イット・カムズ・アット・ナイト/IT COMES AT NIGHT
ここ最近のホラースリラー映画のトレンドとして、指示語が多いなぁと思う今日この頃。
「IT~それが見えたら終わり~」、“それ”はずっとずっと憑いてくる「イット・フォローズ」、”それ”を作れば彼が来る「フィールド・オブ・ドリー・・・って最後のww違うからwwスリラーじゃねえからw
はい茶番はこの辺にして、今回も指示語によってこちら側への情報を遮断させることで、それが一体何なのか、それは人間にどんな恐怖を与えているのかという興味や関心を持たせ、さらに正体が明かされたときの怖さを倍増にさせる起爆剤として存在するのである。
“それ”ってそれだったの!?
”それ”ってめちゃめちゃ怖いじゃん!!
”それ”たいしたことねえじゃん!←たまにこういうのもねw
とまぁ、答えは見てのお楽しみ、福袋的な感覚で楽しむこともできる、指示語で宣伝スリラー映画。
今回鑑賞する映画も“それ”からの感染を防ぐために家から出ない家族のお話。
なんだけど、本題はそこに別の家族がやってきて、しかも誰かがドアを開けたことで起きる疑心暗鬼と、“それ”への恐怖。二重にも三重にも追い込まれていく家族たちにドキドキしすぎて、ドッ、キドキドンいちねんせ~い♪(知らないか・・・)
果たしてモンキーは今回もビビりながら鑑賞するのか。
というわけで早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
その斬新さと恐怖で世界中を震撼させた「イット・フォローズ」の製作陣と、近年優れたインディペンデント映画を輩出した制作会社「A24」がタッグを組んで作り上げた極限心理スリラー映画。
夜襲い来る“それ”の感染から逃れるために、外界との接触を避け森の奥でひっそりと暮らす家族の前に、別の家族が助けを求めにやってくる。
うまく共同生活を送ることができたか見えたが、ドアが開いていたことで、それぞれの間に疑惑が生まれる。
新進気鋭の監督が挑んだのは、2つの家族の内外に潜む、死や恐怖、後悔といった暴力的な感情。
演技派キャストによる芝居によって、その感情の崩壊をスリリングに描き、観衆を恐怖敏感症へと追いやっていく。
ひたりひたりと迫り来る闇と、疑心暗鬼が渦巻く世界。
92分の絶望があなたを襲う。
あらすじ
森の奥深く。
ある一家が夜にやってくる“それ”の感染に怯えながらひっそりと暮らしていた。
家族は父ポール(ジョエル・エドガートン)、母サラ(カルメン・イジョゴ)、17歳の息子トラヴィス(ケルビン・ハリソン・ジュニア)の3人。もはや人類は残り少ないのかもしれない世界で、ポールにとって外部はすべて脅威。家族以外の人間や世界のことは頭にない。
自分の家族を守るという強い使命感によって生きていた。
ある夜、一家の元に恐れていた来訪者がやってくる。
感染者かと思われたその男はウィル(クリストファー・アボット)と名乗り、妻キムと小さな息子アンドリューがいること、水を手に入れるために人気のなさそうなポールの家に侵入したことを打ち明けるのだった。
一触即発の雰囲気の中、ウィルは自分たちには十分な食糧があるから水と交換をしてくれないか、と交渉を持ちかける。
食糧が欲しいポールはその交渉をのみ、ウィルの指示のもと、80キロ先の廃屋に身を潜めるというウィルの家族のもとへと車を走らせるのだった。
数日後、ポールがウィル一家を引き連れて帰ってきた。
迎え入れられた新しい家族とともに、初めて一つのテーブルを囲んだ夜、ポールはこの家のルールを話し始める。
それは夜来る“それ”の感染を防ぐために「夜、入口の赤いドアは常にロックする」こと。
この決まりに従うことを条件に、彼らを受け入れることにしたのだ。
父ポールの支配下で、家族だけの暮らしを続けてきたトラヴィスにとって、新しい家族、とりわけウィルの若い妻キム(ライリー・キーオ)の存在はなかなか刺激的で、家の雰囲気も少しずつ変わっていった。
交流が増えるにつれ、互いに心を開き、上手く回り始めたかに見えた集団生活だったが、ある夜、赤いドアが開け放たれていたことが発覚。
誰かが感染したことを疑うも、今度はポール一家の犬が何者かによる外傷を負って発見され、さらにはある人物が不可解な発言を口走る…
“それ”の正体とは一体何なのか?
