オクジャ/okja
ブラピの「ウォー・マシーン 戦争は話術だ!」を鑑賞したばかりのNetflix映画に、またしてもビッグネーム作品が登場です。
これもすっかり見る予定だったのを忘れてました・・・。
韓国の鬼才ポン・ジュノ監督もまさかのストリーミング配信作品に参入するとは!と、当初の発表を知ったときは驚きましたね。
個人的にもネトフリは応援しているクチなので、今後とも是非いろんなオリジナルコンテンツを作ってもらいたいな、と。
とりあえず「ディフェンダーズ」と「ストレンジャーシングス」早くっ!!
話は逸れましたが、今作もまたブラッド・ピットの制作会社「プランBエンターテインメント」が手掛けているということで、演者も豪華になっております!
みんなポンジュノ作品に出たかったんだろうなぁ。
というわけで早速自宅で鑑賞しましたよ!!
作品情報
常に独創的なアイディアを取り入れる作風を持つポン・ジュノ監督の最新作は劇場公開ではなく動画配信という新たな試みを選んだ。
その結果、今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、劇場では見ることの出来ないネット配信の映画が選出されてもいいのかという大きな議論を呼び話題になった。
心優しい巨大生物と共に田舎で暮らしてきた一人の少女に、現代社会の科学倫理と動物愛護主義、企業欲の醜い争いの渦に巻き込まれていくアクションアドベンチャーです。
あらすじ
地球の食糧難を解決するため、アメリカの巨大企業ホランドを経営するルーシー・ミランド(ティルダ・スウィントン)は、極秘裏にブタの品種改良に乗り出していた。
そのブタを山の奥深くにある村に住む娘ミジャ(アン・ソヒョン)に預け、ミジャと村の長老はそのブタを妹のように可愛がり、育てていた。
しかし、そのブタが成長するとミランド社の人間によって、ニューヨークの本社へ輸送されてしまう。
ミジャが育てたブタの正体は何なのか。ミランド社が秘密裏に進める計画とはいったい何なのか。
ブタを助けるために、ミジャにとって大きな冒険が始まる。
監督
監督はポン・ジュノ。
あれ監督!なんか随分小っちゃくなってかわいらしく・・・ってどう考えても左ではありません。右に座る方が監督でございます。
左はオクジャのぬいぐるみですねw
ポンジュノ監督といえば、様々な社会問題を取り上げた、メッセージ性の強い内容を独創的なアイディアで映像化している監督さんだと思います。
とか言っておきながら、監督作品て「スノーピアサー」位しか見たことないんですが・・・。
そんな監督の代表的な作品をざっくり紹介。
韓国国内で6年間もの間に10人の犠牲者をだし、迷宮入りしてしまった実在した未解決連続殺人事件を題材に、事件を追う2人の刑事を時にコミカルに描きながら緊張感溢れるタッチで作られた「殺人の記憶」でブレイク。
謎の巨大生物に娘をさらわれた一家が、政府の理解を得られぬまま自力で怪物に立ち向かうモンスターパニック映画「グエムル 漢江の怪物」では反米的な内容を織り交ぜたことで問題にもなったとか。
他にも、寒村を舞台に、息子の無実を信じる母親がたった一人で真犯人探しに奔走する「母なる証明」、寒冷化によって終末を迎えた世界を舞台に、生存者を乗せて走る列車内での階級社会を壊すべく反乱を起こしていくSF映画で、監督にとって初の海外との合作となった「スノー・ピアサー」などがあります。
地球温暖化を食いとめるべく行った行為が逆に人類を滅ぼしてしまうことになり、生き残ったものたちはひたすら走る列車内で生き延びる。で、その社内では現代の世界と同じよう最善車両には富裕層、最後尾には貧困層が。
格差社会をこういうSFチックに落とし込んだ監督のセンスに脱帽です。
一致団結して最後尾にいる貧困層たちが立ち上がるんですが、色々な困難や障害が発生し、見てはいけない真実へとたどり着きます。
個人的にはこの貧困層たちが、食べている羊羹のような食べ物が何で出来ているかを見たときの衝撃が忘れられません。
ただこの作品はそこまで評価が得られず、監督の海外進出では散々な目にあったようです。
おそらくは、いろんな所からああだこうだと製作過程で言われ、映画を短くされ、勝手に編集され、上映した国ごとに微妙に内容が変えられ、と、悪循環による悪循環。
きっとこれに嫌気が差し、ならいっそこのこと好き放題やっていいネトフリで配信したほうがより多くの人にちゃんと見てもらえるよね!ということで今作の製作に乗り出したんだと思います。
そんな監督の渾身作に期待ですね。
こちらもどうぞ。
キャスト
オクジャと共に村で暮らす少女ミジャを演じるのはアン・ソヒョン。
