スパイダーマン:スパイダーバース
まぁ映画しか知らない僕からしますと、スパイダーマンといえばピーターパーカーなんですね。
でも今回のスパイダーバースはピーターが主人公ではない、2代目スパイダーマンだと。
しかも黒人。
「コミックで黒人のスパイダーマンが!」という記事自体読んでいたからヒーローの中身が変わることがあるのは知っていたし、「スパイダーマン/ホームカミング」でピーターが尋問した黒人が今回の主人公の叔父だっていうトリビアもありましたし。
さらには、マーベルコミックって多元世界だからいろんなスパイダーマンが存在するって情報は入れておかないと大変てのはわかってました。
とうとう映画でやるときが来たのかと。
今そんな思いです。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
マーベルコミック原作のヒーロー・スパイダーマン。
コミックでは、同じキャラクターが違う次元で異なる形で存在する「マルチバース」という世界観がある。
今回の映画は、コミックでの設定を活かし、コミック、TV、アニメ版など様々なスパイダーマンが次元を超えて共に戦う内容になっている。
物語は、我々がよく知るピーターパーカーはこの世におらず、頭脳明晰な黒人の中学生が2代目として受け継ぐ。
しかし能力を得たものの戸惑いを隠せない。
そんな時何者かによって時空が歪められる事態が発生。
死んだはずのピーターはじめ、あらゆる次元のスパイダーマンが集い、主人公は「大いなる力には大いなる責任を伴う」の言葉を噛み締め、成長を遂げていく。
今作の製作・脚本にはフィル・ロード&クリス・ミラーが参加しており、代表作となる「LEGOムービー」のように絶賛評が相次ぐ。
その評価が称えられ、アニメ映画のアカデミー賞「アニー賞」では、作品賞を含む7部門を受賞し最多受賞を記録。
またアカデミー賞でも長編アニメーション部門にノミネートを果たすほどの評価に。
果たして主人公は皆をそれぞれの宇宙へ帰し、成長できるのか。
全く新しい世代の物語が、スパイダーマン映画史の新たな扉を開く!
「運命を、受け入れろ。」
あらすじ
「スパイダーマン、死す。」
スパイダーマンことピーター・パーカーの突然の訃報により、ニューヨーク市民は悲しみに包まれる。
13歳のマイルス・モラレスもその一人――そう、彼こそがピーターの後を継ぐ“新生スパイダーマン”だ。
ピーターの死は、闇社会に君臨するキングピンが時空を歪めたことでもたらされた。
しかし若きマイルスには彼の更なる野望を阻止するパワーはない。
「彼に替わって“守る”」
と言ったものの、不安だらけのマイルス。
そんな彼の前に突如現れたのは―死んだはずのピーターだった!
ただ、彼の様子が少しおかしい。無精ひげ、少し出た下腹、そしてなんとも適当な性格。
このやつれた中年ピーターは、キングピンが歪めた時空に吸い込まれ、全く別の次元=ユニバースからマイルスの住む世界に来たのだ。
マイルスは真のスパイダーマンになるため、ピーターを師とし、共に戦う決意をする。
「俺達しかいない―世界を救えるのは」
二人の下に、別のユニバースから導かれてきたスパイダーマンたちが集結する。
スパイダー・グウェン、スパイダーマン・ノワール、スパイダー・ハム、そしてペニー・パーカーと彼女が操るパワードスーツ、SP//dr。
キングピンの計画を阻止し、すべてのユニバースを元に戻す戦いに、スパイダーマンたちが挑む―。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけたのは、ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマンの3人。
アニメーションに関してはめっちゃ疎いので、さすがに調べたものになります。
まずペルシケッティ監督は、監督としてはこれが初めて。
過去に「リトルプリンス/星の王子さまと私」で脚本を務めてました。
そしてラムジー監督は、イラストレーターから監督業へとキャリアを重ね、「ガーディアンズ/伝説の勇者たち」というアニメーション映画を監督しています。
最後にロスマン監督は、「リベンジ・マッチ」や「22ジャンプストリート」などの脚本家としてキャリアを重ね、今回初めて監督をしています。
キャラクター紹介
左上より。
- マイルス・モラレス/スパイダーマン(CV:シャメイク・ムーア/小野賢章)
