モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「鳩の撃退法」感想ネタバレあり解説 結末を見ても嘘かホントかなんてわかりません。

鳩の撃退法

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 今回観賞する本作は、小説と現実、過去と現在が交錯していく進行とのこと。

劇中で語られる「小説」がどこまで本当か曖昧なため、現実との境界線がわからないそうなんです。

よって、観る人によって「結末が変わる」そうなんですね。

 

今やTVをつければ「謎解きタレント」がいて、「リアル脱出ゲーム」なんて体験型の謎解き施設もあって、しかもいろんな人が「考察」と銘打って「これが答えだ!」と語るくらい「謎解き」がブーム。

 

だから本作はきっと「結末」についてみんなが「こうなんじゃないか?」と考える楽しみがありそうです。

僕も考察ではなく「解釈」という形で結末について語れればと思いますが、基本感想屋なんで、お手柔らかにw

いざ、感想です。

 

 

 

作品情報

 直木賞作家の佐藤正午原作の同名小説を映画化。

上下巻1100ページに及ぶため映像化不可能と呼ばれた作品を、映画・ドラマ問わずマルチに活躍する監督の手によって、『謎解きエンター「転」メント』として映像化。

 

「富山でドライバーとして働く男に起きた話」を執筆した天才作家の小説。

「家族の神隠し」、「にせ札の行方」、「裏社会のドンの存在」など本当かウソかを、編集者らの検証の視点で描いていく。

鳩とはいったい何か、そしてそれを撃退する方法とは。

 

小説と現実、過去と現在が交錯することで、全く予想のつかない結末へと導かれていく。

 

劇中音楽には、兄弟ユニットでメジャーデビューし、現在兄のソロプロジェクトとして活動しているKIRINJIが担当。

まるで言葉遊びのような詩世界と、これまでにないエッジの効いたサウンドで物語を盛り立てる。

 

この物語の結末は、あなた次第。

 

あらすじ

 

かつて直木賞も受賞した天才作家・津田伸一(藤原竜也)は、とあるバーで担当編集者の鳥飼ほなみ(土屋太鳳)に書き途中の新作を読ませていた。

 

〈あらすじ〉

一年前、閏年の二月二十九日、雪の降る夜。

かつては直木賞も受賞したが今は富山の小さな街でドライバーとして働いている津田伸一は行きつけのコーヒーショップで偶然、幸地秀吉(風間俊介)と出会い、「今度会ったらピーターパンの本を貸そう」と約束をして別れる。

 

しかし、その夜を境に、幸地秀吉は愛する家族と共に突然、姿を消してしまう。

それから一か月後、津田の元に三千万円を超える大金が転がり込む。

 

ところが喜びもつかの間、思いもよらない事実が判明した。

「あんたが使ったのは偽の一万円札だったんだよ」

 

ニセ札の動向には、家族三人が失踪した事件をはじめ、この街で起きる騒ぎに必ず関わっている裏社会のドン・倉田健次郎(豊川悦司)も目を光らせているという。

倉田は既にニセ札の行方と共に、津田の居場所を探し始めていた。

 

 

神隠しにあったとされる幸地秀吉一家、津田の元に舞い込んだ大量のニセ札、囲いを出た鳩の行方、津田の命を狙う裏社会のドン、そして多くの人の運命を狂わせたあの雪の一夜の邂逅…。

 

富山の小さな街で経験した出来事を元に書かれた津田の新作に心躍らせる鳥飼だったが、読めば読むほど、どうにも小説の中だけの話とは思えない。

過去の暗い記憶がよぎる鳥飼。

小説と現実、そして過去と現在が交差しながら進む物語。

 

彼の話は嘘?本当?

 

鳥飼は津田の話を頼りに、コーヒーショップ店員・沼本(西野七瀬)の協力も得て、小説が本当にフィクションなのか【検証】を始めるが、そこには【驚愕の真実】が待ち受けていた——。(HPより抜粋)

 

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監督

本作を手掛けるのは、タカハタ秀太

 

TVドラマやバラエティ、MVやCMなど多ジャンルで活躍するお方。

デビュー作は草彅剛主演の「ホテルビーナス」。

 

こういう映像クリエイターなる方の作家性ってのは、なかなか見つけにくいものなんですが、枠に捉われない斬新な手法で見せてくれる気もします。

 

 

