デッド・ドント・ダイ
話題の映画や過去の名作を手あたり次第漁ってきた僕ですが、恥ずかしい話、今回鑑賞するこの「デッド・アンド・ダイ」を手掛けたジム・ジャームッシュ監督の作品を未だ見たことがありません・・・。
大体こういうこと言うと、「お前それ見てないで映画ブロガー名乗ってるのか?あ?」と師匠のメガネの奥でギラつく視線が、僕の弱心臓を突きさしてくるんですが、最近に至ってはむしろ快感になりつつあるモンキーです。
とはいえジャームッシュくらい名前は知っているし、作品名くらいはサクッといえちゃうわけで、過去にレンタル店で働いていただけあるな俺、だから映画クイズとかもそれなりにいけちゃうのよね、なんて知識自慢とかしてるとマウント取ってくる輩がいるのでこれくらいにして。
あくまで僕のイメージですが、あれ?ジャームッシュって今回題材になってるようなゾンビ映画なんてこれまで作ったことあったっけ?って。
過去の作品、それこそレンタル店で返却作業していた時に読み込んだ、「ブロークン・フラワーズ」とか「コーヒー&シガレッツ」とか、
どこかふわぁ~っとした内容のものだとか、音楽に精通してる人なんだな、そういう映画を撮る人なんだって勝手に想像してて、当時大作洋画ばかりだった俺には縁がないな、なんて勝手に線引きして手付けてなかったツケが今になって押し寄せてるのは置いといて、
とにかく「ゾンビ映画を手掛ける人」のイメージがないんですよ、はい。
一体どういう映画なんだろう、とりあえず主演二人がユルそうだし、こりゃおもしろそうだな、そんなミーハー魂抱えて早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
世界中の名匠や鬼才が集う「カンヌ映画祭」常連の監督ジム・ジャームッシュが今回手掛けたのは、アメリカののどかな田舎町を舞台に、突然墓場から蘇った死者たちが住民を襲うゾンビパニックの行方を、シュールで奇想天外な監督独自のセンスで描く。
カンヌ映画祭のオープニング作品となった今作は、監督のイメージとその内容から、想定できない異例のサプライズとなり、誰もが「まさかのゾンビ映画!?」と騒然となったほど。
また監督作品常連のキャスト陣や気心知れたスタッフ陣を終結させ、外見はゾンビ映画であれどジャームッシュイズムが溢れた「人間のおかしみ」が溢れた作品となった。
アメリカインディペンデント映画の雄であるジャームッシュが手掛けた、まだ誰も見たことのないオンリーワンのゾンビ映画、是非ご堪能あれ。
あらすじ
警察官が3人しかいないアメリカの田舎町センターヴィルで、前代未聞の怪事件が発生した。
無残に内臓を食いちぎられた女性ふたりの変死体がダイナーで発見されたのだ。
困惑しながら出動した警察署長クリフ(ビル・マーレイ)と巡査ロニー(アダム・ドライバー)は、レイシストの農夫、森で野宿する世捨て人、雑貨店のホラーオタク青年、葬儀場のミステリアスな女主人らの奇妙な住民が暮らす町をパトロールするうちに、墓地で何かが地中から這い出したような穴ぼこを発見。
折しも、センターヴィルでは夜になっても太陽がなかなか沈まず、スマホや時計が壊れ、動物たちが失踪する異常現象が続発していた。
やがてロニーの不吉な予感が的中し、無数の死者たちがむくむくと蘇って、唖然とする地元民に噛みつき始める。銃やナタを手にしたクリフとロニーは「頭を殺れ!」を合言葉に、いくら倒してもわき出てくるゾンビとの激闘に身を投じるが、彼らの行く手にはさらなる衝撃の光景が待ち受けていた……。(HPより抜粋)
監督
今作を手掛けるのは、ジム・ジャームッシュ。
あれぇ…監督って意外とゾンビにそっくりなお顔立ちしてるんですねぇ…ちょっと増谷キートンみたいな顔・・・って、どう見ても左じゃないですよねw
右が監督です。
てか左はイギー・ポップじゃねえか。なんだよ増谷キートンて、ひどいなw
僕の監督に対しての内容は冒頭で書いたので割愛しますが、作風としては独自のオフビートなのは有名。
2016年製作の「パターソン」なんか、見た人からの感想を聞くと「何も起きない」って言ってたくらいですから、そこにどれだけ面白みを感じられるかってのが醍醐味なんでしょうか。
てか、マジでこの映画が初ジャームッシュでいいのかオレ・・・。
というわけで代表作をサクッとご紹介。
