プー あくまのくまさん
パブリックドメインという言葉をご存じでしょうか。
すげえざっくり言うと「著作権フリー」ってことです。
全ての著作物や発明には著作権や知的財産権があり、著作者が没後70年を迎えるとその権利が消滅し、誰でも複製したり、出版したりできるんだそうです。
特にクラシック音楽や絵画などは、色々な形で商品化されたり複製されていたりしますね。
近年では、小説だと「シャーロック・ホームズの事件簿」、映画だと「つばさ」や「ジャズ・シンガー」、音楽だとルイ・アームストロングの「Potato Head Blues」などの1927年の作品が著作権フリーになったとのこと。
これらがどのようにして新たな著作物になるのか楽しみですね。
今回観賞する映画は、まさにパブリックドメインによって新たな創作物となった映画。
みんな大好き「クマのプーさん」がホラー映画になったそうでw
プーさんはディズニーキャラのイメージですが、元はイギリスの児童小説。
だから今回パブリックドメイン化されたことで、イメージとは真逆の創作がOKになったんだけど、だからって極端すぎやしねえかw
まぁB級ホラーとして楽しもうと思います。
早速観賞してまいりました!!
作品情報
1926年にA・A・ミルンが出版した児童小説「くまのプーさん」が、2022年の1月に著作権切れ=パブリックドメインとなったことで生まれたホラー映画。
大学進学のために100エーカーの森を去ったクリストファー・ロビンが帰郷すると、血に飢えたプーとピグレットが野生化し、異様な姿で待ち構えている姿を描く、
ディズニーアニメなどで長きにわたって「愛されキャラ」とされてきたプーさんを、リース・ウォーターフィールド監督の手によって誰も見たくなかった姿として創作した本作。
そのビジュアルや予想もしなかったプロットから、公開前の時点で話題沸騰。
予算10万ドル以下という低予算に対し、数十倍もの興行収入を獲得する人気となった。
しかも続編製作が決定するなど、今後も目が離せない作品となっている。
しかし批評サイト「ロッテントマト」での批評家のスコアは4%という低評価や、ディズニーに細心の注意を払って製作したにも関わらず(どこがw)一部のプーさんファンから監督やプロデューサーに対して殺害予告のメールが送られるなど、過激化している。
監督は今後、ピーターパンのホラー映画も製作る予定であり、いずれは子供たちが愛してやまないキャラのユニバース化でも企んでいるのかもしれない。
なぜプーとピグレットは野生化してしまったのか。
見たいものしか見ない今の世の中で、我々はロビンと共に彼らの全貌を見ることになる。
はちみつに飽きたプーさんと違い、我々も途中で飽きなければいいが…。
あらすじ
100エーカーの森でプーやピグレットと共に楽しい冒険に明け暮れていたクリストファー・ロビン(ニコライ・レオン)だったが、大学進学を機に森を離れ旅立つことになった。
やがて婚約者のメアリー(マリア・テイラー)を連れ、森を訪れることにしたロビン。
しかし、久しぶりの再会に胸を膨らませるロビンの目に飛び込んできたのは、野生化し血に飢えたプーとピグレットの変わり果てた姿だった。(HPより抜粋)
感想
#プーあくまのくまさん 観賞。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) June 23, 2023
雄一の友達が去ったため変貌を遂げるプーなわけだが、殺戮を繰り返さないといけないほどの怒りや悲しみが全く描かれてないので、ただ不快なモンスターを眺めるだけ。てか冒頭でこいつらがなぜ生まれたのかって設定の方がホラー。 pic.twitter.com/SRnt2b7hZN
異種間交配で生まれたって設定が既にホラーだろw
「お前は去った」だけの理由で野生化し、人々を殺戮しまくるプーさんを、あなたはまだ愛せますか?
