ビニー/信じる男
実は格闘技やボクシング観戦、好きじゃないです。
それ以上に格闘技にワーキャー言う女の子、好きじゃないです。
そんな私ですが、「ロッキー」、「ザ・ファイター」、「レイジング・ブル」、「シンデレラマン」、「ミリオンダラーベイビー」などなど、ボクシングを題材にした作品はつい夢中になってしまう。
思い返せばいつだって胸を熱くさせてくれたのはボクシング映画でした。
その歴史に新たなページを刻むのか。
スポーツ史上類を見ない超人的カムバックを果たした男の実話を基にした作品、早速見てまいりました。
作品情報
重大な交通事故に遭ってしまったボクシング元世界ミドルジュニア級チャンピオン・ビニー・パジェンサが、再起不能といわれながらも、その諦めない心で再び王者に返り咲くまでの軌跡を、実話を元に彼の生き様をドラマティックに描いたストーリーです。
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あらすじ
ロードアイランド州出身の自惚れ屋のボクサー、ビニー・パジェンサ(マイルズ・テラー)別名“パズマニア・デビル”は、スーパーライト級チャンピオンのロジャー・メイウェザーに滅多打ちにされ、プロモーターのルー・デュバ(テッド・レヴィン)から引退を勧告される。
それをきっかけにビニーは、実力はあるが飲んだくれのトレーナー、ケビン・ルーニー(アーロン・エッカート)の元、無謀にも2つ上の階級に挑む。ケビンの徹底したトレーニングが功を奏し、地元の人々が見ている前でフランス人ボクサーのジルベール・デュレを下し、世界ジュニアミドル級チャンピオンになる。
だがビニーはその試合のすぐ後、正面衝突の交通事故を起こし、首を骨折し瀕死の重傷を負ってしまう。
医師たちからは、二度と歩くことはできなくなるかもしれないため、脊椎を固定する手術を勧められる。だがその手術を受ければ体を動かすことはできるようになるが、ボクサーとしての再起は不可能になってしまう。ビニーは、遥かにリスクの高いハローという脊椎固定手術を受け、半年間も頭の回りに金属の装具を付けて過ごす。
気性は荒いが献身的な父親のアンジェロ(キアラン・ハインズ)と心配性の母親ルイーズ(ケイティ・セイガル)と共に彼は穏やかな日々を過ごす。
ビニーの周囲の人間たちは、彼はもうリングに立つことはないだろうと思っていた。離れていくプロモーターやガールフレンドたち。だが、ビニー本人はベッドにただ横たわるだけの命の使い方に疑問を抱いていた。ビニーはケビンを説得し密かにトレーニングを始める。
しかしそれが父アンジェロに見つかり、ビニーとケビンは激しく非難されてしまう。愛する家族の反対にあいながらも、ビニーはトレーニングを続ける。
そして事故から1年が過ぎた頃、彼は生涯で最も大きな試合となるスーパーミドル級チャンピオンのロベルト・デュラン(エドウィン・ロドリゲス)との対戦のために再びリングを目指す――。(HPより抜粋)
監督
監督はベン・ヤンガー。
初めて聞くお方。
一応今作にはマーティン・スコセッシが製作総指揮という大きな存在がおり、監督にとってはプレッシャーと後ろ盾が半々な気持ちだったのかと思います。
そんな彼が今までどんな作品を手掛けてきたのか調べてみました。
小さなカジノを経営していた主人公が、父親に認められるべく証券会社で働くものの、不審な点を見つけてしまうといった、金融犯罪を描いたサスペンス映画「マネーゲーム 株価大暴落」で監督デビューします。
キャストには、若き日のヴィン・ディーゼルやベン・アフレックなどのスターが名を連ねています。
他にも脚本などを手掛けているようですが、監督としては今作が2作目となるようです。
次回作はプロのオートレーサーのライセンスを持つ監督ならではの作品になっているようで、そちらにも期待したいところですね。
キャスト
奇跡の主人公ビニー・パジェンサを演じるのはマイルズ・テラー。
ハリウッドスターって華があって憧れの象徴だったりするんですが、彼はいたって地味ですw今っぽい顔立ちでもないし、二枚目って感じでもない。
でもこと演技や役作りのアプローチに関しては一級品。
それもそのはず、彼がブレイクを果たした「セッション」では、ジャズドラマーになるべく己の限界を体現し、練習風景やクライマックスでの狂気を超えた演技にサブイボが止まらなかったほど。