「理由なき反抗」のニコラス・レイ監督の助手や、「パリ、テキサス」のヴィム・ヴェンダースの助手をしながら、映画製作を学び、ニューヨーク大学大学院の卒業制作「パーマネント・バケーション」で監督デビュー。
3人の若者が織りなす奇妙な物語を、全編モノクロ、ワンシーンワンカットなどで構成したデッドパン喜劇「ストレンジャー・ザン・パラダイス」では、カンヌ映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞し、脚光を浴びます。
その後も、刑務所で出会った3人の脱獄から、天国も地獄ともつかぬ冒険の旅を重ねていく「ダウン・バイ・ロー」、互いに知らぬまま夜汽車の中で過ごす人物たちの3話からなるオムニバスストーリーで、工藤夕貴や永瀬正敏が出演したことでも話題の「ミステリー・トレイン」、19世紀後半のアメリカ西部を舞台にしたウェスタンの世界をコミカルに頽廃的に描いた長編叙事詩「デッドマン」などを発表し、ジャームッシュファンを世界で拡大していきます。
2000年代では、個性あふれる俳優やミュージシャンを起用し、コーヒーとタバコを巡る11のエピソードを綴った短編集「コーヒー&シガレッツ」、かつてのプレイボーイを主人公に、あることから昔の恋人たちを訪ねに旅に出る「ブロークン・フラワーズ」では、カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞。
70~80年代のヨーロッパの犯罪映画を念頭にした異色のハードボイルド映画「リミッツ・オブ・コントロール」、本作にも通じそうな気配があり、何世紀も生き続けるヴァンパイアの愛と葛藤の物語「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」、小さな町でバスの運転手をする主人公のありふれた生活から、日常に溢れる愛しさを繊細に描き出したヒューマンドラマ「パターソン」などがあり、どれもこれも奇妙で可笑しみのあるユーモア性と奥深くに細んだメッセージ性を軸に描いた作品が基本となっています。
キャスト
街の警官、クリフ・ロバートソンを演じるのはビル・マーレイ。
はい、もう大好きな俳優です。
初めて彼を見たのはもちろん子供の頃に見た「ゴースト・バスターズ」。
なんで薄い髪の毛のおっさんがこんなにモテるんだろう?と男のカッコよさに気付いていなかった幼いモンキーでしたが、今ではこんなおっさんになりてぇなぁと勝手ながらモデルにしているほどw
他にも僕が好きな作品で「知らなすぎた男」や「恋はデ・ジャ・ブ」、最近で言ったら「ゾンビランド」や「ムーンライズ・キングダム」、「ヴィンセントが教えてくれたこと」や「ジャングル・ブック」での声での演技も印象的でしたね。
今回監督作品は4度目だそうで、きっと良い空気の中お仕事できたことでしょう。
彼の飄々とした姿からどんなユーモアが生まれるのか楽しみです。
他のキャストはこんな感じ。
ロニー・ピーターソン役に、「パターソン」、「スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」、「マリッジ・ストーリー」のアダム・ドライバー。
ゼルダ・ウィンストン役に、「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」、「ドクター・ストレンジ」、「コンスタンティン」のティルダ・スウィントン。
ミンディ・モリソン役に、「ブロークン・フラワーズ」、「ボーイズ・ドント・クライ」のクロエ・セヴィニー。
フランク・ミラー役に、「レザボア・ドッグス」、「ファーゴ」、「コーヒー&シガレッツ」のスティーヴ・ブシェミ。
ハンク・トンプソン役に、「リーサル・ウェポン」シリーズ、「さらば愛しきアウトロー」のダニー・グローヴァー。
ボビー・ヴィギンズ役に、「X-MENファーストジェネレーション」、「ゲット・アウト」、「スリー・ビルボード」のケイレヴ・ランドリー・ジョーンズ。
ポージー・フアレス役に、「ドゥ・ザ・ライト・シング」、「フィアレス」、「ナイト・オン・ザ・プラネット」のロージー・ペレスなどが出演します。
果たして初のジャームッシュ作品を私モンキーは堪能できるのでありましょうか!?
新たな扉を開け、映画を探求したい!
ここから鑑賞後の感想です!!
感想
すげえ、評判通りのユルふわゾンビ映画w
物欲に依存しがちな現代人への風刺と、メタ視点で溢れるユーモアの数々!
初のジャームッシュはすごくいい体験でした!
