モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「ある少年の告白」感想ネタバレあり解説 聖書でケツ叩いて治そうって何考えてんの?

ある少年の告白

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かつて尾崎豊は「僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない」と声高に歌った。

世の中でうまく生き抜くには、どこかで妥協したり自分の主張を押し殺したりしなければならないって事くらいわかってるけど、絶対に引いてはいけない時ってのがあると思う。

 

 なにをこんなクソ真面目なことを言ってるのかというと、僕も僕であるために他人からいわれたこと、押し付けられたことに猛反発するというか、とにかく人にあれやれこれやれって言われることがものすごく苦痛に感じる人で、非常にめんどくさい性格ではあるんだけど、何百もの人から煙たがられ離れていったけど、それでやってきたこともあって自分自身にウソをつかずに生きてきたわけで。

 

で、こんな自分のことと、この映画の主人公を比べてはいけないんだけど、家族から自分の性的嗜好を受け入れてもらえず強制的に施設でセラピーを受ける羽目になるって、中々耐えられないよねぇって。

オレだったら生きることを諦めちゃうよなぁと。

しかも今回の作品、昔の話ではなく今、の話だそうで。

 

とても興味深いのと、監督キャストが魅力的だったので今回鑑賞しようと思いました。

 

作品情報

 ガラルド・コンリーによる回顧録を基に描いた今作は、家族へのカミングアウト後に同性愛者の矯正セラピーへ参加させられた19歳の少年の姿と、息子の幸せを願う両親が本当の愛情とは何かを理解していく物語。

 

NYタイムズ紙によるベストセラーに選ばれ、全米に反響を呼んだ原作は、強制的に性的指向やジェンダーアイデンティティを変更させようとする、科学的根拠のない治療をする「矯正施設」の実態を暴いた実話。

 

この物語を、今や大活躍の俳優が監督2作目として手がけ、今作でゴールデングローブ賞にノミネートされた若手実力派や、ベテラン人キャスト、注目の若手シンガーや、大御所バンドのベーシストら個性的なキャスト人が物語を際立たせていく。

 

自らを偽って生きることを強いる施設に疑問と憤りを抱いた少年が起こした行動とは一体何なのか。

そして両親は息子をどう受け止めるのか。

 

 

あらすじ

 

牧師の父(ラッセル・クロウ)と母(ニコール・キッドマン)を両親にもつジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は、大学生となった。きらめくような青春を送るなか、思いがけない出来事をきっかけに、自分は男性が好きであることに気づく。意を決して両親にその事実を告げるが、息子の言葉を受け止めきれない父と母は困惑し、動揺する。

父から連絡を受けた牧師仲間が助言をするため、続々と家へやってくる。
父は問う。「今のお前を認めることはできない。心の底から変わりたいと思うか?」
悲しげな表情の母を見て、ジャレッドは決心する。「      はい」

母が運転する車に乗り込み、ジャレッドは施設へと向かう。「治療内容はすべて内密にすること」細かな禁止事項が読み上げられ、部屋へと案内される。白シャツの同じ服装の若者たちが弧を描くように椅子に腰を下ろしている。
「救済プログラムにようこそ!」12日間のプログラムが始まった      。 (HPより抜粋)

 

youtu.be

 

 

 

 

監督

今作を手がけるのはジョエル・エドガートン

 

はい、見たことある顔でしょう。

彼が出演している作品いっぱい良作ありますよね~。

ウォーリアー」とか「キンキーブーツ」とか「ブラック・スキャンダル」とか「ブライト」とか「レッド・スパロー」とか。

こういった作品に出演し、忙しい合間をぬって映画製作に取り組んでいたんですよね。

 

で、今作が2作目の監督。

デビュー作は「ザ・ギフト」という映画でして、これが中々のスリラー映画で。

 

ザ・ギフト (字幕版)

ザ・ギフト (字幕版)

  • ジェイソン・ベイトマン
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 豪邸に引っ越した夫婦の前に現れた旦那の元同級生の、あらゆる贈り物による薄気味悪い復讐劇。

どんどん距離をつめてくる得に親しくなかった元同級生が、リアルに怖いです。

 

確かにオトナになって実はコイツおもしれーヤツじゃんwてな感じで仲良くなる、こともある。

でも相手は一体自分のことをどう思ってるのか、なんて知る由もない。

どうしてコイツは当時親しくなかったのに、大人になって近づいてきたのか。

あれ・・・ってね。

 

