蜘蛛の巣を払う女
デヴィッド・フィンチャーが監督し大ヒットした映画「ドラゴン・タトゥーの女」の続編です。
残念ながら監督キャスト総入れ替えとなってしまい、前作のような満足度が果たして得られるのかが不安要素。
それでも期待したいのは、今作を務める監督が「ドント・ブリーズ」の監督ってことろとか、前作同様なかなかスタイリッシュな作りになっているこなど、これはもしかしたら前作以上にスリリングな描写が多数あって、めっちゃドキドキしてしまうのかも!?と小さな希望を抱いております。
そんな気持ちで早速鑑賞してまいりました!
作品情報
全世界で累計9000万部以上の大ベストセラーとなった「ミレニアム」シリーズ。
デヴィッド・フィンチャーが監督した「ドラゴン・タトゥーの女」から7年の歳月を経て、ついに続編が公開される。
今作では凄腕ハッカーの女リスベットにまつわる過去、そして忌まわしい記憶が明かされ、再び彼女に試練が訪れる。
前作で監督を務めたデヴィッド・フィンチャーは製作総指揮にまわり、「ドント・ブリーズ」で世界中を震撼させた監督が彼の後を引き継ぎ、映画によりホラー要素とスリル要素を注入させていく。
「蜘蛛の巣を払う」とは過去を葬り去るという意味なのか、ならば蜘蛛とは一体何を指すのか。
果たしてリスベットは巣から逃れることができるだろうか。
あらすじ
冷え切った空気が人の心まで凍てつかせるストックホルムの厳しい冬。
背中にドラゴンのタトゥーを背負う天才ハッカー、リスベット・サランデル(クレア・フォイ)に仕事が依頼される。
「君しか頼めない――私が犯した“罪”を取り戻して欲しい」
人工知能=AI研究の世界的権威であるフランス・バルデル博士が開発した核攻撃プログラムをアメリカ国家安全保障局から取り戻すこと。
それは、その天才的なハッキング能力を擁するリスベットにしてみれば簡単な仕事のはずだった。
しかし――、それは16年前に別れた双子の姉妹、カミラ(シルヴィア・フークス)が幾重にもはりめぐらした狂気と猟奇に満ちた復讐という罠の一部に過ぎなかった。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけるのは、フェデ・アルバレス。
今ソニーピクチャーズがイチオシしている、または育てたい監督なのではないでしょうか。
「死霊のはらわた」をリメイクし、そりゃあ若者たちの自業自得だろうという突っ込みも忘れてしまうほど恐怖で震えた「ドント・ブリーズ」で世界的に注目されたわけで、そんな彼が次に手がけるのが、まさかの「ミレニアム」シリーズかよ!と。
冒頭でも書いたとおりやはりこの映画はデヴィッドフィンチャーだよなぁという思いが強いわけですが、彼はもう「ゴーンガール」以降商業映画に興味がない印象で、ドラマにばかり尽力しています。(一応ワールドウォーZの続編を彼がやるって話だけど)
多分2時間では彼が描きたい映画は実現しない、という答えに行き着いたのかも知れません。
そんな彼に代わって白羽の矢が立ったアルバレス監督。
この映画でどれだけビビらせてくれるのか楽しみです。
続編はこちらをどうぞ。
キャスト
今回主人公リスベット・サランデルを演じるのはクレア・フォイ。
前作では、マユ毛全剃りソフトモヒカンでピアスだらけの痛々しさを見せつつも、めっちゃ積極的で一途な女リスベットを、いまや世界のトップスターとなったルーニー・マーラが演じておりました。
アレで彼女を知り虜になった私モンキーですが、今回続投には至らずファンとしては非常に悲しい気持ちでいっぱいです。
今作のリスベットは前作からだいぶ地味になったなぁというのがファーストイメージ。もっとクレイジーな感じにしてほしい、のが私の希望なんですが、きっとソニーの偉い人にならないとそんな注文を受注してくれないでしょう。ばかな俺。
今回を機に彼女もルーニーのように売れていくのでしょうか。
デミアン・チャゼル監督の最新作「ファースト・マン」にヒロインとして出演しています。
今後の彼女に期待ですね。
そしてリスベットの双子の妹カミラを演じるのは、シルヴィア・フークス。
多分顔と名前が一致してない人が多いでしょう。
彼女は「ブレードランナー2049」でウォレスの忠実な僕、後ろ縛って前髪ぱっつんがトレードマークのラヴちゃんを演じた方なんですね。
よ~くみると目元がそっくり!って本人だから当たり前なんですけど、まぁものすごい変わり様ですよね。
ちなみに「ネイビー・シールズ/ナチスの金塊を奪還せよ!」にも出演していて、これ見ると彼女がどれだけ超絶美人かご理解いただけるかと。
他のキャストとしては、前作でダニエル・クレイグが演じた雑誌のジャーナリスト・ミカエル役を、「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」のスヴェリル・グドナソンが演じます。
リスベットの過去とは、また双子の妹は彼女に何をしようというのか。ストックホルムの雪化粧は、黒と紅どちらに染まるのか。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
前作と比較しなきゃ全然面白えじゃんっ!!