今回もまた過酷なトレーニングをして、役作りに挑んだんだとか。
大分顔が締まってますもんね。
そんな彼の代表作を簡単にご紹介。
愛するわが子を失った母親の悲痛な再生への道のりを描いたヒューマンドラマ「ラビット・ホール」で映画デビュー。
その後、全米で大ベストセラーとなったディストピアSF小説を原作に、異端者と識別された女性の過酷な運命を描いた人気シリーズ「ダイバージェント」や、一流のジャズドラマーになるべく練習に明け暮れる生徒が、鬼教師の常軌を逸したシゴキに追い詰められていく様を、狂気の演奏シーンと共に描いた音楽映画「セッション」で、一気に名を知らしめます。
他にも、アメコミ映画のリブート作品「ファンタスティック・フォー」ではMr.ファンタスティック役として知的な役どころといった面を見せたり、残念ながらビデオスルーとなってしまった作品で、武器商人の若者たちが大金をてにするもとんでもない事態に巻き込まれるクライムアクションコメディ「ウォー・ドッグス」ではコメディにも挑戦するなど多彩な顔も見せています。
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まだ見てないんですが、まさかのTSUTAYA限定レンタルというのをフォロワーさんから最近教えてもらい、早急にレンタルしようと思ってるところです。
だって、ハングオーバーのトッド・フィリップス監督だぜ?絶対面白いだろ。
実力はあるが飲んだくれのトレーナー、ケビン・ルーニーを演じるのはアーロン・エッカート。
彼に関しては「ハドソン川の奇跡」ジャパンプレミア試写会で、生アーロンを拝んでおり、彼のファンに対するサービス精神とその人柄に、すっかり虜になった思い出があります。
「ダークナイト」では、光の騎士から転落し、正義の男から最狂の男へと変貌を遂げたトゥー・フェイスを見事に演じたかと思えば、「エリン・ブロコビッチ」では主人公を支える優しいバイカー、「世界侵略:ロサンゼルス決戦」では劣勢の中、民間人を救うべく立ち向かう曹長として勇ましい姿をみせつけるなど、正義感あふれる役どころが多い印象があります。
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彼に関してはこちらもどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
ビニーの母、ルイーズ・パジェンサ役に、主にTVドラマで活躍しているケイティ・セイガル。
ビニーの父、アンジェロ・パジェンサ役に、「ジャスティス・リーグ」でヴィランとなるステッペンウルフ役を演じる、キアラン・ハインズ。
ビニーのプロモーター、ルー・デュバ役に、「羊たちの沈黙」のバッファロー・ビルを演じた、テッド・レヴィンらが出演します。
自惚れやボクサーの転落から再起までの半生。果たしてどんな物語なのか。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
諦めることが簡単なのが怖いんだ!もう一度リングに立つことに人生を賭け挑んだ再起の物語!!
以下、核心に触れずネタバレします。
ボクサーである前にギャンブラー。
自惚れ屋で過信、止まることを知らない、そんなボクサーに訪れる引退の危機。
出会ったトレーナーは飲んだくれだが、きちんと計算された練習メニューで、ビニーを2階級上のジュニアミドル級で戦わせ、見事に勝利する。
しかしそんな彼の前に運命は大きな試練を与え、ビニーは選手生命の危機に立たされる。
実在する元世界チャンプの波乱の人生を、若手有望株の役者とはげ頭までして挑んだベテラン俳優の息の合った掛け合いと、本気さながらのボクシングシーン、痛々しいリハビリの場面などが印象に残ったヒューマンドラマでありました。
悲運に見舞われた主人公に救いの手を差し伸べるべくいう言葉で、「神様は乗り越えられるものにしか試練を与えないんだ。」なんてTVドラマでよくある光景を、この映画を知った時に思い出したんです。
しかし、ふたを開けてみれば劇的な復活劇とかじゃなくて、もう単純にボクシングの事しか頭にない男が、どんな状態に立たされても俺にはボクシングしかなくて、ボクシングでしか生きる道がなくて、だからもう一度リングに立てるに決まってるっていう確固たる自信が満ち溢れてた話だったなぁと。