今回映画での大役は初なのかと。
全く情報がないのでわかりませんが。
予告を見る限りNYで駆けずり回ってる姿が見られるので、ちょっとしたアクションも見られるのかもしれません。
出演作としては、無垢なメイドによって大邸宅に暮らす上流階級一家が崩壊していく「ハウスメイド」で注目を浴びたそうで、その後も、冷酷な殺人犯と妹を奪われた女性ノ果てしない戦いを描いたサスペンススリラー「その怪物」などに出演しているようです。
巨大企業ミランド社を経営するルーシー・ミランドを演じるのはティルダ・スウィントン。
相変わらずヒトクセもふたクセもある役柄ばかり演じるお方です。
個人的に思い入れのある彼女の出演作だと、「ザ・ビーチ」や「コンスタンティン」、最近だと「ヘイル、シーザー!」や「ドクターストレンジ」ですかね。
「スノーピアサー」でもすんばらしい怪演を見せていました。
彼女に関しては、私があれこれ語るよりも、いつも読ませて頂いてるDaysLikeMosaicさんの記事をご覧ください。
今作は彼女以外にもナイすチョイスな俳優陣がたくさん出演しています!
動物学者のウィルコックス博士役に、「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」、「ライフ」のジェイク・ギレンホール!
動物保護団体のリーダー、ジェイ役に「ルビー・スパークス」、「リトル・ミス・サンシャイン」、「スイス・アーミーマン」のポール・ダノ!
動物保護団体のメンバー、レッド役に、「白雪姫と鏡の女王」、「あと1センチの恋」などに出演したリリー・コリンズ!(つーかLOVE。)
他にも「ウォーキング・デッド」に出演中のスティーブン・ユァンや、「T2 トレインスポッティング」でスパッドと結ばれた恋人ゲイルを演じた、シャーリー・ヘンダーソンなどが出演します。
オクジャとは一体何なのか。巨大企業はオクジャを使って何を企んでいるのか。そこから投げかけられているメッセージとは。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
どうしたってオクジャと少女に感情移入!!様々な社会問題、エゴがぶつかり合う様にユーモアを加えた愛の物語でした!!!
以下、核心に触れずネタバレします。
いやぁ泣いてしまった。
愛情持って育てたブタを奪われたことにより、一人の少女が村を飛び出し救出に向かう中で、巨大企業の陰謀、動物愛護団体によるテロ活動などの様々なエゴが渦巻き翻弄されていく様を、ユーモアあふれる描写や心躍る音楽によって、楽しく鑑賞できると共に、色々と考えさせられる物語でした。
いやぁ~泣くだろコレ!
自分で育てたブタが食用ブタとして企業に奪われて、殺されちゃうかもしれないからいてもたってもいられず、助けにいくんですから。
しかもミジャが名前を叫べばオクジャも雄たけびを上げてって、もう雄たけび聞くだけで胸を締め付けられますよ!
似たような話で「ブタがいた教室」なんて映画がありましたが、育てたブタが殺されて誰かに食べられるなんて、そりゃあ居ても立っても居られないだろ!!と。
なぜこんなにもブタを愛おしく思えてしまうんだろう。
気が付けば主人公の少女ミジャの気持ちとシンクロし、何とかしてオクジャに助かってほしいと願いながら食い入るように見ていました。
その理由の一つに、序盤でのミジャとオクジャの交流を丁寧に描いてたことが考えられます。
緑豊かな山奥の村で暮らすミジャとおじいちゃん、そしてオクジャ。
山の中で戯れながら夕食の魚を捕りに繰り出すシーンの中で、ミジャとオクジャの心が通い合っている姿が見られます。
特にオクジャがあおむけになって寝っ転がる上でミジャがうたた寝をしてしまう場面は、もう完全に「となりのトトロ」のメイとトトロのあれです。
あなた誰ぇ~?ととろぉ~?のあれです。
目を見れば排泄したいと気づき、お尻をさすって排泄を促す場面も、まさに意思の疎通ができているという現れだったと思います。
このような日常を見てしまえば、この後オクジャに降りかかる身の危険に、訪れようとしている悲しい末路に、どうか助かってほしいと思いながら見てしまうのは当然。
しかしながら、ミランド社がしようとしていることもまた世界の人々を救ううえで必要なことなのかもしれない。
そりゃあ同じ肉なら安い肉の方がいいわけで、こんな肉が売り出されるならそっちを選んで腹いっぱい食べて満たされたいよね、でもさ・・・というジレンマが生じ、何とも言えない気持ちになるのもまた事実。
と、いろんな思いが混じった見ごたえある作品でした。