様々なギフトが贈られてきては脅える妻と怒り狂う夫。

最後のギフトをあなたはどう解釈するか、観終わった後議論してほしい良作です。

 

キャスト

今作の主人公ジャレットを演じるのは、ルーカス・ヘッジズ。

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正直ハデさはないんだけど、内面から溢れる感情が印象的というか、繊細な感じのする彼。

今回ゲイに目覚めるという役どころですが、「レディ・バード」でも演じてましたね。

これからのインディペンデント映画で大活躍するのは間違いない俳優さんです。あまり大作とか出てほしくないなぁw

 

そんな彼の過去作をサクッとご紹介。

ギルバート・グレイプ」の脚本家ピーター・ヘッジズを父に持つ彼は、お父さんの監督作「40オトコの恋愛事情」で俳優デビュー。

その後、のどかな島を舞台に、駆け落ちした少年少女のちょっとした冒険が島民たちを混乱に招いてしまうドタバタコメディ「ムーンライズ・キングダム」や、ヨーロッパの一流ホテルで起きた殺人事件の真相を暴くために、濡れ衣を着せられた伝説のコンシェルジュ飛べるボーイが奮闘する大冒険「グランド・ブタペスト・ホテル」といったウェス・アンダーソン作品にちょい役で出演。

 

大きく人生が変わったのは、悲劇をきっかけに故郷から遠ざかっていた主人公が、帰郷をせざるを得なくなり、再び過去に向き合うことになる姿を悲しみと微笑しみを織り交ぜて描いた「マンチェスター・バイ・ザ・シー」で、アカデミー賞助演男優賞ノミネートを果たします。

 

 

 

他にも、アメリカの田舎町を舞台に、娘を殺した犯人を一向に逮捕できない警察への怒りを、3枚の看板で露にしたことから街の住人の怒りや葛藤が見えていく「スリー・ビルボード」、監督自身の思春期を題材に描かれたなやめえる女子高生のリアルな悩みを描いた青春映画「レディ・バード」などに出演しています。

 

 

 

 

 

 

ほかのキャストはこんな感じ。

ジャレットの母・ナンシー役に、「アクアマン」、「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン。

ジャレットの父・マーシャル役に、「レ・ミゼラブル」、「マン・オブ・スティール」のラッセル・クロウ。

ゲイリー役に、シンガーソングライターで世界的Youtuberのトロイ・シヴァン

ヘンリー役に、「女王陛下のお気に入り」、「ふたりの女王/メアリーとエリザベス」のジョー・アルウィン

ブランドン役に、「レット・ホット・チリ・ペッパーズ」のベーシスト、フリー

他、映画監督のグザヴィエ・ドランらが出演しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

危険すぎるセラピーの実態と、本当の自分を見つめた先にたどり着いたもの。

監督はどんな方法で手がけたのでしょうか。

ここから鑑賞後の感想です!!!

 

感想

なんだこれ。施設のスタッフがどいつもこいつもバカに見える。

生きていく上で「フリをする」必要なんてない。

主人公の心理描写を丁寧に抽出した良作でした。

以下、核心に触れずネタバレします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認めない奴らのめんどくさいこと。

自身をゲイだと自覚した少年が、信心深い両親の言いつけ通り矯正施設に送られていくも、それを病気だ呪いだと教え込み、偽りと罵り追い込んでくあるまじき実態をベースに、自分の心に従って全うに行きたいと願うも両親の期待を裏切りたくない少年の葛藤、牧師としての立場故に息子のセクシャルマイノリティを何とか更生させたい父の想いを、トロイシヴァンの楽曲を中心に構成された優しく包み込むようなBGMによって、登場人物の心理描写をじっくり丁寧に抽出させる演出が際立った、決してこんな施設があってはならないと怒りを覚える良作映画でございました。

 

詳しくは知らないけれどキリスト教の教えは、男は女を愛さなければいけない、なんて言葉があるようで、同性愛は宗教上の罪とされています。

主人公の家族は正に信心深いお家で、しかも父親は牧師。

父として牧師として妻と息子に宗教の素晴らしさを教え、自分の理想通りに育ってくれることを願っていたわけであります。

しかし父の理想とは裏腹に息子のゲイが発覚。

どうしようこうしよう、長老たちに相談だと一目散に連絡し、息子の病気を治す施設があるということで、息子に半ば脅すかのような説得で施設へ向かわせるんですね。

 