疑心暗鬼に陥った彼らは、予想だにしない結末へと突き進んでいく― (HPより抜粋)
監督
今作を手がけるのはトレイ・エドワード・シュルツ。
こういう低予算系のインディペンデント映画には、大体知らない監督が多いです。
今回もどなたか存じ上げません。
一応調べてみると、テレンス・マリック監督の撮影アシスタントをしていたんだとか。
とすると、今作めっちゃきれいな映像ってことか?
その後監督として短編映画を何作か製作した後、中年女性が、何年も前に捨てた家族の元へ戻ったことから始まる大騒動を、ギリシャ悲劇的表現で描いたホラー映画「krisha」が2015年サウスバイサウスウエスト映画祭で観客賞、ならびに審査員賞を獲得し、カンヌ映画祭にも出品されるまでの高評価を得たとのこと。
今作も数々の賞レースで賞を獲得している作品とあって、これを機に良作を世に送り出してほしいところ。
キャスト
森の中の家で家族を守る父ポールを演じるのは、ジョエル・エドガートン。
この人とスリラー映画っていうと、彼が監督と出演をした「ザ・ギフト」って映画を思い出しますが。
これ怖かったなぁ。
モンキー的にはレベッカ・ホールの美しさに見惚れていたのも忘れたくない映画でしたが。
これは彼が脅かす側だったのに対し、こっちは脅かされる側。
画像の通り、驚いてる表情を何度も拝むことになりそうですね。
近年はNetflix映画「ブライト」、「レッド・スパロー」でお目にかかりましたが、この2つとはまた違うジョエルを堪能したいと思います。
彼に関してはこちらをどうぞ。
他のキャストはこんな感じ。
ポールの妻・サラ役に、「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」、「エイリアン・コヴェナント」のカルメン・イジョゴ。
ポールを訪ねてくる男・ウィル役に、「アメリカン・ドリーマー/理想の代償」、「ファースト・マン」の公開が控えるクリストファー・アボット。
ウィルの妻キム役に、「マッドマックス/怒りのデス・ロード」、「アンダー・ザ・シルバー・レイク」のライリー・キーオ。
ポールの息子トラヴィス役に、「バース・オブ・ネイション」、監督の次回作「Waves/ウェイブス」のケルビン・ハリソン・ジュニアなどが出演します。
“それ”は夜にやってくる。
あ~~~それって何~~っ!!気になるぅ~~でも怖そう・・・。
どうしよう、それの正体が「キツネ」みたいな普通のやつだったら。もしくは「クワイエット・プレイス」のような感じのあれ?それもつまんねんだよなぁ。
意外なやつが出てきてほしい。もしかして人間かな?
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
福袋の結果、❝それ❞大したことねえじゃん映画でした。
正確に言えば何とも褒められない話。
以下、核心に触れずネタバレします。
それって夜にやってきた?