以下、ネタバレします。
こんなにユルいのか。
地球の自転軸のズレにより日照時間が延びたり縮んだり、動物たちは森の中へ逃げだし、挙句の果てには死者が蘇るという異常現象の連発な設定で描かれる「ゾンビ映画」は、監督お得意とされるオフビートな流れと笑いで、終始緩やかで締まりのない展開に描き、所々でメタ視点を加えたりテンドン入れたり突拍子にSF入れたりとやりたい放題な中、モノへの欲望や依存しがちな現代人をゾンビに見立てた風刺をしっかり入れた、これまでのゾンビ映画とは一線を画したジャームッシュ流ゾンビ映画でございました。
いやぁ~そもそも主演二人が真顔で立っている画像を見た瞬間、こんなのユルいに決まってるだろう!wと勝手な決めつけで楽しみにしていた映画でしたが、ここまでユルいとはw
普通ゾンビ映画つったら、人間を襲うゾンビで急に劇伴が変わって恐怖に陥れ、常にドキドキさせるって演出が定番だと思うんですけど、そんな演出ほとんどないw
こっちはいつどうやってゾンビが現れて、田舎町が阿鼻叫喚と化すのかをドキドキしながら心待ちにしていたのに、待てども待てどもことが起こらない、ん?違うぞ?あまりにものら~りくら~りで街の人たちを映してばかりだから体内時計が狂ったんだ!
実際劇中でも地球の自転軸が狂い出し、時計もスマホも機能しなくなってるってことになってるんだけど、まさか見てるこっちの経過時間まで狂うとはっ!
さすがジャームッシュ!
これがあんたのやり方かぁ!
しかもなんだ、ダイナーで発見された遺体を見て、普通の人間なら殺しか、劇中でもテンドンになってた野生動物による仕業とか、あくまで現実で起こり得る予測を立てるのがセオリーなのに、アダム・ドライバー演じるロニーと来たら速攻で「これはゾンビの仕業だ」ってwww
それをただ「なんだって?」と明らかに脳内クエスチョンマークだらけのはずなのに平静を装うビル・マーレイの顔ww
これこれこれ!
この2人が主演て聞いて僕が一番見たかったのは、この2人が醸し出す絶妙な透かし顔w
普通バディモノの場合、相反する2人の掛け合いが、漫才で言うボケとツッコミみたいに対照的なのが基本だけど、二人ともボケとボケみたいな同じパターンの人物ってなってて、それが作品に笑いの心地よさを生むんですよね。
しかもだ、ビル演じるクリフ、とりあえずロニーの言うことを聞いて、武器用意したり、ゾンビが現れたら頭を殺れ、ってアドバイス通り行動するんだけど、どこか心ここにあらずというか、まだ頭の中に「?」が残っているというか頭と体がシンクロしてない感じがして。
で、ロニーが何度も何度も「まずい結末になる」って連呼して、こいつさっきから何言ってんだ?って顔しながらロニーの顔を覗くクリフの表情ね!
終盤ではこの「この状況をどうしてそんな視点で考えて、そんなすっとぼげた表情してわけわからんこと言ってんだ?俺の相方」って疑問とフラストレーションをぶつけるクリフに対する、ロニーの答えがまた最高でw
そんなのアリかよwって笑わずにはいられない展開が待ってるわけですよ。
シュールって言葉がぴったりな掛け合いが凄くよかったですよホント。
「ストレンジャー・ザン・パラダイス」でも「デッドパン喜劇」なんて言われてるそうですが、このデッドパンて「無感情」って意味だそうで、主演二人はこの無感情の表情をすることで笑いを生む芝居をやっていたってことなのかなと。
それこそビル・マーレイなんて得意中の得意というか、過去作でも彼の真顔を見るだけでクスッとしてしまう、この後彼は何を言うんだろう?って緊張と緩和を見事に体現してくれるから、安定の面白さとユニークさを持っているんですよね。
また彼とバディを組むアダム・ドライバーも、「ローガン・ラッキー」でも同様なデッドパン芝居をやっていたし、決して表情豊かではない彼の得意パターンをこの作品で爆発させていたと思うんです。
とにかく二人の良さを最大限に活かした監督の脚本と演出に見事にやられた1本でしたね。
スターたちの雑な扱いもオモロw
彼ら以外にもすごいスターが出演してて、色々面白いというか個性的な役の設定にもなってたし、正直決して重要な役どころでなく、結構雑な扱いでスクリーンを去ってしまう役柄がこれまたユルい笑いに繋がっていて。
例えばスティーブ・ブシェミ演じたフランクですが、彼は農場を経営していて、被っている帽子には「白人の元にアメリカを戻そう!」って書いてある帽子から、めちゃんこ白人至上主義なおじちゃんなんですね。
そんな彼が黒人で金物屋を経営しているハンクとダイナーでくっちゃべるわけですよ。
あぁこれは一触即発か?と思ったけど、やはり狭い田舎町ですから、そこは本音でトークしねえか、と。
しかしテイクアウトを済ませた際に、コーヒーがブラックすぎるっていうわけです。
これにはさすがのハンクもピクっと反応して、すかさずフランクが「コーヒーが濃すぎるって意味だよ・・・」と返答するやり取りが面白かったですね!