ざっくり詳細説明
さかのぼること10年前。
父の会社を引き継いだルーシー・ミランドは、世界的食糧不足を解消するためにある1匹のブタを発見。
自社の研究所で手塩にかけて育てた結果、排泄が少なく環境に優しい、非遺伝子組み換えの26匹の子豚を生むことに成功。
無作為に決めた世界中の農家でそのブタを育て、最も大きく最も美しく育てたブタにベストスーパーピッグの称号を与えるコンペを開催することを発表する。
そのブタが子孫を残していくことで、世界中の人々に安くて安全でおいしい豚肉を提供できるという家畜産業に革命を与える1大プロジェクトの幕が上がった。
10年後、韓国の山奥の村で暮らす少女ミジャと長老は、ミランド社の科学者のサポートもあり、オクジャを放牧しながら愛情をもって育てていた。
オクジャはミジャにとってかけがえのない妹のような存在になっていた。
そのため、ミランド社に連れていかれる前に、オクジャを購入すればずっと一緒にいられると信じていた。
しかしながら、長老にとってオクジャはお金に変わる程度のものでしかなく、いとも簡単に手放してしまう。
この事実を知ったミジャは、回収されたオクジャを追いかけ、ソウル、そしてニューヨークへと旅立っていく。
実はこのブタ、ミランドが極秘にアリゾナの研究所で開発した遺伝子組み換えのブタだったことが発覚する。
この事実を世間に公表し、ミランド社を陥れ、また動物の尊厳を広めようと活動する動物愛護団体❝ALF❞は、ミランド社によって回収されたオクジャと、救出しようと奔走するミジャを確保し、自分たちの正義のために利用しようと画策していたのだった。
様々なエゴがぶつかり合う中で、ただ純粋にオクジャを連れて帰りたいと願うミジャ。
果たしてミジャとオクジャの運命は。
ユーモア描写も満載
今作鑑賞前、これはきっとシリアスな描写で社会的要素を色濃くした作品なんだろうと予想していた私でしたが、いざ見始めると明るいタッチと、コミカルな描写、心躍る音楽といった演出で構成されていた作品でした。
まず挙げられるのは、オクジャとミジャの絡み。
途中でも書きましたが、お尻をさすればポンポンポンポン糞を放出し、小気味よくオナラまでカマす一連の流れ。
いたって日常的なこの場面が、時に追手を攻撃する武器となるシーンは笑えますw。
そのオクジャを運送する若者もまたいいアクセントを残していました。
一応ミランド社の支社の社員ですが、とにかくかったるい表情。
もう辞めたいんだよね~なんて漏らすやる気のなさ。
ALFによる襲撃のニュースのインタビューでは、さんざん会社の愚痴をこぼし、同乗していた支社の責任者ムンドには、俺免許あるけど労災保険ないからとかいう始末。
この返しに会社に忠誠心を示せ!なんて叫ぶムンドもまた滑稽であります。
おかしく思えてしまう大きな理由はこの場面を彩る音楽にあります。
何て表現したらいいかわからないのが悔しいんですが、韓国風のホーン隊で構成されたビッグバンドジャズ?ジャズじゃないよなぁ。
チンドン屋?でもないしw
日本の明治大正時代の「ええじゃないか」的な、明るくリズミカルで拍子抜けしてしまう、それでいてどこかエレジーなメロディーが印象的な音楽で構成されていて、劇中で繰り広げられるアクションや市内でのひと悶着などに一役買った演出でございました。
2人の演技派が素晴らしい
ユーモアな部分で言えば、ティルダ・スウィントンとジェイク・ギレンホール2人による演技合戦もまた楽しいです。
ティルダ演じるミランドのちょっとおかしい感がやはり不気味です。
金髪ボブで歯を矯正し、気持ち右に口をひん曲がらせた容姿で登場し、意識の高い、私がやろうとしていることは間違ってないという気持ちがムンムンと体中から湧いて出ている人物像を見事に演じていました。
やはり、ちょっと危ない役をやらせたらピカイチのティルダはさすがです。
それに対抗するのがウィルコックス博士演じるジェイク・ギレンホール。
ちょっとぶっとんだ動物学者という役をやる上で、あなた絶対ムツゴロウ博士の映像観て参考にしたでしょwwと思えるほど、天真爛漫で、喜怒哀楽の激しいミランド社の広告塔として存在感を示していました。
彼の紹介映像でクマの口に頭突っ込んで戯れてる映像がちらっと流れるんですが、個人的にはこれをジェイクがやってるというだけで爆笑でしたww
超ヘルシーを決め台詞に世界で愛されウィルコックス博士。
最初は完全にミランド社の犬のような、こいつも悪い奴かと思ってたら、やはり根っこは動物を愛する者としての葛藤が後半うかがえます。
その時のジェイクの哀愁たっぷりの感情吐露がまた切ないです。
アクションもいいぞ!