謎の病原菌により生きる術が限られてしまったことで、義父のが持つ森の奥深くでひっそりと暮らす家族が、別の家族を受け入れ生活していくことになり、心を通わせていくも、いざ問題が起きれば信じる者は家族のみという、疑わしきは罰するを心に誓った者の疑心暗鬼ぶりと結果招いてしまった悲劇と後悔までの物語を、冒頭から悲しくも仕方のない場面、突如訪れる謎の訪問者への恐怖、突然吠え出す犬、そして少年が夜な夜ないなされる悪夢など心理描写で観る者の心をえぐり意識をひきつけていく心理スリラーお決まりの流れをフル活用し、誰もが疑うことに慣れてしまい信じることを忘れてしまった現代へ一石を投じたかのようなメッセージを含ませたスリラーサスペンス映画でした。
はい、というわけで深夜最速でファンタビ2観てブログ書いて、短い睡眠時間で臨んだ今作。あまりにつまらなかったらこれ寝ちゃうぞ?どうしよう?と不安を抱えながらも案外さらっと観れてしまったわけですが、さらっと観れたってこと以外はどこをどう褒めようか中々言葉が出てこないほど面白くありませんでした。
きっとさらっと観れたのは、短い上映時間とシンプルな内容、ホラーやスリラー映画お得意の15分に一度投入されるビックリさせる効果音や描写のおかげなわけで、実際そこまで怖いようなところもなければ、あ~そういうこと!?なるほどねぇ~と感心するようなところもなく。
近年高評価作品を叩きだすことで有名な「A24」にしては、あまりの駄作にビックリでございます。
粗というかおかしなところというか設定というか、色々変な所ばかりなんですよねこの映画。
例えば、外には病原菌が蔓延しているから、ガスマスクと手袋は常に装備しなくてはいけないはずが、夜でも昼でもつけたり外したりと曖昧だし、一体誰が赤い扉を開けたのかという犯人捜しはほったらかし。さらには人間同士の疑心暗鬼バトルに拍車をかける設定や要素がありながらも、それを活かさずに繰り広げられる終盤の流れ。
一応食糧が足りないとか、水をろ過して利用する、シャワーをバケツに穴開けて水を無駄遣いしないなど、制限された世界ならではの知恵みたいなものが随所に描かれているからそういう背景は完璧だったんですが、表の設定は結婚杜撰だったりするんですよね。
また一番大事な❝それ❞はなぜやってきて、なぜ治療法がないのか、なぜガスマスクを適当に外したりつけたりしていても感染しないのか、最も重要な❝それ❞への恐怖という描写も途中から無視だし、夜にやってっ来るのはウィルとケガした犬のみで、せっかく誰がドアを開けたのかという犯人探しと❝それ❞への恐怖という二重苦によって、どんどんおかしくなってくはずの人間の心理描写が活かされていないのがとにかくもったいない。
「遊星からの物体X」を先日爆音上映で鑑賞したんですけどね、構造はこれと同じだと思うんですよ。
密室の中で一体誰がエイリアンに浸食されたのか、皆が皆疑心暗鬼になって生き残りをかけたサバイバルを、不気味な電子音と極限の銀世界によって見事に表現された傑作だったわけですが。
これも❝それ❞の正体は明らかだけど誰に化けてるかわからないから面白いドキドキがあって、今作もドアが開いたことによって❝それ❞は誰に感染したのかって、血のつながった家族をも疑うまでになっていく、魑魅魍魎の極限心理バトルとしていけばよかっのに、それをやらずに家族対家族で収めてしまってるから、本当にこんな状況に遭ったらもう家族って団体競技でなく、個人競技だろうと。
まぁそこは結末を見れば論点が違いますよ~ってことになるんですけど、僕としてはそんな展開の方が、楽しい。
疑うことが当たり前の親父。
お話の全容に関してはあらすじを読んでもらえればわかると思いますが、物語の視点は主人公ポールと、息子トラヴィスの視点で描かれているということ。
特に冒頭のシーンで感染してしまったトラヴィスのおじいちゃん、ポールの義父ですね、彼を止む無く葬らなければならないシーンが、その後の彼らの顛末を想起させる大事なシーンとなっておりました。
ここでは、家族を守るために非情にならなければならないポールと、なぜ父ちゃんはじいちゃんを殺すところを俺なんか見魅せるんだあわわわわ・・・と動揺を隠すもバレバレなトラヴィスの姿があります。
ポールとしては家長ですから、この判断はこれを観た時は正しいかと思いましたが、彼にとっては血のつながっていない義理の父。許してくださいと言ってもそこまでの躊躇は見られないわけです。
ぶっちゃけ家族の身に危険だから排除する、のではなく、せめて隔離するという選択肢はポールの中になかったのか?という疑問もこの時僕の中にはありました。
ですがポールは銃で人を撃つことに対してそこまでの心の揺らぎはないということをここで示しておきたかったのかもしれません。
