モンキー的映画のススメ

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主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

映画「先生の白い嘘」感想ネタバレあり解説 性の不条理とか男女の不平等とか活かせてない気がする。

先生の白い嘘

はじめに

公開日前日にこんな記事が出たことで、SNS上は非常に燃えております。

news.yahoo.co.jp

インティマシーコーディネーターとは、いわゆる濡れ場と言われるベッドシーンや性描写をする際に演者と作り手の間に入ってコーディネートする人だそう。

近年ハリウッドでもその役割は必要不可欠な存在で、日本でも積極的に取り入れる現場も多くなったと、よく目にします。

 

実際にはコーディネーターが介入する事によって、不安や懸念のある俳優が、場合によっては「No」と言えるような環境を作り、シーンの中で動きなどの「振り付け」の助言や、不安要素を一緒に解消していく事で、萎縮することなくリラックスした状態で演技に最大限集中してもらえるとともに、演者への尊厳に自摸繋がるということで、現場がよりよい環境になることに役立っているそうです。

 

そんな役割が今非常に必要とされている中、主演の奈緒さんからの要請があったにも拘らず、監督がそれを断り、監督と演者だけで「より良い方法論」を模索した、という旨の監督のインタビュー記事が、悪い意味で話題となっております。

 

個人的には、権力を持つ監督がそういう提案をするのは時代的にいかがなものかと疑問に思いましたが、双方でしっかり話し合ったうえで撮影し、その後演者が精神的に苦痛を受けたなどと訴えるようなことは起きてないので、とりあえずは大丈夫だったのだろう、と考えます。

 

また一体どんな方法論なのかを知ることが出来れば、もっと深く言及できるのかと思いますが、それがわからない以上、一方的な正しさで一斉に攻撃したり、映画を「観ない」とイチイチ宣言するような発言は控えるべきかと思います。

いわゆるキャンセルカルチャ―になってしまう恐れがあるからですね。

 

そうならないためにも、少なくとも自分は、監督からの具体的な説明がなされるまでは静観したい気持ちです。

そもそも今回の記事だけで、大して正しさを持ってない自分なんかが自分の意見を、いちいちSNSで書いたところで、それはただの「良い奴に見られたい」だけのものとしか思えないですし、興行面で足を引っ張りたくない気持ちから、まずは今回の件で説明があってから色々判断したいと考えます。

 

さて、映画の感想です。

 

 

感想

 

今回の監督のインタビューを読んでしまったこと、それが炎上していることで、どうしてもノイズが入ってしまったのが、今回一番引っかかったこと。

 

最大限の配慮をしたそうですが、劇中では早藤演じる風間俊介が、奈緒演じる美鈴の顔を手で掴み、こわばった表情の美鈴をそのまま押し倒して行為に及んだり、終いにはボ物理的な暴力を働くなどの描写がありました。

美鈴以外にも、いわゆる「絡み」があるため、どうしてこんなシーンを撮影するのに、コーディネーターを入れない提案や選択をしたのだろうと不思議で仕方ありませんでした。

 

本作はR15に指定されており、公開前にそれを知った自分は恥ずかしながら鼻の下を伸ばしてしまったわけですが、まさかこんな内容だとは思わず。

実際配慮をしたという通り、濡れ場はあっても女性の裸が丸見えになるような描写は一切なかったわけですが、風間俊介演じる早藤がザ・ミソジニーとも言うべきキャラのため、見ていて正直不快になるように見せてたと思います。

 

正直そればかりが頭の中を駆け巡ったことで、話が入ってこなかったことが多かったです。

 

そもそも本作のあらすじは、早藤に強引に暴行されたことから、男そのものを否定するような感情を持ち合わせている美鈴が、興味本位で人妻と行為しようと思ったものの、土壇場で「やっぱり嫌だ」という感情が芽生えた男子高校生の新妻くんの感情を否定したことから物語は動き出します。

 

互いが自分の思いとは裏腹に暴力を受けたという立場、それが男女でも不平等なのかという問いが、二人が向かい合うにつれて恋愛感情へと発展していく展開に。

やがて、美鈴を支配し続ける早藤と決別するために、美鈴はある決心をする、という内容です。

 

 

見ていて感じたのは、今や色んな男性や女性がいる中、美鈴と新妻君は「男」と「女」というデカい主語で言いあうような描写が多いなと。

そりゃ普段同僚や友人と話す時に、男は~女は~と大きく括りがちにはなりますが、本作に登場する男性が自分には一切当てはまらないため、そんなに大きく括られて責められてもなぁという気分に。

 

実際美鈴の言うことは正しい面もあります。

男性がいるせいで女性は~みたいな面は社会においても未だ改善されてないわけですし、彼女自身そんな男性に力でねじ伏せられたわけですから、そりゃそういう気分にもなるよなぁと。

新妻君も、それはちょっと都合が良すぎるんじゃない?とも思いましたが、やはり彼もまた被害者であると考えた時に、やはり僕の中の「男」って未だ前時代的な価値観でしかなかったんだなと思いました。

 