てか、フランク・ミラーって役名、やっぱりあの時計メーカーから取ったんですかね?
他にも冒頭から怪しい雰囲気で街の様子を覗く世捨て人のボブ。
どうやらクリフとは50年前からの知り合いなようで、いつから世捨て人になったのかは明らかにされてないんだけど、森の中でテント作って植物や木になったキノコやら野生の動物を食べて暮らしているんですね。
冒頭では、フランクの家畜であるニワトリを盗んだ容疑者としてクリフたちから職質される所から始まり、その後はひたすら街の様子を伺っているだけ。
彼が最後にはなつセリフがこの映画の核になっている点から、彼は監督の代弁者って立ち位置なのかなと推測しました。
まだいますよクリーブランドからイカした車でこのセンターヴィルにやってきたゾーイを演じるがセレーナ・ゴメスで、いわゆる都会っ子の装い。
何となぁく田舎に来て余暇を過ごすかのような立ち振る舞いで、男を二人も引き連れてきてる辺りなんか、どこかいけ好かない感じなんだけど、今作のテーマ曲(これもメタ視点で笑える)である「デッド・ドント・ダイ」ってめっちゃカントリー調の曲が好きとか言ってて、しかも結構な映画好き。あ、好感度アップw
そんな彼らがガソリン補給で立ち寄る店の主人が、ホラーオタクのボビー。
子どもたちの憩いの場にもなっているこの店を切り盛りしながら、自分の趣味を謳歌している様子。
壁には「遊星からの物体X」のポスターが貼ってあったり、配達車で訪れるRZA演じるディーンから「クリーピー61号」なるコミックを受け取ると興奮気味な所から、これはかなりのオタクだなwと。
極めつけはティルダ・スウィントン演じる謎の葬儀屋ゼルダ。
彼女は葬儀屋を引き継いで外国からこの町に来たみたいで、遺体にド派手な死に化粧を施したり、奥の部屋では精神統一して日本刀を振り回し「阿弥陀仏」と言い放ったり、歩行するときもひたすら真っ直ぐ歩き、曲がるときは直角で曲がるという、なかなかの変な奴。
住民からもスコットランド系?とどこから来たのかはわかってない様子。
そんな彼女も必死に町に馴染もうと情報収集と称して余計なことまで聞く辺りが、なんかよそ者だなぁって感じがしてキャラが際立ってましたね。
てか、日本刀持って阿弥陀仏って言って、しかも名前がゼルダって、これ普通に日本人もねじ曲がったイメージをユーモアにしてるんじゃないかって勝手に想像してます。
風刺だらけだったんじゃないか。
他にもゾンビだらけの町にどんど嫌気がさしてしまう怖がり屋さんの警察官モリソンや、イギー・ポップ演じるゾンビはコーヒーを求め、他のゾンビはWi-FiだのBluetoothだのキャンディやおもちゃ、薬品やギターなど何かを求めるようなゾンビばかり。
一体このゾンビたち、何なのよ!って所に行きつくんですけど、やっぱりロメロが生み出した「ゾンビ映画」ってのは、何かしらの社会風刺や皮肉をゾンビに見立てて人間たちを襲うってのがテーマになっているのは有名で、今回もその観点から色々とメッセージが見えてくるんじゃないかと。
そのゾンビがなんなのかの前に、いきなり地球の自転軸がずれてしまったことで異変が起きているって点がひっかかりますよね。
ラジオではエネルギー開発している会社が地球の資源をいじったか何かが原因なんじゃないの?って追求に、政府も企業も何ら問題はないって言っていて。
もうこの政府と企業が色々隠して世間には安全と主張してるてのがもう風刺なんじゃいないかと。
こっちが知らないところでいろいろと問題が起きているのはそれはもうあんたらの仕業なんでしょ?それをただ調べずに伝えるだけのTVやラジオもどうかしてんじゃないの?みたいな。それって談合社会?みたいな。
こういう要素をぶち込んでくる序盤から、ゾンビの登場に違和感。
一番最初の2人のゾンビは、ダイナーを襲って、ウェイトレス二人のはらわたを食いちぎる(普通は頭なのにねって警察官たちの会話があとから出てくるのがまたツボw)んですけど、その後コーヒーを求めるんですよ。
コップに入ったコーヒーを飲み干し、ポットのコーヒーも飲み干す、もう一つのポットはテイクアウトw