登場人物紹介

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東京

  • 津田伸一(藤原竜也)・・・東京・高円寺のバー「オリビア」でバーテンをしている、元天才作家。鳥飼に書き途中の小説を読ませる。どうやら最近まで富山に滞在していた模様。

 

  • 鳥飼ほなみ(土屋太鳳)・・・津田の担当編集者。過去に津田が起こしたトラブルに巻き込まれて以来、彼の小説がフィクションなのか疑念を持ち続けている。

 

  • 堀之内(濱田岳)・・・慈善家の男。津田を訪ねて「オリビア」にやってくる。
  • 加奈子(坂井真紀)・・・バー「オリビア」のママ。鳥飼と共に小説の結末を見守る。出身は富山。

 

富山

  • 津田伸一(藤原竜也)・・・かつては直木賞も受賞した天才作家だったが、現在は富山で「女優俱楽部」の送迎ドライバーとしてその日暮らしを続けている。ある日ひょんなことから大金を手にし、思いもよらぬ出来事に巻き込まれていく。

 

  • 沼本(西野七瀬)・・・津田行きつけのコーヒーショップの店員。❝ぬまもと❞と呼ばれているが、正しくは「ぬもと」。津田のことが気になる様子。

 

  • 幸地秀吉(風間俊介)・・・読書好きなバーのマスター。ある日偶然津田と出会い、小説の談議に花を咲かせた。しかしその後、家族と共に突然姿を消してしまう。
  • 幸地奈々美(佐津川愛美)・・・秀吉の妻。4歳の娘と家族3人で幸せに暮らしている。

 

  • 倉田健次郎(豊川悦司)・・・裏社会を仕切るドン。この街で起こる事件には必ず彼が関わっているといわれている。囲いを出た鳩=にせ札と津田の行方を追う。
  • 山下(村上淳)・・・倉田の手下。日本刀を持っており、キレると手が付けられない。ある理由で津田を追いつめる。
  • 多々良(駿河太郎)・・・倉田の手下。鳩の行方をくまなく探している。
  • 大河内(浜野謙太)・・・多々良の弟分。血の気が多くすぐに暴れる。

 

  • 川島社長(岩松了)・・・デリヘル「女優倶楽部」の社長。町の事情に精通しており、ニセ札を手にした津田にその危険性を忠告する。
  • 加賀まりこ(桜井ユキ)・・・源氏名。津田にお金を借りている。
  • 晴山次郎(柿澤勇人)・・・街の郵便配達員。加賀まりこが良く貢いでいる。

 

  • まえだ(リリー・フランキー)・・・床屋「まえだ」の主人。重要な情報を持っている。
  • 房洲老人(ミッキー・カーチス)・・・古本屋「房州書店」を営む。世話好きで津田の良き話し相手。

(以上HPより)

 

 

 

 

 

 

 

 

 クセの強いキャラを演じさせたら日本一の藤原竜也ですが、今回は彼のクドさにやられるのではなく、彼の仕掛ける謎にやられる作品かもしれませんね。

ここから鑑賞後の感想です!!

 

感想

う~ん、これ「事実かフィクションか?」とかどうでもよくない?

「一家失踪事件とニセ札がどう結びつくのか」って謎を探る方が面白かったです。

以下、ネタバレします。

 

 

 

 

 

 

ほなみ視点で「どうなるの?」と観るべき。

直木賞作家が富山で体験した事件を元に執筆した小説が果たして「事実かフィクションか」を巡る物語を、小説家の希望的観測を含めた「現実と小説内の入れ子構造=劇中劇」にすることで、観衆に「謎解き」を生む面白さは十分に光ったものの、結末での大オチに爽快感を得ることができず、個人的にそこまで絶賛できるような作品ではありませんでした。

 

この手の映画は、「この俺が全て見切ってやる!」って意気込みで見てしまうと、結末の時点で「なぁんだそんなもんか」と落胆することがあるため、なるべく隅々まで見ずに流れに身を任せるのが一番楽しい見方なのかなぁと僕は思うんですね。

 

といっても、結局本作のどこが事実でフィクションなのかって線引きを具体的に語ることは、僕程度の力量では解説することができないんですがw

 

ただなんとなく「あそこはフィクションだな」ってのは、津田が登場しないシーンを見れば一目瞭然なのかなと。

 

「鳩が囲いを出た」ことで始まる「鳩の行動ルート」は、明らかに津田の妄想であり推測。

結末に関しても幸地がピーターパンの小説の中の一文を引用して語ったように「どうしようもない時にどうにかなってほしい」という奇跡を願った津田の思いと、小説家として読者を納得させるためのご都合的なものみたいな。