そうした二人がぶつかり合うことで、互いが互いの痛みを知り恋愛へと発展していくわけですが、ぶっちゃけそういう話を求めてなかったというか、あまりに急カーブで話が進んでいくので、結局この映画は何の話をしてるんだ?と。

 

結末は、彼との別れを告げるんですが、果たしてその要素は必要だったのだろうかと。

そこは生徒と教師、男と女という立場や性差を超えた、理解し合える者として描く方が、本来描きたいモノに変なノイズが入らずに済む気がしました。

 

早藤と新妻君が対峙したシーンで、恐らく早藤は彼に美鈴との関係を話したと思うんですが、それによる新妻君のその後が全く描かれてないんですよ。

恋愛を絡めると、彼の行動も描かないと不自然だと思うんですよね。

だって、彼の中で先生は守りたい存在なわけじゃないですか。

土砂降りの雨に打たれて先生に抱きしめられて終わりって、それはちょっと物語としてどうなのかと。

 

 

他にもキャラクター的に色々理解が追い付かないというか、共感もできなければ都合が良すぎることも多く。

 

美鈴に関しては、初めてをああいう形で奪われ男性に嫌悪感を抱きつつも、快楽に溺れてしまうという設定だったと思うんですが、結局それは自分を否定してるだけだったことに気付くと。

だから自分の尊厳を手に入れるために最後に早藤と対峙する決意をするんだと思うんですけど、じゃあ快楽の部分はどこへ行ってしまったんだと。

 

そこへの恥じらいというか、それでも求めてしまうような素振りってほとんどなくて、終始嫌がってるようにしか見えないというか。

だったら快楽に溺れるとか、あらすじに書くなよ溺れてねえじゃねえかと。

 

早藤に関しては、もう男性性の悪しき部分を詰め込んだキャラで、女を見下し顎で使い、性のはけ口としか見てない存在で、美鈴のように脅えてるような女性じゃないと燃えないという歪んだ性癖の持ち主。

まぁこういう奴、実際にいるんだよなぁと思いつつも、美鈴に啖呵切られたことで、彼の弱さが露呈し、それを受け入れられずに暴走してしまうわけで、終いには自分を殺してくれと言い放つほど「女性が怖い」と思って塞ぎ込んでしまうという。

 

はっきり言って、美鈴があれだけ言ってもああいう男はそうは変わらないと思いますよ。

なんつうか、逃げるだけだと思うんですよ。

暴力に逃げる、別の都合のいい女性を探す、みたいな。

オチをつけるには、正直弱いと思うんですよ。

女性のあそこは怖いんだよ、って脅して、あそこまで追いつめられる男なんて、多分いません。

 

一応自分で自首しますけど、何というかそれで解決されてもというか。

単純にスッキリしないんだよなぁ、あれじゃ。

 

一番物わかり良すぎるのは、早藤の彼女ですかね。

要は男に媚びるような女を演じてたってことなんでしょうけど、それにしても気付くの遅すぎやしねえか?と。

早藤曰く、ああいう女は仮に浮気がバレたとしても女を責めるとか言ってましたけど、そんな女じゃなくてほっとしました。

ただ、早藤が犯した罪をよく受け入れられるなと。

クソみたいな魂を父親としてすり減らして生きろって、中々肝の座った女性だな、それが母性なのか?とさえ思いましたけど、普通別れるだろ、そんな夫。

 

 

最後に

映像的にはTVぽくない画質で良かったと思うんですが、いかんせん歯切れの悪い構成に思えた面もあり、その辺は巧くないなぁと。

 

奈緒の演技は、まぁ相当苦労したんだろうなぁとしか言いようがなく、やはり彼女側がコーディネーターを依頼したいってのは十分理解できるキツさだったかと。

それを踏まえてもあんな芸当よくできたなと、彼女の役を演じる覚悟というか強さみたいなものを受け止めました。

そもそも彼女、どの役を演じても存在感を消すことなく染まれるんですよね。

顔の話になっちゃいますけど、あの手の顔のタイプってアクの強い役者が出たら消えちゃうんですよ。

でも、しっかり居るんですよね。目立つんですよ。

多分演じる上での強い意志がそうさせてるのかなと。それってなかなかできる事じゃない。

 

キスをしながら涙を流すの巧すぎですから。

 

風間俊介に関しては、金八先生の兼末健次郎再びって感じのわる~い奴でしたけど、ちょっと作り過ぎでしたかね。もう少しソフトにしても良かった気がします。

でも、あんな嫌な役、普段の自分を殺さないと出来ない役柄だと思うんで、思い切ってやるしかなかったんだろうなぁ。

コーディネーターは彼にも必要だなと思いました。メンタルやられるよあんな役。

 

三吉彩花は、まぁ特に印象的な芝居は見当たらず…。相変わらず胸がデカいなくらいしか…。

 

しかしあれですね、原作読んでないんでわからないんですけど、新妻君をずっと注視してるあの女の子はなんなんですか?

彼の事好きなんですか?多分先生とのチュー画像を拡散したの、彼女でしょ。

彼女を描く理由って一体どこにあったんでしょうか。

全く持って不思議です。

というわけで以上!あざっしたっ!!

満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10