ウェブを放つこと、物体に吸着すること、スピード、強さ、抜群の聴力、スパイディ・センスなどの通常のパワーに加えて、マイルスには、ヴェノム・ストライク(触れるだけで放つことのできる電気のようなパワー)とカモフラージュ(透明になる)という彼独自のパワーがある。(HPより)
- ピーター・パーカー/スパイダーマン(CV:ジェイク・ジョンソン/宮野真守)
ピーターの隠れ家では、さまざまな「スパイダーマン」コミックス(とプレイステーションのゲーム)、映画、そしてゲームでスパイダーマンが着ているコスチュームがケースの中に陳列されている。また、コミックスに登場するデューンバギーも台の上に飾られている。(HPより)
- グウェン・ステイシー/スパイダー・グウェン(CV:ヘイリー・スタインフェルド/悠木碧)
ウェブを放つこと、物に吸着すること、スピード、強さ、抜群の聴力、スパイディ・センスなどの通常のパワーに加えて、スパイダー・グウェンはバレエのような動きで優雅に戦う。自分の世界ではドラマーであるため、音楽やダンスをしてきた影響が衣装に表れている。(HPより)
- ピーター・ポーカー/ スパイダーハム(CV:ジョン・ムレイニー/吉野裕行)
トム・デファルコとマーク・アームストロングが生んだキャラクター、スパイダーハムは、1983年に初めてマーベル・コミックスに登場した。通常のスパイダー・パワーに加えて、彼は壁に黒い丸を投げつけて、その丸の中を通ってゆくなどのカートゥーン的なパワーも持っている。(HPより)
- スパイダーマン・ノワール(CV:ニコラス・ケイジ/大塚明夫)
2001年にマーベル・コミックスに初登場したスパイダーマン・ノワールは、1930年代の典型的な刑事をモデルにして作られた。(HPより)
- ペニー・パーカー(CV:キミコ・グレン/高橋李依)
未来のニューヨークに暮らしている。放射能を帯びた蜘蛛に噛まれたのは彼女の父親だった。その父がロボットを造ったが、犯罪と戦っている最中に命を落としたため、娘のペニーがロボットを受け継いだ。スーツの頭部には放射能を帯びた蜘蛛が暮らしていて、ロボットを操縦するパイロットとはサイキック・リンクでつながっている。(HPより)
- ウィルソン・フィスク/キングピン(CV:リーヴ・シュレイバー/玄田哲章)・・・今回のヴィラン。NetflixTVシリーズ「デアデビル」では、ヘルズキッチンの裏社会を牛耳る組織のボスとして君臨していた。ただ太っているだけではなく、全身鍛え上げられた筋力のおかげで凄まじい力を発揮している。
- メイ・パーカー(CV:リリー・トムリン/沢海陽子)・・・ピーター・パーカーの叔母さん。
いやぁ~色んなスパイダーマンがいるもんだ。マイルス以外のスパイダーマンたちにもエピソードが盛り込まれていることでしょう。
そしてペニーパーカーや、君は日本で大ウケしそうだよ。
僕はノワールが「ウォッチメン」のロールシャッハを思い出すんでちょっと興味ありますw
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
さすがアカデミー賞長編アニメーションを受賞するだけの映像革命!
コミックを読んでいるかのようなジェットコースターアニメーションでした!!
以下、核心に触れずネタバレします。
大事なものを失っても。
ブルックリンの私立中学に通う主人公マイルスが、ひょんなことから放射性のクモに噛まれることで能力を得たものの、様々な不安要素と心の葛藤によりスパイダーマンとして覚醒できない中で、別の次元からやってきたあらゆるスパイダーマンたちの叱咤激励により成長を遂げ、ピーターパーカー亡きNYを救う運命を受け入れるまでの物語を、コミック描写を入れたりハイカラ―でカラフルな色合い、各キャラ描写も異なる細かい作りによって、全く見たことないアニメーション映画になっていたと共に、少年が悩みもがき大人への階段を上り成長を遂げるスパイダーマンお馴染みの話という安心感もあり、非常に楽しく鑑賞できる作品でございました。
非情によくできた映画でした。
とにかくテンポよく話が進むからダレることが無いので、あっという間の時間を過ごした気分です。
映像面でもこれ相当な手間暇がかかったんじゃないのか!?と思うほどひとつひとつの描写が細かく施されているし、コミックを読んでいるような感覚になりました。
それと同時にピーターとマイルスという師弟関係の掛け合いで生まれるユーモアセンスや、時には真面目に話さなければいけない時の強弱性がうまく、心を持っていかれる場面が多々ありました。
