彼らが本気で編むときは、
とうとうジャニーズのタレントがトランスジェンダーを演じるという画期的であり、役者としてグレードアップするであろう映画の登場です。
しかも海外ではもはや当たり前である、血のつながらない人たちが家族として過ごしてくという設定。
これからの日本にもこうした家族構成がどんどん増えていってもおかしくない世の中で、非常に意味のある作品なんじゃないかと勝手に思ってます。
ただ、「チョコレートドーナツ」と設定が似ていることから比較してしまいがちな感じがするんですが、あそこまで哀しいお話じゃないよね?
というわけで早速見てまいりました。
作品情報
手掛けた監督が第二章と語る今作は、アメリカで過ごした経験から、また「姓は男と女だけじゃない」という記事を見て思い立ったそう。
セクシャルマイノリティである主人公とその周りにいる人たちを中心に、現代の様々な家族の形を物語に編み込んで、多様な生き方や価値観、自分以外の人を認め、平和な社会へと変化してほしいという願いのこもった監督のオリジナルストーリーです。
あらすじ
小学5年生のトモ(柿原りんか)は、荒れ放題の部屋で母ヒロミ(ミムラ)と二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。ひとりきりになったトモは、叔父であるマキオ(桐谷健太)の家に向かう。母の家では初めてではない。ただ以前と違うのは、マキオはリンコ(生田斗真)という美しい恋人と一緒に暮らしていた。それはトモが初めて出会う、トランスジェンダーの女性だった。
きれいに整頓された部屋でトモをやさしく迎え入れるリンコ。食卓を彩るリンコの美味しい手料理に、安らぎを感じるだんらんのひと時。母は決して与えてくれなかった家庭の温もりや、母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いながらも信頼を寄せていくトモ。その姿にリンコも愛おしさを覚え始める。
本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、人生のかけがえのないもの、ホントの幸せとは何かを教えてくれる至福の時間になっていく。このまま永遠に続くように思えた3人の関係だが、突然ヒロミが帰ってくる——。(HPより抜粋)
監督
監督は萩上直子。
監督の作品、今回が初めての鑑賞になります。
自分の好みの作風じゃないと勝手なイメージを持ち避けてきたわけですが、今作で自分の中でのイメージがいい方向に変わればいいなと思ております。
では今までどんな作品を手掛けてきたのか簡単にご紹介。
ぴあフィルムフェスティバルで音楽賞を受賞後、みんなおかっぱ頭の小学生が田舎町で、都会から来たおしゃれ頭の転校生がやがて巻き起こす波紋をユーモラスに描いた「バーバー吉野」で長編映画デビューします。
3作目である、フィンランドのヘルシンキを舞台に3人の日本人女性と地元の人たちの暖かな交流をゆるやかに描いた「かもめ食堂」がヒットし話題となります。
その後も、「かもめ食堂」にも出演した小林聡美ともたいまさこが再び出演し、都会から南の海辺の宿にやってきた一人の女性が、そこでの風変わりな人々に戸惑いながらも少しづつ彼らのペースに馴染んでいく様を描いたスローライフムービー「めがね」、問題を抱えた3兄妹が日本人の祖母と共同生活を経て絆を深めていく「トイレット」などがあります。
やはり監督のこのゆるさがきっと苦手だと思い、今まで手を出してこなかったんですよね~。レンタル屋当時女性がよくレンタルされていたのを覚えてます。
ルームシェアしてた時の同居人が、これのフィンランド版持ってたんですよねぇ。フィンランド人の彼女から借りたという。その時見とけばよかった。
キャスト
トランスジェンダーの女性リンコを演じるのは生田斗真。
彼が出演してる作品、結構辛口で言わせてもらってますが、それは作品の内容に関してで、彼に関してはむしろ毎回努力してるなぁと感心するばかり。
それが今度はトランスジェンダーときたもんだ。
役者一本で活躍する数少ないジャニーズタレント。
いずれはこういう役もオファーがあればやるつもりだったんだろうな。
さすがです。君がこういう役をやるということが芸能界にとって意味のあることだと願いたい。
近年では、広瀬すずとの共演ですでに話題となっている「先生!」にも出演しています。
彼に関してはこちらをどうぞ。
リンコの恋人でトモの叔父マキオを演じるのは桐谷健太。
CMでのキャラクターが好評で、CD出して紅白にまで出ちゃった歌が歌える俳優。
おまけにラップもドラムもできる器用ぶり。
彼もまた男らしく、野郎なイメージですが、今回はそれとはまったく真逆の役柄。
彼もまた生田斗真同様チャレンジしたい役柄だったのでしょう。
そもそも彼って何でブレイクしたんでしょうね~。
ルーキーズ?
