七つの会議
池井戸潤原作というと、窮地に立たされたサラリーマンがあの手この手で状況を打破しながら勝利していくのが定番だと思うんですが、本作もそんなパターンなのでしょうか。
「半沢直樹」以外にも「空飛ぶタイヤ」、「ルーズベルトゲーム」や「下町ロケット」、「陸王」などなど数々の作品が映像化される人気の池井戸原作小説。
そして今回の「七つの会議」。
半沢直樹以降、定期的にTVドラマ化してきたTBSが、社運をかけて臨んだであろう映画ですね。
キャストも池井戸ドラマおなじみの人から、異業種キャストまで入れて来る手法は映画でも一緒。
果たしてどんなお話になっているのか。
早速鑑賞してまいりました!!!
作品情報
企業の矛盾、そして働く人々の葛藤や絆などを汲み取り、ミステリー要素を孕みながら痛快エンタテインメントを生み続けている小説家・池井戸潤。
彼の作品の中で傑作とも呼ばれる作品が、満を持しての映画化となった。
「結果が全て」という考えが今も尚蔓延っている中堅メーカーで起きたパワハラ騒動。
そこには会社員たちの人生、そして会社の存亡にも関わってくるほどの謎が潜んでいた。
「働くこと」の正義とは?
そして守るべき信念とは何か?
現代に生きる全ての日本人に捧ぐ、企業犯罪エンタテインメントです。
あらすじ
都内にある中堅メーカー・東京建電。
営業一課の万年係長・八角民夫(野村萬斎)、通称“居眠りハッカク”はどこの会社にも一人はいる所謂ぐうたら社員。
ノルマも最低限しか果さず、定例の営業会議では傍観しているだけの八角は、トップセールスマンである課長・坂戸(片岡愛之助)からその怠惰ぶりを叱責されるが、一人飄々と毎日を送っていた。
一方、甘えたサラリーマン根性の部下は完膚なきまでに叩き潰してきた社内で絶対的存在の営業部長・北川誠(香川照之)が進める結果第一主義の方針のもと、部員たちは寝る間を惜しんで働くのだった。
そんなある日、突然、坂戸がパワハラで訴えられ異動となる。
訴えたのは、年上の部下である八角だった。
北川の信頼も厚いエース・坂戸に対するパワハラ委員会の不可解な裁定に揺れる社員たち。
そんな折、万年二番手に甘んじてきた営業二課長の原島(及川光博)が新課長として着任。
だが、会社の顔である一課で成績を上げられず、原島は場違いすら感じていた。
誰しもが経験するサラリーマンとしての戦いと葛藤。
だが、そこには想像を絶する秘密と闇が隠されていた・・。(HPより引用)
監督
今作を手がけるのは福澤克雄。
TBSの数々の話題ドラマを作ってきたお方。
特に池井戸潤原作ドラマはこの方が全て演出しております。
なので、どれも一緒に感じてしまうって人、多かったりして。
僕もその一人。
ただそれを悪いとはいってません、味です。
映画に関しては、「私は貝になりたい」、新参者シリーズ「祈りの幕が降りる時」に続いて3作目。
毎回TV局製作の映画には言ってますが、ぜひTVサイズの画作りでなく、映画サイズの画作りをしてほしいです。
今回は果たして。
監督に関してはこちら。
登場人物紹介
左上より
- 八角民夫(野村萬斎)・・・東京建電・営業一課の万年係長。通称「居眠りハッカク」。どこの会社にも一人はいる、所謂“ぐうたら社員”。入社当時は敏腕営業マンだったらしいが・・・。
- 北川誠(香川照之)・・・東京建電・営業部長。結果第一主義のモーレツ管理職。社内の絶対権力者。会社に全てを捧げ、甘えたサラリーマン根性の部下は完膚なきまでに叩き潰してきた。
- 原島万二(及川光博)・・・東京建電・営業二課長。名前通りの万年二番手、平凡を絵に描いたような男。パワハラ騒動後、“華の”営業一課長に急遽抜擢される。
- 坂戸宣彦(片岡愛之助)・・・東京建電・営業一課長。部長の北川が全幅の信頼を寄せるトップセールスマン。部下である八角にパワハラで訴えられ、異動に。
- 三沢逸郎(音尾琢真)・・・老舗のネジ製造工場・ねじ六の四代目。経営難に陥っている。過去に東京建電との取引があった。
- 新田雄介(藤森慎吾)・・・東京建電・経理部長代理。プライドが高く、社内で犬猿の仲である営業部の“粗”を探すことに執着している。
- 浜本優衣(朝倉あき)・・・東京建電・営業一課員。社内環境の改善のためにドーナツの無人販売を企画した。寿退社を控えている・・・。