どうして息子の性的嗜好が発覚したのかといいますと、大学の宿舎で仲のいい友人にレイプされてしまうんですが、このレイプした男が自分が通報されないための策として自宅に電話したことがきっかけ。

この時息子は自宅に帰ってきており、ドンピシャのタイミングで疑惑が生まれてしまうわけです。

普通そんな電話もらったら変ないたずら~とか言って軽く流すとか、それを信じてしまったとしてまず行うのは息子の心のケアとかだったりするのに、お父さんはその事実を鵜呑みにし、息子に事実かどうかを問い詰めるんですね。

そりゃあレイプですから宗教的に罪深いことなんでしょう、しかも同性にですよ。

ただこれ父としてでなく、完全に牧師という立場としてしか見ていない。

神秘である自分の息子がそんなことをされてしまって世間様にどう見られてしまうんだろう、みたいな。

で、施設へ行かせる説得の仕方も、もしお前が今の病気を治そうとしないなら家を敷居を跨がせないとか、親子の関係を解消するみたいなこといって、息子の気持ちを尊重させてくれないわけです。

父に黙って従う母親の顔を見たら、そりゃあ僕が悪いんだ…ってなるでしょうに。

 

送られた施設は、カリキュラムが終わる17時までは外部との連絡禁止に加え、外に出たとしても一切他言無用、外部の人間も中を見ることができないという固い約束事が決まっており、ベールは全く見えない状況。

まぁここでお母さんおかしいな、と思わないのが不思議で仕方ないんですが。

そして行われるのは、家系図に罪を行った者がいるか書けとか、心の清算というスピーチをビデオカメラに向けて話すことで自分の性的嗜好が罪であることを植え付けるような行いをしたり、男とはどういうモノか、男らしさとは、みたいなもんを立ち振る舞いや運動によって叩き込むという荒療治。

一体そんなことやって変わるわけないだろう、と思えてしまうしょうもないレッスンの数々が繰り返し行われているわけです。

 

胡散臭いと思うじゃないですか。でもこの施設でしっかり更生した人物が講師として働いてるわけです。

それがブランドンという男で、彼はいろんな罪を犯してきたけどここで変われたと参加者に伝えるんですね。成功者は語る、みたいに。

おぉマジか、だったら続けてみる価値あるなとか思う人もいるわけですよ。

 

登場人物の葛藤。

この施設にいる人物は様々で、グザヴィエドランが演じた役柄は、とにかく講師に気に入られ優等生を演じればきっとこの病気は治ると思ってる男。

途中ではジャレットの軽率な行動を注意したり、なかなか更生しないキャメロンくんを清めようと行われる儀式に率先して参加したりと完全に施設に加担しているのですが、豊穣を見るとかなり苦しそうな雰囲気が見え、ジャレット以上に葛藤しているようにも見えます。

金髪の少年ゲイリーも役を演じろ、そうしないと君はもっと大変なことになる、とサラッとジャレットに助言していましたが、彼もこの施設で更生されることなど決してないと思っており、直っているフリをして早くこの場から抜け出したいと願っているひとりだったように思えます。

レズビアンである女の子もいましたが、彼女も心の清算というスピーチをしたことで、本当の自分に罪の意識を植え付けられた感覚に陥り涙を流していました。

 

一番つらいのはキャメロンくん。

彼はアメフトの選手で体格もよく大柄な男性なんですが、顔立ちは弱々しくどこか優しい面影のあるメンズ。

父親にゲイがバレてボロカス言われ、それを色んな人に広められてしまうという辱めを受け施設へとやって来たわけです。

これを心の清算で話すときに、自分ではなく相手が悪いというようなニュアンスの発言を何度も注意され、それはお前の罪だと認めろと念を押され追い込まれていくんですね。

ただでさえメンタル弱そうなのにここまで追い込まれたらどうなるのか、と見ていて心配になります。

結局キャメロンはその後体に憑りついた悪魔を追い払う儀式の生贄にされ、スタッフや家族らから聖書でお尻をはたかれるんですね。

浴槽に突っ込まれて清められるシーンもありました。これは耐えがたい。

 

ジャレットも最初こそ、自分の気持ちを認めてもらえない歯がゆさを抱えながらも両親に変わった姿を見せたいと施設に入りますが、徐々に不安と恐怖と苛立ちが蓄積されていきます。