人間を襲うのに何か別のものも求めているのが妙に引っかかるわけです。
翌日さらに墓場から無数のゾンビが登場するわけですが、何やら聞きなれた言葉をぶつぶつ言いながら人間たちを襲うんですね。
Wi-Fi、Bluetooth、siri、キャンディ、チョコ、おもちゃ、ギター、ファッション、アスピリン、シャルドネ(ワインのこと)、などなど、恐らく生前に欲しがっていたモノ、またはそれらに依存していたことが窺える執着心。
これって今の僕らもゾンビと化してるんじゃないの?ってことの現れなのかと。
例えば僕がゾンビになったら、きっと「映画・・・ミスチル・・・酒・・・うまいもん・・・twitter、ブログ・・・」みたいなw
もっと目を向けなければならないことを疎かにし、それよりも今自分が欲しいモノを追い求め、それを手に入れることで一時の幸福感を味わい、その幸福感が賞味期限を過ぎれば、また別の物欲を追いかける。
そういった物欲に支配されてしまうことが人間を退化させているのでは無いか、そんな人間共はもはや死んでいるように生きているゾンビと何ら変わらないのではないか、という監督の風刺なのではないかと。
それこそ劇中で起こった地球の自転軸のズレの原因を気にも留めない田舎町の住民は、自分たちの目の前のあるものに目を奪われ、事の重大さを感じていないわけで。
趣味に没頭しているホラーオタク然り、コーヒーとドーナツが食べたくて仕方のないクリフ然り、ようやく手に入れたであろうプリウスやスマートの話題をしたいロニーとモリソン然り、皆が皆今起きていることよりも物欲に目を奪われがちだということ。
そんなお前らは日本刀を持ったゼルダによって首を切り落とされてしまえばいい!と訴えているような映画と捉えました。
ホント人間がこのままの状態で、自然や環境といった地球規模の問題に目を向けないと「まずい結末になる」んじゃないの?って。
もうあれですよ、「バイス」のエンディングで、どっかのギャルが「今度のワイルドスピード楽しみ♡」って終わるあの風刺と大差ない事をメッセージにしてるよね、っていう。
じゃあどうすりゃいいのさ、ってのは、それはもう自分自身で考えるしかないわけですよ。
それこそ今SNSで何か反対意見を言う人がいて、それに行間を読み取らずにそのまま受け取って躍起になって批判して、さらにその意見に反発する当事者って光景を何度も見たけど、「それはおかしい」って意見を跳ね返すラリーをするんじゃなくて、ではどうすればいいだろう?っていう建設的な会話になってないわけですよ。
で、それを会話だけでやるのでなくて、行動に移さなくては何も解決しない。
言っただけで満足してる奴らばかりなんですよ。現代人は。
・・・と、段々過激な内容になってしまったのでクールダウンしてw
最後に
これが初めてのジャームッシュ映画でしたが、まさかここまでのユルさだと思わず、一度は拍子抜けしてしまう部分もありましたが、一見普通のありふれたゾンビ映画だけどもこれはこれで新しいゾンビ映画だったんじゃないかなと。
そして監督の作風を理解したうえで、過去作に触れて堪能してみたいなという発見もできたわけで、僕としては非常に大きな収穫でした。
ホントね、急に「なんだこの曲聞きなれた歌だなぁ」ってラジオから流れてくる歌に対して「だってテーマ曲ですから」って返すやり取りがむちゃんこ笑えて、アダム・ドライバーにスターウォーズネタをブッ込んでくるのも上手で、そのデカい図体したアダムがめっちゃちっちゃいスマートで現場に駆けつけるのもこれまたシュールで、ちょうどいいところで笑わせるのが凄く心地よかったです。
心地よすぎて途中で寝落ちしそうになりましたけどもw
笑いという甘さと風刺というスパイスが効いていて、いい塩梅だったのではないでしょうか。
これをスロー過ぎてつまらん、て人もきっと多いかと思いますけど、スローだからこその味ってのを感じてほしいなぁなんて思ったり。
てか、このゾンビたち、ニヤって笑ってたよねw
そういうゾンビもいいな。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆★★★7/10