以下、ネタバレします。
クマさんたちの怒りと悲しみがない
青年となり医者になるため森を去ったクリストファー・ロビンが、フィアンセを連れて帰郷したものの、あの頃の森はもうそこにはなかったという悲しいホラー映画は、一体誰を軸に描いたのかさっぱりわからない展開や、プーさんたちの背景や殺戮する動機付けを無視したプロットのため、ただただ人々が殺されていくだけの映画に留まっており、これじゃファンは批判するような内容だよね、と納得した作品でございました。
どんなホラー映画でもモンスターとなったキャラの背景には、なりたくてなったわけじゃない理由が存在しており、その過程に一定の理解を示しながらもやっぱり復讐心によって人を殺めるのは違うという道徳を与えるのが、ホラー映画の一つの描き方だと自負してるのですが、本作はクリストファー・ロビンが去った故に野生化してしまったプーさんたちが、なぜそこまでして人を憎み、殺戮を繰り返すのかという明確な理由を描かず、ただただ100エーカーの森に近づいた人を殺すだけのお話でした。
時にそういうホラー映画があってもいいと思います。
ヤバい奴と遭遇して怖がって殺される、それだけで十分観衆に恐怖を与えることは可能です。
しかし物語においてのカタルシスは必要で、このプーさんからはクリストファーに捨てられた怒りや悲しみってものが全く伝わらない。
その部分をせめてもう少し色濃く描けば、哀しきモンスターとして多少の理解はできるかと思うんですが、冒頭から野生化してしまった背景をダイジェストで語ってしまっており、非常に勿体ないと。
せめて少年時代のクリストファーとの楽しい日々や、去ってしまった当初の淋しい姿を描写するだけで、こちらの受け取り方はだいぶ変わるのではないかと。
ちなみに冒頭では、彼らは異種間交配によって誕生したそうで、半分クマで半分人間である設定なんですが、俺的にはこれが一番ホラーです。
一体どこのどいつが動物と交配してんだよ…。
それによってクマとブタと犬が、人間の心を持ってたり言語が使えるキャラとしてクリストファーの前に現れたということになっています。
クリストファーが去った後、彼らは食べるモノに困ってしまったそう。
このままだと飢え死にしてしまいそうな彼らは、とうとうイーヨーを食ってしまい、その罪悪感に駆られ野生化。
これ以上の共食いはアカン!という協定を結んで、すくすく姿を変えていったという流れでした。
そもそもプーさんたちは自分たちで果物や木の実を採取するようなことをせずに、クリストファーが持ってきた食べ物をあてにしていたことが窺えます。
だから、なんだろう、プーさんたちにとってクリストファーって餌をくれる人以上の気持ちって、最初からなかったんじゃね?とw
とはいえ、プーさんの行動から微かではありますが、それなりの葛藤は見受けられます。
クリストファーを拘束し拷問にかけるプーさんは、クリストファーから謝罪をされると、急に頭を抱え、周りの物を破壊するんですね。
ということは、彼の中にまだかつての人間を愛する気持ち、クリストファーを親友だと捉える気持ちが残っているのではないかと。
だからクリストファーだけを生かしておくという理由に繋がるのだと思いますが、やはりそれだけではどうにも物足りない。
そもそもプーさんらは、腹が減って人間を食うかのような設定だったはずが、ただ人を殺してるだけになってしまっている。
恐らく人間に裏切られた故の行動とも捉えることが可能ですが、やはり冒頭の設定から些かずれてしまってやしないかと。
やはり殺戮を繰り返す行動の動機付け、もしくは行動心理めいた描写をもう少し色濃く描くべきだったのではと。
この女たち誰やねん
僕は本作を見る前に、この物語は「去ったクリストファーに対する怒り、そしてそれを贖罪しながらもプーと対峙するクリストファー」という構図の基に描いていくお話なんだろうと想像して臨みました。
しかしふたを開けてみたら、開始早々クリストファーのフィアンセは殺され、あまりの変貌ぶりに腰を抜かしたクリストファーは拘束されてしまうという流れ。
あれ?もうここまで描いちゃうの?この先どう展開していくの?と少々疑問を抱きながらスクリーンを見つめることに。
すると、メンタルを病んだ女性がセラピストの前でセラピーを受けてるではありませんか。
そう本作は彼女が主人公になってるんですね。
さすが二次創作。無理にクリストファーを主人公にしなくてもいいんですよね。
凶暴化したプーさんがウリなわけですから。
というわけでこの女性、マリアという名だそうで、どうやらストーカーに家の庭に侵入されたあげく、寝込みを襲われそうになったことでメンタルがやられてしまったそう。
セラピストからどこか静かな場所で静養するべきと教えられたマリアは、友達4人を連れて100エーカーの森にあるペンションで数日過ごすことを決めるのであります。