個人的には「タイガー&ドラゴン」のチビTのイメージしかないんですけどw
てか、あの時より声がハスキーじゃなくなりましたよね。
ボイトレでも通ってたのかな。
彼のイントロダクションはいつか主演作ができたらやりましょうかね。
一応出演した作品だけでもどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
マキオの姉の娘トモ役を今回映画デビューとなる柿原りんか、トモの母ヒロミ役を「後妻業の女」に出演したミムラ。
トモの同級生の母親ナオミ役を、今や名バイプレイヤーとなった小池栄子。
リンコの同僚の介護士佑香役を、「愛の渦」の門脇麦、リンコの母フミコ役を田中美佐子。
マキオとヒロミの母サユリ役を、これが遺作となってしまったりりィが演じます。
監督の第1章すら見ていない私ですが、第2章がどんな幕開けになるのか、そして戸惑いながらも少しづつ絆を深めていく3人はどうなっていくのか、編み物は何を意味するのか。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
トランスジェンダーだけじゃない!!中身はがっつり親子の愛の話だった!!
ゆるい笑いもいいぞ!!!
以下、ネタバレします。
非常に日本的。
体は男、心は女。
そんなセクシャルマイノリティが主人公の映画。
いわゆるLGBTをテーマにした話。洋画で言えば、近年では「リリーのすべて」や「アデル、ブルーは熱い色」、「チョコレートドーナツ」ちょっと前で言うと「ブロークバックマウンテン」などがある。
どれも日本よりも多様化した海外だからこそ、真に迫ったシリアスで涙を誘う話で、それはそれは素晴らしい作品たちなんだけど、今作はそれとはちょっと違う。
もちろん真に迫った話なんだけどユーモアがある。
これは監督の毛色なんだろう。
めちゃめちゃゆるくて「ふふっ」と漏れてしまいそうな些細なユーモアがたくさん詰まった映画でした。
なんてったって下ネタ満載なんですよw。
そしてトランスジェンダーについて考える以上に、親子の関係も考えさせてくれる映画でした。
今まで生まれてきて一度もセクシャルマイノリティに出会ったこともなければ見たこともない、そんな人多いと思います。
だから、そういった問題だけを扱った作品じゃ親近感が沸かない。
だからもっと身近な親子や家族といった内容をしっかり盛り込んだことで、どちらの問題にも入り込める映画だったのではないでしょうか。
トモとヒロミの関係。
トモとリンコの関係。
リンコとリンコの母フミコの関係。
ヒロミとマキオの母サユリの関係。
トモの同級生カイとその母親ナオミの関係。
これが非常に厄介な事情を抱えた親子関係で、それを乗り越えた親子もあれば、乗り越えられず疎遠になってる親子、または命を絶とうとする者まで様々。
そんな親子が答えの糸口を探していきながら愛を紡いでいく作品でした。
そしてまだまだLGBTに関心の少ない日本で、天下のジャニーズタレントが体を張って広告塔となり、トランスジェンダーの役をやった映画を作ったということに敬意を表したい。
残念ながら男一人で来ていたのは自分だけで、後は女性のみという寂しい光景だったわけだけど、もっとお客さんが入ってもいい、ユルくて楽しくてちょっぴり泣けてほろ苦い映画でした。
親子で抱える問題とは。
最初からすごく遠回しに書いてしまいましたが、ここでは劇中の親子の視点で解説したいと思います。
まずはトモとヒロコ。
冒頭から散らかった部屋で、コンビニのおにぎりを頬張るトモ。
母子家庭だからさぞ家事と仕事の両立で母親は大変なんだろうと思いきや、ヒロコは男に走ってしばらく家を空けるという、母である前に女なの!を体現したかのような暮らしぶり。
だから時々帰らなくなったらトモはマキオおじさんのところへお泊りに行くわけです。だが今回いつもと違い、仕事を辞めて男を追いかけるという本気度。
いわゆる育児放棄というやつ。
とんでもねぇ母親なんですけど、トモもトモで、なんでしょう、無理して大人になって強がってるのがよくなかった。
もっと母親に甘えて感情をぶつければよかった。
こういう親を持つと自然と我慢と妥協と強がりを身に着けちゃうんですかね~。
で、マキオとリンコと3人で暮らしていくうちに楽しいんだけど、心が洗われてきたからなのか、徐々に母親の愛に飢えてくるわけです。
これが切ない。
クライマックスでの感情の爆発は涙モノでした。
で、劇中で気になったのがトモの好きな食べ物。
切り干し大根に、シジミのしょうゆ漬け、イカの塩辛。
そしてゲーム中に頬張るスナック菓子。
おい、随分と塩分の過剰摂取な気がしますが!!
