雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
ん~長いタイトル。そして詩的。結局会うことはできないという意味?
この作品のあらすじを読んで、どう読んでも「永い言い訳」のアメリカ版、というキャッチコピーがしっくり来たわけですが。
相変わらずインディペンデントな作品ばかりチョイスしているジェイクの作品。
早速見てまいりました。
作品情報
アカデミー賞3部門を受賞した「ダラス・バイヤーズクラブ」の監督最新作は、妻の突然の死をきっかけに、心が壊れてしまった男が破壊衝動を経て、人生の大切なものを見出していく、喪失と再生の物語です。
あらすじ
ディヴィス(ジェイク・ギレンホール)は、出世コースに乗り、富も地位も手に入れたウォールストリートのエリート銀行員。
高層タワーの上層階で、空虚な数字と向き合う、味気ない日々。
そんな会社へ向かういつもの朝、突然の交通事故で美しい妻を失った——。
しかし一滴の涙も出ず、哀しみにさえ無感覚になっている自分に気付いたディヴィス。
彼女のことを本当に愛していたのか?
僕の心はどこに行ってしまったんだ?
「心の修理も車の修理も同じことだ。まず隅々まで点検して、組み立て直すんだ」義父からの言葉が引き金となり、ディヴィスは、身の回りのあらゆるものを破壊し始める。会社のトイレ、パソコン、妻のドレッサー、そして自らの結婚生活の象徴である「家」さえも—―。
あらゆるものを破壊していく中で、ディヴィスは妻が遺していた幾つもの❝メモ❞をみつけるのだが・・・。(HPより抜粋)
監督
監督は、ジャン=マルク・ヴァレ。
「ダラス・バイヤーズ・クラブ」でこの監督を知りました。
内容云々よりも、主役のマシューとジャレッド・レトの演技が印象的でした。
それ以外の作品はまだ見れてないのですが、ヒューマンドラマを主に撮ってる方のようですね。
どんな作品があるかというと、女王ヴィクトリアの若いころを焦点に、様々な壁にぶつかりながらも夫との絆を深めながら、愛の軌跡を描いた歴史ドラマ「ヴィクトリア女王 世紀の愛」や、2つの異なる時代の家族を通じて理想の愛の不思議を描いたラブファンタジー「カフェ・ド・フロール」、まだエイズが偏見に満ちていた時代で、政府や製薬会社に反旗を翻し、未承認でも治療可能な薬の手配に尽力したカウボーイの戦いを描いた「ダラス・バイヤーズ・クラブ」などがあります。
キャスト
主人公のディヴィスを演じるのはジェイク・ギレンホール。
有吉みたいなあだ名をつけるとしたらギョロ目マッチョでしょうかw(愛だよ愛)。
ハリウッドきってのカメレオン俳優が、今回は無感覚から破壊衝動に駆られるというふり幅の大きい演技を見せてくれそうです。
近年では、トム・フォード監督の新作となるスリラー映画「ノクターナル・アニマルズ(原題)」、ライアン・レイノルズと共演するSFスリラー「ライフ」、ポン・ジュノ監督のNetflix制作「Okja(原題)」、「スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム」などにも出演しています。
ジェイクに関してはこちらをどうぞ。
他のキャストに、ディヴィスを支える女性カレンに、「ダイアナ」のナオミ・ワッツ、義理の父フィルを「ボーンアイデンティティー」のクリス・クーパーが出演します。
ひとりの人間がどんな苦難に遭い、新たな人生を模索していくのか、その先にあるものとは。そして監督がどのように描いていくのか楽しみであります。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
1人の男が人生をスクラップアンドビルドしていく豪快で繊細な再生ストーリーだ!
以下、核心に触れずネタバレします。
やるね、ジェイク。
まずは率直な感想を。
1日で3本観て書いての繰り返しはさすがにキツく、寝落ちしたらどうしようと不安だったわけですが、意外と集中して観られたことにビックリ。
やはりジェイクの観衆を引き寄せる芝居。
やけにクリアな映像から観る徐々におかしくなっていく主人公の行動が面白くもあり狂気でもあり、そこからどう持っていくか、彼の一人舞台を堪能するには文句なしの作品だったと思います。
そして大きめなボリュームの音楽で盛り上げといて寸止めを繰り返したり、フラッシュバックする妻とのひととき、どこか突き放してるようで寄り添って見えるカメラワーク、といった演出が物語の緩急を生む。
何より素晴らしいのは、1人の男が破壊を繰り返してメンタルを整えていくこと、ある親子に寄りかかることで自由を覚えたこと、その先に見えた答えに「妻との愛」が確かにあったこと。
集中して見れた割には少々置いてけぼりになったものの、ラストシーンはホロっと来てしまい笑顔のジェイクにやられてしまいました。
やはりこの映画に対して、ジェイクの不可解な行動から再生していく演技は重要で、彼に絶大な信頼を寄せている自分としては彼なしでは成立しない作品だったと思います。
破壊衝動までの経緯
5時半起床、朝のランニング、食事はシリアル、7時過ぎの電車に乗り、向かいの席には必ずヤンキース球場の清掃員。話かけられるのを阻止し、音楽を聴きながら株価のチェック。妻の父に会社にコネで入社してからこき使われる毎日。
帰宅後猿が湯船で背中を毛づくろいする映像を見ながら寝る。
決まったルーティーンで日常を過ごしていたディヴィス。
妻がいるのにも関わらず単調な生活を過ごしてる彼に、予定外のことで立ち止まることはできないのでした。
事故で妻が死んでもどこか腑に落ちないデイヴィス。
妻が死んだのに?