はい、彼女たちがこのペンションに行く前から、新聞やメディアでは森の近くで行方不明者続出という報道をしているような映像が流れており、なんでこのニュースを知らないまま森に行っちゃうの!?とツッコみたくなる展開。
加えて誰やねんこの女!というツッコミもあって、これはもうとんでもないスプラッタ描写がないとつまらないぞと僕の中で雲行きが怪しくなっていきました(そもそも期待してなかったですけどw)。
やはりホラー映画で被害に遭うのは女性たちってのはお約束でして、この後彼女たちはプーさんとピグレットにひとりずつやられていくわけです。
彼女たちの設定としては、一人はインスタグラムにへばりついてる承認欲求高めの女性ララ。
レズビアンのカップルの2人に、一人アリスを心配するメガネ女子、そしてメンタルをやられているアリスの5人です。
一人よなかにプールに入って自撮りしまくるララでしたが、写真を確認すると何やらキモい黄色い物体が写真に写り込んでることに気付き、辺りを明るくして再びプールでくつろぎます。
電灯がチカチカすることでストロボ効果となった画面の中で、ちょっとずつ彼女の背後から近づくプーさんとピグレットが怖いです。
ただ残念なことに、カメラの位置は彼女を横側から捉える位置へと変わり、プーさんとピグレットは口を抑えて彼女を拘束するというシーンに。
いやいやそこはカメラ切り替えずにそのまま襲えばよくね?と。
その後ララは縛られたまま道の上に置かれ、車に乗ったプーさんがそのままゆっくり運転を始め、頭部をぐちゃぐちゃにして轢き殺すというグロ描写。
もうね、怖いとか以前に「プーさん車の運転できるんだ!」って方に驚いてしまうというw
その後ペンションに侵入したプーさんたちは、窓の外側から「出てけ」と書いて恐怖心を煽り、残りの4人を抹殺するべく別行動に打って出ます。
屋内プールに逃げたレズビアンカップルはピグレットに襲われ、一人はプールの中でハンマーで撲殺され、もうひとりは森へ連れていかれ拘束されます。
はちみつを貪り食ってたプーさんに脅える女性は、プーさんの口から垂れるはちみつで顔をべとべとにされるという気味の悪い映像を我々に突きつけます。
何とかアリスたちは彼女を解放することに成功しますが、全く別の女性が拘束されていることに気付き、彼女を助けに向かいます。
顔をボコボコにされた女性は、ピグレットに復讐するためアリスから拳銃を奪って対峙するのですが、残念なことに銃弾は1発しか入っておらず、ピグレットに再びボコボコにされて死んでしまいます。
しかし愛する恋人を殺された復讐をするために、アリスの友人はピグレットを拘束。
ピグレットが持っていたハンマーで見事復讐に成功します。
しかしピグレットの泣き声に気付いたプーさんは急いで現場に駆けつけ、彼女を木につるし上げ喉に思いきりナイフを突き刺すのであります。
このように一人ずつ殺されていく女性たち。
果たして全員助かるのかってのが結末までドキドキするんですけど、まぁバッドエンドですw
不審者に脅えながら過ごしていたアリスが、プーに襲われることで再び恐怖心を目覚めさせていくのに、そこにもカタルシスはありません。
クリストファーも彼らをおいていってしまった罪の重さを十二分に肌で感じるのですが、最後に登場してもプーさんから「お前は去った」とまだお許しを頂けないまま、凶暴化したプーさんの恐ろしさをマジマジと見せつけられ、逃亡するだけ。
最後まで一体何を見せられてるのか、また見終わった後に不快感しか残らない作品でした。
最後に
「悪魔のいけにえ」と似たような構造かもしれませんが、あれだって最後は一人だけ助かったじゃないですか。
しかもあれは意外と笑えてしまうような描写もあって楽しめるんですけど、本作はプーさんの二次創作という時点で面白おかしいのに、中身がまじめすぎてネタにもならない。
野生化したとはいえ、どこかに愛くるしい部分があれば憎めないキャラにできるのに、それすらも与えない真面目ぶり。
そりゃファンも怒るわ。
例えば、途中でクリストファーが救助してもらったお礼に助言を女性たちに与えるシーンを入れる、もしくは拘束された時にプーさんが貪り食ってるはちみつを見ることで、「プーさんははちみつに弱い」っていう攻略法が浮かぶわけですよ。
そうすれば、まだあのモンスターから逃れる術はあるって救いの道ができるんですよね。
そういう希望を見せれば、観衆はこの映画に再び集中できると思うんですよ。
でもそれすらも与えないし、何より全体的に暗くて何やってるかわからないし、低予算故に逃げるシーンはカメラがブレブレで見てられない。
ま、低予算だから仕方ないってのもありますが。
とにかく宣伝に釣られた時が一番のピークだったかもしれませんw
あ、そういえば女性たちと合流する予定だった女性、5人とも心配してなかったのはなぜですかw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆★★★★★★★3/10