ウィルが夜な夜な侵入した際も、殴って縛って木に括り付けて脅迫するくらい他人を信用していませんし、実際にこの後ポールは、ウィルとウィルの家族を迎えに行く道中人間に襲われるのですが、襲われたからやり返す=銃で撃って殺すという選択肢しかなく、それだけ他人に対して疑うことしかしない人間だというのが理解できるかと思います。
このようにポールという男は、こんな世界のせいで他人を排除することでしか身を守ることができない男になってしまっていたんですね。
確かに身の安全を確保する最大の心がけは誰かと接触しないことが効果的だと思います。
特に感染の恐れがあるこんな世界では。
しかし情報が全くない状況において、いくら人が襲ってきたからっていきなり打ち殺すという選択もどうかと、ウィルの行動を通して我々は気づくんですよね。
彼らを生かしておけば、今世界がどんな状況かわかるかもしれないのに。
それをせずにお前は殺したんだ!クレイジーすぎるぜあんた!俺からしたら病原菌よりもあんたの方が怖いぜ!え!?ってね。
死への恐怖を抱える息子。
一方息子トラヴィスは、夜な夜な悪夢を見ては汗がっつりに加え、あまりに閉塞された空間のせいで、エグイ絵をかいてたりと情緒不安定な状態がずっと続いています。
きっかけは大好きなおじいちゃんが感染してしまい、家族を守るために父の決断でおじいちゃんを殺したこと。
なぜおじいちゃんを殺さなければならなかったのか、なぜおじいちゃんを生かす手段を考えなかったのか、そしてなぜ一部始終をお父さんは僕に見せたのか。
17歳となると体は大人でも心は未熟。トラウマになることは容易なのです。
いや大人だってキツイぜ、身内殺すのなんか。
これを機に彼は夜眠れなくなり、感染レベル5の状態のおじいちゃんが目の前に現れたり、口から黒い血を吐いたりとおかしな夢ばかり。
そんな彼の前にウィルとキムと小さな子供という人たちが加わることで、一時の安堵が訪れます。
ひっそりと彼らの部屋の裏に言っては会話を聞いたりすることで笑みをこぼすまでに。
しかし目標はだんだん明るく振る舞うウィルの妻キムへと向かうことに。
きっかけは夜の営みの喘ぎ声をきいてしまったこと。
なんてったって第二次性徴期を迎え大人へのさらなるステップを心身ともに迎えた思春期真っ盛りのチェリーボーイですから大変です。
あ~~どうしよう、お、お、俺んちで、あ、あ、赤の他人がえ、え、エッチしてる~しかも大人のおんなのひとぉ~ひとづまぁ~・・・
もちろん夢にもキムが出てきます。寝てるところを夜這いしに来るキム、という設定。何だおい悪くねえよそれ、その設定ドキドキするよな、まさに「旦那とケンカして家出してきた母の友人がめっちゃ美人でしかもこっそり内緒で夜俺の部屋にやってきた」ってHunter辺りから出てそうな内容のAVじゃんそれ。
しかし未だ悪夢からは逃れられず、黒い血を口で受け止めるというグロイもの。
夜眠れなくてリビングに行くとキムも夜更かし。同じ住人として気兼ねなく会話するも、気が付くと視線はキムの胸に・・・。
気まずくなって部屋へ戻るトラヴィスの姿がそこにはありました。
その後も何かを察知し吠える飼い犬スタンリーが姿を消したことで心の拠り所を失い、さらにはその犬を殺処分するオヤジの非情な行為にどんどん情緒は不安定に。
ドアを開けたのは誰だ、という疑いも加わり気が気で無くなっていきます。
最後に
ポールの家を一つの国と考えると色々と考えられる構図になるのかと思います。
新たにやってくる人たちを厳しい尋問によって危険でないかを判断する。
受け入れることで安らぎを迎えることはできるが、あくまで他人であり、他国の人間。彼らによって身の危険を感じれば容赦なく排除し、それまで差し伸べていた手をいとも簡単にほどいてしまう。
受け入れたからには守るべき対象なのに、守るのは自国で育った人間のみ。
国とは何なのか、リーダーが決めたルールだけに従う者だけなのか、それともそのルールを決めた者のことなのか。
信じることで世界が拓けたのに、自分でそれを閉じてしまう事で起きてしまう悲劇とポールの愚かさを心理スリラーへとスライドして描いた作品だったように思えます。
ただ、上でも書いた通り、肝心かなめの❝それ❞をほったらかしにして人間同士で勝手にやっちゃってる件は一体どうしたもんか、と設定や話の流れに不満が多く、正直楽しめなかった映画でした。
それは夜にやってくる。
やってきたのは病原菌ではなく、さらに疑心暗鬼を増幅させる火種だったってことですかね。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆★★★★★★★3/10