成長したリスベットの格闘シーンとハッキングシーンがエンタメ要素を増加してるから見る価値ありですぞ。
以下、核心に触れずネタバレします。
全体的にさっぱりした。
相変わらずか弱い女性に力で伏せる男どもに制裁を加える超凄腕ハッカーのリスベットが、あれよあれよと張り巡らされた蜘蛛の巣を辿ってしまい、双子の妹カミラの罠にはまってしまい、さぁどうやってこの罠からこの蜘蛛の巣から抜け出すのか、という物語を、無駄に長い前作と差別化を図るべく、監督独自のスタイリッシュさとエンタメ性でインパクトをコンパクトにすることでより娯楽性に特化した作品であったと同時に、まだ情緒不安定であった前作から逞しく成長し人間らしさを見せたリスベットのカッコよさ強さを覗かせた映画でございました!!
どうしたってこの映画、巨匠デヴィッドフィンチャーという過去がチラついて比較してしまいがちで、それによって評価してしまう人も多いかと思いますが、そこは割り切って鑑賞することを薦めたい。だって過去を払拭するお話なんですから。
確かに前作はクソカッコイイオープニングから、ルーニーマーラという格別美しい女優によって形成されたリスベット像が途轍もないインパクトを残し、フィンチャー色全開のお話でありました。
僕もすごく好きな作品でありましたが、あの映画無駄に長いんですよ。特に事件解決後の件ね。あそこをサラッとやってくれたらもっと良かった。
もっと言うと彼の映画ってねちっこいんですよどこか。
だからあまり何度も観たいと思えないというか。
決して彼を否定してるわけではなく、あくまでそういう作家性を持った人って意味でそれはそれでいいのよ、ただ悪いところもあるのよと。
で、今作なんですが、そういうねちっこさを嫌う人のためを思ってか、すご~くさっぱりした映画になっております。さっぱりって言い方もあれだけど、なんだろうノドごしがいい?小ぎれいになった?