なぜ何も感じない?
そして何を思ったのか、妻が引き取った病院の自販機にあったm&m' s(久々に食いたくなったw)を購入しようとするも金具に引っかかり出てこなかったことに腹を立てたデイヴィスは、業者にクレームの手紙を書く。
クレームの内容を書けばいいのに、どうして購入しようとしたかを事細かに書いていくうちに現在の状況を書き始める。
この手紙の内容を話すことでデイヴィスの今までの経緯を説明してい行く流れはうまかったと思います。
その手紙の内容に心打たれ心配し、つい電話してしまったクレーム担当の女性。
しかも夜中の2時に。自分を気にかけてくれたことに感銘を受けたのか、デイヴィスは執拗に手紙をしたため、挙句の果てには会いに行ってしまう。
死ぬ前に妻が言い残した最後の言葉「冷蔵庫の水漏れ直してね」がどこか引っかかり、くわえて義理の父から「心の修理も車の修理も同じこと、隅々まで点検し組み立て直すんだ」とアドバイスを受けたことから、デイヴィスは家の周りのものを少しづつ破壊していく。
妻が死ぬ前にネットで購入した2000ドルもするエスプレッソマシーン、会社のデスクのデスクトップ、ドアが軋むからと会社のトイレまで。
ついには解体業者に金を払ってまで改築予定の民家まで壊す始末。
壊しても壊しても心は一向に晴れない。
そんな中クレーム担当の女性カレンと少しづつ距離を縮めていくデイヴィス。
彼女には息子がいました。
彼もまた学校で問題を起こし家に一人こもりっきり。
そしてFワードの使い方が下手ww
なぜか打ち解けあうデイヴィスとカレンの息子は、二人で結託しとうとうデイヴィスの家をも壊していく。
そんな中であるものを見つけデイヴィスはさらに困惑していく。
欠けた者同士
デイヴィスの奇怪な行動はおかしくもあり気味が悪いようにも見えますが、それ以上に奇怪なのはカレン。
クレームの手紙をもらって感動し夜中にお客さんに電話って、普通さらにクレームっしょww
彼女もまたどこか欠落した部分があったわけです。
大麻の常習なわけだし、一人息子は問題児、同居している男性とはとうに冷めている、そんな時たまたま送られてきた一通の手紙が彼女をも救うことになるなんて思いもしなかったんでしょうね。
カレンの息子クリスもまた思春期から来る心のグラつきが絶えない少年でした。
歳は15歳、体は12歳で頭は21歳。
体は出来上がってないのに、考えは大人になっちゃったもんだから色々と物事が複雑に見えちゃったんでしょうね。
特に恋愛感情が複雑なのはアメリカ特有のものなのでしょうか。
気になる女の子はいるけど、友達の男の子のアレをナニしてみたいとか言ってしまうあたりは、あぁグラついてるなぁと。
それに対してのデイヴィスのアドバイスが2,3年我慢してマンハッタンかロスに行けww
うん的確ww
義理の父もまた娘を失ったことで、そのぽっかり空いた穴を埋めようとわけのわからない基金を立ち上げていたのは滑稽でした。
そんなことして何になる?結局ビジネスかよ!と。
どんどん奇怪な行動に出る義理の息子にお手上げ状態でしたが、いざ立ち直り向き合うことで彼もまたラストシーンで救われたようにも感じました。
まとめ
正直、画で語るシーンも多かったため全て租借できたわけではありませんが、ラストの「雨の日は会えない、晴れた日は思い出す」の張り紙の裏にあんなメッセージが書いてあったのは巧いな、と。
ちゃんと愛していたんだ、破壊行動の意味もここで消化するのかなと。
邦題がちゃんと意味を成してたということはここで理解できると思います。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10