これ恐らく幼少期に母親が晩飯作るの面倒で、完全にご飯のおかずが酒のつまみだったよなぁと。
母親も夜遅くに飲んだくれて帰宅しているのを見ると、かなりの酒好きに見える。
そんなもんしか食わせてないろくでもねえ女なのにさ、娘にとっちゃあれっきとした母親なんだよなぁ。
ではヒロコはなぜそんな女性になってしまったのか。
それは子供の時の母親サユリとの関係にありました。
ヒロコもまた母子家庭だったわけです。
父が長く浮気をし、しまいには出て行ってしまい、そのせいもあってヒロミは厳しくしつけられました。
だけど男に捨てられた女という見方をしてしまったヒロミは、母親とそりが合わなくなっていきます。
やがて母親はマキオに優しく接することで、ヒロミは嫉妬、結果家を出てしまい疎遠になってしまいます。
自身が母親とうまくいってなかったという過去を持つヒロミ。
だからトモとの接し方も成長するにつれてわからなくなっていったのでしょう。
母親から逃げた時と同じようにトモからも逃げた、ただただ男に走っていったわけじゃなかったんですねぇ。
では、出ていった姉とは違い、一身に愛情を注がれたマキオはどうだったのか。
もちろん親孝行の息子でした。
サユリが体を壊したあとも、老後を考え介護施設に入れ、見舞う日々。
そんなマキオも苦しんでいました。
いつも家に帰れば母親がいて大事に扱われ優しい子に育ったものの、実は介護施設に預け、家に帰ると一人であることに開放された自分がいることに気付く。
愛され過ぎるのもつらいんだよ、と思ってしまう瞬間でした。
そんな時母を看病している介護職員のリンコの美しさに一目ぼれします。
トランスジェンダーだということに後から気づきますが、「そんなのどうだっていんだよ」、とトモに語るシーンが印象的でした。
マキオの恋人であるリンコはどんな親子だったのか。
ここも母子家庭でした。
心は女なのに、一向に胸が膨らまないことにひたすら悩んでいた中学時代のリンコ。
体育で柔道の時間、すぐに柔道着が乱れ肌を露わにされることに恥じらいを感じ体育の授業を欠席します。
そんな彼女を見て母は彼女を尊重し、学校に呼ばれても決して屈せずリンコを守ります。
みんなとは違うけど自分の娘。
おっぱいが欲しいといわれれば、毛糸で編んだ偽の乳とブラジャーを与え、また相手が子供だろうとリンコをいじめたら承知しなわよ、とトモに忠告する母フミコ。
何があっても守り続ける母親の姿が感動的です。
そして、トモの同級生カイとその母ナオミも複雑な事情を抱えてました。
クラス内で変態扱いされているカイ。
彼は年上の男の子に恋をしていました。
そんな彼と仲良くしているところを見られると自分も仲間外れにされるとの理由で、トモは学校内で話しかけないでと忠告します。
唯一の友達であるトモがリンコとスーパーで買い物をしてるところに母親サユリと遭遇します。
声をかけようとするも、母親は腕を掴み制止し、仲良くしちゃダメ、あの子普通じゃない人と一緒だから。と叱られます。
そう、サユリはLGBTに対して偏見の強い女性でした。
自分の息子がそうであるとも知らず。
正直この親子は劇中では特にこれといった解決策は出てこず、一番もやっとしたことろで終わってしまったのが残念でした。
リンコの母親とは違い、罪深い子などと言い放つ無神経さに腹が立ちますが、トモの一言がカイに救いの道を示すシーンがあっただけでもよかったなと。
「たかが世界の終わり」でもそうだったように、溺愛しようが、厳しくしようがそれが愛なんだけど、親が全て正解ではない。
所詮人対人なんだけど、長く一緒にいるのだから子が親の愛を欲しがるのは当然なんだよなぁと。
長い人生寄り添っていくのだから糸と糸を編むように付き合っていかなくちゃいけないんですよねぇ。
何編んでんだよw
リンコはこれまでの人生でたくさん嫌な事腹の立つこと煮え切らないことを普通の人以上に経験してきました。