とにかく非常に見やすい、尚且つ解りやすい。
もっと突っ込んで言うと、物語が一切だらけることが無い。
今回視点が3つばかり出てくるんですけど、前半はこれをなるべく短めに淡々と起承転結の起の部分を見せていくんですね。
そこからいきなりバイクに乗るリスッベトVS警察のチェイスシーンを挟んだり、ミカエルとの再会における距離感から読み取れるロマンス要素、刺客とのせまい浴室での格闘シーン、あたいの能力なめんなよ!って具合にハッキングでのある人物の誘導、意外な黒幕の正体というサプライズ、そしてクライマックスでのリスベットピ~ンチの時に現れる助っ人!などなど、要所要所でイベントを発生させることでつまらなくさせない、だらけさせないように展開を工夫しているのが見て取れます。
これは「ドントブリーズ」でも感じたことですが、ちゃんと観衆を楽しませるための工夫をここでもしっかり用意しているのが彼の持ち味なのかなと感じた作品でありました。
リスベットに焦点を当てた物語
前作はミカエルとリスベットがタッグを組んでって感じでしたけど、今回のお話はざっくり言えば、ミカエルを完全な脇役として機能させることで、リスベット1点に絞ったお話といえます。
まぁそうしなければ双子の妹カミラと対峙するって展開が弱くなる気がしますし、あくまで物語の核なる部分はリスベットの「過去」ですから。
一体全体どういう物語かというと、リスベットが依頼された案件は、NSA(国家安全保障局)に奪われたファイアウォール計画のファイルを作った張本人の下へ返す、というもの。
このファイアウォール計画、世界中の核兵器の起動ボタンをこのファイルがあればだれでもポチットとボタン一つで発動させてしまう、というとんでもねえものなんですね。
これをアメリカの手に渡したらいかん!俺なんてもん作っちゃったんだ・・・と製作者であるバルデルさんはリスベットにお願いするわけです。
これをあっさり取り戻すんですけど、別の者たちがリスベットの家を発見し奪ってしまうわけです。
このファイアウォール計画、パスワードが複雑でリスベットでも開けることができないんですね。きっと奪った者たちも開けられない、そしてそのカギを握っているのはバルデルの息子アウガストであることを確信します。
どうしようこうしようと考えたリスベットはハッカー仲間に身を隠しながらバルデルさんの居場所を探してもらいます。
その一方でミカエルは、自分の会社が別の人間によって経営されてしまったことに苦悩中。旦那のいる女性といちゃつきながらも記事が書けないでいます。
そこにリスベット登場。ミカエルの取材能力を買っている彼女は、ファイルを盗んだ男を探してほしいと依頼します。
おいおい君を3年も探して見つからなかったんだから見つかりっこないだろう、というものの、久々に会えた彼女のためにやる気をみなぎらせるミカエル。
警察の伝手を使い情報収集していくと「スパイダーズ」という謎の集団の仕業ではないかというところまでたどり着きます。
またまたその一方で、NSAで働いていたセキュリティ専門家のカザレスは、ファイルを盗んだリスベットを捕まえるために単身ストックホルムへ。
警察の目をかいくぐりながら彼女を探しますが、リスベットの方が一枚上手でいいようにあしらわれてしまいます。
やがてリスベットは自分を襲った奴らがバルデルさんの家に侵入したタイミングで自分も向かいますが、相手の攻撃により負傷、バルデルさんは殺され息子アウガストが連れ去られてしまいます。
彼を取り戻すため身動き取れない体をなんとか起き上がらせ車で追いかけます。
これまた彼女のハッキング能力によって見事アウガストを取り戻すことに成功しますが、追手の中に赤いコートを纏ったブロンドヘアの女性が橋の向こう側に。
それはリスベットの「過去」ともいえる存在、双子の妹カミラだったのです。
なぜ彼女はこの場所にいるのか?3年前に自殺したと聞いたはずなのに。
脅え震えるリスベット。
果たしてファイルを回収することができるのか、ミカエルとの仲は、カザレスをおいはらうことはできるのか?
という流れ。
あくまで視点は3者による構図になっていますが、この3者が最後ひとつにうまくまとまって行き、登場人物全てにオチがちゃんと用意されているあたりは脚本が巧いなぁと感心しました。
前作で父親から暴行を受けていたというエピソードが明かされていましたが、今作はその部分を明かし、全く別の道を歩んでしまった妹と対峙していくというモノになっています。
劇中アウガストが父を亡くしたにもかかわらず平然とリスベットとチェスをするシーンがありますが、そこでアウガストはこう話します。
父いわく「過去」はブラックホールみたいなもの、それを考えたらひたすら飲み込まれていく、だから前を向いていかなきゃいけないんだ、と。
今回リスベットはその過去という名のブラックホールに飲み込まれてしまうのではないか、というところまで話が進んでいきます。
自分がもっと手を伸ばしていれば妹は全うに生きていられることができたのではないかという自責の念と、カミラの登場によって幼少期に体験した数々の悲劇がフラッシュバックすることで、徐々に追い込まれていくリスベットの苦悩。
その過去と向き合い決別するために、リスベットはこの事件を終結させようと奔走していくんですね。
エンタメ要素がたくさんあって楽しいのだ。
今作は途中でも書いた通り、アクションシーンありありの、ハッキング能力をフル活用してうまく追手の目をかいくぐってミッションを遂行させる件ありありなお話でした。
オープニング、リスベットといえばやっぱりか弱い女性を暴行する男許しまへんで!というお仕置きシーンが描かれます。
今俺裁判とかバタバタしてて君が余計な事言うからこんなことしちゃったんだ、ごめんよ愛してるこれでも飲んで気を落ち着かせて、など、テメーの都合ばかりのらりくらりと語るどこぞのCEO。
どうやら妻に暴行した模様。
そこに現れる黒い天使リスベット!