スパイダーマンといえば、ピーターパーカーという少年が心も頭も未熟な事が原因でいつしか大きな事件となり大切な人を失ってしまうことで傷つき立ち直れなくなることがあります。
それでも「大いなる力には大いなる責任が伴う」という命題の下立ち上がり、街の治安を守っていく彼の姿に、僕らは一喜一憂したり自分と重ねたりすることで彼からたくさんの勇気をもらってきたわけです。
今回そのピーターが大人になり世代交代をしなければならないことが物語の始まる大きなきっかけになるんですが、跡継ぎを正しく導くことができないままピーターはこの世からいなくなってしまう事態になってしまうんですね。
マイルスもまたピーターと同じように親の言うことに疑問や不満を持ちながらも好きなことだけしてればいいと考えるような今どきの子供。
カラダは大人になってんも心や頭はまだ子供なんですよね。そんな彼が突然手に入れてしまう大いなる力。
その力をうまくコントロールできないことや、気持ちは何とかみんなの力になりたい、役に立ちたい、だってピーターと約束したから、でもこの力をうまく発揮できないというもどかしさや、大事な人を失ってしまったことへの深い悲しみから中々立ち直ることができない、といった全てにおいて未熟な部分があることが見受けられます。
しかしどの次元のスパイダーマンたちも、父や叔父親友を失う大きな悲しみに覆われてしまい、同じような葛藤な苦悩を味わうも、そこから再び這い上がり力を武器に身を粉にして戦ってきた過去を持っていることや、マイルスの父との間に生まれた小さなすれ違いという、心にいつも引っかかっていた部分とようやく決別できたことで、マイルスは覚醒するんです。
このようにスパイダーマンは映画だろうが、アニメだろうが、コミックだろうが、いつも描くことは同じ子供から大人への階段を上る通過儀礼的成長譚なんですよね。
これまで実写映画でもこのパターンで過去に6度も映画になっているくらい使い古された物語の構造なんですが、それをあえてアニメでもやってみせた。世代交代というテーマを使って。
他の5人が浅い。
そういう意味では安心して楽しめた点もあるんですが、僕としてはせっかく新たなヒーロー誕生の物語なんだから、もっとピーターが師匠として指南する部分に焦点を当てて、彼の物語として機能してほしかったなぁというのが見終えた時の率直な感想です。
マイルスのいる世界のピーターは実際亡くなってしまいましたが、別次元のピーターが代わりにマイルスを指導していくのが、この物語の大きな部分です。
これをもっと緻密に関係を積み上げていけば、もっと深いドラマ性が生まれたと思うんですが、この部分もコミック的ハイスピード描写で進んでしまうもんだから感情がなかなか膨れ上がらないんですよね。
カモフラージュとか電気ショックとかこれまでにないポテンシャルを秘めているマイルスなんですが、スイング含めこれを修行するシーンてのが実践積んで取得しろ!ってのが雑すぎて。
せめてダイジェスト映像でもいいから挿入してくれりゃあと。(まぁタイムリミットが24時間切ってるからそういうわけにもいかないんですけど)
僕としては、マイルスのスクールライフとかよりもこっちに時間を割いてほしかったんですが、今回はピーター以外にもキャラが登場するわけで、こっちもうまく物語に絡めていかないといけない。
で、見てみるとグウェンは同じ年代の性別の違うキャラということでマイルスとの関係性がそれなりに深くなってますが、やはりこれも弱い。
しかもノワール、ハム、ペニーはサブキャラ扱いであまりスポットが当たらない。
ならもういっそのことマイルス以外の5人はマイルスの背中を押す程度の均等な描き方をしてほしいなぁと。
そのうえで、ヒーローといえども一人じゃない、同じ悲しみを背負いながらも遠い次元の世界で戦っている人たちがいる、だから頑張れる、みたいな締めくくり方にしてほしかったなぁと。
もうこうなってくると、登場するのはピーターとグウェンだけでよかったんじゃない?って思ってしまう。
要はキャラが多いせいで色々渋滞していて一人一人時間を割けないのが原因なんですかね。
モンキー的にはノワールのニコラス・ケイジの声がドンピシャで体が震えたんですが、彼にもっと活躍してほしかったなぁというのが小さな不満です。
とはいえ映像はすごい。
毎週楽しみにしている週刊コミック誌。
もし色んな漫画家が一つの作品を描くとしたらキャッラクター描写はどうなるだろう?