今作でミジャ役を演じたアン・ソヒョンちゃんの体を張ったアクションも楽しいです。
ミランド社のソウル支社に出向いたミジャがなかなか受付を突破できず、体ごと強化ガラスに突っ込んだり、ソウルの地下街でオクジャを追いかける場面や、トラックに積まれたオクジャを追いかけ、街の中をひたすら走り回ったり。
そのままトラックの荷台に飛び乗って、高さ制限のある高架下にぶつかりそうなったら、ひょいっとトラックの後ろのドアに移る身軽さ。
もうイーサン・ハントとやってること同じですw
序盤でも、崖で足を滑らせ落ちそうになるシーンもあり、そういった面においてもこの映画はエンタメ要素が盛りだくさんだったことがうかがえます。
このモヤモヤは何だ。
この物語は純粋に、愛しい者を悪の手から取り戻す救出劇である。
しかしその中で、彼女とオクジャを利用し自らの正義を全うしようとする者や、世界中で飢えに苦しむ人々を救済するために立ち上がったという建前で、本音はただただ金儲けのために大事な部分を隠蔽し利益を得ようとする企業がいたりといった、かなり現実的な設定が見て取れる。
ミジャにとってオクジャは食べ物ではない。家族だ。
オクジャを家族と思っているのはミジャだけなのだ。
ALFにとってオクジャは、自分たちの活動の普及にうってつけの道具にしかすぎず、ミランド社にとってオクジャは自分たちが作り出した最高品質の遺伝子組み換えブタで、化ければ金にも銀にもなりうる宝庫。
じゃあ鑑賞している者にとってオクジャとはいったいどんな存在なんだろう、と。
もちろん見ていくうちにミジャとオクジャに感情移入していくので、ALFのやっていることが、動物を大切にしたいという気持ちもわかるが、てめえのエゴとしか観られなかったりする。
また、ミランド社のやっていることが非常に悪いことなのは見ていてわかるけど、実際安くておいしいお肉があったら、どれだけの人が飢えから解放されるだろう、という感情も芽生え、一筋縄ではいかない気持ちになってくる。
この文章を書きながら答えを探そうとしている自分がいますが、難しいところです。
安くてうまい肉があったらがっつり食べたいのも事実。
ただ利益のために動物を研究材料にしたり、総じて虐待をするような奴らに腹が立つのも事実。
ミジャのように手塩にかけて育てたら、手放したくないのも事実。
現にこういった社会問題があり、色んな大小のエゴが渦巻いてるのも事実で。
とにかく色々と向き合っていかないとこの先もっと深刻な問題になるんだろうなぁ、と超ざっくりな答えになりました。w
どうしたら食料不足にならない世の中になるのか、どうしたら動物とうまくやっていく世の中になるのか、どうしたら企業と消費者と動物と様々なものとうまく共存できるのか、食物連鎖の最上位にいる我々が今後生活していく上で一番考えなくてはならないことがすぐそこまで来ているかもしれません。
と、無理矢理まとめますw
う~んこういうこと書くの苦手。まさにこの感想がモヤモヤしている。
最後に
と、このように少女とブタの愛の物語をエンタメ要素盛りだくさんに仕上げ、尚且つ社会問題に切り込んだ内容の「オクジャ/okja」。
なぜこれが配信だけにとどまってしまうのか、映画館で見たい!というもったいなさも感じるし、じゃあ映画館で上映するためにどこぞの配給会社が製作したら、また監督の意図が組まれないしょっぱい作品になり下がっちゃうんじゃないの?なんて葛藤も生まれたり。
ただ言えることはこれが見られるのは現在ネトフリだけしかないということ。
そして、いろんな人に見てほしい作品で、見て損はないということを強く言いたいわけで。
韓国ではこの作品は配信日と同日に劇場公開をしてるそうで、これって要は、我々の声が大きくなればネトフリ作品が劇場で見られるのも夢じゃないってことで。
とにかくみんなネットフリックスに加入してオクジャを観よう!話はそれからだ!
ただの販売促進になっちゃったw
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10