部屋に飾られた銅像を倒すことでワイヤーが彼の足の下に絡みつき、見事に宙づり状態。
なんだチミは!なんだチミは!?ってか、そうですあたすが暴行男制裁お姉さんのリスベットです。
え~あなたはぁ~娼婦を暴行したにもかかわらず無罪にさせたあげく、奥さんにも暴行するというとんでもないクソ野郎です、したがってあなたの口座の20%を暴行した女性に送金しちゃいまぁ~す!
とお得意のハッキングで口座を勝手にいじり、無事送金。
あ、奥さん警備に電話する?あなたの口座にお金送金しとくよ?どうする?
はい、いい子ね、子供と一緒に逃げなさ~い。
とまぁこんな具合に、あ、あのリスベットが帰ってきた!と思わせるシーン。
序盤のツカミとしてはばっちりです。
その後も家の周りでの警察とのカーチェイスシーンでは、追い込まれて逃げ場を失ったリスベットが橋の先まで突っ走って氷の張った川にそのままダイブ!川の氷は割れることなく向こう岸まで逃げ切るというスリル満点のチェイスシーン。
まだまだありますよ!
父親を殺されたことで一人になってしまったアウガストを、母親のいるサンフランシスコまで無事送り届けたいが、スパイダーズがきっと狙っている、どうしようこうしようあいつ使おう!と、せっかくリスベット追いかけてストックホルムにやってきたのに見事に強制送還で空港で身柄を拘束されているカザレスを使おうという作戦。
まず赤い帽子をかぶりトランクケースをもって空港に現れるリスベット。
うまく旅行客の輪の中にわざとトランクを置き忘れ、職員に回収させます。
トランクを職員がスキャンすると中にはスマホ1台にディルドがいっぱい(どこで集めたw)。
そのスマホが発動することでハッキング成功。あえて帽子をかぶった自分の姿を防犯カメラに映すことで警備員が一斉に彼女を追いかけることで警備が手薄になり、拘束中のカザレスの部屋の鍵を解除し、彼を誘導します。
そして警備の目をかいくぐりながら彼に協力を依頼。このままアメリカへ帰るか、それともファイルのカギとなる息子をアメリカへ連れ帰るか、どうするかを天秤にかけさせ、見事に成功させるんですね。
この件がテンポがよくてそれでいて追われている状況だからスリルもあって非常に楽しい。
クライマックスもリスベットピンチ!って時にハイテク技術を使って彼女を助ける件があるのでこれもお楽しみに。
最後に
あくまで「ドラゴンタトゥーの女」よりも娯楽性があって楽しい!という感想でしたが、やはりクレア・フォイよりもルーニー・マーラのリスベットの方が魅力的。
リスベットがあそこまで逞しいとちょっと成長し過ぎ・・・って思いはありますし、まだミカエルに未練があるリスベットってのが今回強くなかったので、その辺のロマンス要素がもうちょっとほしかったなぁと。
あとはカミラのキャラをもっと凶暴にした方がよかったなぁと。父親に色んな暴行をされたからこその異常さってのはもちろんあったんだけど、もっと異常的な行動を見せてもよかったよなぁ、それでこそのリスベットの脅える表情の方が見てるこっちがゾクゾクするというか。
リスベットの背中にあるタトゥー、ドラゴンの翼が一時傷を負う場面がありますが、それをミカエルという大天使が傷を縫うというシーンが印象的です。
まだ彼女には彼が必要なんでしょう。次に再会するときはいつ訪れるのでしょうか。
また別の監督で続編をやってほしいですね。
というわけで以上!あざっした!!
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