 

まぁそこに関しては一定の理解と納得はしたものの、本作を鑑賞して一番ガッカリだったのは、結局のところ「津田伸一自身もこの事件の真相も、自分が書いた小説が果たして真実かどうかもわかってない」ところ。

 

もちろん原作通りに描かれた作品だとは思うんです。

けれど、宣伝文句を鵜呑みにした僕は、やっぱりこの天才作家が書いた小説が「事実か否か」って部分に執着して、もっと煽ってほしかったなぁというか。

 

「果たして僕が書いた小説は事実かな?」みたいに、津田自身がもっとほなみを翻弄させるような、がっつりミステリータッチにした方が面白いんじゃないかなと。

 

 

とはいえ、一体この話の結末がどう生き着くのかって部分に関しては、非常に面白く描かれていたんですね。

 

書店のじいちゃんが遺したバッグの中に、ついさっきまで津田が持っていた「ピーターパンの小説」が入っていたのかに疑問。

そこから幸地は一体何者なのか、倉田は一体何をしようとしてるのかから始まり、登場人物が事件にどう絡み、誰と誰がどう繋がるのか。

そういった接点が次々と生まれてくることで、「ニセ札の行方」と「一家失踪事件」に結び付いてく展開。

 

 

あそこすげえひっかかるんだけど、物語はどんどん進んでいくから考えてたらキリがない!ん~!!まぁいいや次の謎頂戴!みたいに進んでいく展開は、なんだかんだで没入しちゃいましたね。

意外とセリフの量が多いうえに、役者・藤原竜也による緩急をつけたセリフ回しによって、さらに観衆を困惑させる作りになっている。

 

これ多分ですよ、登場人物がどういう人たちでどういう繋がりなのか、あらかじめ調べてから見ると、ついていけるのかなと。

相関図を頭に入れておけば、だいぶ物語を追えるのかなと。

 

 

余談ですが、上映が始まるや否やローマ字表記で「dentsu」って出た時点で、僕は見事に宣伝につられたんだなぁとw

冒頭に行く前に少々萎えてしまいましたw

もちろん色んな映画に絡む会社だってのは熟知してるんですけど、まさか「dentsu」って出てくるとは思わないじゃないですかw

 

特にオリンピックはじめ、いい話を聞かないってマイナスイメージを抱いてしまってるわけで、余計意識してしまったというか。

これに関しては映画の外側の事なので、意識してしまった僕が悪いです、はい。

 

 

とにかく、この映画はフィクションだと言い張る津田に疑惑の視線を向けるほなみの視点で「え?これ実際に起きたことなの?」と身を投げて見るのが一番楽しい見方かなと思います。はい。

 

事件の流れ

「一家失踪事件」と「ニセ札事件」がどう繋がっていくのか、ザックリ説明しようと思います。

 

女優倶楽部でデリヘル嬢の送迎ドライバーの仕事をしていた津田は、深夜まで営業しているコーヒーショップで幸地と出会います。

 

深夜に本を持ってきて時間を潰す幸地を、元小説家の視点から読み解く津田は、彼にあまりいいことが起きてないことを見抜く。

 

そして「どうしようもない時にどうにかならないか願う」時のおまじないとして手を叩く仕草を、津田が持ってきた「ピーターパン」の小説の一文を引用して披露。

これが物語の結末に繋がっていきます。

 

 

津田は帰り道、女優倶楽部で働いている「加賀まりこ」が、売上金を事務所に持ってきてない事を社長から告げられ、連絡をとります。

 

するとまりこは、彼女が入れ込んでいる郵便配達員の晴山と自宅におり、彼を駅まで送るよう頼まれます。

 

ここで津田は、彼女に貸していた3万円を返してもらい、ピーターパンの小説の中に挟んでもらいました。

 

 

駅まで送るはずの晴山は、別のところで降ろしてほしいと津田に告げます。

別の女性の車に乗る晴山の姿を津田は目撃。

 

その後社長がすっぽかしてしまった面接相手が待っているファミレスに直行。

面接相手は子持ちの女性でした。

彼女を家まで送り届けて、その日は終わります。

 

 

津田が足しげく通う「房州書店」の店主が亡くなりました。

 