そんな時はとにかく怒りがおさまるよう我慢して耐えて生きてきました。
その悔しさを編み物にぶつけることで彼女は平常心を保ててるのですが。では何を編んでるのか。セーターでもなければマフラーでも手袋でもない。
これはもうネタバレした方が見てない人は興味が沸くと思うので書きますが、チンコを作ってますwww
チンコです。
もう一度あえて言おう、チンコです。
性別適合手術を受け、男根への供養を込めてチンコの造形をしたモノを、煩悩の数=108個つくり、成仏させることで戸籍を女へ移すという計画を持っていました。
劇中ではこのチンコネタをガンガン放り込んできます。
リンコとマキオとトモ3人であらゆる形のチンコで投げ合いっこするシーンは最高に面白いですw。
子供がいるのに、まして女の子なのに、左に反れてるだとか、でかいとか小さいとかww
トモ!!お前はわかって笑ってるのか!?
反れてる意味が分かってるのかww
他にも手術の後の男根の行方を聞いたトモの一言。
なぜディレイをかけるww
確かに俺も同じ感想だったけどww
いい演技です。
今作は生田斗真と桐谷健太の演技なくしては語れない。
はっきり言ってリンコの初登場のシーン。
めちゃめちゃ違和感がある。
ガタイがいいしスカートは似合ってない。
トモが戸惑うのも無理はない。
というか、初めてそんな人を見たら誰だってそう思うか。
しかし徐々に彼女を見ていいると、一つ一つの所作が完全に女だ、料理をふるまう姿も、座るのも、話し方も。
だからといって、劇中ずっと女ってわけじゃないのもまたよくて。
たまに使う言葉が男言葉だったり、自転車で競争するときにめっちゃ野太い声でうおおおお~っ!!とかいいちゃう部分だったり。
実際のトランスジェンダーもきっと、素でそういう元々の部分が垣間見えちゃうことがあるんだろうなぁ、という細かい演技がまた素晴らしく、生田斗真史上最高の演技といっても過言ではないと思います。
桐谷健太もいつもなら静と動で言うと、動の部分で演技していた感じですが、今回は静。もしくは受け身の演技。
リンコがマキオを顎で使ったり、皿洗いはマキオがやったり、洗濯物はマキオが畳んだりといった生活臭を二人がきちんと生み出してるのもまたいい。
そして物腰の柔かい優しい男をしっかりと見せたかと思えば、リンコさんのためならと男を見せる、いつもやってるその熱さはちゃんと持ってて。
新たな一面を見れた気がしました。
そんな中、小池栄子の存在感てすごいなと。
よくこのお母さんの役引き受けたなぁ。
カフェでリンコとトモとカイがお茶してるところを外から見てしまう時の顔。
ただの真顔なんだけど、真顔じゃない。
かといって見てはいけないもの見た顔とはまた違う、一言では言い表せない表情。
どこで覚えたそんな表情w
さすが名バイプレイヤーでした。
まとめ
まとめるもなにもロクなこと書いてないんですが、決してお涙ちょうだいな映画ではないです。
毛糸のような柔らかなタッチで重々しくなく描いてます。
疑似でも家族として成り立っていけるんじゃないか、という希望もあれば、ではトランスジェンダーのあなたに母親が務まるのかなんて現実もチラリ。
また、誰にでもあてはまるような人間味あふれる登場人物に、共感したり拒否反応を起こしたりでき、見て見ぬふりできない部分もあったりといろいろ考えさせられる作品です。
中島みゆきの「糸」じゃないけど、縦と横の毛糸が折り重なって築かれていく人間関係の中で、押し合いへし合い、すったもんだあるんだけど、そこには温もりがあるってこと。
たとえできた編み物がチンコだとしてもw
お、うまくまとまられたか?
いやダメだw
時間いっぱいです!
というわけで以上!!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆☆★★★★ 6/ 10