もしくは、冒頭で決戦前夜に夜更かしして彼女とカジノでギャンブルにのめり込む部分から察するに、こいつは人生常に賭け在りきで生きてる奴なんじゃないかって。
練習でもケビンにもうよせって言われても続けたり、試合前日なのにオーバーワークしたり、試合でもペース配分など気にせず無我夢中でやったりする様を観ても、駆け引きなんかしねえ!攻撃が俺にとって防御で、このスタイルで勝つことに賭けてるって感じがしました。
もうスラムダンクの豊玉高校ですよ。
ラン&ガンで全国制覇するんや、って。
だから、ハローという器具をつけて脊髄を固定する手術を選択をしたのも、ボクサーとしてもう一度再起するための選択以上に、彼の人生を賭けた選択だったんじゃないかなと。
諦めるとは。
で、その賭けっぱなしの人生を送っていたビニーは、事故で再起不能の体をムチ打って両親に内緒でケビンとトレーニングを開始するんですが、もちろん最初はケビンも無茶だ!やめろ!他の人生もある!なんて説得するんです。
そこで、ビニーが「諦めるのが怖いんじゃない、諦めるのが簡単なのが怖いんだ」と語るんです。
これってどういうことなのか。
サッカー元日本代表の中山雅史がTVで口にしてたんですが、「諦めるってのは明らかに見極めることだ」って言ってて、すごく納得したことがあって。
当てはめて考えてみると、ビニーは、明らかに見極めることに対して恐怖心を抱いているのではなく、駄目だと結論してしまう、判断してしまう事に対して容易に納得してしまうことに恐怖心を抱いてるんだな、って思うんです。
だから、今の状態から第二2の人生もあるよって選択肢を出され、それを簡単に選んでしまう自分が怖かったんだろうなぁと。
「諦めたらそこで試合終了です」ではなく、それを選ぶことは簡単だって思ってしまうことが怖い、みたいな。
とまぁ、自分なりに掘り下げてみましたが、ただややこしくなっただけだなこりゃ・・・。わかる人だけわかってください・・・。
そしてビニーは、ボクサーとして再起すると同時に、怖さに打ち克つためにリスクの高い手術を選んだわけなんですね~。
内容の出来。
そこまで語るなら内容は良かったんだろうね~ってところなんでしょうが、個人的にはそこまで面白いとは思えない作品でした。残念ながら。
大きな要因として挙げるならば、物語が非常に淡泊だったこと。
これメインは事故った後からどうやって復帰し勝利を手にするのかだと思うんです。
ここの過程がえらくあっさりしていて、ドラマ性が全然感じられなかったんですよね。
もちろんハローという器具をつけて日常を送るビニーがどんなに困難かとか、周りの取り巻きが去っていくことで孤独を感じたりだとかの描写はあるんだけど、終わったらケビンとあっさりトレーニング始めて、あっさり筋肉つけて、ほくそえんで、父親にバレて、確執が生まれてみたいな一波乱あるかと思ったら、そうでもなくて。
とまぁ、とんとん拍子に1年経つんですよねぇ。
手術から半年経って器具を取り外すシーンがものすごく痛々しくて顔をしかめてしまったり、復帰後のスパーリングで、ビニーとやりたがらない周りの選手たちのシーンは時間をかけててよかったんですけど、後がなんかスムーズ過ぎて拍子抜けした感じです。
恐らく監督、置きにいってる気がします。
手堅く実話をなぞったようにしか見えない。
ビニーが賭けの人生を送ってるんだから、監督も賭けであと20分くらい映像足して浮き沈みを作ってほしかったですね。
最後に
マイルズ・テラーは「ラ・ラ・ランド」の出演を蹴ってこちらを選んだそうですが、この選択も彼にとっては賭けだったのかな。
でも彼はこっちの方が役に合ってましたね。
信じる道は進んでみないと信じられたかどうかは証明されない。
拓かれることもない。
進むことを諦める選択に恐怖心を持っていたからこそ、ビニーは人生をボクシングに賭け、ひたすら前に進んでいったからこそ、再びチャンプとして返り咲くことができた。
迷わず行けよ、行けばわかるさ。
道を信じるってこういうことなんだよなぁ。
ということで、彼から沢山学ぶことができる作品だったのではないでしょうか。
しかしながら作品的にはいい題材だっただけに、もっとドラマティックに描いてもよかったんじゃないか、なぜ淡々と描いてしまったのか、そこだけが心残りです。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10