津田は店舗の土地を管理する不動産屋の娘と不倫中。

彼女を通じて店主から頼まれたキャリーケースを受け取るのと同時に、「一家失踪事件」があったことを聞かされた津田。

店舗の外に捨てられた新聞を漁り、事件の概要を知るのでした。

 

 

ケースには鍵がかかっていて、4ケタの暗証番号を解読しないと開けることができません。

悩む津田は店主の奥さんの命日が「2月29日」であったことから暗証番号を解読。

中を開けると、総額3003万円が入っていました。

 

とりあえず端数の3万円を財布に入れ、大金を手に入れたことから心機一転と散髪に。

ここで1万円を使います。

 

 

後日、社長から「君が行った床屋の『まえだ』からニセ札が出た」という事件を耳にします。

 

事件当日1万円札を使ったのは津田のみでしたが、社長はもしかしたら自分が渡した給料の中にニセ札が紛れ込んでいた可能性があると推測。

これ以上使うなと津田に強く忠告します。

 

 

そこまで強く忠告した理由は、この一連の事件に裏社会のドンである倉田健次郎が絡んでいるから。

よそから来ただけに、そんな奴がいるのかと疑問に思うも、床屋の店主に聞き込みをしたり、コーヒーショップの店員・沼本に質問したりと奔走。

 

やがて「ニセ札事件」の持ち主が倉田であり、彼と幸地は深い関係にある事が明かされ、「一家失踪事件」と繋がっていくのであります。

 

 

・・・すごくザックリ説明しましたし、何より津田の視点しか説明していないので、他の登場人物の部分や、誰がどう繋がっていくのかはネタバレになるため伏せました。

 

 

色々あるんですよ。

 

幸地自身が一体何者なのかや、彼の奥さんのことや身ごもった子供のこと、加賀まりこが入れ込む郵便配達員の裏や、何故持っていたはずのピーターパンの小説を書店の店主が持っていたのかなど、全部詳細をかいてしまうと楽しみが減ってしまうのかなと。

 

 

序盤で津田が語る「3匹の鳩」とはいったい何を指すのかもそうだし、「つがいの鳩はいまどこでどうしてるのか」や「鳩が囲いを出た」の意味、倉田と幸地の出自と慈善家の接点も、劇中では深く言及してないものの、「あ~なるほど、そう繋がるのね」となっていくわけで。

 

 

余計な一日が増えると、余計な出来事が増えると嘆く津田。

まさにうるう年の2月29日に幸地と出会ったことで、この「一家失踪事件」と「ニセ札事件」に関わってしまう羽目になり、小説家としてのネタになることはもちろん、物語は筆者の一存で虚構だけども救うことも可能だってことを示した小説内のラストだったのではないでしょうか。

 

さらには希望として描いた虚構が、過程は違えど現実で着地するという結末もステキだったりするのかなと。

 

最後に

結局ほなみが事実かフィクションかを疑う理由は、前回津田が出した小説の中で実際にあった不倫の内容を書いてしまい、色々叩かれてしまったから。

だからほなみは、津田の新作を疑うんですね。

 

だったら序盤で富山で起きた事件が新聞に載ってやしないかとか調べりゃいいのに。

後半でようやく現地に行って調査するんですよね。

僕だったら、ハナッから疑ってるんだからまずは記事を集めりゃいいのになぁなんて思いましたw

 

一番気になるのは、床屋の店主がパチンコ狂の義理の姉に一万円を借りに来るシーンがあるんですけど、これをバーの店主の加奈子を演じる坂井真紀が演じてるんですよね。

実際に加奈子と床屋の店主は先輩後輩の関係なんですけど、なぜに義理の姉として坂井真紀が演じてるのかがよくわかりません。

津田が登場してない部分の劇中劇のシーンなので、フィクションだということなんでしょうか。

 

どうもここだけひっかかってw

 

また、クズを演じさせたら日本一の藤原竜也は、本作でもやっぱりクズな男として登場していたのは嬉しかったですねw

 

元直木賞作家から一転、富山でデリヘル嬢の送迎ドライバーとして働いてますが、ヤクザに目をつけられたり、不動産屋の娘と不倫していたり、挙句の果てにはヤクザの女に手を出す始末。

書店の店主に金を借りてたりもしたし、色々だらしない男でしたw

 

とりあえず西野七瀬は足が細いんだなぁってのと、寝間着でカップ焼きそばを頬張る土屋太鳳は大きな収穫でしたw

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10