- 佐野健一郎(岡田浩暉)・・・東京建電・カスタマー室長。元は“華の”営業一課で出世街道を歩いていた。自分を切り捨てた北川に恨みを持っている。
- 田部(木下ほうか)・・・ゼノックスの副社長。絶対的な権力者である。徳山の腹心。
- 淑子(吉田羊)・・・八角の元妻。とある理由で離婚しているが、八角のよき理解者。
- 三沢奈々子(土屋太凰)・・・三沢逸郎の妹。契約が減り、従業員が少なくなったねじ穴を陰で支える。
- 奈倉翔平(小泉孝太郎)・・・東京建電・商品開発部員。東京建電で取り扱う数多くの商品とその部品を開発、管理している。
- 星野(溝端淳平)・・・若き八角が営業を行った老夫婦の息子。
- 飯山孝実(春風亭昇太)・・・東京建電・経理部長。社内では営業部の北川に並ぶ実力者。営業部を目の敵にしている。
- 江木恒彦(立川談春)・・・東京建電の下請け会社・トーメイテックの社長。営業一課が扱うねじの部品を一手に製造している。
- 加茂田久司(勝村政信)・・・東京建電・経理部経理課長。営業部が行った転注についての報告を新田から受け、役員会で追求することを部長の飯山に進言する。
- 村西京介(世良公則)・・・東京建電・副社長。同期である梨田との出世競争に敗れ、ゼノックスから出向した“外様”の役員。
- 梨田元就(鹿賀丈史)・・・強権的な態度で出世した、ゼノックスの常務取締役。過去に東京建電に在籍し、営業部で八角と北川の上司だった。古巣にゼノックス製の型落ち商品を一方的に押し付ける。
- 宮野和弘(橋爪功)・・・東京建電の社長。製造部から、叩き上げで社長に上り詰めた。全社的なコスト削減を推し進めている。
- 徳山郁夫(北大路欣也)・・・東京建電の親会社・ゼノックスの代表取締役社長。徳山が出席する定例会議は“御前会議“と呼ばれている。
全部っていうくらい濃い、濃ゆい役者が勢ぞろいでございます。
予告編でも全員顔芸のオンパレードでしたが、肝心の中身はもっと凄いのか?w
やはり主演に野村萬斎をキャスティングしたということは、主人公はかなりの曲者なんでしょう。
というか彼の現代人の役ってのが新鮮。
企業の闇って一体何なんでしょうか。
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
会社の犬になっているサラリーマンがこの映画をどれだけ見ているのか。
高圧的な演出で胸やけするけど、爽快感と今後の人生を考えたくなる映画でした。
以下、核心に触れずネタバレします。
どこの会社もこうなんですか?
中堅メーカーで謎の人事異動が相次ぐことに不信を抱いた営業一課長と、寿退社を控える女性社員が、社内で今一体何が起きているのかを追求した結果、社内での不正隠蔽工作の真実が見えてくる物語の中で、中心人物であるぐうたら社員の過去、部署同士での争い、縦割り構造、トカゲのしっぽ切りといった、根付いてしまった企業の体質や暗部に対し、会社で働く我々が今後どう付き合っていくかを考えさせられる、企業犯罪撲滅推進映画でございました。
私モンキーは、この映画に出てくるような企業で働いておりません。
しがない販売店で細々と働いているイチ従業員です。
そこでは出世もないし、昇給もない。
ホント~~にショボい職場です。
なので今作で描かれていることは、僕にとっては体感したことのない舞台でのお話でした。
ですが、日本の社会人の多くは劇中登場するような会社で、朝から晩まで靴の底すり減らして働いていることでしょう。
ザ・サラリーマンたちにとっては、非常に胸をつくお話だったのではないでしょうか。
そして、僕は一つの疑問を抱きました。
果たして休日返上までして、朝から晩までデスクにしがみ付いたり、靴の底すり減らして駆けずり回って契約を取らなくてはいけない、会社にいいようにコキ使われているような、いわゆる社畜たちがこの映画をみるのかどうか。
そんな時間あるんだろうかと。
すごくザックリ言えば、そんな会社さっさと辞めちまえばいいのにと、めちゃめちゃ無責任な見方で見ておりました。
そんな僕が感じたのは、
どこの会社もこんな不正隠蔽とかしてるんですか?とか、
ノルマ達成するために、
コンペを勝ち取るために、ズルしてまでやらなきゃいけないことなんですか?