例えばワンピースのルフィを尾田先生が書き、ゾロを井上雄彦、サンジを荒木飛呂彦、ナミを桂正和、チョッパーを鳥山明、という具合に。
多分非常に統一性のない漫画になっているような気がします。
やはり一人の漫画家の癖だったりパターンあってのキャラクターに慣れているから、こういうゴチャゴチャ感て多分受け付けないと思うんです、読者は。
何を急にそんなこと言ってるの?とお思いでしょうが、今回のスパイダーバース、各キャラクターのデザインが全く異なっているんですよ。
同じ人が一手に描いてないといいますか。画のタッチが全く違うんですね。
特にスパイダーハム、ノワール、ペニーパーカーの3人は、質感も違えば動きも違う。
デジタル的なのもあれば手書きっぽい部分もある。
これを一つの作品にぶち込んでも何の違和感もないんです。
これがまずすごいなと。
そして肝心のアニメーションですが、何度も言っている通り漫画を読んでいるかのような進み具合。
アクションとかすごくスムーズに見せる部分もあればカクカク動くストップモーションのような描写もあって全てが一定の映像になってないんですよね。
それぞれのキャラクターが自己紹介する際は、コミックの表紙から始まり、パラパラとページをめくるような流れで淡々と描かれていますし、スパイダーセンスに至っては、きちんと頭部に波線が出ることで表現していることや、アクションの度にBANG!みたいな擬音語が飛び出したり、心の声を吹き出しで出したりと、とにかくコミックを意識して作っているのが今作の特徴でした。
そしてアメコミならでは画のタッチがたくさん出てくるのも特徴的。
あえて雑に描くことでコミック調にする所もあれば繊細なグラフィックで表現している部分もあり、普段のアニメーションもキレイなだなぁとか細かいなぁとか色々は発見があるんだけど、今作に関してはこれまでのアニメーションの概念とは違う斬新なアイディアが詰まった作品だったと思います。
時空が歪んでるのを表現するバグ描写もいいし、その一方で滑らかなスパイダーマンの動きも見ていて気持ちいい。
ある意味「素晴らしいゴチャゴチャ感」でお馴染みビックロのような気持ちよさがあります。
なんで監督が3人もいるの?って思ったんですけど、そういうことかと。
これコミックでもこんな設定なの?
今回キングピンが敵として君臨するんですが、彼強すぎませんか?w
一応一般人ですよ。特にこれといった能力はない。とりあえず並外れたパワーを持っているのは理解してます。
一応ネトフリ版「デアデビル」見てるんで、彼の異常なまでの家族に対する愛とか、それのためなら手段は厭わない的な盲目ぶりもキングピンらしいなぁと思ってみてたんですが、クライマックスの時空の穴が開いて宇宙が向こうからやってきてビルやら電車やらが飛び交う中で普通に戦うのが不思議で不思議でw
まぁこんなこと言うと全てのアメコミがおかしいって話ですけど、あまりにも強くてw
それとメイおばさん!
実写ではどんどん若くきれいなおばさんになっている彼女ですが、今回はサムライミ版のような年老いたおばあちゃんなんですよね。もちろんピーター26歳とかですからそれくらい年老いているのもわけないんですが。
で、別次元から来たピーターはメイおばさんを亡くしてるんですよね。
こっちの世界で自分が頼れるのと事情を理解してくれる人は彼女しかいないってことでマイルスとグウェンと共に尋ねるんです。
すぐに事情を理解したおばさん。なんてものわかりのいいw(なぜかはその後分かるんですが)
そしたら家の庭にある物置が地下室になってるんですね。
え~っ!?ですよ。そんな設定映画ではなかったですから。
めっちゃハイテクだし、地下には飛行機とかバイクといったガジェットまでおいてあるし、トニー・スタークの地下室を真似してるのか、あらゆるスパイダースーツが飾られているし。
これはちょっと意外過ぎて吹き出してしまいましたね。
最後に
とりあえず僕はノワールが大好きになりました。
色が無いからってルービックキューブ持って帰るってw
原作など全く知らない映画でのみ育ったサムライミ版大好きな自分の戯言が詰まった感想でしたが、映像表現はすごくよくできていて、自虐やメタ含めたユーモアセンスが抜群だし、とにかく実写では絶対表現不可能なマルチバースの世界をよくぞここまで!という出来でした。
しかしお話に関してはもっとブラッシュアップしてマイルスとピーターの関係性を深くすることで、師弟関係を強調できたら最高なのにという、ないものねだりな不満がどうしても出てしまったのが悔しいです。
大きな壁にぶつかったり深い悲しみが訪れたら、空を見上げてみよう。君の知らないどこかで同じ思いを抱えながらも戦っている人たちがいる。
ヒーローは決してひとりじゃない。
これが今回のテーマってことで、そういう意味ではよかったのではないでしょうか。
てかアーロンおじさん、ドナルドクローバーなのかな?と思ったらマハーシャラ・アリだったんですよね。お前働きすぎだろ!そしてグッジョブすぎるよ!相変わらずいいい声だな!
期待値が高かった分気持ち低めの満足度ってことで。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10