に説得力のある演説、少年たちを褒め称える、夜な夜な自慢話を繰り返す。
ここまでなら、きっといいパパになる素質はあったと思うw
でも、こっそり夜中に少年を可愛がり、戦地では自分で手は下さず、部下を鼓舞させて戦場へと送り込む。
部下がピンチでも、命令は必ず遂行しろ、と助けも出さない。
アホか。シナリオ通り行かなきゃ強行手段か。
そんな強行手段が終盤大いに活用され、それが見事に指揮官に跳ね返ります。
こんな惨状を見せつけられ凹んでしまいがちですが、おそらくここは少しだけ救われるところだと思いますので、最後まで目を背けないで見ていただければ。
まるでフィクションとは思えないような、ドキュメンタリーのような内容に目をつむりたくなりますが、僕らがのほほんと生きている間にも、こんな現実があるってことはきっと事実で。
で、こういった映画を沢山の人が見るために、こんなストリーミング配信という公開方法が今やあるわけです。
ぜひ見てほしい1作です。