それが仕事なんですか?
それでバレたら責任取らされて左遷ですか、クビですか?
それであなたの人生いいんですか?
といった子供じみた疑問ばかり。
お前世間知らずだなと言われたらそれまでですが、そんな企業で働いたことのない人からしたら、そう思ってしまう疑問の数々でした。
サラリーマンて難しい。
しょうもねえ販売員の僕が感じたことはひとまず置いといて。
一体どんな作品だったのかを語っていくことにします。
謎の人事異動を辿っていくと必ずその線の先には、会社のお荷物的存在であるぐうたら社員の八角が見え隠れ。
これ怪しいんじゃね?
あいつもしかして会社の事で何か隠してるんじゃね?
と、探りを入れ始める営業一課課長の原島と女性社員の浜本さん。
そもそも営業一課課長が本業サボって、探偵みたいなことしてる場合じゃないでしょう、と思わずツッコみたくなりました。
原島と浜本の行動によって、
社内での対立構造や足の引っ張り合い、
ドーナツ無人販売の無銭飲食の犯人、
さらにはねじ製造会社の下請けの変更をきっかけにたどり着く、会社ぐるみの不正隠蔽という顛末。
ぐうたら社員である八角は、なぜ事実を隠すような行動をし、会社を守ろうとしていたのか。
なぜ八角は会社から守られているのか。
そして彼は一体何を考えているのか、ってのが後半からわかってくるんです。
サラリーマンは自分のために家族のために働いています。
決して会社のために働いているわけではありません。
なのに上の人間は、会社のために働けと言っています。
会社のために利益を生めと言っています。
利益最優先なら、別に不良品を売っても問題ないと言っています。
売って売って売りまくれと。
その不良品によって、何か問題が起きたらどうするか。
それは会社が責任を負うのではなく、売った担当者が責任を負わされます。
会社は責任を負えないのです。
会社が責任を取ったら、社内の人間全員が路頭に迷うからです。
被害を少なくするには、誰か一人に責任を被せるのが最良なのです。
会社が生き残るためには。
会社が、上の人間が、何としてでもノルマを達成しろと命令したのに。
不正してでもノルマを達成しろといったのに。
やれといったのに。
染みついてしまった会社の体質に異を唱え、働くことの正義を全うしていくぐうたら社員・八角と、粉骨砕身で会社に奉公することは仕方のないことと割り切り、出世街道に乗った北川との対比を見せつつ、二人が不正を隠した会社に責任を取らせるために手を組んでいく後半は、熱くこみ上げるものがありました。
どちらのサラリーマン人生も、ある意味正しいのかと思います。
きれいごとだけでは生きていけない社会。
一度汚してしまった手はそう簡単に洗って落とせるわけではない。
一生償っていくことでしか、責任を取ることができない不器用な性格の八角。
過去に起こしてしまった過ちを教訓に、会社に正しいことをしてほしいと訴える姿は、サラリーマンというより人間の鏡だなとも思える姿。
不良品が混じった自社の製品が世に出てしまい、毎日ヒヤヒヤしていた彼の気持ちを考えると、さぞ辛かったことでしょう。
彼にとって、売ってしまえばそれでおしまい、という風には考えられなかったってことですよね。
八角とは対照的に、自身の出世のためならば、どんな手を使っても会社の言いなりになることを選んだ北川。
一度汚した手をキレイにすることができないのであれば、汚れたままの手で突き進むしかない。
どんな仕事も全ては会社のため、自身の出世のためと割り切って営業部長にまで上り詰め、一度は八角のあまりの突飛な行動に制止するよう促しますが、やはり根っこは正しいことをするべきなのだという結論にたどり着くのです。
正義のためならとことん追求するのが務めと考える者と、会社のために守ることが正義と考える者。
どちらも悪くないよなぁとも思える二人の立ち位置だったわけですが、でもやっぱりそれで何かあったら切られるのは下の人間なわけで。
とにかく僕が言いたいのは、そういう会社なんだと判断したら、辞めるのが一番だよなぁと。結局ここに戻るw
でもやっぱりTVドラマ止まり。
僕は兼ねてからTVドラマのような撮影方法や説明過多なセリフは、映画の醍醐味を損ねてしまっているという考えを持っていて、今回の映画は正にそれを加速させた作り方だったなぁと感じた映画でした。
もともとTBS制作で、池井戸作品手掛けてる人が監督やってキャスティングしてるってわかって観てるんだから、そんな文句言うんじゃない!