この時のルーカス・ヘッジズの表情がまた何とも言えない表情をしていて、これを言葉で語らないんですよね。

特に印象的なのは、モヤモヤを払拭したくて外へジョギングに出かけたシーンで、バス停に置かれた上半身裸の男が映った電子公告に反射的に立ち止まって手で触れてしまうんだけど、ふと我に返ってモノ投げつけて破壊してファ~~~ック!!って葛藤するところ。

変わりたいけど変われない、いや変わりたくない、なぜ両親は僕をこんな目に遭わすのか、なぜ施設の人間はあんな意味の分からないことをして僕たちを苦しめるのか、なぜ自分を偽ってフリをしなければいけないのか、そんなに同性を好きになることは罪なのか、といった様々な問題にとうとう爆発してしまった瞬間だったように思えます。

 

この後ジャレットが施設でとる行動はそこまでの派手さはないものの、もうこれ以上ここにいると心が折れてしまいそうな崖っぷちの気持ちが垣間見え、偽りの自分と決別するかのような意志の強さも透けて見えた気がします。

 

親父のドラマがもっと見たい。

さて、この映画は矯正施設の実態を暴くかのようなドキュメンタリーチックな印象が強く見えた作品でありましたが、他にも家族の物語でもありました。

 

ジャレットに関しては色々解説したのでわかると思いますが、母親であるナンシーの変化も見過ごすわけにはいきません。

これまで牧師である夫の言う通り過ごしてきた母でしたが、ここまで追い込まれていたとは思ってもみなかった息子の姿を見て考えを改めていくんですね。

施設へ送ることを命じた父親は、母と相談してといってましたが、実は意見など聞いていなかったのです。妻は男たちが話している場で何も言う資格がなかったのです。

息子のためだからと黙っていたわけですが、それは違う、と父を説得する側に回ったんですね。

 

こうなると、牧師であり父親であるマーシャルが全て悪者、って構図になるのかと思うんですが、彼も彼なりに葛藤をしてるんですよね。

 終盤まであまり顔を出さず、電話越しで施設で更生するんだ、としか言わないために父親の心境ってのはやはり変わらないのか、と思ってたんですが、施設から出て時が経ったシーンでは、親子の会話は減ったもののジャレットの近況を気にしていました。

決して理解できないわけではなく、彼の立場も考えたうえで歩み寄っていた気持ちはあったみたいで、ただ真正面から彼の考えを肯定するには難しかったのかなと。孫が見れない悔しさってのは中々辛いものがあるわけだし。

それでも自分の息子ですから、ちゃんと愛情は持っていたし見守っていたわけで。

 

これジャレットの映画ですけど、こっちの親子の物語を前面にしたらもっといい映画になった気がするんですけどね。

それこそビューティフルボーイのような。

もちろんジャレットのように人それぞれの価値観があって、愛する対象のそれぞれで自由であるべきことで、でもそこには立場として許せない認められない部分があるわけで、うまくいかないことなんだけど、根っこにはちゃんと愛があって近寄ろうとする努力があって。

そう思わせるように父親の心境の変化に時間を割くような配分をしたらよかったのになぁと。

一番言いたいのはそこじゃないってのはわかってるんですけど。

 

 

最後に

こういう事実に基づく話あるあるじゃないですけど、現在の登場人物の状況をテロップ表記で流されるんですけど、一つ衝撃なのがあって。

え~!?お前あんな事やっときながらそっちだったのかよ、と。

じゃあなぜにあんなことを平気でやってたんだよ、って開いた口がふさがりませんでした。

 

何かに妄信してしまうとそれが絶対になってしまうわけで、いわゆる原理主義者って人たちはそういうところまで行ってしまってるんですかね。

だからその教えに背くものは罪深き者ってレッテルを張られて、正しい道へと導かせようとするのかと。

ただその正しさってのはあくまでそっち側の話で、本当にその行為は正しいのかと。結果誰かを苦しめているだけの行為なんじゃないかと。

一旦すべてを受け止める、という考えを常に持っていないと本当に偏見だらけの世の中になっちゃいますよ。

と、簡単にはできないんですけどね。

でも他人ならまだしも親子ならさ、まずは息子の言い分、聞いてあげてよと。

 

しかしジョエルエドガートンは良い映画作りますよ。

題材を見つけるのがうまい。あとはもうコンスタンスに良質な映画を作り続ければいい。

内容もさることながら、登場人物の心の機微をきちんと見せた今作、非常に良かったです。

というわけで以上!あざっした!!

満足度☆☆☆☆☆☆★★★★6/10