と言われても何も言い返せないんですがw
監督の前作「祈りの幕が降りる時」は、このTVサイズ感がハマっていたから、今回もちょっと期待していたんですよ。
でもふたを開けてみればいつも通りになってたなぁと。
予告から顔芸のオンパレードだなぁと感じていましたが、劇中でもその通りでした。
ニヤリとしながらひぇっひぇっひぇっ、と笑う野村萬斎。
売って売って売りまくれ!と叫ぶ香川照之。
そのプレッシャーに吐き気を覚える及川光博。
居眠り八角にニラミをきかせる片岡愛之助。
会議の後ろでふんっ!と怒気をひそめる鹿賀丈史などなど。
とにかく、顔アップで圧、圧、圧をかけてくる序盤。
さすがにここまで圧をかけてくると、俺もミッチーみたく吐き気を覚えちゃいますよ。
そこから急に一人一人の語りが入ってくる。
今の自分の立場や過去での出来事、社内での関係性などなどすべて説明してくれる。
確かにこれだけの登場人物が出演していて、かなり入れ込んだ相関図を劇中に一気に入れるのは困難でしたし、誰かが語らないと整理しにくいってのはわかるんだけど、それを一人一人にやらせるんですか。
最後TVニュースが入った時に、「その時歴史が動いた」でお馴染み松平定知さんの声が入っていたんですけど、彼よくTBSの池井戸ドラマのナレーションもしている人で、だから今回も声のみの出演だったんだなぁと思ったんですけど、この映画の語りを、全部彼がやればよかったのにと。
これに加え、登場人物が出てきては問題起こしてすぐさま退場の繰り返しで、消えた人たちが後半まるで活きてこない。
結局は会社のための犠牲となった人たちってことで描かれてるんだけど、まず彼らに何の感情も起きないし、オリラジ藤森なんかあれだけ登場時間あったのに、身から出た錆扱いで、これも何も活きてこない。
全てが情報で作られている気がして、ドラマになっていないのが凄く気持ち悪かったです。
もっと言えば野村萬斎にサラリーマンをやらせたのは一体全体どうしてだろうと。
誇張したニヒルな笑い方や、社会人ぽくない歩き方、お辞儀はどうしても目がいってしまう。
特に御前会議で愛之助演じる坂戸と並んで社長に頭を下げて挨拶するシーン。
坂戸はキレイに手を足にピッタリつけてお辞儀するのに対し、萬斎は手を足から離し片方の足を少し前にしてお辞儀をする。
それあなたの本職での立ち方でしょう。
普段の人の演技になってないですよ。
最後に
一つの小さな部分が大きな屋台船を揺るがすような物語の構造は、「HERO」とか「踊る大捜査線」のようなTVドラマの物語の構造でした。
だから親しみがあったし見慣れているから決して難しくなく、そこに一人の人間が正義を掲げて立ち向かっていく姿ってのは、やっぱり爽快です。
しかも、企業の悪しき部分が未だに蔓延ってるということを強く語るラストも、勧善懲悪でキレイに終わらせない形で締めくくっており、今作の一番言いたいことが集約されている気がしました。
問題はやはり登場人物の多さ。
全て入れようとする辺りや、ただでさえ重厚に感じる企業の問題なのに、さらに圧をかけてくる撮影方法や、情報でしかないセリフで固めてくる演出は、非常にもったいなく感じます。
全てが足し算でしかなく、引き算をすることを忘れてしまっている映画だったなぁと。
全部入れる必要ないんですよ。
違うな、全部著名な役者で固める必要が無い。
著名人がちょっとでも出てくると、何かあるんじゃないかと感じてしまう。
経理部の部長も、トーメイテックの社長も、ねじ工場の人たちも、ぶっちゃけエキストラでいい。
だってほんのちょっとしか出てこないんだもの。
本筋に全く関係ないんだから。
とりあえず全部説明してくれるから、頭使わずに楽しめるんじゃないでしょうか。
何度も言いますが、会社で働くことにちょっとでも疑問を感じたら、ずっとしがみつかずに辞めてしまえばいい、と僕は思います。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10